住野よる「よるのばけもの」の超あらすじ(ネタバレあり)

この記事では、住野よるの人気小説『よるのばけもの』の超あらすじ(ネタバレあり)をご紹介します。

この物語は、夜になると怪物に変身してしまう中学生・安達と、彼の秘密を知るクラスメイト・矢野さつきとの奇妙な関係を描いています。友情、恐怖、成長といったテーマを織り交ぜながら、彼らの夜の冒険が展開されます。

詳細な章ごとのあらすじを知りたい方、ネタバレを気にせずストーリーの全貌を楽しみたい方は、ぜひ続きをお読みください。

この記事のポイント
  • 主人公・安達の怪物に変身する能力とその影響
  • 安達と矢野さつきの関係の始まりと発展
  • クラスメイトから無視されるさつきの背景といじめの詳細
  • 安達とさつきが直面する危機とその解決方法

住野よる「よるのばけもの」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章:夜の教室の出会い

この物語は、不思議な能力を持つ中学生、安達が主人公です。彼の身体にはある奇妙な現象が起こります。夜になると、彼の体から黒い粒が流れ出し、徐々に8つの目玉と6つの足を持つ獣のような姿に変身してしまうのです。この変身は、彼にとっても制御不可能で予測不可能な出来事であり、孤独と隠蔽の日々を強いられています。

ある日、安達は学校の屋上から侵入し、自分のクラス、3年2組の教室へと向かいました。この日は、夜中に突然宿題を忘れたことに気づき、取りに戻ることにしたのです。学校はすでに誰もいないはずの時間でしたが、教室には一人の女子生徒、矢野さつきがいました。彼女は教壇に手をつき、静かに何かを考えている様子でした。

安達が教室に入った瞬間、彼の異形の姿にさつきは驚くどころか、彼が誰であるかをすぐに見抜いてしまいました。さつきはその場で慌てることもなく、安達の秘密を受け入れる態度を見せ、彼に対して特別な興味を抱き始めます。これが二人の奇妙な関係の始まりでした。

安達は、さつきが自分の正体を知っても怯えたり逃げたりしなかったことに、内心で驚きながらも少し安堵していました。彼女は、毎晩のように学校で過ごしていると語り、夜の学校が彼女にとっても特別な場所であることを明かします。そして、さつきはチャイムが鳴るとすぐにその場を後にしました。

安達も、東の空が明るくなる前には人間の姿に戻る必要があります。夜明けと共に彼の体から黒い粒は消え、再び普通の少年に戻るのです。彼はこの不思議な現象についてまだ誰にも話しておらず、孤独感を募らせていましたが、さつきとの出会いが、彼の隠された世界に新たな可能性をもたらすことになるのでした。

第2章:昼間の無視と夜の絆

矢野さつきはある朝、いつも通りに学校に登校しました。彼女は教室に入ると、明るく「おはよう」と挨拶をしますが、クラスの誰からも返事はありません。さつきは以前、クラスメイトの緑川双葉が静かに読書をしていたところ、突然その本を取り上げて中庭に投げ捨ててしまったことがあり、それ以来クラスの生徒たちから総スカンを食らっていました。

さつきの行動は周りに理解されにくいものが多く、彼女のスローテンポで空気が読めない振る舞いや、無駄に大きい声、独特なアクセントでの話し方が特徴的です。この事件をきっかけに、彼女は特に中川ゆりこを中心とするグループから激しいいじめを受けるようになりますが、彼女はそれに反撃することも、教師や親に助けを求めることもありません。ただ毎朝、当たり前のように学校に来ては、ニコニコと笑って過ごすだけでした。

一方、夜は全く異なる光景があります。安達は変身してしまう体質を持ちながら、さつきとだけは心を通わせることができていました。夜間の学校では、さつきは自由に行動し、安達と共に過ごす時間を楽しんでいました。しかし、日中の学校では安達もさつきに対する嫌がらせを目の当たりにしながら、何もできずに見て見ぬふりをしていました。

この状況は二人の関係にとって複雑なものでした。夜間、二人は互いに深い絆を育んでいるように見える一方で、日中は完全に無関係な存在のように振る舞う必要がありました。安達はこの矛盾に悩む日々を送りながらも、さつきとの夜の時間を大切にし、彼女が昼間受ける冷たい扱いに心を痛めていました。彼らの間には、言葉では表現できない複雑な感情が渦巻いていたのです。

第3章:真夜中の危機

第3章では、学校内に広がったある噂が重要な役割を果たします。この噂とは、真夜中に学校に怪獣が出現するというものでした。この噂は生徒たちの間で急速に広まり、特に野球部の元田が関心を示します。元田はその性格が粗暴で知られ、いつも自分の取り巻きを連れては他の生徒を威圧していました。彼は、昼休みに「今夜、怪獣を見つけに行く」と宣言し、その計画には自らの取り巻きも巻き込みました。

その日の夜、安達はいつものように変身を待ちましたが、何故かその変化が訪れませんでした。時間が経つにつれて、彼は焦りを感じ始めます。普段ならば体から黒い粒が流れ出し、変身が始まる時間帯になっても、その兆しは見られません。彼は自宅でじっとその時を待ちますが、いつになく変身が遅れてしまいました。

ようやく変身が始まった安達は、すぐに学校へ急ぎます。彼が一番恐れていたのは、元田たちがさつきと遭遇し、何かトラブルが発生することでした。学校に到着すると、安達はすぐにさつきを見つけ、彼女を安全な場所、掃除道具入れに隠しました。

その後、安達は元田たちを待ち構えます。元田たちは金属バットで武装しており、何かを見つけ次第に攻撃する構えでした。安達は体から湧き出る黒い粒子を集めて、「シャドー」と名付けたもう一匹の分身を作り出しました。この分身を使って元田たちを威嚇し、彼らに対抗します。

緊張の中、シャドーは火炎放射のような能力を発揮し、元田たちを驚かせます。この威嚇によって、元田たちは恐怖を感じ、逃げ出しました。彼らが去った後、安達はさつきを掃除道具入れから解放し、彼女がいつも笑っている理由を尋ねます。さつきは「怖い時に無理に笑ってしまう」と告白し、この危機的な状況の中で彼女の素顔を安達は初めて知ります。

第4章:笑顔の秘密

元田たちとの一件が終わった後、安達はその夜のことを深く考えました。さつきが「怖い時に無理に笑ってしまう」と言ったことが、彼の心に強く残っていました。普段の彼女の笑顔が、実は内心の恐怖や不安を隠すためのものであったことを知り、安達は彼女に対する見方が変わりました。

その日以来、安達は夜の学校に近づかないように注意するようになりました。元田たちが再び戻ってくることを恐れていたからです。しかし、彼はシャドーを使って学校の様子をコッソリと偵察することを続けました。シャドーを通じて見た限りでは、さつきは依然として一人で夜休みを過ごしていました。

安達は、彼の身体が化け物になる現象がいつまで続くのかについて不安を感じていました。この現象は、彼が目を閉じることもなく、完全に目覚めることもない奇妙な状態を引き起こしていました。彼の変身が始まる時間は、東の空が明るくなる午前4時から5時過ぎにかけてでした。そのため、最近では彼は海を超えて遠くの島々まで足を運ぶこともありました。

ある朝、安達は決意を固めました。その日も、さつきはいつものように「おはよ、う」とおかしなイントネーションで挨拶をしてきました。普段なら誰も返事をしないところですが、この日は安達だけが「おはよう」と返しました。教室中が一瞬静まり返り、クラス全員から冷たい視線を浴びましたが、安達は気にすることなく、自分の意志を貫きました。

その日の夜、安達は久しぶりに人間の姿のままでぐっすりと眠ることができました。彼は、さつきに対する行動が彼自身の変化をもたらしたことを感じていました。彼の心の中には、彼女との絆がますます深まっていることを実感していました。さつきが持つ強さと優しさ、そして彼女の笑顔の裏に隠された本当の感情を理解することで、安達自身も成長していくのです。

この章を通じて、安達とさつきの関係はさらに強固なものとなり、彼らは互いの存在がいかに重要であるかを認識していきます。そして、安達は夜の学校での出来事を通じて、真の友達としてさつきを守り、支えていく決意を新たにしました。

第5章:人間としての接近

元田たちとのいざこざが終わってからというもの、安達は夜の中学校に近づかないようにしていました。元田たちが再び戻ってくる可能性を考え、彼はシャドーを使ってコッソリと偵察することにしました。シャドーが確認したところでは、さつきは相変わらず一人で夜休みを過ごしているようでした。

安達は自分が化け物になる現象がいつまで続くのか不安に感じていました。この現象は彼が目を閉じることもなく、完全に目覚めることもない奇妙な状態を引き起こしていました。彼が人間に戻るのは、東の空が明るくなりかける午前4時から5時過ぎの間です。そのため、最近では彼は遠くの島々まで足を運ぶこともありました。

ある日の朝、安達は決意を固めました。学校に登校した安達は、さつきに正式に挨拶をすることを決めました。さつきはいつものように「おはよ、う」とおかしなイントネーションで挨拶をしました。普段なら誰も返事をしないところですが、この日は安達だけが「おはよう」と返事をしました。教室中が一瞬静まり返り、クラス全員が冷たい視線を浴びせましたが、安達は気にすることなく自分の意志を貫きました。

この出来事は、クラスの雰囲気を一変させました。安達の行動は、彼自身にとっても大きな変化をもたらしました。その夜、安達は久しぶりに人間の姿のままでぐっすりと眠ることができました。彼は、さつきに対する行動が自分自身の変化をもたらしたことを感じていました。彼の心の中には、彼女との絆がますます深まっていることを実感していました。

さつきとの関係が深まる中で、安達は彼女の強さと優しさ、そして彼女の笑顔の裏に隠された本当の感情を理解するようになりました。彼は、彼女の存在がいかに自分にとって重要であるかを認識し、彼女を守り支える決意を新たにしました。

その後、安達とさつきは昼間も夜も少しずつ自然に接するようになりました。クラスメイトたちの冷たい視線や噂話は依然として続いていましたが、二人はそれを気にせずに互いを支え合うことで強くなっていきました。安達は、自分が化け物であることに悩みながらも、人間としての心を大切にし、さつきとの絆を深めていくことを決意しました。

この章を通じて、安達は自身の内面と向き合い、さつきと共に成長していく姿が描かれます。二人の関係は、外見や状況にとらわれない真の友情と信頼に基づくものであり、彼らは互いの存在がどれほど重要であるかを理解し合っています。これからも二人は互いを支え合いながら、困難を乗り越えていくことでしょう。

住野よる「よるのばけもの」の感想・レビュー

住野よるの『よるのばけもの』は、一見するとファンタジー要素を含んだ異色の学園物語ですが、実際には深い人間ドラマが描かれています。物語の核となるのは、主人公・安達の変身という特殊な能力と、それを取り巻く日常の人間関係です。この作品は、異常な状況下での心の交流と成長を巧みに描いており、読者に強い印象を与えます。

まず、安達の変身能力についてです。夜になると怪物に変身してしまうという設定は非常にユニークで、物語の進行に緊張感とスリルを加えています。この変身は、安達にとって孤独と恐怖を伴うものであり、彼がそれを隠し続ける苦悩が描かれています。安達が他者に心を開けない理由として、この能力が効果的に機能しており、読者は彼の孤独感に共感せずにはいられません。

次に、矢野さつきとの関係です。さつきは、安達が怪物に変身した姿を見ても恐れず、彼の秘密を受け入れます。彼女の寛容さと強さは、物語における重要な要素です。さつきがクラスで無視されている背景には、彼女の独特な性格や過去のトラブルがあり、これが昼と夜の二重生活を強調しています。さつきのキャラクターは、読者に対していじめや孤立の問題について考えさせるきっかけを提供します。

さらに、真夜中の危機とその解決方法も見逃せません。安達が元田たちと対峙し、さつきを守るために戦うシーンは、物語のクライマックスとなっています。この対決は、単なる物理的な戦いではなく、安達が自分の恐怖と向き合い、さつきを守りたいという強い意志を示しています。彼の成長が感じられる瞬間であり、読者に大きな感動を与えます。

また、さつきの「怖い時に無理に笑う」という告白は、彼女の内面の脆さと強さを同時に表現しています。普段の明るい笑顔の裏には、深い恐怖や不安が隠されていることが分かり、読者はさつきの複雑な感情に寄り添うことができます。安達が彼女の真実を知ることで、二人の絆が一層深まる様子が感動的です。

最終的に、安達がさつきに対して正式に挨拶を返すシーンは、彼の内面的な成長を象徴しています。彼がクラス全員の冷たい視線を気にせず、自分の意志を貫く姿は感動的であり、読者に希望と勇気を与えます。この一連の出来事を通じて、安達は自分の特殊な能力と向き合いながらも、人間としての心を大切にすることの重要性を学びます。

『よるのばけもの』は、単なるファンタジーではなく、現実の問題や感情を巧みに描いた作品です。住野よるの緻密なキャラクター描写と、深いテーマに感銘を受けました。特に、安達とさつきの関係性は、読者に対して真の友情や信頼について考えさせるものであり、強く心に残ります。

まとめ:住野よる「よるのばけもの」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 主人公・安達は夜になると怪物に変身する
  • 安達は変身中にクラスメイトの矢野さつきと出会う
  • さつきは安達の秘密を知っても怯えない
  • 昼間のさつきはクラスメイトから無視されている
  • さつきが無視される理由は過去のトラブルにある
  • 夜間は安達とさつきが心を通わせる時間になる
  • 安達はさつきに対する昼間のいじめを見て見ぬふり
  • 真夜中に学校に怪獣が出る噂が広まる
  • 安達は元田たちとの対決でさつきを守る
  • 安達はさつきの笑顔の裏に隠された恐怖を知る