「日曜日の人々」は、千葉県で自堕落な高校生活を送った主人公・航が、浪人生活を経て大学に入学するところから物語が始まります。
大学生活で知り合った友人から「せどり」を教わり、副業を始める航。しかし、幼い頃の友人・仲村奈々が突然亡くなり、彼女の日記を手に入れた航は、彼女の死の真相を探り始めます。
奈々が抱えていた深い悩みや家族の秘密に直面した航は、自身の人生に対する葛藤と向き合い、最後には新たな人生を歩む決意を固めます。
- 航の高校生活と大学入学
- 航が始めた副業「せどり」
- 友人・奈々の突然の死
- 奈々の日記を通じた真相探し
- 航の葛藤と新たな人生への決意
「日曜日の人々」の超あらすじ(ネタバレあり)
千葉県八街市(やちまたし)で育った航(わたる)は、地元の高校に通っていました。しかし、勉強にはあまり興味を持たず、友達と遊んでばかりの日々を過ごしていました。そんな航も、ようやく高校を卒業すると、1年間の浪人生活を経て、埼玉県にある国立S大学に合格します。
4月、新しい大学生活が始まると、航はすぐに同じ学部に通う鈴木(すずき)という学生と仲良くなりました。鈴木は、当時流行していた携帯用のランキングサイトを使って、インターネットで収入を得ていました。航もそのノウハウを教えてもらい、古いレコードや古書を安く買って、それをインターネットで高値で売る「せどり」を始めます。
そんな中、突然の知らせが航のもとに届きます。幼い頃に一緒に過ごしたいとこである仲村奈々(なかむら なな)が亡くなったというのです。奈々は千葉県南千倉(みなみちくら)で夏休みを共に過ごした大切な存在であり、ショートカットの髪に小麦色に焼けた健康的な姿が印象的な少女でした。その彼女が、突然亡くなったという知らせは、航に大きな衝撃を与えました。
航は雨が降る中、奈々の通夜に参列しましたが、彼女の死因が自殺であったことを信じられずにいました。数日後、航のもとに奈々の母親から段ボール箱が届きます。その中には、奈々が日記として使っていたルーズリーフの束が入っていました。
航は奈々の日記を一枚一枚読み進めました。日記の中で頻繁に登場する名前は「吉村(よしむら)」という人物でした。航は、奈々の死の謎を解明するため、吉村に会うことを決心します。そして、奈々の日記に書かれていた手がかりをもとに、東京都練馬区(ねりまく)の東の外れにあるワンルームマンションを訪れました。
そのマンションでは、「朝の会」というグループが集まっていました。航が突然訪問しても、参加者たちは快く迎えてくれました。「朝の会」は、心に悩みを抱えた人たちが集まる場で、摂食障害や睡眠障害、アルコール依存など、さまざまな問題を抱えた人たちが話し合う場です。
この「朝の会」をウェブ上で立ち上げたのは磯部裕貴(いそべ ゆうき)という男性でしたが、彼は不慮の事故で亡くなってしまいました。その後、会の運営を引き継いだのが吉村秀夫(よしむら ひでお)です。吉村は、参加者たちの体験談を「日曜日の人々」という冊子にまとめていました。奈々の体験も、その冊子に記録されているはずでしたが、閲覧するためには会員として半年間の活動が必要だと言われます。
航は掃除当番や記録係、レクリエーションの担当などをこなし、会の活動に真剣に参加しました。そして、ようやく半年が過ぎ、航は「日曜日の人々」というA4サイズの黒い冊子を手にすることができました。
航は奈々の日記と「日曜日の人々」を通じて、奈々が抱えていた深い悩みを知ることになります。奈々の母親が再婚した際、相手には和彦(かずひこ)という息子がいました。和彦はシステムエンジニアとして東京で働いており、奈々の葬儀の際に航は彼と初めて顔を合わせました。
奈々と和彦は、家族でありながらも男女の関係にあったこと、さらに奈々が妊娠し、その胎児が不幸にも亡くなったことを航は日記から知りました。この事実に航は大きなショックを受けます。そして、大学での講義に対する興味も失い、ついに休学を決意します。卒業は1年遅れることになりますが、今の航にはもうどうでも良いことでした。
その後、久しぶりに鈴木と再会した航は、鈴木が運営するサイトが大きな成功を収めたことを聞かされます。鈴木は自信満々に、自分たちでネットビジネス関連の会社を起業しようと誘ってきましたが、航はどうしても興味が湧かず、気力もありませんでした。そんな中、ネットサーフィンをしていた航は、ふと「関東地区」「パーティー」という不思議な書き込みを見つけます。
航はその書き込みに引かれるようにして、「パーティー」に参加することを決めました。彼が選んだのは、死をテーマにした危険な集まりでした。駅前のロータリーに停めてあった銀色のバンに乗り込むと、航を含む4人の男女は互いに本名を名乗ることもなく、密かに山道を進んでいきます。
彼らが到着したのは、深い森の中にひっそりと建つモルタルの家でした。そこで彼らは車内で練炭を使って命を絶つ計画を立てます。車内の空気が次第に重くなり、意識が遠のいていく中、航のまぶたの裏には、幼い頃に母親が作ってくれたチョコレートパフェの記憶が浮かんできました。
母親が作ってくれた甘くて美味しいチョコレートパフェの味を思い出すと、航は急に生きたいという強い気持ちが芽生えました。まだ死ぬわけにはいかない、もう一度母親のパフェを食べたい、そう思った航は、力を振り絞って外へ飛び出します。
気がつくと、航は日光の土産物屋のベンチに横たわっていました。そこにいた親切な人から温かいコーヒーをもらい、ほっと一息つきます。航は日光線に乗って家へ帰ることを決めました。夕暮れの車窓からは、背広姿の男性が自転車で家路を急ぐ様子が見えます。航は、自分もまたこの世で生きる決意を固めました。
日光での出来事を経て、航は大きく成長しました。彼は大学に復学し、これまで避けてきた将来について真剣に考えるようになります。過去の悲しみや葛藤を乗り越え、航は普通の生活を送るために努力を始めました。大学を無事に卒業すると、航は他の学生と同じように会社員になりました。
働き始めると、仕事の大変さに直面しながらも、少しずつ慣れていきます。そして、将来的には郊外に家を購入し、家族と共に穏やかな生活を送る未来を想像するようになりました。奈々の死や、自分自身の迷いを乗り越えた航は、これからの人生を前向きに生きていく決意を固めています。
このようにして、航は新たな人生の一歩を踏み出しました。過去の出来事を乗り越え、航は未来へと進んでいくのです。
「日曜日の人々」の感想・レビュー
「日曜日の人々」を読んで、まず印象的だったのは、主人公・航の成長過程です。彼は千葉県八街市で高校生活を過ごし、友達と遊ぶ日々に埋もれていた過去があります。しかし、浪人生活を経て埼玉県の国立S大学に進学し、オリエンテーションで出会った鈴木との交流を通じて、副業の「せどり」を始めることで新たな世界に足を踏み入れます。
航の人生が大きく揺らぐのは、幼い頃の友人である仲村奈々の訃報が届いたときです。奈々は健康的で明るい少女だったため、彼女が自ら命を絶ったという事実に、航は強いショックを受けます。奈々の死後、航のもとに送られてきた日記が、彼を奈々の過去に導き、物語は深みを増していきます。
日記に記されていた「吉村」という人物を探し、航は東京都練馬区にある「朝の会」にたどり着きます。ここで航は、心に深い悩みを抱える人々と出会い、奈々が生前にどんなことを考えていたのか、少しずつ理解していきます。「日曜日の人々」という冊子に奈々の体験が記録されていることを知り、航はその内容に触れるために半年間の努力を重ねます。
さらに、奈々が抱えていた家族の秘密、特に義理の兄である和彦との関係を知ることで、航の心は大きく揺れ動きます。この事実を知った航は、大学生活に対する意欲を失い、休学を決意するまで追い詰められます。しかし、物語の終盤で航が「死のパーティー」という危険な状況に直面したとき、彼は幼い頃に母親が作ってくれたチョコレートパフェを思い出し、生きることの意味を再認識します。このエピソードが、航にとって生きる希望の象徴となり、彼の人生の転機となりました。
最後には、航が再び大学に復学し、過去の出来事を乗り越えて新たな未来に向かって歩き出す姿が描かれています。この作品は、主人公が自分自身と向き合い、葛藤を乗り越えて成長する過程が詳細に描かれており、読者に深い感動を与える作品だと感じました。奈々の死という重いテーマを扱いながらも、航が最終的に未来を見つけ出す姿に希望を感じます。
まとめ:「日曜日の人々」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 航は千葉県で自堕落な高校生活を送った
- 浪人生活を経て埼玉県の国立S大学に入学する
- 大学で鈴木と友人になり副業を始める
- せどりで中古レコードや古書を販売する
- 幼い頃の友人・仲村奈々が突然亡くなる
- 奈々の日記が航のもとに届く
- 日記には「吉村」という人物が頻繁に登場する
- 航は奈々の死の真相を探るため「朝の会」を訪れる
- 奈々が抱えていた家族の秘密に航はショックを受ける
- 航は葛藤を乗り越え新たな人生を歩む決意を固める