海の底(有川浩)の超あらすじとネタバレ

『海の底』は、有川浩によるスリリングな小説で、謎の巨大甲殻類サガミ・レガリスが襲撃する横須賀基地を舞台に繰り広げられる物語です。

春の桜祭りで賑わう基地が突然の襲撃を受け、潜水艦「きりしお」の乗組員夏木と冬原、そして彼らが救出した子供たちは、限られた空間での生存をかけた戦いに挑みます。

物語は、緊迫感溢れる救出劇や内部での人間関係の葛藤、そしてサガミ・レガリスとの対決を描きます。

この記事では、そんな『海の底』の詳細なあらすじとネタバレを紹介し、物語の魅力を余すところなくお伝えします。ネタバレを含むため、結末を知りたくない方はご注意ください。

この記事のポイント
  • 横須賀基地でのサガミ・レガリスの襲撃とその状況
  • 潜水艦「きりしお」での乗組員と子供たちの生活
  • 主人公たちの対立と成長
  • サガミ・レガリスに対する警察と自衛隊の対策
  • 夏木と望のその後の再会と新たな関係の始まり

海の底(有川浩)の超あらすじとネタバレ

第1章:サガミ・レガリスの襲来

横須賀基地では、春の桜祭りが行われていました。たくさんの一般の人たちが訪れており、基地の中はとてもにぎやかでした。

その頃、潜水艦「きりしお」の乗組員である夏木と冬原は、潜水艦の埠頭にいました。二人はある騒動を起こしたため、罰として上陸を禁止されていたのです。彼らは桜祭りの光景を少し離れた場所から眺めていました。

突然、基地内に緊急のアナウンスが流れました。「出航準備または退去を命じます!」という内容でした。しかし、出航が不可能な状況だったため、上司の指示で基地外への避難を試みることになりました。避難する途中で、二人は横須賀基地が謎の巨大な甲殻類に襲われていることに気づきました。

その甲殻類は、人間を見つけるとすぐに襲いかかり、食べてしまう恐ろしい生き物でした。基地内はパニックに陥り、人々は必死に逃げ惑っていました。夏木と冬原も異常な事態だと悟り、急いで避難を試みました。

避難中、二人は逃げ遅れた子供たちを見つけました。子供たちは怖がって泣いていましたが、夏木と冬原は勇気を出して助けることにしました。しかし、その間に基地外への避難ルートは完全に塞がれてしまいました。仕方なく、彼らは再び潜水艦「きりしお」内に戻ることにしました。

走って潜水艦に戻る途中、彼らの上司が甲殻類に襲われてしまいました。上司は勇敢に戦いましたが、残念ながら命を落としてしまいます。彼の身体は甲殻類に食べられてしまったため、潜水艦内にたまたまちぎれて落ちた腕だけが唯一の遺体となってしまいました。

一方、潜水艦の外では、警察官たちが市民の避難誘導にあたっていました。しかし、甲殻類を倒すための装備がなかったため、警察官たちは甲殻類を避けて逃げるしかありませんでした。多くの人が重傷を負い、状況はますます悪化していきました。

そんな中、警察庁から烏丸参事官が派遣されました。彼は現場の状況を考慮せず、警察と防衛省の貢献度を非難し始めました。しかし、現場の指揮を執る明石警部と共に、迅速に自衛隊への状況のリレーを目指すことにしました。

こうして、横須賀基地は謎の甲殻類サガミ・レガリスの襲撃を受け、潜水艦「きりしお」に立て籠もることになった夏木と冬原、そして子供たちの物語が始まりました。彼らはこの困難な状況の中で、生き延びるために力を合わせて戦うことになります。

第2章:潜水艦内の生活

潜水艦「きりしお」内での生活が始まりました。夏木と冬原、そして救出した子供たちは、限られた空間で一時的に共同生活を送ることになりました。しかし、最初から大きな問題が発生しました。それは、料理のできる大人がいなかったことです。

夏木と冬原は料理が得意ではなく、お粥のようなご飯や焦げたフライなどしか作れませんでした。子供たちは不満を持ち始め、特に圭介という少年は強く反発しました。「女のくせに料理もできないなんて」と、望に対して厳しい言葉を投げかけました。食事の時間はいつも重苦しい雰囲気になってしまいました。

その後、子供たちは自然と二つのグループに分かれました。一つは圭介を中心としたグループ、もう一つは望に懐いた子供たちのグループです。圭介はなぜ望に対してこんなに厳しいのか、夏木と冬原は理解できず、首をかしげました。実は、圭介は望に対して幼い恋心を抱いており、それを拗らせてしまったために厳しく当たっていたのです。

ある日、圭介の母親がインタビューされる映像がテレビに映りました。その映像を見て、夏木は圭介が母親にそっくりだと感じました。圭介の母親も非常に厳格で、圭介がその影響を受けていることが分かりました。

一方、警察側では、常識的な対応策を部下に任せていた烏丸参事官が、明石警部と共に「大穴狙い」の策を取ることにしました。烏丸参事官は、相模水産研究所の芹澤研究員が提出した報告書に目を付けました。芹澤研究員は、以前からサガミ・レガリスという深海生物の研究を行っており、今回襲撃してきた甲殻類がそのサガミ・レガリスが巨大化したものであると報告していました。

芹澤研究員は、甲殻類の正体を突き止めるために一生懸命研究し、最終的に今回の襲撃者がサガミ・レガリスであることを断定しました。この情報をもとに、烏丸参事官と明石警部は、迅速な対策を講じることに決めました。

潜水艦内では、苛立ちが募る中、子供たち同士の対立や不安が日々の生活に影響を与えていました。特に、圭介が森生姉弟が孤児であることを理由に差別的な発言をする場面がありました。さらに、望が生理になってしまい、そのことが知られると戸惑いが広がりました。夏木と冬原も、そんな望の状況をどう対処すればよいか分からず、困っていました。

このように、潜水艦内での生活は多くの困難と挑戦に満ちていました。しかし、夏木と冬原は子供たちと協力しながら、少しずつ解決策を見つけていくのでした。彼らの絆は次第に深まり、困難な状況に立ち向かう力を見つけることができました。

第3章:操られた恋心の暴走

潜水艦「きりしお」の救助が決定されました。しかし、自衛隊は災害出動のため武器を使うことができず、三度試みたものの救出は失敗に終わりました。子供たちは一度帰宅の希望を持っただけに、その落ち込みは相当なものでした。

昼食の際、テレビでは望にとって衝撃的なニュースが流れました。それは、きりしおの乗組員が保護している子供たちに虐待をしているというニュースでした。テレビ局にこの情報をリークしたのは圭介でした。彼はサガミ・レガリスがいない時を見計らい、外に出て家族に電話をかける際にこの情報を提供していたのです。

圭介は、潜水艦での生活が続くうちに、望が大人たち、特に夏木に心を寄せるようになっていることに気づきました。望が圭介に反発するようになったのも夏木の影響を受けてのことだと感じていました。そのため、圭介は夏木に対してひどく反発していたのです。

警察側では、サガミ・レガリスに対して毒殺による一掃を試みましたが、甲殻類の学習能力が高いため、すぐに効果がなくなってしまいました。さらに、米軍がサガミ・レガリスを掃討するために横須賀を爆撃する計画があるという情報もありました。明石警部たちは、早急に自衛隊に武器使用が可能な防衛出動をしてほしいと思っていましたが、高火力による市街戦を忌避したい官邸サイドがなかなか決断してくれませんでした。

そこで、烏丸参事官は機動隊に徹底的に壊走し、警察では対処できないことを官邸に見せつけるよう命令しました。最初は反発がありましたが、米軍の爆撃計画について知らせると、機動隊長たちも納得しました。

潜水艦内では、子供たちの間でさらなる対立が発生していました。圭介はますます孤立し、彼の行動はエスカレートしていきました。夏木と冬原は、どうすれば圭介と他の子供たちの間を仲裁できるか悩んでいました。

ある日、圭介が夏木と望に対して暴言を吐いた後、望は涙をこぼしながら夏木に相談しました。夏木は望を慰め、彼女の気持ちを理解しようと努めました。この出来事がきっかけで、夏木と望の絆はさらに深まりましたが、圭介の反発はますます強くなりました。

やがて、米軍の爆撃が現実のものとなり、横須賀基地は一時的に混乱に陥りました。警察と自衛隊は協力し、なんとかサガミ・レガリスを駆除しようと全力を尽くしました。

こうして、潜水艦内の生活はますます緊迫感を増し、外部の状況も厳しさを増していきました。夏木たちは子供たちを守りながら、この危機を乗り越えるために一層の努力を続けました。

第4章:騒動の終結

ある日、子供たちが潜水艦「きりしお」の中でかくれんぼをして遊んでいました。すると、翔が行方不明になってしまいました。翔は真面目で素直な子なので、呼んでも出てこないことから、みんなは酸欠で倒れているのではないかと心配しました。圭介一派以外の子供たちと夏木、冬原は総出で翔を探しましたが、なかなか見つかりませんでした。

実は、圭介は民間のテレビ局やレスキュー隊と組んで感動的な救出劇を画策しており、外へ出るための時間稼ぎに翔を自分たちの部屋に監禁していたのです。さすがに圭介の仲間たちも、翔が危険だと感じてどうにか止めようとしましたが、意固地になった圭介は聞く耳を持ちませんでした。

翔は話せないため、夏木たちが圭介たちの部屋を訪ねても翔に気づくことができませんでした。しかし、その後、翔の声が出たことで、圭介の企みは夏木たちに知られることになりました。外でサガミ・レガリスに襲われかけていた圭介は、すんでのところで夏木たちに救助されました。

真に危険な目に遭った圭介は、自分の母親が行ってきた理不尽な行動をようやく認め、怒りと涙を流しました。この出来事がきっかけで、圭介は少しずつ変わり始めました。

一方、警察と自衛隊は、災害出動ではありましたが特例として自衛隊の武器使用が認められたため、サガミ・レガリスを駆除することができました。これまでの警察の苦戦ぶりが嘘のように、サガミ・レガリスはあっさりと駆除されました。

潜水艦「きりしお」から救出される際、望は夏木に告白しようとしましたが、夏木は望の告白の言葉を聞くことなく遮りました。夏木は望の気持ちを受け取るつもりがなかったのです。その結果、望は「さようなら」と明確な別れの言葉を残して去りました。

また、圭介は騒動に関して特に謝罪をすることなく去りましたが、テレビカメラの前で自分勝手なガキとして振る舞うことで、世間の虐待疑惑を払拭しました。

こうして、サガミ・レガリスの襲撃という大騒動は終結しました。夏木、冬原、そして子供たちはそれぞれの道を歩み始めました。潜水艦内での過酷な体験は、彼らにとって大きな成長の機会となり、それぞれの心に深い影響を与えました。

第5章:騒動から5年後

サガミ・レガリスの襲撃事件から5年が経ちました。夏木は自衛隊員として引き続き勤めていました。ある日、夏木が勤務している艦に、新人技官として入省した望が見学にやってきました。久しぶりの再会に夏木は驚きましたが、望は落ち着いた様子で「お久しぶりです、夏木さん」と挨拶しました。

望は防衛省に入省し、技官としての訓練を終えたばかりでした。彼女はこの5年間、熱心に勉強し、自分の目標に向かって努力してきたのです。夏木は望の進路を知りませんでしたが、連絡先を交換していた冬原はそのことを知っていました。

二人は艦内を案内しながら、昔のことを少しずつ話し始めました。潜水艦「きりしお」での出来事や、あの困難な日々のことが話題に上がりました。夏木は望が自分のことを忘れずに、こうして再会できたことに心から感謝していました。

見学が終わり、別れ際に夏木は望に言いました。「あの時、君が言ってくれた『さようなら』の意味をずっと考えていました。だけど、今はもう一度、ちゃんと始めたいと思っています。幸せに出会って、幸せに始まりたかった」と。

望は微笑みながら「初めまして」と言い、敬礼をしました。夏木も同じように「初めまして」と敬礼を返しました。二人は新たな一歩を踏み出す決意を固めました。

その後、夏木と望は定期的に連絡を取り合い、徐々に関係を深めていきました。お互いの夢や目標について話し合い、支え合うことで、二人はますます絆を強くしていきました。夏木は、自分の過去の経験を生かして、望を応援し続けることを誓いました。

こうして、かつての潜水艦「きりしお」での経験が、二人にとって大きな成長と新たな始まりをもたらしました。過去の困難を乗り越えたことで、夏木と望は未来に向かって力強く歩んでいくことができるようになりました。

海の底(有川浩)の感想・レビュー

有川浩の『海の底』は、非常にスリリングで引き込まれる物語でした。最初の章で、桜祭りが行われている横須賀基地が突然謎の巨大甲殻類サガミ・レガリスに襲撃されるシーンは、非常に緊張感がありました。日常の平和な風景が一転してパニックに陥る様子がリアルに描かれており、読者は一気に物語に引き込まれます。

主人公の夏木と冬原は、潜水艦「きりしお」に立て籠もり、逃げ遅れた子供たちと共に過ごすことになります。限られた空間での生活は、多くの困難と試練に満ちていました。特に料理のできる大人がいないため、食事の問題が深刻でした。子供たちの間での対立や、圭介が望に厳しく当たる理由など、人間関係の複雑さが描かれています。

圭介が望に対して厳しい態度を取るのは、幼い恋心が拗れてしまったためだと分かるシーンは、非常に切ないものでした。また、圭介の母親が厳格であったことが彼の性格に影響を与えているという描写も、キャラクターの深みを感じさせました。

一方で、警察と自衛隊がサガミ・レガリスに対して対策を講じるシーンも緊迫感がありました。特に、烏丸参事官が相模水産研究所の芹澤研究員の報告書に目を付け、迅速な対策を講じる場面は、科学的なアプローチと現実的な対応が描かれており、非常に興味深かったです。

物語の後半では、翔の行方不明事件が発生し、圭介が感動的な救出劇を画策していたことが明らかになります。この部分は、圭介の成長と変化が感じられ、感動的でした。最終的に、自衛隊がサガミ・レガリスを駆除し、平和が戻るシーンは、読者に安堵を与えます。

5年後のエピローグでは、夏木と望が再会するシーンが描かれています。二人がそれぞれの道を歩んできたことが伝わり、未来への希望が感じられる素晴らしい結末でした。『海の底』は、緊張感と感動が詰まった物語であり、読後感も非常に良かったです。

まとめ:海の底(有川浩)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 横須賀基地で桜祭り中にサガミ・レガリスが襲撃する
  • 夏木と冬原が潜水艦「きりしお」に立て籠もる
  • 子供たちとの共同生活が始まる
  • 圭介が望に厳しく当たる理由が明かされる
  • 警察と自衛隊がサガミ・レガリス対策を試みる
  • 圭介が虐待のニュースをリークする
  • 翔の行方不明事件と圭介の計画が発覚する
  • サガミ・レガリスが自衛隊によって駆除される
  • 望が夏木に告白するが拒絶される
  • 5年後、夏木と望が再会し新たな関係を築く