「メモリー・ラボへようこそ」の超あらすじ(ネタバレあり)

「メモリー・ラボへようこそ」は、孤独な定年退職者・桐生和郎が、記憶の移植によって新たな人生を模索する物語です。

熊本から一流企業に勤め上げた和郎は、孤独と退屈に悩んでいました。ある日、赤ちょうちんの屋台で手に入れたチラシが導く「メモリー・ラボ」で、彼は自分の記憶を刷新することに決めます。

記憶の中の謎の女性「由美」との出会いから、過去の真実や新たな人生の選択が描かれるこの物語は、感動的な結末へと続きます。

この記事のポイント
  • 孤独な定年退職者・桐生和郎が主人公
  • 和郎は記憶の移植を通じて新たな人生を模索する
  • 「メモリー・ラボ」という施設で記憶を刷新する
  • 謎の女性「由美」との出会いが物語のキーになる
  • 物語は感動的な結末を迎える

「メモリー・ラボへようこそ」の超あらすじ(ネタバレあり)

熊本県に生まれた桐生和郎さんは、両親から「どうすれば成功するのか」を常に教えられて育ちました。和郎さんは勉強熱心で、成績も優秀だったため、第一志望の進学校である熊本高校に進学しました。その後、大学では経済学を学び、卒業後には大手企業「三光電機」の営業部に就職しました。

仕事は地方の営業所から始め、名古屋、福岡、仙台の支店を5年間かけて回りながら、経験を積みました。最終的には本部で部長職に昇進しましたが、取締役にはなれず、60歳で定年を迎えることになります。定年後は、豪華な高級マンションに住むことができましたが、送別会でもらった花束以外は特に大きな成果もなく、恋人も友達もいません。親や兄弟もすでに他界しており、孤独感を強く感じていました。

毎日、朝早く起きて新聞に目を通し、散歩をしてから図書館で正午のチャイムを聞き、その後は定食屋でランチを楽しむのが日課です。午後は近所の公園や映画館で時間を過ごします。このような日々がこれから先も続くのかと思うと、不安が募っていきました。

ある日、いつものようにデパ地下で個食用の総菜を買って帰ろうとしたところ、普段は見かけない赤ちょうちんの屋台を見つけました。興味を持ち、そこに立ち寄り、おでんとコップ酒を注文しました。店主は和郎さんの沈んだ表情に気づき、1枚のチラシを手渡しました。

チラシには「メモリー・ラボ」と書かれており、楽しい思い出を得て、嫌な記憶は捨てることができると説明されていました。住所は駅近くの裏通りにある雑居ビルの2階で、受付時間は午前9時から午後3時まで、定休日は土曜日と日曜日です。

和郎さんはチラシをもとに、「メモリー・ラボ」を訪れることに決めました。ビルの2階に上がると、白衣を着た助手がボードと鉛筆を持って現れ、和郎さんの氏名や連絡先を記入しました。その後、和郎さんは奥の部屋に通されました。そこで出会ったのは、施設の責任者である田中さんです。田中さんは、他人から提供された記憶を貯蔵・移植することを商売にしており、代金は8万円です。アイマスクとヘッドフォンを装着し、約1時間で記憶の移植が行われました。

しかし、2日経っても特に変わったことは感じられず、和郎さんは詐欺に遭ったのではないかと疑い始めました。そんな矢先、22〜3歳くらいの八重歯がかわいい女性の横顔が、突然、脳裏にフラッシュバックしました。この女性に対する甘酸っぱい感情が初めて湧き上がり、日常生活にもリズムと潤いが出てきたのです。

和郎さんは、趣味のギターを弾きながら、得意な曲は「フランシーヌの場合」、また愛読書は大江健三郎の「万延元年のフットボール」です。移植された記憶の中で、ぼんやりとした女性の姿が少しずつ具体的になってきました。彼女の名前は「由美」で、無意識にその名前を呼びかけることもあります。

しかし、由美がどこの誰なのかは、田中さんから教えてもらえません。これは、記憶提供者の個人情報を保護するための取り決めによるものです。和郎さんは、メモ帳をポケットに入れて、記憶の中の風景やキーワードを書き留めました。例えば、海沿いの道や古いお城の石垣、電信柱に書かれた町名などです。

営業職で培ったフットワークと勘の良さを生かし、和郎さんは九州地方の名所、江津湖のほとりにたどり着きました。そこで、20メートルほど先の路肩に停車中の白い乗用車を見つけ、運転席には見覚えがない男性が座っていましたが、助手席には由美がいることに気づきました。

和郎さんは、白い乗用車の運転席に座っていた男性と一緒にいた由美の夫、落合弘俊さんと出会いました。弘俊さんはグラフィックデザイナーで、彼女の名前は落合杏里さんです。自宅に招待された和郎さんは、由美が1年前に亡くなっていたことを知らされます。

由美の死に強いショックを受けた和郎さんは、記憶をリセットして別の人生を選ぶことに決めました。ラボを立ち上げたばかりの田中さんは、和郎さんのために手助けをしたのです。田中さんは、和郎さんの高校時代の友人である杏里さんに定期的に施術後の経過を報告していました。

杏里さんは、アルバムを取り出して和郎さんに見せました。アルバムには、若き日の和郎さんと由美さん、結婚式の様子、杏里さんの誕生、子育て、入学式、成長する杏里さん、晩年の由美さんなど、家族3人の日々が詳しく記録されていました。ページをめくるごとに、和郎さんは感情がこみ上げてきて涙が止まりませんでした。

由美さんの死を受け入れることができた和郎さんは、杏里さんの案内で由美さんのお墓参りに行きました。お墓参りを終えた後、和郎さんは東京に戻り、すべての記憶を取り戻すために「メモリー・ラボ」に再度訪れることに決めました。

東京に戻る飛行機の中で、和郎さんはこれからの人生に期待を抱きながら、心の中で新たなスタートを決意します。到着後、田中さんは「メモリー・ラボへようこそ」と出迎えてくれました。和郎さんは、これからの新たな人生に向けて準備を整え、新しい一歩を踏み出すことを決めたのでした。

「メモリー・ラボへようこそ」の感想・レビュー

「メモリー・ラボへようこそ」を読むと、桐生和郎の物語が非常に心に残ります。和郎さんは定年退職後の孤独に苦しんでおり、これまでの人生に満足していないことが描かれています。彼は「メモリー・ラボ」という施設で記憶の移植を試み、新たな人生を模索します。ここでの記憶移植のプロセスや、移植後に浮かび上がる謎の女性「由美」との出会いが、和郎さんの心に大きな変化をもたらします。

物語の中で、和郎さんが赤ちょうちんの屋台で手に入れたチラシが「メモリー・ラボ」への扉を開きます。記憶移植を通じて、新たな感情や過去の真実に向き合うことになります。特に「由美」という女性との出会いは、和郎さんの生活に大きな影響を与えます。由美との関係が進展することで、和郎さんは自分の過去や未来について深く考えるようになります。

物語の最後には、感動的な結末が待っており、和郎さんが新しい人生を選択する様子が描かれています。全体として、孤独や過去の悔いに悩む人がどのように前向きに生きるかを考えさせられる、非常に心に残る物語です。

まとめ:「メモリー・ラボへようこそ」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 桐生和郎は定年退職後の孤独を感じている
  • 「メモリー・ラボ」で記憶の移植を試みる
  • 和郎は新たな人生を模索している
  • 赤ちょうちんの屋台が「メモリー・ラボ」のチラシを渡す
  • 記憶移植後、和郎は謎の女性「由美」に関心を持つ
  • 「メモリー・ラボ」の施設は記憶の刷新を提供する
  • 和郎は過去の真実を追い求める
  • 物語には感動的な結末が待っている
  • 和郎の新たな人生の選択が物語の焦点になる
  • 由美との出会いが和郎の生活に変化をもたらす