SAPIX小5国語Aテキストでおろそかになる知識。小6秋の失点を防ぐ

小6の秋に国語の答案を見返して、読解は粘れているのに、漢字と語句で数問ずつ落としている。この形で止まっているお子さんは、実はとても多いです。原因は本人の努力不足ではありません。小5のうちに、知識が「読解のおまけ」として後回しになる流れが、塾の授業の進み方そのものに組み込まれているからです。

SAPIXの小5国語は、毎回の授業で長めの文章を読み、記述まで考え抜く時間が中心になります。授業の主役はどうしても読解で、漢字や語句は「家で各自やっておく」という位置づけになりがちです。そして小6の秋は、読解で伸びしろを探す時期から、取れるはずの点を一点ずつ拾う時期へ変わります。この記事では、小5のうちにおろそかになる知識の正体と、小6の秋に間に合わせるための毎日の型をお話しします。

読解が主役の授業で、知識が後回しになる仕組み

SAPIXの教材は、講師が作るオリジナル教材を授業ごとに渡す形式だと、塾紹介の情報にもあります。国語のテキストも、授業で扱う文章と設問が中心です。ここで起きることは単純です。

授業でじっくり扱われるのは、本文の読み取りと記述です。漢字や語句は、授業の中で一問一答のように丁寧に時間を取る場面が少なく、家庭学習に回ります。家庭学習は、算数の計算や理社の暗記と時間を取り合います。その結果、いちばん後回しにされやすいのが国語の知識になります。

わたしが以前担当した小5の女の子は、読解のテキストは毎回きちんと復習していました。ところが、言葉の意味を問う問題になると、ほぼ毎回同じ種類の語句で間違えます。聞いてみると、知識の教材は「週末に時間があれば」という扱いでした。時間がある週末は、ほとんど来ませんでした。

これは、本人が怠けたのではありません。授業が読解中心で進む以上、知識を回す場所を家庭の側に自分で作らなければならない、という仕組みの問題です。

「知識」と言っても、何が落ちやすいのか

小5国語で後回しになりやすいのは、大きく分けて三つです。

分野 後回しになる理由 小6秋に起きる失点
漢字(読み・書き) 毎回の宿題の量が多く、書いて終わりになる 熟語の一部が書けない、同音異義語の使い分けを誤る
語句(慣用句・ことわざ・四字熟語など) 授業で改めて扱う時間が少ない 文脈の中で意味を問われると選べない
言葉の意味・用法(副教材の領域) 「読めば何となく分かる」で流してしまう 選択肢の微妙な違いで落とす

SAPIXには、国語の副教材として『言葉ナビ』があります。実際に小5で通っているご家庭の体験談でも、漢字に数日をかけたあと、『言葉ナビ』に二日ほど取り組むという流れが紹介されていました。つまり、知識の教材は存在していて、使っているご家庭もあります。それでも、一週間の中で後ろに押し出されやすい位置にあることは変わりません。

小6の秋に、知識の失点が重くなる理由

なぜ「小6の秋以降」なのか。理由は三つあります。

一つ目は、読解の得点は短期間では上がりにくいことです。夏が終わって秋に入ると、読解力を急に押し上げるのは現実的ではありません。一方で、知識は覚えた分だけ確実に点になります。残り時間が少ない時期ほど、点数への効率は知識のほうが高くなります。

二つ目は、入試問題の中での位置づけです。学校によっては、漢字や語句の問題が独立して出題されます。また、読解問題の設問の中に語句の意味を問う形で組み込まれる学校も多いとされています。ある学校の公開資料には、言語事項が全体の三割台を占めると書かれたものもありました。学校ごとの違いは大きいので、志望校の過去問で、知識がどの形でどれだけ出ているかは必ず確認してください。

三つ目は、ライバルとの差のつき方です。合格ラインの近くでは、読解の出来が似た子が並びます。そこで差になるのは、知識問題を落とさなかったかどうかです。読解で一問を取るのに十分かかる時間があれば、知識の五問を確実に取るほうが、結果として近道になることがあります。

以前担当した小6の男の子は、過去問の採点をすると、毎回、知識問題だけで数問ずつ落としていました。読解は十分に戦えているのに、合格ラインにあと少し届きません。本人は「国語は読解が苦手だから」と思い込んでいました。実際には、落としていたのは読解ではなく、知識でした。ここに気づいた時点で、残りの数か月の使い方が変わりました。

「時間があるときにやる」を捨てる

ここから、解決策の話です。結論から言うと、知識は「やる気があるときにまとめてやる」ものではありません。毎日、同じ時間に、同じ量を、機械的に回すものです。

小5のうちに型を作れた子は、小6の秋に慌てません。まだ作れていないなら、今日から始めて遅くありません。ただし、「余裕ができたら」という考え方は手放してください。余裕は、小6の秋には来ません。

ルーティンの条件は、次の三つです。

  1. 時間帯を固定する(たとえば、夕食前の十分間)
  2. 量を固定する(漢字十個、語句十個など、無理なく続く量)
  3. 終わったかどうかを、本人ではなく見える形で記録する

量を欲張ると、三日で止まります。わたしは、最初は「少なすぎるくらい」で始めるように伝えています。続くことが、量よりずっと大切だからです。

一日の型の例

時間 内容 目安
夕食前 漢字の読み・書きを、前日の分と今日の分で 10分
入浴前 語句・言葉の意味を、声に出して確認 5分
寝る前 間違えた箇所だけを見直す 5分

合計は二十分です。この二十分を、小5のうちから毎日続けるのが理想です。小6の秋から始める場合は、同じ二十分を、そのまま秋の日課に足してください。読解の復習を削ってでも、この二十分は残す価値があります。

間違えた知識を「戻す」仕組みを作る

知識を覚えるときに、いちばん多い失敗は、一度やって終わりにすることです。覚えたつもりで先に進み、一週間後にはほとんど忘れています。これは、記憶の仕組みとして自然なことで、お子さんの能力の問題ではありません。

大切なのは、間違えた問題を必ず戻ってくる場所に置くことです。やり方はシンプルです。

  • 間違えた漢字・語句だけを、専用のノートか単語カードにまとめる
  • 翌日、三日後、一週間後に、同じものをもう一度見る
  • 三回続けて正解できたものだけを、卒業させる

マンスリーテストや組分けテストで落とした知識問題は、特に貴重です。実際のテストの形式で間違えた問題は、入試本番で同じ形で出会う可能性が高い材料だからです。テストが返ってきたら、読解の解き直しより先に、知識の間違いだけを拾い出して、先ほどのノートに移してください。

読解の勉強と、知識の勉強を混ぜない

もう一つの落とし穴は、知識を読解の勉強の中で一緒に済ませようとすることです。「長文を読んでいるうちに、言葉は自然に身につく」と考えるのは、半分は正しく、半分は間違いです。

自然に身につくのは、文脈から意味を推測する力です。一方、入試で問われる語句は、意味や使い方をそのまま知っているかどうかで決まる問題が多くあります。推測する時間は、試験中にはありません。

そのため、知識は読解とは別の枠で、別の時間に回す必要があります。読解の復習が終わったあとの余り時間に回すのでは、結局また押し出されてしまいます。順番を逆にして、先に知識の二十分を済ませ、残りの時間で読解に向かう形にすると、うまく回りやすくなります。

小6秋の優先順位を、今決め直す

ここまでの話を、小6の秋の時間配分に落とし込みます。

項目 小6秋の扱い
知識(漢字・語句)の毎日の二十分 最優先。どんな日も外さない
志望校の過去問の知識問題 形式を確認し、間違えた分を専用ノートに移す
読解のテキスト復習 全部を追わず、間違えた設問に絞る
記述の練習 週の中で時間を決めて行う

SAPIXのテキストは分量が多く、家庭で全部を回すのは現実的ではありません。だからこそ、何を削って、何を毎日残すかを決める必要があります。知識の二十分は、残す側に入れてください。

漢字を「書けるまで」持っていく

漢字は、読めることと書けることの間に大きな差があります。小5の子に多いのは、読みは問題ないのに、書く段になると部首や画数の一部が抜けるパターンです。授業では漢字を一字ずつ丁寧に確認する時間がほとんどないので、この差は家庭で埋めるしかありません。

おすすめは、書き取りの練習量を増やすことではなく、書けなかった字だけを、翌日に何も見ずに書かせることです。ノートに十回写すより、思い出して一回書くほうが、記憶に残ります。間違えた字は、先ほどのノートに移して、三回続けて書けるまで戻します。

また、同音異義語や、熟語の一部だけを問う形式は、小6の秋の模試や過去問で目にする機会が増えます。意味と一緒に覚える習慣を、漢字の段階からつけておくと、語句の勉強ともつながります。たとえば「変える」と「換える」のように、意味で使い分ける字は、短い例文ごと覚えてください。

保護者が見るべきなのは「量」ではなく「止まっていないか」

最後に、親御さんの関わり方について。知識のルーティンで、親が全部を教える必要はありません。見てほしいのは、たった一点、今日も二十分が回ったかだけです。

点数が上がらない週があっても、責める必要はありません。知識の定着には、波があります。回している限り、必ず積み上がります。止まっていなければ、それで十分に合格点です。

親が毎日の管理を担い続ける限界

ここまで読んで、「やることは分かった。ただ、毎日の記録を確認して、間違えたものを選び出して、復習の日程を組むのは大変だ」と感じた方もいると思います。その感覚は正しいです。

知識のルーティンは、一日二十分の内容そのものよりも、管理のほうが重いのです。何を戻すのか、いつ戻すのか、どのテキストのどこまでが終わったのか。これを、仕事や家事の合間に、毎日、数か月間続けるのは、とても大きな負担になります。

さらに、小6の秋は、算数や理社の復習、過去問、学校の用事も重なります。親御さんが管理に疲れて、ルーティンが途切れてしまうことも、珍しくありません。それは、親御さんの頑張りが足りないからではなく、一人で担うには作業量が多すぎるからです。

このルーティンが途切れそうになったとき、管理の一部を外に出すという選択肢があります。無理に一人で抱え込まないことも、受験期を乗り切る大切な判断のひとつです。

※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています