日能研「銀本」の分厚さに戸惑う。必要な問題の抽出とコピー管理の限界

銀本の分厚さに固まってしまうのは、親のやる気が足りないからではありません。あの本は「全部解くため」ではなく「必要なところを選ぶため」に作られた辞書のような問題集で、選ぶ作業だけが家庭に丸ごと残される構造になっているからです。

10月も末になると、日能研に通う小6の家庭では、銀本を前に「どこから手をつければいいのか」「コピーはどこまで必要なのか」と手が止まりがちです。この記事では、銀本を全部こなそうとする発想をいったん手放し、志望校に必要な分だけを抜き出して、コピーと管理の手間を最小にする方法をお話しします。

日能研の銀本が分厚いのは、全部やらせるためではない

銀本は、日能研で使われている入試問題集の通称です。書店では、みくに出版の「中学入学試験問題集」(栄冠シリーズ)として売られています。科目ごとに分冊になっていて、国語は男子・共学校向けと女子・共学校向けの2冊に分かれています。

2027年度受験用の収録校数を書店の商品情報で見ると、国語は男子・共学校が91校、女子・共学校が100校です。算数は144校、理科は135校でした。価格は、国語が1冊3,872円、算数が3,146円、理科が3,388円(いずれも税込)と掲載されています。

つまり、1冊に100校前後、多いものでは140校を超える学校の問題が入っています。お子さんの受ける学校は、そのうちのほんの数校です。残りの大部分は、受けない学校の問題です。

これだけの量を、小6の秋から全部解こうとするのは、塾のカリキュラムとしても現実的ではありません。分厚さは「これだけやれ」という圧力ではなく、「この中から自分の学校を探せ」という品揃えの多さだと捉え直してください。

本のつくりが「選ぶ前提」になっている

収録校数が多い本は、どうしても1校あたりのページが限られます。そのため、年度や学校によっては、直近の問題しか載っていないこともあります。志望校の過去問を何年分も解きたいなら、銀本だけでは足りない場合があります。

ここは学校ごとに違うので、まずお手元の本で、志望校が何年度分載っているかを確認してください。載っている年度と載っていない年度を一覧にしておくと、あとの判断が楽になります。

「全部バラしてコピーする」作業が増える理由

分厚い本を机の上で広げて解くのは、意外と不便です。そこで、必要なページを抜き出してコピーし、1校ごとにまとめる家庭が多くなります。これは理にかなった発想です。ただ、始めてみると、抜き出し、コピー、並べ替え、解答用紙の準備と、作業が一気に膨らみます。

作業が膨らむのは、やり方が悪いからではなく、量が多いからです。ここで大事なのは、コピーを丁寧にやり切ることではなく、コピーする量そのものを減らすことです。

抽出の前に決める「受ける学校の優先順位」

銀本から問題を抜き出す前に、やることがひとつだけあります。受験する学校の候補に、優先順位をつけることです。

優先順位が決まっていないと、「念のためこの学校も」と抜き出す範囲が広がり、コピーの山ができます。山ができると、解く前に疲れてしまいます。

まず3つに分ける

区分 考え方 銀本から抜く量の目安
第一志望 本番まで繰り返し向き合う学校 載っている年度をすべて
併願校(本命に近い学校) 受験日程に入る可能性が高い学校 直近の数年分
併願校(可能性が残る学校) まだ受けるか決めていない学校 まだ抜かない

ポイントは、いちばん下の区分を「まだ抜かない」と決めることです。受けるかどうか決まっていない学校の問題は、決まってからで間に合います。

日能研の面談で志望校の話が出る時期でもあります。面談で聞いた併願の組み立てをメモしておき、このメモを抽出のリストにそのまま使ってください。

教科によって、抜く理由が違う

志望校が決まったら、教科ごとに「何のために抜くのか」を決めます。同じ学校でも、教科によって使い方が違うからです。

教科 抜く目的 抜き方のコツ
算数 時間配分と、取る問題・捨てる問題の見極め 大問1の計算と小問集合は必ず抜く。最後の大問は、解く日を分けて扱う
国語 記述の量と文章の長さに慣れる 文章のジャンル(物語文か説明文か)を学校ごとにそろえて抜く
理科・社会 出題分野の偏りを知る 解くより先に、全年度をざっと見て頻出分野に印をつける

たとえば、理科や社会は「解く」前に「眺める」だけでも収穫があります。どの分野が毎年のように出ているかがわかれば、残りの日数で何を優先して覚えるかが決まるからです。抜き出しの前に目次と全年度を一度めくっておくと、あとの迷いが減ります。

算数は、見開きで1年分が収まることが多く、抜き出しの負担が比較的軽い教科です。国語は、長い文章が複数あり、年度によって問題と解答用紙の位置関係が違うことがあります。ここは、抜く前に実物を一度確認してください。

コピーは「全部を実物大」にしなくていい

過去問は本番と同じ大きさにコピーして解くもの、と思い込んでいる親御さんは少なくありません。たしかに、塾から「コピーして提出」と言われている場合は別です。しかし、家庭学習で解くだけなら、全部を実物大にする必要はありません。

通塾なしで難関校に合格した家庭の学習法を紹介した記事では、過去問を実物大にコピーせず、問題集のまま解いていたと書かれています。解答は小さい解答用紙に書き、計算は別の紙に書く。その理由として、毎回コピーを用意する手間をかけると、子どもが一人で取り組めなくなる点を挙げていました。親が時間を取れない共働きの家庭では、コピーを作る義務感を持たなくてよい、という趣旨も述べられています。

この考え方が、全員に当てはまるわけではありません。ただ、「コピーをしないと過去問ではない」という思い込みを外すきっかけにはなります。

実物大にする価値がある場面

一方で、実物大にしたほうがよい場面もあります。たとえば、次のような場合です。

  • 記述の解答欄が広く、書く量の感覚をつかみたい(国語)
  • 解答用紙に作図や式を書く欄があり、書く場所の使い方に慣れたい(算数)
  • 時間配分を本番に近い形で確かめたい直前期

こうした目的がある学校だけ、直近の年度に限って実物大にします。全部ではなく、目的のあるものだけ。この線引きだけで、コピーの量は大きく減ります。

コピーの扱いで気をつけたいこと

過去問のコピーは、家庭内で自分の子どもが解くためのものにとどめてください。ほかの家庭に配ったり、インターネット上に載せたりすることは、著作権の面で問題になる可能性があります。迷うことがあれば、塾や出版社の案内を確認するのが確実です。

抜き出した問題を「迷わず回す」管理の最小ルール

抜き出しとコピーが済んでも、そこで終わりではありません。むしろ、その後の管理が止まりやすいところです。ここで凝った仕組みを作ると、続きません。必要なルールは、次の3つだけです。

ルール1:1校1ファイルにする

学校ごとにクリアファイルを1つ用意し、年度の新しい順に重ねます。ファイルの表には、学校名と「解いた年度」だけを書きます。解いた問題は、採点した答案と一緒にファイルに戻します。

「どの学校の何年度を解いたか」が一目でわかれば、管理は成り立ちます。

ルール2:1週間の枠を先に決める

過去問は、気が向いたときに解くと、必ず後回しになります。曜日と教科を先に決めてしまいます。

曜日 内容の例 所要時間の考え方
平日の1日 算数の大問1〜3だけを時間を測って解く 学校の試験時間のうち前半
土曜 志望校の国語を1年分 試験時間どおり
日曜 一週間の直し 解き直しの優先順位に沿って

日能研は授業や講習、テストが続く時期です。この表は、塾の予定を差し引いた「残りの時間」で組んでください。全部を詰め込んだ表は、1週間で崩れます。

ルール3:直しは「全問」ではなく「取れたはずの問題」から

解いたあとは、点数を見て落ち込む前に、間違えた問題を3つに分けます。

  1. 解き方を知っていれば取れた問題
  2. 時間が足りず手をつけなかった問題
  3. 今の段階では取れなくてよい問題

直すのは、1と2から。3は、印をつけて保留にします。過去問の目的は満点を取ることではなく、合格点までの距離を測ることです。3まで全部直そうとすると、直しの量がコピーの量以上に膨らみます。

それでも続かないときの、管理の切り分け方

ここまでの手順を、親子だけで回すのが難しい家庭もあります。原因は、親の力不足ではありません。小6の秋は、塾の宿題、テスト、面談、学校行事が重なり、親の側の時間が先に尽きてしまうからです。

特に詰まりやすいのは、次の2つです。

  • 抜き出しの判断:どの年度のどの問題を、いつ解かせるかを決める作業
  • 採点と直しの管理:間違いの分類と、直しの進み具合を確認する作業

抜き出しの判断は、志望校の出題の癖がわからないと迷います。採点と直しは、毎週積み上がるぶん、止まると一気に滞ります。この2つは、親が仕事や家事の合間に担うには重い作業です。

最後に:まず自分たちでここまでやってみる

最初の一歩は小さくて構いません。次の3つを、今週中にやってみてください。

  1. 第一志望の学校名を、銀本の目次で探し、載っている年度に印をつける
  2. 第一志望の算数だけ、直近の1年分を抜き出す(コピーは本のまま解けるなら不要)
  3. クリアファイルを1つ作り、学校名を書く

これだけで、銀本の山は「自分の学校の1ファイル」になります。そこから先は、週に1回の枠を決めて回すだけです。

それでも、仕事の都合で平日に時間が取れない、採点と直しの確認が追いつかない、という家庭はあります。その場合は、問題の抜き出しやコピー、進み具合の管理だけを外に出す方法もあります。家庭教師に頼むと、過去問の選び方から直しの確認まで、まとめて任せられることがあります。どこまでを親がやり、どこからを任せるかは、家庭の時間と余力で決めて構いません。コピー機の前で夜を過ごすより、子どもの話を聞く時間に残したい、という選び方もあります。

※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています