クラスが下がった日の夜、親が一番やりがちなのは「宿題を増やして取り返す」ことです。けれど、SBからSAに移った子に足りないのは量ではなく、土台のどこかに空いた小さな穴であることが多く、そこに量を足すと穴の上に積み木を重ねる形になります。
この記事では、クラス落ちのショックをいったん「基礎に専念できる時間が手に入った」と読み替えて、空いた時間を計算と漢字に回す進め方をお伝えします。お子さんの力不足を指摘する話ではありません。小5の後期は一度に学ぶ量が増える時期で、ここで順位表が動くのは構造上ごく自然なことです。
早稲アカ小5でSBからSAに下がった直後、最初の3日間にやらないこと
結果が出た当日は、親のほうが動揺しています。その動揺は、思っている以上に子どもに伝わります。
最初の3日間は、次の3つだけ避けてください。
- 「なんで下がったの」と原因を聞き出す
- 下がったクラスの宿題に加えて、前のクラスの宿題もやらせる
- 前のクラスの友達や、他の家庭の様子を比べて口にする
子どもは、下がったことを親より先に、そして深く分かっています。そこに理由の説明を求めると、本人は「責められている」としか受け取れません。
たとえば5年生の男の子で、テストの返却日に黙って帰ってきて、夕食もあまり食べないというケースがよくあります。このタイプの子は、親が何も言わなくても、自分で自分を責め続けています。この時期に必要なのは分析ではなく、「ここからやり直せる」と伝わる安心です。
まず一言、こう声をかけてみてください。「クラスは変わったけど、やることがはっきりしたね。一緒に作戦を立てよう」。叱らないという約束を、最初に言葉にしておくだけで、その後の話し合いがずいぶん楽になります。
SAでは何が変わるのか。公式に確認できる範囲で整理する
早稲田アカデミーの公式サイトによると、小5のSコース(中学受験)は、1年を前期(2月〜7月)と後期(9月〜1月)に分けて進みます。各期は約20回の授業で、5回ごとに総合の回があります。カリキュラムテストは隔週の土曜日に実施され、学力別の問題が用意されていて、同じ到達度の生徒同士で競い合う形式だと案内されています。
ここから分かるのは、クラスが変わっても、学ぶ単元そのものは同じ流れで進むということです。後期の算数は、比の利用、相似、平面図形と比、速さと比、仕事の問題などが並びます。国語は表現技法、詩・短歌・俳句、手紙文、故事成語、読解の総復習です。
一方で、クラスごとの具体的な授業の進め方や、クラスが上下する基準点、昇降のタイミングは、公式サイトのこのページには書かれていません。校舎によって運用が違うこともあり得ますので、ここは担当の先生に直接聞くのが確実です。聞くときは、次の3点にしぼってください。
| 先生に聞くこと | 聞く理由 |
|---|---|
| 次にクラスが入れ替わる機会はいつか | 目標の日を決められる |
| 今回の落ち込みは、どの単元・どの種類の問題か | 直す場所がはっきりする |
| SAの授業で、最低限押さえてほしい範囲はどこか | 宿題の優先順位が決まる |
「どうすれば戻れますか」と聞くより、「次の一か月で何を直せばいいですか」と聞くほうが、具体的な答えが返ってきやすくなります。
応用問題から解放された時間を、どこに使うか
SBでは追いかけていた応用問題に、SAでは全力を注がなくてよい場面が出てきます。ここを「楽になった」ではなく「基礎に使える時間ができた」と考えてください。
使い道は、計算と漢字の2つに絞ります。理由は単純で、この2つは小5の全科目の得点の下支えになるからです。算数は、考え方が合っていても、途中の計算ミスで点を落とします。国語は、漢字と語句が取れていないと、読解以前のところで差がつきます。社会や理科の記述でも、漢字で書けるかどうかで点が変わります。
1日に使う時間の目安を、表にしておきます。
| 内容 | 時間 | やり方 |
|---|---|---|
| 計算 | 15分 | 同じ型を毎日。タイマーで時間を測る |
| 漢字 | 10分 | 間違えた字だけを書く |
| ミスのノート確認 | 5分 | 週末にまとめて見返す |
合計30分です。これを、塾の宿題が終わってからではなく、宿題の前に置いてください。宿題のあとに回すと、疲れた日に真っ先に削られます。
計算を極めるとは、速さではなく「ミスの型」を知ること
計算を極める、というと、速く解く練習を想像しがちです。ここで目指すのは、速さの前に、自分がどんなミスをするかを知ることです。
計算ミスには、よくある型があります。
- 繰り上がり・繰り下がりの書き忘れ
- 分数の約分のし忘れ、通分の取り違え
- 小数点の位置のずれ
- 写し間違い(途中で数字を書き写すときの見間違い)
- かっこの外し方、符号の取り違え
毎日の計算で、間違えた問題に「どの型か」を一言書き添えます。たとえば「写し間違い」「約分忘れ」といった具合です。1週間たつと、同じ型が何度も出てくることに気づきます。そこが、その子の穴です。
穴が見えたら、次の3つの習慣で埋めていきます。
- 途中式を消さずに残す。後で見返せるようにする
- 答えを出したあと、10秒だけ見直す。全問ではなく、自分の苦手な型だけ見る
- 式を縦に揃えて書く。ノートの罫線に沿って、数字の位置をそろえる
速さを上げるのは、ミスの型が減ってからで十分です。順番を逆にすると、速く間違える子になります。
漢字を極めるとは、書ける字を増やすより「落とす字」を減らすこと
漢字も同じです。新しい字を次々に覚えるより、一度間違えた字を二度と落とさないことに集中します。
進め方はこうです。
- 塾のテストや宿題で間違えた字を、専用のノートに1行ずつ書き出す
- 翌日、その字だけをもう一度書く
- 3日後、1週間後に、同じ字をもう一度書く
- 3回続けて書けた字は、ノートの印を消す
覚える量を増やさず、「間違えた字を繰り返し確認する」仕組みにすると、10分で十分に回ります。
書き取りの途中で止まる子には、字を声に出しながら書く方法も合います。「へん」と「つくり」を口に出すだけで、部品の取り違えが減ります。
語句(慣用句、ことわざ、故事成語)も、同じノートに混ぜて構いません。小5の国語には、慣用句やことわざ、後期には故事成語が出てきます。意味を一行で書き、例文を一つ作ると、記述の場面でも使える知識になります。
クラス落ちした子に、親がかけたい言葉と、控えたい言葉
声かけは、小さな言葉選びで受け取られ方が大きく変わります。
| 控えたい言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 「どうして下がったの」 | 「今回、一番むずかしかったのはどこだった?」 |
| 「次は絶対に戻ろうね」 | 「次のテストで、計算ミスを2個減らしてみよう」 |
| 「SBの子はもっとやってるよ」 | 「昨日より、今日のほうが丁寧に書けているね」 |
| 「やる気がないんじゃない?」 | 「今日は何分なら集中できそう?」 |
目標は、クラスという他人との比較ではなく、昨日の自分との比較に置きます。「ミスの数を減らす」「漢字の落とし字をゼロにする」といった、本人が自分の力で動かせる目標が向いています。
目標が小さいことを心配する必要はありません。基礎の穴は、小さな成功の積み重ねで埋まっていきます。
後期の単元で、基礎の穴がどこに響くか
小5後期の算数には、比の利用、相似、速さと比、仕事の問題が並びます。どれも、分数や割合の計算が安定していて初めて、考え方の部分に集中できる単元です。
たとえば相似の問題では、比を作るところまでは合っているのに、約分や通分でつまずいて答えがずれる、というケースがよくあります。このタイプの子は、理解が足りないのではなく、計算の途中で自信をなくして、そこから手が止まっています。計算が安定すると、同じ問題でも考える余裕が生まれます。
国語も同じです。後期の詩・短歌・俳句や手紙文は、問われる知識が漢字と語句に直結します。読解が得意な子でも、書き取りで落とした数点が積み重なり、クラスの境目で響きます。基礎の30分は、後期の授業の消化を後ろから支える時間です。
1週間の回し方は、次のように決めておくと迷いません。
| 曜日 | 基礎の30分の中心 |
|---|---|
| 月・火 | 計算(分数・小数の混ざった型) |
| 水・木 | 漢字ノートの確認と語句 |
| 金 | カリテ前の計算の見直し |
| 土 | カリキュラムテスト(隔週)。終わったらミスの型を数える |
| 日 | ミスのノートを見返す。やらない日があってもよい |
週に1日は「何もしない日」を残してください。毎日を埋め切る計画は、2週間ももちません。
クラスを戻すより先に、見ておきたい数字
クラスは、結果として動くものです。追いかける順番としては、クラスより先に次の数字を見てください。
- カリキュラムテストの基礎問題(計算や小問)の取りこぼし数
- 見直しで直せたはずのミスの数
- 漢字・語句問題の失点
この3つは、勉強のやり方を変えれば、短期間でも動きやすい数字です。応用問題の得点は、考え方が身につくまで時間がかかりますが、基礎問題の取りこぼしは、習慣で減らせます。
テストが返ってきたら、点数と偏差値は見ずに、まずこの3つを数えてください。数字が減っていれば、方向は合っています。クラスの上下は、その後についてきます。
まず自分たちで続けてみる30分と、続かない家庭の選択肢
今日からできる最小の形は、次のとおりです。
- 今夜、「叱らない」という約束を一言伝える
- 明日から、宿題の前に計算15分、漢字10分、ミス確認5分を置く
- 間違えた問題に「ミスの型」を書き添える
- 2週間続けて、型の偏りを親子で眺める
まずはここまでを、ご家庭だけで回してみてください。特別な教材は要りません。塾のテキストと、ノート1冊で足ります。
ただ、共働きで夕方以降に時間が取れない、丸つけとミスの分類まで手が回らない、という家庭もあります。毎日の確認を親が一人で担い続けるのは、思っている以上に重い仕事です。その場合は、ミスの分類や漢字ノートの管理といった一部だけを、第三者に外へ出す方法もあります。全部を任せる必要はなく、「ここだけは見てもらう」という使い方で十分です。
クラスが下がった今の時期は、土台を作り直すのに向いた時期でもあります。応用に追われていた時間を、基礎に回せるのは今だけです。
※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています





