「二人がいた食卓」の超あらすじ(ネタバレあり)

『二人がいた食卓』は、猪原泉と鈴木旺介の結婚生活を描いた物語です。

泉はプロダクトデザイナーとして働きながら、夫との食卓を大切にしてきましたが、旺介の食の好みが次第に変わり、二人の関係もぎくしゃくし始めます。職場の女性「ソノ」との関係を疑いながらも、最終的には別居・離婚に至ります。

泉は、自分の料理よりも旺介が好んでいたのは料理のトッピングだったことに気付き、新たな人生へと歩み出します。

この記事のポイント
  • 猪原泉と鈴木旺介の結婚生活の変化
  • 旺介の食の好みが変わることでの関係悪化
  • 泉が職場の女性「ソノ」との関係を疑うこと
  • 二人が別居・離婚に至る経緯
  • 泉が新たな人生に向けて前進すること

「二人がいた食卓」の超あらすじ(ネタバレあり)

猪原泉(いのはら いずみ)は、幼い頃から絵を描いたり手芸をしたりするのが大好きな女の子でした。東京の中心で生まれ育ち、将来はものづくりに関わる仕事をしたいと考え、国立工芸大学のプロダクトデザイン学科に進学します。大学ではさまざまなデザインを学び、卒業後は「栄光化成株式会社」という会社に就職しました。この会社は、コンビニで販売される女性向けランチ用容器を開発する仕事をしており、泉はこのプロジェクトに参加することになりました。

泉がこの会社を選んだ理由は、福利厚生がしっかりしているからです。一部上場企業の関連会社ということで、安定した職場環境が整っており、泉にとって理想的な職場でした。仕事を始めた泉は、営業部の鈴木旺介(すずき おうすけ)という同僚と一緒に新しい顧客を開拓することになりました。最初は仕事の話しかしていなかった二人ですが、ある日、休憩室で泉が持参したお弁当を広げたとき、自然と会話が弾みます。

泉が作ったお弁当は、白いご飯にタラコをあえ、ハンバーグと卵焼きを詰めただけのシンプルなものでしたが、旺介は「これ、おいしそうですね!」と興味津々に見つめました。彼は自分のことを「ファミレス舌」と表現し、簡単な料理でも満足できるタイプだと話します。そんな旺介のために、泉はホワイトソースをかけたチキンドリアを作るようになり、次第に二人は食事を通じて仲良くなっていきました。

旺介の実家は新都心から新幹線で1時間ほどの距離にあり、泉は彼の家族と初めて会ったとき、少し緊張しました。しかし、彼の父親は市役所に勤めており、母親も穏やかな性格の持ち主でした。彼の妹、弥生(やよい)も就職が決まったばかりで、家族みんなが温かく迎えてくれました。結婚式は二人だけで挙げることを決め、家族も最終的にはこの決定を受け入れてくれました。

結婚後、泉は「鈴木泉」として職場で働き続けました。栄光化成では、理系の女性社員が少ないこともあり、彼女の存在は貴重でした。しかし、仕事と家庭の両立は簡単ではなく、泉の夕食作りは遅い時間になってしまうことが増えました。健康を考えて和食中心のメニューにすることが多かったのですが、ある日、泉は家の中でちょっとした違和感を覚えます。

ファミリーサイズのマヨネーズが、たった1週間でなくなっていたのです。本来ならもっと長持ちするはずなのに、あまりにも早く消費されていることに驚きました。その原因は、旺介がご飯にソースやマヨネーズをかけて食べるのが好きだったからです。彼は「さっぱりしたものだけだと物足りない」と言って、頻繁に調味料を使っていました。

ある日、泉は旺介とのキスの際に、彼の唇から感じるスパイスと脂っぽさに違和感を覚えました。それは、自分の作った料理では使わないような化学調味料の味でした。泉は、旺介が仕事の合間にコンビニエンスストアで購入したカレーやホットスナックを頻繁に食べていることを知り、少しショックを受けます。泉にとって、家庭というものは幸せの象徴であり、それを維持するために努力していましたが、旺介は「しんどい」と本音を漏らすようになりました。

泉は、旺介が仕事で参加している企画チームの中に、特に親しくしている女性がいることを知ります。その女性の名前は「ソノ」。技術開発室に所属しており、職場では「ソノ」と呼ばれていること以外、ほとんど情報がありませんでした。彼女は小柄で髪をきっちりと後ろでまとめ、いつも技術開発室のジャンパーを着ているため、あまり目立たない存在でした。

泉がソノと初めて言葉を交わしたのは、お昼休みのことです。ほぼ満席の社員食堂で、ソノは泉の隣のテーブルに座り、有名チェーンのベーカリーから買ってきたレーズンブレッドを取り出しました。彼女はその厚切りのパンを、何もつけずに一口サイズにちぎって食べています。

ソノは「すべての料理は調味料をまぶしているだけで、人に美味しいものを食べさせるのは、口を塞ぐためだ」と言い放ちます。この言葉に泉はショックを受けましたが、彼女に負けたくない一心で、同じマンションに住む弁護士の元島聖子(もとじま せいこ)に相談します。聖子は「もし離婚を考えるなら、確かな証拠が必要だ」と助言しました。しかし、そんな矢先にソノが突然退職し、学生時代から付き合っていた彼と田舎で新たな生活を始めるためだと聞かされます。ソノは退職の際、白い花束とお別れの紙袋を手に持って、皆に挨拶をして去っていきました。

ソノが去った後も、旺介との関係は改善されることはありませんでした。旺介は「一人になりたい」と言い出し、不動産会社で紹介してもらった小さな部屋を借りて出ていきます。それでも完全には別れを決意できなかった泉は、しばらく家庭内別居を続けましたが、ついには自分も新たな住まいを見つけ、引っ越しの準備を始めます。

離婚の際には、泉の友人である聖子に保証人を頼みました。最終的に慰謝料を支払う形で、旺介は有責の記録を残すことになりました。これにより、泉は将来再婚する際にも大きな問題にならないように配慮されました。

一方で、栄光化成ではプラスチック製品に対する風当たりが強くなってきたため、台湾支社で紙容器のプロジェクトが立ち上がり、旺介はそのメンバーとして出向することが決まりました。

旺介が台湾に出向することになった時、泉は彼との最後の別れを感じました。出発前に荷物を取りにきたのは妹の弥生でしたが、泉は旺介が好きだった料理を作って弥生をもてなしました。しかし、弥生は兄とは違い、チーズ風味が苦手で、あまり食が進みませんでした。この時、泉は旺介が愛していたのは、自分が心を込めて作った料理ではなく、ただその上にかけられていた粉チーズだったことに気付きます。

この発見により、泉は自分の人生をもう一度見直し、新たな道を歩む決意を固めました。旺介との結婚生活で得た経験を糧に、彼女は前を向いて歩き出します。新しい未来に向けて、泉は再び自分の夢を追いかけ始めたのです。

「二人がいた食卓」の感想・レビュー

『二人がいた食卓』を読んで、猪原泉と鈴木旺介の結婚生活がどのように変化していくのかがとても興味深かったです。最初は、泉がプロダクトデザイナーとして働きながら、家族のために手料理を作り、愛情を込めて家庭を築いていく姿が描かれています。彼女が心を込めて作ったチキンドリアや和食のメニューは、結婚当初は旺介にとっても魅力的だったはずです。

しかし、物語が進むにつれて、旺介の食の好みが変わり始めます。彼がソースやマヨネーズを多用し、化学調味料を好むようになったことで、泉との関係に違和感が生じます。特に、泉が旺介の口から感じたスパイスの味や、彼が外で食事をする機会が増えたことは、二人の関係に影を落とします。

さらに、職場の同僚である「ソノ」の存在が、泉の心に疑念を生じさせます。ソノが退社することで、泉の不安は一旦解消されるものの、旺介とのすれ違いは解消されることはありませんでした。旺介が一人の時間を求めて別居を決意し、最終的に二人は離婚に至ります。

この作品を通じて、泉が最後に気付いたことがとても印象的でした。彼女が作った料理そのものではなく、旺介が好んでいたのはその料理のトッピングだったという事実は、泉にとって大きな衝撃だったと思います。しかし、それをきっかけに、泉は自分の人生を見つめ直し、新たな道を歩み始めます。

『二人がいた食卓』は、結婚生活の中での小さな変化が、どれだけ大きな影響を与えるのかを繊細に描いた作品です。猪原泉の成長と新たな決意に共感しながら、最後まで引き込まれました。

まとめ:「二人がいた食卓」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 猪原泉はプロダクトデザイナーとして働いている
  • 鈴木旺介は営業部に所属する同僚である
  • 二人は職場での出会いをきっかけに結婚する
  • 結婚後、泉は「鈴木泉」として仕事を続ける
  • 旺介の食の好みが変わり、関係がぎくしゃくし始める
  • 泉は旺介の行動に不安を感じ、疑念を抱く
  • 職場の女性「ソノ」との関係を疑うが、ソノは退社する
  • 旺介が一人の時間を求め、別居を決意する
  • 離婚に至り、泉は慰謝料を受け取る
  • 泉は自分の人生を見直し、新たな道を歩み出す