SAPIX小6有名中の指示がこなせない。過去問の取捨選択と優先順位

有名中の指示を一つも落とさずにこなそうとするほど、家庭は先に潰れます。問題は子どもの根性でも親の段取りでもなく、全員に同じ量の課題が渡される集団塾の仕組みのほうにあります。

SAPIX小6の秋は、夏の有名中が終わり、志望校の過去問が本格的に始まる時期です。机の上には分厚い問題集が積み上がり、校舎からは次々に指示が出ます。偏差値40台や下位クラスの子ほど、これを全部やる前提で組むと、基礎の復習と睡眠が先に削れます。

この記事で扱うのは、「どの学校の過去問をやるか」を決める作業です。やることを増やす話ではありません。減らす基準を先に決めてしまう話をします。

有名中と過去問の指示が重くなる仕組み

まず、何が重いのかを分けて考えます。

SAPIXでは、夏休みに有名中の入試問題集に取り組み、9月以降に志望校の過去問へ移る、という流れで進めている家庭が多いようです。保護者のブログでも、有名中は志望校の過去問に向けた前哨戦で、問題形式に慣れることが目的であり、得点は二の次という受け止め方が紹介されています。夏期講習の復習と並行して進める指示が出た、という体験談もあります。

ここで落とし穴になるのが、「前哨戦」の位置づけが家庭に伝わらないまま、全校分を本番と同じ熱量で解いてしまうことです。校舎の指示や配られる教材の範囲は、校舎や年度で違います。細かい運用はお通いの校舎に確認してください。ただ、どの校舎でも共通する構造があります。

  • 指示は、クラス全体を想定した量で出る
  • 志望校が違う子にも、同じ素材が回ってくる
  • 一つ一つの課題は「やったほうがいい」ものなので、親が自分で捨てにくい

捨てにくい理由は単純で、どれも間違っていないからです。間違っていない課題を、自分の子の志望校と時間に照らして仕分けるのは、塾には構造上できません。この仕分けは、家庭側の仕事になります。

典型的なつまずき方

たとえば6年生の男の子で、第一志望は中堅校、併願が3校という家庭があるとします。有名中の問題集に出てくる難関校の記述問題を、毎週きちんと解いて丸付けまでやっている。ところが志望校の出題形式とはまるで違い、解き直しに時間がかかるだけで、本番の得点には結びつきません。こういうパターンは珍しくありません。

頑張りの量は足りています。方向が志望校とずれているだけです。

過去問の優先順位は「志望校との距離」で決める

優先順位をつける軸は一つにします。その学校の入試問題が、子どもの得点に直結するかどうかです。

教育メディアの解説でも、小6の秋は基礎の穴を埋めつつ、第一志望の過去問対策を軸にして、併願校対策は必要な範囲に絞るのが基本だとされています。全校を同じ熱量でやると時間が分散する、という指摘もあります。この考え方を、家庭で使える形に落とします。

区分 位置づけ 取り組み方の目安
第一志望校 軸になる学校 年数を多めに。解き直しまでやる
傾向が似ている併願校 第一志望の対策が流用できる 数年分。第一志望と同じ解き直しの型で
傾向が違う併願校 合格圏内の「抑え」 少なめ。形式の確認と時間配分が中心
有名中にある傾向が合わない学校 志望校に入っていない 原則やらない。形式慣れの素材としてだけ使う

年数の目安としては、第一志望は5年から10年分、併願校は1〜3年分という書き方をしている記事が多く見られます。ただしこれは一般論です。基礎が固まっていない時期に10年分を回す必要はなく、まず3年分を丁寧に解き直すほうが、得点に変わりやすいことが多いです。

併願校の選び方も、弾く作業の一部です

併願校は増やすほど、過去問も傾向分析も時間が足りなくなります。解説では、併願校は第一志望と入試問題の傾向が似ている学校を選ぶ、チャレンジ校は第一志望だけにして、第二志望以降は合格圏内の学校にする、という考え方が紹介されています。

つまり、傾向が似た学校に絞れば、一つの対策が複数の学校に効きます。逆に、傾向がばらばらの学校を並べると、対策も学校の数だけ必要になります。受験日程の相談も含めて、校舎の面談で聞いてかまいません。

傾向に合わない学校を弾く3つの確認

志望校が決まっていても、「この学校の過去問は今やるべきか」で迷う場面は続きます。迷ったら、次の3つを順に見ます。

  1. その学校を受ける可能性は、いま何割あるか。 受験する見込みがほぼない学校は、今月の予定から外します。
  2. 出題の形が、第一志望と近いか遠いか。 記述中心か、記号中心か。算数は大問の数と解法の自由度。国語は説明文の長さ。理社は知識か思考か。ここだけで十分です。
  3. いまの得点源の科目と、重なるか。 社会や理科で稼ぐ子に、社会の出題が薄い学校の過去問を大量に回しても効果は薄いです。

三つのうち二つが「遠い」なら、後回しです。やらないと決めるのではなく、「12月以降に回す」と書いておけば、親も気持ちが楽になります。

子どもに説明するときの言い方

「やらなくていい」と言うと、サボらせたような気持ちになる家庭があります。その場合は、「この学校は、いまは赤ペンで確認する日にしよう」というように、役割を変えて話すとうまくいくことが多いです。子どもにとっても、やることが明確になるほうが安心できます。

解き直しを残して、解く量を減らす

過去問は、解いた量より解き直しの質で結果が決まります。ここを削ると、量をこなしただけで終わります。

教育記事でも、あと少しで解けた問題から優先して復習するのが効率的だとされています。これを一週間の型にします。

曜日 やること 目安
平日 基礎の復習、間違えた単元の確認 通常の課題を優先
土曜午前 第一志望の過去問1回分(時間を計る) 本番と同じ時間配分で
日曜 前日の解き直し。「あと少し」の問題から 解き直しは解いた時間の同じ長さをかける
月曜 合否ラインとの差を確認し、次の1週間の方針を決める 15〜20分

校舎によっては、1月以降は過去問を追加しないように指示が出る、という体験談もあります。冬に向けては、過去問を増やすより、解き直しを固める方向に切り替わる流れがあるようです。10月、11月に全校を回し切る必要はありません。

点数の見方も絞る

過去問の点数を見て落ち込む親子は多いです。ただ、本番の合格ラインは、受験者平均前後という解説が多く、満点を目指すものではありません。まず合格者最低点を確認し、その差を埋める科目を一つ決めます。全科目を同時に上げようとしないことです。

有名中の指示を現実的に「こなす」形にする

有名中の指示を無視するわけではありません。こなす中身を変えます。

  • 目的を決める。 形式に慣れるための素材なので、全問の正解は目指さない
  • 志望校と関係のない学校は、最初の見開きと大問1だけ見る。 出題の形を確認して終わりにする
  • 関係のある学校は、時間を計って1回分。 その後の解き直しに重点を置く
  • 丸付けと解き直しは、親が全部抱えない。 子ども自身に、間違いの理由を一言書かせる

こうした絞り方は、校舎の先生に先に伝えておくと話が早いです。「うちの志望校は第一志望がA、併願はBとCです。有名中はこの3校を優先して、他は形式確認にとどめたいのですが、問題ありませんか」と聞けば、多くの校舎で現実的な答えが返ってきます。

教科別に見る「弾く」ときの具体例

学校を仕分けたあとは、教科ごとに何を残すかを決めます。ここまで決めておくと、週末に机の前で迷う時間がなくなります。

算数

算数は、大問の構成が学校ごとに大きく違います。小問の集合で基本の処理力を問う学校もあれば、一題に時間をかけて考えさせる学校もあります。第一志望と形が違う学校の算数は、最初の大問2つだけ解いて、時間配分の感覚をつかむ程度で十分です。残りは解説で解法の流れを読むだけにして、解き直しは第一志望と近い形の学校に集中させます。

国語

国語は、文章の長さと設問の型が学校の個性になります。記述が多い学校と、選択肢中心の学校では、練習の仕方がまるで違います。志望校が記述中心なら、他校の選択肢問題を大量に解いても書く力は伸びません。逆に、いまの国語の点が安定していない子は、1校分を丁寧に解き直すほうが先です。

理科と社会

理科と社会は、知識問題の比率が高い学校と、資料の読み取りや思考を問う学校に分かれます。知識中心の学校は、過去問を解くこと自体が暗記の確認になります。思考系の学校は、1問に時間をかけて考える練習が必要です。どちらの型か、最初の1回分で見分けがつきます。型が違う学校は、細かい解き直しまでは求めず、「この学校はこういう出し方をする」と一言メモを残して先へ進みます。

やらなかった学校の扱い

弾いた学校の過去問は、捨てるのではなく箱にまとめて、本棚の端に置いておきます。12月に入って余裕が出た教科や、志望校が変わったときに、すぐ取り出せるからです。見えるところに積んだままにすると、親も子も「まだやっていない」という圧を毎日受けます。視界から外すだけで、負担は大きく減ります。

まず今週末にここまでやってみる

まず、今週末にできる最小の手順です。

  1. 志望校と併願校を紙に書き出す
  2. 各校に「近い/遠い」「受ける可能性は高い/低い」の印をつける
  3. 遠くて可能性が低い学校に、「12月以降」と書く
  4. 残った学校の過去問を、土曜午前の1回分だけ先に入れる
  5. 日曜に、あと少しで解けた問題の解き直しをする

これだけで、机の上の山はかなり低くなります。小6の秋は、基礎の穴を埋める時間も残さなければなりません。過去問を回す時間だけ増やすと、土台が崩れます。

それでも、仕分けと丸付けと日程管理を、親が毎週続けるのが苦しい家庭はあります。共働きで平日の夜に見られない、教科ごとの解き直しの指示を出せない、という場合です。そういうときは、予定表の作成や解き直しの確認など、管理の一部だけを外の人に渡す方法もあります。全部を任せなくても、仕分けの部分だけで負担はかなり軽くなります。

やることを増やす秋ではなく、減らす秋にしてください。減らした分の時間は、子どもが寝る時間と、基礎を固める時間に回せます。

※テキスト管理をプロに任せる場合の選び方はこちらの記事で解説しています