四谷大塚の冬期講習で、Aコースの授業が全員向けの総復習プリントばかりになると、志望校の過去問で落としている単元に使える時間がなくなります。直前期の残り日数は、みんなに同じ量を配る授業の都合では増えません。限られた日数を、その子が本番で点を落としそうな場所だけに回せるかどうかが、冬休みの価値を決めます。ここでは、総復習の授業と自宅学習をどう切り分けるか、失点をどう仕分けるか、塾を休む判断をどう考えるかを順に書きます。
四谷大塚の冬期講習が「総復習ばかり」に感じる理由
6年生の冬期講習は、これまでに習った範囲を振り返る色合いが強くなります。四谷大塚の季節講習は、通常のカリキュラムの復習の期間として組まれていると説明されることが多く、直前期にこれまでの学習内容を総点検する設計自体は、理屈に合っています。
問題は、総復習が「クラス全員に同じ範囲を同じ順番で」配られる点にあります。志望校が違えば、出る単元も、配点の重い大問も違います。たとえば算数で、ある学校は図形の大問が毎年2つ入り、別の学校は規則性と場合の数が中心、ということは普通にあります。
総復習プリントは、全員の平均的な穴をふさぐ道具です。一人ひとりの志望校の入試問題に合わせた道具ではありません。ここに、構造的なズレがあります。お子さんが集中していないわけでも、ご家庭の取り組みが足りないわけでもありません。
Aコースの子ほどズレが大きくなりやすい
Aコースの子は、授業で扱う問題の中に「すでに解ける問題」と「解説を聞いても手が出ない問題」が混ざります。総復習で解ける問題を繰り返しても、点は増えません。手が出ない問題に時間を使っても、直前期にはもう間に合わないことが多いのです。
このタイプの子は、プリントを埋めた達成感だけが残り、過去問を解いたときに「結局、前と同じところで落とした」となりがちです。
直前期に「弱点を全部つぶす」はうまくいかない
ここで、逆方向の失敗も押さえておきます。弱点単元を片っ端から一から学び直そうとする方法です。
中学受験の教育家の中には、直前期に苦手単元を克服しようと頑張るご家庭は多いが、あまり実を結ばない、と指摘する人がいます。苦手単元は基本知識の確認にとどめて、あとは思い切って削る、という考え方です。別の解説でも、弱点ばかりに目が向いて、その対策ばかりやることが直前期にありがちな失敗として挙げられています。
つまり、やるべきは「弱点の克服」ではありません。「過去問で、取れたはずなのに落とした問題」だけを拾うことです。ここを分けないと、特化したつもりでも、ただ別の総復習をやることになります。
3つの失点に分けて考える
過去問を解いたら、間違えた問題を次の3つに分けます。
| 失点の種類 | 見分け方 | 直前期の扱い |
|---|---|---|
| 取れたはずの失点 | 解説を読めば「ああ、これか」と分かる。計算ミス、条件の読み落とし、公式の度忘れ | 最優先で潰す |
| 手前まで届いた失点 | 解き方の方針は合っていたが、途中で止まった | 同じ型の問題を数問だけ解く |
| 今から届かない失点 | 解説を読んでも考え方が思いつかない | 基本の確認だけして、深追いしない |
直前期に時間をかけるのは、上の2段です。いちばん下の段に冬休みを使い切ってしまうのが、いちばんもったいない使い方です。
過去問の失点を単元に落とす手順
仕分けた失点を、単元ごとに集計します。紙1枚で足ります。
手順1:過去問を時間どおりに解いて、失点を書き出す
志望校の過去問を、本番と同じ時間で解きます。採点は、点数よりも「どの大問のどの小問で落としたか」を記録するために行います。
手順2:失点を単元に変換する
落とした問題を、単元の名前に直します。「速さと比」「平面図形の面積」「記述の字数オーバー」「漢字の書き取り」というように、できるだけ小さな単位で書きます。「算数が弱い」では対策になりません。
手順3:直近3〜5年分で重なった単元に印をつける
1年分だけだと、たまたま落とした問題が混ざります。複数年で繰り返し出てくる単元は、その学校が好んで出す単元と、お子さんの穴が重なった場所です。ここが、冬休みに時間を割く場所です。
手順4:1つの単元につき「3〜5問」を上限にする
直前期は、1単元に深く潜る余裕がありません。同じ型の問題を3〜5問、解き直す程度に絞ります。解けたら次の単元に移ります。
冬休みの時間割を作る
冬期講習の日程は校舎や年度で異なり、年末年始は休講になることも多いので、細かい日付は塾から配られる案内で確認してください。四谷大塚では6年生向けに冬期講習のほか、正月特訓という講座が設けられていると紹介されています。ここでは、日程が決まった後に当てはめる、時間割の考え方だけを示します。
授業のある日の過ごし方
授業のある日は、授業で新しい発見があるか、「もう解ける内容か」をその場で見分けます。解ける内容の授業は、最低限の復習で済ませます。帰宅後の学習時間は、仕分けた失点の単元に回します。
| 時間帯 | 内容の例 |
|---|---|
| 朝 | 計算と漢字の短い反復(15〜20分) |
| 授業後 | 授業の「分からなかった問題」だけを1問見直す |
| 夜 | 手順3で印をつけた単元の演習(3〜5問) |
| 就寝前 | 暗記系(理科・社会の取りこぼし)の確認 |
授業のない日の過ごし方
授業のない日は、過去問を本番の時間割で解く日にあてます。午前に2教科、午後に2教科というように、本番の入試日と同じ並びで通すと、時間配分と集中力の持続も確認できます。冬休みの後半に最新年度の過去問を残しておき、本番さながらに解いた、という受験生の体験談もよく紹介されています。
塾を休むという選択肢をどう考えるか
総復習プリントの授業が、お子さんの過去問の失点とほとんど重ならないとき、「この授業の時間を過去問の弱点に使ったほうが得点につながるのでは」と考えるのは、不自然ではありません。ただし、判断を急ぐ前に確認しておきたいことがあります。
休む前に確認すること
- 在籍している校舎の決まり:四谷大塚では、季節講習は在籍生の参加が前提とされていると紹介されています。休める扱いになるかは、校舎によって異なるはずなので、事前に聞いてください
- 授業の中身:全日が総復習とは限りません。志望校別の演習や、直前期特有の確認事項が入る日もあります。案内の時間割を見て、休む日を選びます
- お子さんの気持ち:授業を休むと、クラスの友達と同じペースから外れる不安が出る子もいます。親が決めて伝えるより、数字を見せながら一緒に決めるほうが納得しやすくなります
休むのではなく「出ながら絞る」という手もある
全日を休む必要はありません。授業には出席して、授業の中で「自分に関係のある問題だけ」を丁寧に解き、残りは流す、という使い方もあります。この方法なら、塾との関係も崩れず、お子さんの不安も小さくなります。
大事なのは、休むか出るかではなく、「冬休みの1日あたりの勉強時間のうち、何時間を過去問の失点単元に使えているか」 です。その時間が足りていないなら、授業の出方を変える価値があります。
志望校の合格に向けた最後の調整
冬休みが終わったあとは、1月入試の学校と2月入試の学校で、残り日数が変わります。ここまでに作った「失点の単元リスト」は、そのまま直前期の最後まで使えます。
年明け以降のチェックポイント
- 新しい問題集を増やさない。リストにある単元だけを回す
- 過去問は「点数」より「前回落としたところを今回は落とさなかったか」で見る
- 睡眠と体調を最優先にする。夜遅くまでの勉強は、翌日の計算ミスを増やすだけです
- 解ける問題が8割ほど丸になっている状態で本番に入れるイメージを持つ
直前期は、できない問題を増やさないことが、点を守ることにつながります。
教科ごとの「取れたはずの失点」の拾い方
失点の仕分けは、教科によって見るところが少し違います。
算数
計算ミス、条件の読み落とし、単位の書き忘れが中心です。途中式を残す癖がない子は、どこで間違えたかが自分でも分からなくなります。解き直しでは、答えだけでなく途中式を書き、間違えた行に印をつけます。同じ種類の間違いが3回出たら、それがその子のクセです。
国語
記述問題の失点は、内容の誤りよりも、設問の条件を落としていることが多くあります。「理由を答えなさい」なのに「〜こと」で終えていた、字数指定の8割に届いていなかった、という失点です。これは新しい知識がなくても、見直しの型を作れば直せます。漢字と語句の取りこぼしも、「取れたはずの失点」に入れてください。
理科・社会
知識の抜けは、単元名ではなく用語単位で拾います。過去問で落とした用語だけを紙に書き出し、毎朝5分で声に出して確認します。教科書や総復習プリントを最初から読み直すより、はるかに早く済みます。
まず自分たちでやる最小の手順と、続かない場合のこと
ここまでの内容は、特別な教材なしで、今週中に始められます。最小の形は次のとおりです。
- 志望校の過去問の直近3年分を、時間を計って解く
- 間違えた問題を3つの失点(取れたはずの失点・手前まで届いた失点・今から届かない失点)に仕分ける
- 上の2種類だけを単元名にして、紙1枚に書き出す
- 冬休みの学習時間のうち半分を、その単元に当てる
これで、総復習の授業と自宅学習の役割が分かれます。
ただ、現実には、過去問の採点と仕分けだけで、親の夜の時間がかなり削られます。単元への変換は、解説を読み込んでも判断に迷う場面が出ます。仕事や下の子の世話と並行して、直前期の3か月間、毎週この作業を続けるのは簡単ではありません。
そういう家庭では、失点の仕分けと単元リストの更新だけを外に出す方法もあります。たとえば、四谷大塚のテキストや志望校の傾向を把握している家庭教師に、仕分けと演習の選び方を任せ、親は声かけと体調管理に専念する形です。すべてを任せる必要はなく、「仕分けだけ」「週1回の見直しだけ」といった頼み方もできます。自分たちだけで回せているうちは、無理に頼らなくて構いません。
※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています





