早稲アカ上位校への算数は難しい。SA・SB生が陥る基礎の穴

早稲アカで上位校向けの算数が解けないのは、子どもの力が足りないからではありません。基礎の穴が残ったまま、その上に難問を積む進め方になっているからです。偏差値が50を下回るあたりの層にとって、上位校向けの問題は解説を読んでも意味が取れない暗号のようなものになります。そこに時間を使うほど、基礎はさらに痩せていきます。この記事の結論は一つです。難問には手を出さず、予習シリーズの例題を何度も反復する基礎回帰に切り替えます。

早稲アカ算数でSA・SBの子が最初に詰まる場所

早稲アカは四谷大塚の予習シリーズを主な教材として使い、そこに塾のオリジナル教材を組み合わせる形で進みます。小4・小5では隔週のカリキュラムテストと、5週に1回の組分けテストがあり、結果でクラスが動きます。

予習シリーズの算数は進度が速く、難度の高い問題も多く含まれると、塾選びの解説ではよく指摘されます。しかも同じ単元に二度目に出会うときは、一度目より応用の内容になる作りです。一度目の理解があいまいなまま次に進むと、二度目は「知らない問題」として現れます。

たとえば小5のSBクラスで、割合と比の単元を「授業では分かったつもり」で通り過ぎた子がいるとします。次に速さと比の融合問題が出ると、式を立てる前の「何を1とするか」で止まってしまいます。これは難問が解けないのではなく、前の単元の入り口が抜けているだけです。

「分からない」の中身を二つに分ける

算数でつまずいたとき、原因は大きく二つに分かれます。

つまずきの種類 子どもの様子 親が確認できること
基礎の穴 例題の解説を読めば「なるほど」と言える。でも類題で手が止まる 例題を白紙から自力で再現できるか
応用の壁 例題は再現できる。応用題で「何をすればいいか」が見えない 例題の再現が安定してから初めて問題になる

SA・SBで悩む家庭の多くは、前者を後者だと思い込んでいます。上位校向けの問題が解けないのは応用の壁に見えますが、実際は例題の再現が安定していない段階であることがよくあります。

上位校向けの算数は、なぜ暗号に見えるのか

上位校向けの難問は、複数の基本解法を一度に使う前提で作られています。たとえば図形の問題なら、補助線の引き方、相似、面積比を続けて使います。どれか一つでも道具として手に入っていなければ、解説の一行目から読めません。

解説が読めない状態で何十分も考えると、子どもは「自分は算数ができない」と受け取ってしまいます。実際は道具が足りないだけなのに、その区別がつかないまま自信だけが削られていきます。

難問に時間を割くと起きること

よくあるパターンを挙げます。

  • 宿題の難問に40分かけて、答えを写して終わる
  • 写した解き方を、翌週のテストで再現できない
  • 例題や基本問題の復習に回す時間がなくなる
  • テストで基本問題を落とし、クラス内の順位がまた下がる

この流れは、親がどれだけ丁寧に見ていても起きます。塾のカリキュラムが上位層に合わせた速度で進むため、基礎の定着を待ってくれないという構造の問題です。家庭の努力不足ではありません。

手を出さない問題を先に決める

基礎回帰で最初にやることは、足す作業ではなく、やらない問題を決める作業です。

宿題とテキストの仕分け

早稲アカの宿題は量が多く、全部を同じ重さで扱うと破綻します。算数では次のように仕分けます。

問題の種類 扱い方
予習シリーズの例題 必ずやる。反復の中心にする
予習シリーズの基本問題 例題が再現できたら解く
練習問題の標準的なもの 時間が余った週だけ
星や発展の印がついた難問 当面やらない。解説も読まない
上位校向けの応用問題 手をつけない。丸ごと保留

「解説も読まない」のは乱暴に見えるかもしれません。ただ、道具が揃っていない状態で読んでも、理解は残りません。読む時間を例題の反復に回すほうが、翌月のテストにつながります。

保留した問題は捨てるわけではありません。例題が安定して再現できるようになった時点で、一番易しいものから戻ります。

塾の先生に伝える一言

宿題の一部を飛ばすことに、後ろめたさを感じる家庭は多いです。そういうときは、先生に「今は例題と基本問題に絞って取り組みたい」と短く伝えれば十分です。理由まで長く説明する必要はありません。校舎や先生によって反応は違いますが、基礎に絞る相談自体は珍しいものではありません。

例題を反復するやり方

基礎回帰の核になるのが、予習シリーズの例題を繰り返し解く作業です。ただ眺めたり、解説を読み直したりするのとは違います。

一つの例題を3回転させる

1回目は、解説を見ながら解きます。式の一行ごとに「なぜこの式か」を子どもが口で言えるかを確かめます。親が説明する必要はありません。言えなければ、その部分に印をつけます。

2回目は、翌日か2日後に、解説を閉じて白紙のノートに解き直します。止まったところが穴の場所です。印をつけて、解説の該当箇所だけを読み直します。

3回目は、週末にもう一度、白紙から解きます。ここで通れば、その例題は卒業です。通らなければ、また次の週に回します。

回 解説 時期 見るポイント
1回目 見ながら 授業後すぐ 一行ごとに理由を言えるか
2回目 閉じる 1〜2日後 どこで止まるか
3回目 閉じる 週末 最後まで通るか

一度に進める例題は、1週間で3〜5題程度に絞ります。数を増やすより、同じ題を白紙から再現できる回数を増やすほうが、あとで効いてきます。

例題が解けるのに点が取れないとき

例題は再現できるのに、テストでは落とす子もいます。その場合は、数字や設定が変わると手が止まるタイプです。例題の数字を親が変えて、同じ型の問題を一題だけ作って解かせます。作るのが難しければ、予習シリーズの基本問題の中から、同じ型を探してください。

ここで大切なのは、新しい問題集を買い足さないことです。教材が増えると、また管理の負担が増えて、反復が回らなくなります。

1週間の回し方の例

塾の授業と宿題がある中で、算数の反復に使える時間は限られます。平日に長い時間は取れないので、1回15〜20分の短い枠を三つ作る形にします。

曜日 算数でやること 時間の目安
授業の翌日 例題の2回目(解説を閉じて白紙で) 20分
平日の中日 基本問題から、同じ型を2〜3問 15分
週末 例題の3回目と、通らなかった題の解説の読み直し 30分

宿題の算数が重い週は、中日の枠を丸ごと削ってかまいません。例題の2回目と3回目さえ守れれば、基礎回帰の形は崩れません。反対に、枠が空いたからといって難問を足すのはやめておきます。足すなら、前の週に通らなかった例題の再挑戦です。

難問に戻ってよい目安

難問をずっと封印するわけではありません。戻る目安は、直近の2回のテストで、基本問題の失点がほとんど出なくなったときです。そのうえで、保留にしていた問題のうち、いちばん易しい一題だけを解説付きで読んでみます。読んで筋が追えるなら、一題ずつ戻します。やはり暗号のままなら、もう少し例題の反復を続けます。

戻るかどうかを決めるのは、塾の進度でも、周りの子の様子でもありません。子ども自身が白紙から再現できる例題の数です。

周りの子と比べて焦ったとき

SAやSBのクラスでは、同じ教室に上位校向けの問題を平然と解く子がいます。その様子を聞いた子どもは、自分だけが取り残されたと感じやすくなります。ここで親が焦って難問に手を伸ばすと、基礎回帰の効果が出る前に元の状態へ戻ってしまいます。

子どもには、「今は土台を作る時期で、難しい問題はあとで戻る」と、順番の話として伝えます。できないことの話ではなく、順番の話にしておくと、子どもが自分を責めずに済みます。

親がやるのは「見る」ことと「やめさせる」こと

基礎回帰のあいだ、親が解き方を教える必要はありません。むしろ教えないほうがうまくいきます。親の説明は、子どもが自力で再現するまでの道のりを短くしてしまい、穴の場所が見えなくなるからです。

親の役割は二つだけです。

  • 白紙で解いているとき、止まった場所に印をつける
  • 時間が過ぎたら、解けていなくても切り上げさせる

1題に使う時間は、15分を上限にします。15分で動かなければ、その日はそこで止めて、翌日に回します。粘らせるほど身につくわけではありません。

解説を読んで「分かった」と言うときの確かめ方

子どもが解説を読んで「分かった」と言っても、そのまま信じて先へ進まないでください。分かったつもりは、算数でいちばん多い落とし穴です。確かめ方は簡単で、解説を伏せて、最初の一行だけを書かせます。最初の一行が書ければ、あとは流れで続くことが多いです。最初の一行が出てこないなら、その例題はまだ自分のものになっていません。

最初の一行とは、たとえば「全体を1とおく」「まず単位をそろえる」「図に等しい長さを書き込む」といった、解き始めの動作です。計算の途中ではなく、始め方が言えるかどうかを見ます。

テスト直後の見直し方

カリキュラムテストや組分けテストが返ってきたら、全問を直そうとしないでください。見るのは、基本問題で落とした問題だけです。基本問題を一つ落としたら、その単元の例題に戻ります。応用問題の失点は、今は数えません。

まず自分たちでここまで。それでも回らない家庭へ

今週からできる最小の実行手順は、次のとおりです。

  1. 今週の予習シリーズから、例題を3題選ぶ
  2. 難問と応用問題は、宿題の中で「保留」と決めて鉛筆で印をつける
  3. 例題を、翌日と週末の2回、白紙から解き直す
  4. 15分で動かない問題は、その日は止める

まずはこの4つを2〜3週間続けて、例題の再現がどのくらい安定するかを見てください。

それでも、塾の宿題の取捨選択を毎週決めて、例題の再現を見て、反復の日程を組むことまで親が担うのは、仕事や下の子の世話がある家庭にはかなりの負担になります。その部分だけを外に出して、塾の教材に合わせて取捨選択と反復の管理を代わりに見てくれる人を探す、という選択肢もあります。全部を任せる必要はなく、「今週どの例題を回すか」を決める役だけ外に頼む形でも成り立ちます。

※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています