D判定の紙を前にして、親が最初に決めるべきことは「志望校を下げるかどうか」ではありません。判定は、いまの得点が受験者全体の中でどの位置かを示すものです。その学校の問題との相性までは映していません。
四谷大塚の合不合判定テストは、小6向けの公開模擬テストで、年に6回あります。第5回は11月15日の予定です。判定は受験者全体の学力と志望校の入試動向をもとに出るため、どの学校にも同じ物差しが当てられます。ところが入試本番は、学校ごとに問題の形がまったく違います。
この記事では、D判定が出た学校の過去問との相性を、親子で客観的に分析する手順をお伝えします。相性が良ければ特化対策で届く可能性があり、悪ければ別の道を早めに考えられます。どちらに転んでも、10月のいま判断できるのは大きな収穫です。
四谷大塚小6のD判定は「相性」までは見ていない
志望校判定の結果表は、四科目の合計点から出た偏差値を、学校ごとの基準と照らし合わせて作られています。つまり、判定が測っているのは「四科目をまんべんなく解く力」です。
一方、学校の入試は、その学校だけの出題スタイルです。たとえば次のような違いがあります。
- 記述式の解答が多く、部分点で差がつく学校
- 計算力と処理スピードで勝負が決まる学校
- 理科や社会で、資料の読み取りや時事を長い文で問う学校
- 算数が1科目だけ難しく、他教科は標準的な学校
模試は、全員が同じ問題を解きます。そのため、記述が得意な子は記述重視の学校で判定より実力が出やすく、反対に計算が速い子は、記述の多い学校で判定ほど点が伸びないことがあります。D判定の中身は、一枚岩ではありません。
よくある典型例を挙げます。6年生の女の子で、算数の大問1・2は安定して取れるのに、国語の記述で毎回白紙に近くなる子がいます。この子が記述の配点が高い学校を受けるなら、D判定は実態より厳しく出ている可能性は低く、むしろ対策の優先順位がはっきりします。逆に、記述がほとんどなく、知識と計算で決まる学校を受けるなら、同じD判定でも見え方が変わります。
だから最初に、D判定の学校の過去問を見て、自分の子の得点パターンと重なるかを確かめます。次の章から、その手順を順に説明します。
手順1:過去問3年分で「配点の中身」を表にする
分析には、特別な道具は要りません。志望校の過去問を3年分用意して、A4の紙1枚に表を作ります。作る相手は子どもではなく、親です。子どもには結果だけを伝えます。
まず、教科ごとに次の項目を埋めます。
| 見る項目 | 調べ方 |
|---|---|
| 記述・論述の割合 | 問題用紙の大問を数え、文章で答える設問が何点分あるかを足す |
| 算数の大問構成 | 計算・一行問題が何問、図形・場合の数・規則性がそれぞれ何問か |
| 理科・社会の出題形式 | 記号選択、用語、短文記述、資料読み取りの比率 |
| 制限時間と問題量 | 1問あたり使える分数の目安を出す |
| 合格者平均点との差 | 学校が公表している場合のみ。公表がなければ空欄でよい |
配点が公表されていない学校は多くあります。その場合は、配点を推測せず、設問の数と形式だけを数えてください。「記述が3問ある」という事実だけでも、分析には十分です。
3年分を並べると、その学校の出題の「クセ」が見えてきます。毎年同じ分野が出るのか、毎年形式が変わるのか。ここが分かるだけで、残り期間に何を捨てて何を残すかが決まります。
手順2:子どもの模試の答案を、同じ項目で見直す
次に、直近の合不合判定テストの答案を、同じ分類で見直します。見るのは偏差値ではなく、失点の中身です。
失点を3種類に分ける
答案の×を、次の3つに色分けします。
- ケアレスミス:計算の写し間違い、単位忘れ、問題文の読み落とし
- 形式の失点:記述が書けなかった、途中式の書き方で減点された、作図が間に合わなかった
- 理解の失点:そもそも解き方が分からなかった、知識が抜けていた
志望校の過去問が記述中心なら、2の「形式の失点」が多い子は、相性が悪く見えて、実は伸びしろが大きい子です。形式は練習で変わるからです。反対に、志望校が難問で差がつく学校なのに、3の「理解の失点」が全科目に散らばっているなら、残り3か月で埋めるには、範囲を絞る必要があります。
ここで注意してほしいのは、子どもを責める材料にしないことです。この表は、子どもの能力を測るものではなく、模試と学校の出題形式の「ずれ」を見つけるための道具です。ずれは、構造の問題であって、子どもの欠点ではありません。
手順3:相性を3段階で判定する
過去問の表と答案の分析がそろったら、相性を3段階で見ます。感覚で決めると揺れるので、次の基準を使ってください。
| 相性 | 目安 | 次の動き |
|---|---|---|
| 良い | 学校の出題形式に近い設問で、すでに半分以上取れている。失点が形式やミスに偏っている | 特化対策に切り替える |
| 普通 | 取れる設問と取れない設問が半々。理解の失点が一部の分野に集中している | 分野を絞って対策し、併願校も並行して考える |
| 悪い | 出題の中心となる形式で、ほとんど点が取れていない。理解の失点が広範囲 | 併願校の組み方を見直す。志望順位の再検討も選択肢に入れる |
もちろん、「悪い」と出たからといって、受験をやめる必要はありません。第一志望のまま挑戦する家庭も多くあります。ただ、その場合は「相性が悪いことを知ったうえで、特化対策に残り期間を使う」と決めて進めるのと、知らずに進めるのとでは、最後の1か月の落ち着きが大きく違います。
相性が良かったときの特化対策
「良い」と出たら、残りの期間を志望校に寄せていきます。四谷大塚のカリキュラムは全体を広くカバーする設計なので、6年の秋からは、そこに特化の層を重ねる発想が必要になります。
過去問は「解く」より「型を盗む」
過去問を解いて点数を出すだけだと、時間が足りなくなります。3年分を一度解いたら、2周目は点数ではなく、解答の型を覚える練習に変えます。
- 記述なら、模範解答を1文ずつ分解し、「理由→結論」の順に書く型を自分の言葉で書き直す
- 算数なら、合格者が必ず取る大問を決め、そこだけは時間を測って確実に取り切る
- 理科・社会なら、毎年出る分野の用語と、資料の読み取りパターンをノートにまとめる
記述が苦手な子が多い一方で、記述は最も短期間で伸びやすい部分でもあります。完璧な文章を目指さず、採点者が見る要素(キーワード、因果のつながり)が入っているかだけを確認する練習を、1日1問から始めるのが現実的です。
週のスケジュールを、志望校仕様に組み替える
塾の宿題と授業で、平日の時間はほぼ埋まっているはずです。そこで、新しい学習を足すのではなく、置き換えを考えます。
| 曜日 | 通常の動き | 志望校特化への置き換え例 |
|---|---|---|
| 平日の夜(2日) | 塾のテキストの復習 | 過去問の同じ大問型を、時間を測って1問ずつ |
| 土曜 | 塾の宿題 | 過去問1年分を本番の時間で解く |
| 日曜 | 模試・テスト直し | 失点の3分類を見直し、次週の1点を決める |
全部を置き換える必要はありません。1週間のうち2〜3コマを置き換えるだけでも、10月から12月までの積み重ねは大きくなります。
相性が悪かったときに親ができること
相性が悪いと出ても、それは落ちる宣告ではありません。「いまのままでは届きにくい」という地図が手に入った、ということです。
選択肢は主に3つです。
- 挑戦校のまま、配点の高い部分に絞って対策する。 全部を取ろうとせず、取れる問題を確実に取る練習に切り替えます。
- 第一志望のまま、併願校の組み方で安全度を確保する。 試験日をずらして、相性の良い学校を押さえます。
- 志望順位を入れ替える。 志望校を下げるのではなく、相性の良い学校を上に置く考え方です。
どれを選ぶかは、家庭の価値観で決まります。ただ、判断の材料が「判定の色」だけから、「過去問との相性」を含む形に変わると、家族の話し合いが落ち着いて進みます。判定の色だけを見て話すと、「下げる?下げない?」の二択になりがちで、親子の空気も重くなります。
11月15日の第5回までに、親子でやること
第5回合不合判定テストは、11月15日の予定です。これまでの内容を、期日に落とし込むと次の流れになります。
- 今週中:志望校の過去問3年分を表にする(親の作業、1〜2時間)
- 来週:直近の模試答案を3分類に色分けする(親の作業、1時間)
- その次の週:相性を3段階で決め、子どもに「ここを取りに行こう」と1つだけ伝える
- 第5回の前日まで:志望校の形式に近い設問を週に数問、時間を測って解く
第5回では、判定の色が変わるかどうかより、「相性分析で決めた部分が取れたか」を見てください。偏差値は数回で大きく動かなくても、取りに行った設問が取れているなら、対策は正しい方向に進んでいます。
なお、判定の細かい基準(各判定が何%の合格可能性にあたるか等)は年度や案内資料で表記が変わることがあります。お手元の結果表の説明と、四谷大塚の公式サイトで確認してください。
分析と特化対策を、どこまで家庭で回すか
ここまでの手順は、すべて家庭だけで実行できます。まず、今夜は志望校の過去問のうち1年分だけを広げて、記述の設問がいくつあるかを数えてみてください。それが分析の第一歩です。
ただ、この作業は、実際にやってみると想像以上に重いものです。3年分の表づくり、答案の色分け、相性の判定、週の組み替え、さらに模試ごとの見直しを、仕事や家事の合間に続けることになります。相性が良いと分かっても、特化対策の問題選びと添削に手が回らなくなる家庭は珍しくありません。
そういう場合は、分析や添削の一部を外に出す手もあります。過去問の傾向を見て、残り期間にやる範囲を切り分ける作業は、外部の目が入るとぐっと楽になります。すべてを任せる必要はなく、「ここだけ見てもらう」という使い方でも十分です。続けられる形を選ぶのが、最後まで走り切るための現実的な工夫です。
※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています





