「煉獄蝶々」の超あらすじ(ネタバレ)

『煉獄蝶々』は、養子として育てられた保和が、失踪した作家・金光晴三の足跡を追い、シンガポールへ向かうミステリアスな物語です。

保和は金光の残した手記を通じて、異常な出来事に巻き込まれ、自らの出生に隠された驚愕の真実と向き合います。シンガポールで出会った人々や奇妙な体験を通じて、次第に金光と一体化していく保和の運命が描かれます。

物語は幻想的かつ不気味な要素が絡み合い、最後には驚くべき結末を迎えます。

この記事のポイント
  • 『煉獄蝶々』の基本的なあらすじ
  • 保和が金光晴三の足跡を追う物語であること
  • 保和が手記を通じて異常な出来事に巻き込まれること
  • 保和の出生に隠された真実が明かされること
  • 物語が幻想的で不気味な要素を持ち、驚く結末があること

「煉獄蝶々」の超あらすじ(ネタバレ)

保和(やすかず)は、捨て子として生まれましたが、大鹿壮太郎(おおしか そうたろう)と須美子(すみこ)夫妻に養子として引き取られました。大鹿壮太郎は貿易会社の岡山支店長で、裕福な家庭を築いていました。しかし、須美子は保和にあまり関心を示さず、代わりに女中の春(はる)が乳母として保和の面倒を見ていました。

保和が岡山中学に入学するころ、壮太郎は里子(さとこ)という若い女性に夢中になり、家に帰らなくなってしまいました。しかし、壮太郎が末期のガンにかかり、病気が進行すると、彼は再び家に戻り、やがて亡くなりました。その後、須美子は家を出ていき、春も本家に戻りました。保和は一人ぼっちになり、養父壮太郎の後輩で人気作家の金光晴三(かねみつ せいぞう)を見習って作家を目指しますが、なかなか成功しません。

そんな中、金光晴三が保和を自宅に招き、妻の八千代(やちよ)と引き合わせてくれました。八千代は自由奔放な性格の女性で、男性たちと浮気を繰り返していました。しかし、ある日、金光夫妻は突然姿を消してしまいます。パリを目指しているとだけ言い残し、時折、旅先から関係者に手紙を送ってきました。

やがて、金光晴三から保和に手記が送られてきました。その手記には驚くべきことが書かれていました。日本にいたとき、金光晴三は妻の八千代と夫婦喧嘩をし、その末に誤って八千代を殺してしまったというのです。しかし、金光はおがみ屋(霊的な力を持つ人物)を呼び、八千代を蘇生させました。しかし、蘇生した八千代は生きているとも死んでいるとも言えない、まるで人形のような存在になっていました。おがみ屋は、より完全に蘇生させるためには、シンガポールにいる別の人物に助けを求めるべきだと助言しました。そこで、金光は八千代を連れてシンガポールへ向かうことにしたのです。

保和は金光晴三の手記を読み進めます。その手記には、金光と八千代がシンガポールで滞在した出来事が詳細に記されていました。シンガポールに到着した金光夫妻は、おがみ屋に指定された「小金屋ホテル」に滞在することになります。このホテルは、元々女衒(ぜげん)として働いていた矢加部(やかべ)が経営していました。

小金屋ホテルには五つの部屋があり、そのうち三つの部屋には長期滞在客がいました。一階にはセンというダンスホールの踊り子と、林(りん)という中年夫婦が住んでいました。二階には、李(り)という父娘が滞在しており、金光夫妻は二階のもう一つの部屋に入りました。二階の残る一部屋は幽霊が出ると噂され、誰も長く滞在しませんでした。

シンガポールの強い日差しと熱気の中で、金光は日々を過ごしていきます。八千代は次第に人形のような状態から、少しずつ正常な人間へと戻っていくように見えました。しかし、不思議な出来事が続きます。ある日、金光が留守の間に、八千代はホテルの部屋を抜け出し、行きつけのコーヒーショップに行きました。そこで、八千代はショップの主人の妻と、彼女の金ボタンと自分のかんざしを交換してもらいます。しかし、交換したかんざしが、いつの間にか子供の手に変わり、金ボタンはその手の中に握られていたのです。

このような不気味な出来事が続く中、金光の意識は次第に曖昧になっていきます。保和は手記を読みながら、子供の頃に春から聞いた、ゆっくりとした残酷な死に方について思い出し、物語はさらに不気味さを増していきます。

金光晴三の手記はさらに続きます。シンガポールでの日々が続く中、ホテルの住人たちの過去や背景が次第に明らかになっていきます。林夫婦はホテルの近くに裏廟・陰廟を作りたいと考えており、これは本来祈ってはいけないことを祈る場所だと言われています。また、李は慶州生まれの私生児で、母親との苦しい生活を経て今日に至っており、占い師から「娘が産んだ息子に殺される」という予言を受けています。

しばらくして、李の娘であるジニが妊娠しました。しかし、ジニには思い当たるふしがなく、彼女自身も驚いています。臨月になると、林の妻が助産婦としてジニを世話しますが、ジニは黄金の雨を股間から流し出し、突然お腹が平らになってしまいました。これは想像妊娠だったのではないかと考えられました。

その後、八千代は幻の赤ん坊を世話するようになります。彼女は徐々に言葉を発するようになり、金光は自分がこの地を離れれば、妻が完全に人間になるのではないかと考え始めます。最終的に、金光は八千代を残してシンガポールを去る決意を固めます。手記はそこで終わっていました。

保和は手記の内容に驚き、手記を燃やそうとしますが、どうしてもできません。保和は金光晴三の行方を様々な人に尋ねますが、誰もその後の彼の消息を知りません。次第に保和は混乱し、夢の中で養母須美子と不思議な関係を持つ夢を見てしまい、その結果、奇怪な子供が生まれるという幻想に囚われてしまいます。

保和はついに金光晴三の足跡を追って、シンガポールへ行くことを決意します。彼はこの旅を「小説を書くための取材旅行」と自分に言い聞かせます。船に乗った保和は、劣悪な環境の中で次第に精神的に追い詰められ、幻覚を見たり、自殺を考えたりするほどになります。しかし、やがてシンガポールに到着し、その地は保和にとって初めての夏の国でした。

保和は人力車をやとって、金光の手記に記されていた「小金屋ホテル」に向かいます。ホテルに到着した保和は、ホテルの主人矢加部や周囲の様子が、まるで初めてではないかのように感じます。これは、金光晴三の手記を何度も読み返したせいかもしれません。矢加部によると、金光はパリへ向かうと言ってホテルを去ったそうです。

保和は、八千代が滞在していた部屋を訪ねます。彼女は普通の人間のように見え、かつての人形のような状態とはまるで違っていました。さらに驚くことに、部屋には金光と八千代の子供だという赤ん坊がいました。保和は自分の部屋に戻り、散歩をして帰ると、金光の手記の帳面が真っ白に変わっている

ことに気付きます。もしや、帳面が入れ替えられたのではないかと考えた保和は、再び八千代の部屋を訪れます。そこで、彼女が金光の残した別の帳面を見せてくれました。

その帳面には、驚くべき事実が記されていました。保和が大鹿家に引き取られる前、春は台湾の山岳民族の子供で、神へのいけにえとして育てられていたが、成長してから大鹿家の先代の主人に引き取られたのだというのです。また、保和は金光晴三と須美子の不倫関係から生まれた子供であり、壮太郎はそれを知りながらも保和を養子として育てたのだと書かれていました。

保和は金光晴三の手記を通じて、自分の出生に関する驚愕の事実を知ります。さらに、春が八千代を蘇らせた張本人であり、春の力によって八千代の体に須美子の意識が移されていたことが明らかになります。驚いた保和は、自分の体内に金光晴三の意識が徐々に移されつつあることに気付きます。最終的に、保和は金光晴三として迎え入れられ、物語は終わります。

「煉獄蝶々」の感想・レビュー

『煉獄蝶々』は、物語全体に漂う不思議な雰囲気がとても印象的でした。主人公の保和が、作家・金光晴三の手記を通じて、自分自身の過去や出生の秘密に迫っていく展開は、読んでいて引き込まれました。特に、シンガポールの小金屋ホテルでの出来事は、現実と幻想が交錯するような感覚を味わわせてくれます。

保和が金光晴三の手記を読み進める中で、異常な出来事に巻き込まれていく描写は非常に緊張感がありました。例えば、八千代が最初は人形のようだったのに、徐々に普通の人間に戻っていく過程は、不気味ながらも興味深かったです。また、コーヒーショップでのかんざしが子供の手に変わるシーンなど、奇妙な出来事が次々と起こり、物語全体が不気味さを増していくのが見事でした。

さらに、保和がシンガポールに到着してからの展開も興味深かったです。金光晴三が残した手記が突然真っ白になったり、八千代が全く普通の人間に見えるようになったりするなど、次々と謎が深まっていきます。そして、最終的に保和が自分の出生の秘密を知り、金光晴三と一体化していく結末は、非常に衝撃的でした。

この作品は、幻想的な要素が強く、現実と非現実の境界が曖昧になるところが魅力です。また、保和が自身の過去と向き合い、最終的には金光晴三の運命を受け入れるというテーマも、深い余韻を残しました。物語の進行とともに増していく不安感と緊張感が、最後まで読者を引きつける作品だと思います。

まとめ:「煉獄蝶々」の超あらすじ(ネタバレ)

上記をまとめます。

  • 『煉獄蝶々』はミステリアスな物語である
  • 保和は養子として育てられた
  • 金光晴三は失踪した作家である
  • 保和は金光晴三の手記を読む
  • 手記には異常な出来事が記されている
  • 保和はシンガポールへ向かう
  • 保和の出生に隠された真実が明かされる
  • シンガポールで奇妙な体験をする
  • 保和は次第に金光晴三と一体化していく
  • 物語は幻想的で不気味な結末を迎える