SAPIX小5算数「比と割合」の壁。デイリーサポート星3の扱い方

SAPIX小5算数の「比と割合」でデイリーサポートの星3が解けないとき、親が横から数式を教え始めると、ほぼ確実に泥沼になります。問題は子どもの理解力ではありません。1週間で全部の問題を消化する前提の教材と、それを親が背負う家庭学習の構造にあります。この記事では、星3を「解く問題」と「解かない問題」に分け、親が教える役から降りるための手順を書きます。

SAPIX小5算数で「比と割合」が壁になる理由

小5の割合は、小学校算数でいちばん難しい単元のひとつと言われます。割り算や「倍」の考え方が土台になるため、3〜4年の内容にあいまいさが残っていると、一気に表面化します。

SAPIXの算数は、同じ単元を時期をずらして繰り返し、回を重ねるごとに応用へ進む「スパイラル方式」です。2回目以降は、初回より一段深い内容が出てきます。ですから「比と割合」で最初に取りこぼすと、あとの回で同じ穴に何度も落ちることになります。

ここで大事なのは、壁にぶつかっているのは多くの子が通る道だということです。比と割合は、塾のカリキュラム上、どうしても難しくなる場所です。親の教え方が悪いわけでも、子の力が足りないわけでもありません。

「全部解く」前提の教材とのズレ

デイリーサポートは、授業用・宿題用の教材です。同じ問題が表裏に載っていて、宿題として解き直し、翌週のデイリーチェックで高得点を目指す流れになっています。問題はA〜Eの5段階の難易度に分かれており、子どものレベルや目標クラスに応じて、どの問題を解くかを選ぶ使い方が前提です。

つまり教材の側が、最初から「全部やらなくていい」と言っているわけです。ところが家庭では、配られたものは全部やるものだと受け取りがちです。ここにズレが生まれます。

なお、星の数が何を表すかは、手元の教材の表示や塾からの案内で確認してください。この記事では星の意味を決めつけず、「星3の問題が今の子に合っているか」を見る視点で話を進めます。

親が数式で教えると泥沼化する仕組み

割合の問題を、親は「もと×わりあい=くらべる量」という式で理解しています。大人にとっては便利な道具です。ところが、図や線分図で状況を整理する習慣がまだない子に式だけ渡すと、何をどこに入れるのか分からなくなります。

たとえば5年生の男の子で、こんなパターンがよくあります。

  • 親が「これはもとにする量がここだから」と式を示す
  • 子は式をなぞって答えは合わせるが、次の類題で同じ式をどこに使うか分からない
  • 親が「さっきやったでしょ」と言いかけて、空気が悪くなる
  • 子は「分からない」と言う代わりに、手が止まる

誰も悪くありません。大人の頭の中の道具を、そのまま渡せないだけです。

夜の時間が一番もったいない

宿題の解き直しは夜に集中しがちです。疲れた状態で、親も子も余裕がありません。そこで難問に長時間つき合うと、本来やるべき基本問題の反復や、他教科の宿題まで押し出されます。

星3の1問に40分かけて、基本問題の定着がゼロ。これは割合の単元では、ありがちな失敗です。

星3を「解く」「保留」「バツ」に分ける

ここからが実践です。デイリーサポートの星3の問題を、次の3つに分けます。分けるのは、授業の翌日以降の短い時間で十分です。

区分 目安 扱い
解く 授業で出てきた形とほぼ同じ/線分図が自力で描ける 翌週のデイリーチェックまでに解き直す
保留 解説を読めば分かりそうだが、自力では手が出ない 1回だけ解説を読み、1週間後に再挑戦
バツ 解説を読んでも条件の読み取りが追えない/何を求めるかが曖昧 今は解かない。印をつけて閉じる

「バツ」は、永久に捨てるという意味ではありません。スパイラル方式で単元はまた戻ってきますし、基礎が固まってから見ると、同じ問題がすっと入ることもあります。今の時期に手を出さない、という意味です。

判断の物差しは「3分」

時間が決まっていないと、親子とも粘りすぎます。次のルールを使ってください。

  1. 問題文を読んで、線分図を描くのに3分かける
  2. 図が描けて、何を求めるか言えるなら「解く」へ
  3. 図が描けない、または求めるものが言えないなら、解説を1回だけ読む
  4. 解説を読んでも次の一手が見えなければ「バツ」

このルールのよいところは、親が数式を教えなくても判定できることです。親がするのは時計を見ることだけです。

基本問題で土台を作る順番

星3を整理して時間が浮いたら、その時間は基本問題にまわします。比と割合は、基礎が崩れていると応用が一切立たないためです。SAPIXの算数は重要単元ほど、デイリーサピの内容を習熟することが大切だと言われます。

割合の「言い換え」を口で練習する

計算の前に、言葉の言い換えを口で言えるようにします。

  • 「Aの40%がB」→「Aを1としたとき、Bは0.4」
  • 「Bは、Aの3/5」→「Aを5つに分けた、3つ分がB」
  • 「AとBの比が2:3」→「Aが2つ分、Bが3つ分」

ここは暗算で十分です。台所で、おやつの分け方や買い物の割引で試せます。「3割引ってどういうこと?」と聞くだけでも練習になります。

線分図は「きれいさ」を求めない

線分図は定規を使わず、手書きで構いません。点線で「もとにする量」を示し、そこが1(または100%)だと書く。それだけで、何と何を比べているのかが見えてきます。

親は図の「正しさ」を採点しないでください。描こうとしたこと自体を認める。描けた図をもとに、子ども自身に「何を求めたい?」と言わせる。それが、式を教え込むより遠回りに見えて、実は近道です。

デイリーチェックの結果の見方

翌週のデイリーチェックで点が伸びないと、親はつい「もっと解かせなければ」と考えます。けれど、点が取れない原因が星3の未消化にあるとは限りません。基本問題の取りこぼしが先に出ることがほとんどです。

直しをするときは、間違えた問題を「計算ミス」「条件の読み落とし」「考え方が分からない」の3つに分けてみてください。計算ミスと読み落としは、手順の工夫で減らせます。考え方が分からない問題だけが、仕分けの対象です。この分け方をするだけで、「全部が分からない」という漠然とした不安が、小さな課題の集まりに変わります。

1週間の動かし方(例)

授業日から次の授業日までを、無理のない形に割り振ります。あくまで一例で、家庭の事情に合わせて動かしてください。

曜日の流れ やること 目安
授業の翌日 デイリーチェックの直し/星3の仕分け(解く・保留・バツ) 30〜40分
2〜3日目 「解く」に分けた問題の解き直し 各日20〜30分
4日目 「保留」の再挑戦(解説を読んでから) 15分
5〜6日目 基本問題の復習・計算の確認 各日15分
授業前日 次回の予習はせず、間違い直しの確認だけ 10分

ポイントは、「バツ」を決めた日に、その問題のことを手放すことです。何度も蒸し返すと、せっかくの判断が無意味になります。

子どもへの声のかけ方

「これは今回は飛ばすよ」と、親が決めて伝えて構いません。子どもは「できなかった」ではなく、「今は順番が違うだけ」と受け取れます。

比と割合で自信をなくす子の多くは、解けなかった問題の数ではなく、解けなかった問題と向き合い続けた時間で疲れています。解かない問題を決めることは、子どもの気持ちを守ることにもなります。

つまずきの型を見分けると、仕分けが速くなる

星3の問題で手が止まるとき、理由は大きく3つに分かれます。型が分かれば、「解く」「保留」「バツ」の判断がずっと速くなります。

型1:「もとにする量」が見つけられない

問題文に数字が3つも4つも出てきて、どれが1にあたるのか分からないタイプです。「〜の」「〜に対して」の直前にある量がもとになる、という読み方の練習が効きます。文に印をつけるだけで進むことも多いので、この型は「保留」から「解く」へ上げやすい問題です。

型2:状況が途中で変わる

「値上げしてから値引きした」「はじめに全体の3割を使い、残りの半分を使った」のように、もとにする量が途中で入れ替わるタイプです。線分図を2段に分けて描く必要があり、慣れるまでは時間がかかります。3分で図が描けなければ、迷わず「バツ」で構いません。

型3:比と割合が混ざる

比の考え方と割合の考え方が1問の中で混ざるタイプです。どちらの言葉で整理するかを選ぶ力が要るので、基本の言い換えがまだ口に出せない時期は、手を出す順番が早すぎます。この型こそ、基礎が固まってから戻ってくる問題の代表です。

仕分けのあとに一言だけ書く

バツをつけた問題には、ページの端に「型1」「型2」「型3」と小さく書いておきます。数週間後に見返したとき、どの理由で保留にしたかが分かるので、戻るタイミングを判断しやすくなります。書く量はこれだけで十分です。

「バツ印」を親が決めきれないとき

ここまで読んで、「どの問題をバツにしていいのか、自分では判断できない」と感じた方もいると思います。それが普通です。

星3の中にも、今の子に合う問題と合わない問題が混ざっています。見分けるには、単元の中での位置づけや、この先に何度戻ってくるかを知っている必要があります。親が毎週ゼロから見極めるのは、実際にはかなり重い作業です。

だから、最初は「3分ルール」だけで十分です。迷った問題は迷ったまま、保留かバツに倒してください。倒し方を間違えても、スパイラル方式でまた出会えます。取りこぼしより、1問に居座って基本を落とすことの方が痛手です。

それでも続かない家庭では

仕分けを毎週続ける時間が取れない家庭や、親が見るとどうしても教えたくなってしまう家庭もあります。その場合は、この仕分けの部分だけを外に出す手があります。たとえば、塾の教材と進み方を理解している第三者に、星3の問題へ印をつけてもらい、親は印のついた通りに見守る側に回る、という使い方です。

教えるのをやめて、時計と声かけの係になる。まず自分たちで3分ルールを1か月試し、それでも回らないと感じたら、そのときに考えれば十分です。

※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています