「貝に続く場所にて」の超あらすじ(ネタバレあり)

「貝に続く場所にて」は、過去と現在が交錯する独特の物語です。

九年ぶりに再会した野宮と〈私〉は、東日本大震災で失踪した彼がドイツのゲッティンゲンに現れたことから物語が始まります。物語は「惑星の小径」を歩きながら、過去の記憶が蘇る様子を描きます。ウルスラとの面会や不思議なガラクタの話が絡み、ゲッティンゲンの町ではさまざまな過去の記憶がよみがえります。

詳細なあらすじとネタバレが知りたい方は、ぜひご覧ください。

この記事のポイント
  • 「貝に続く場所にて」の物語が過去と現在を交錯させていること
  • 九年前に失踪した野宮がドイツのゲッティンゲンに現れること
  • 物語の舞台「惑星の小径」で過去の記憶が蘇る様子
  • ウルスラとの面会やガラクタの話が物語に絡むこと
  • ゲッティンゲンの町でさまざまな過去の記憶がよみがえること

「貝に続く場所にて」の超あらすじ(ネタバレあり)

七月の初め、ゲッティンゲンの駅で〈私〉はある人物を迎えるために待っていました。場所はドイツの小さな町、ゲッティンゲンです。〈私〉は同居人の犬も一緒に連れて行きました。この犬は、〈私〉が一週間不在の間に面倒を見ていた大切な存在です。

やってきたのは、野宮という名前の男性でした。野宮さんは、もしかすると幽霊のような存在かもしれません。というのも、彼は九年前に発生した東日本大震災で行方不明になったのです。野宮さんと〈私〉は、ゲッティンゲンにある「惑星の小径」と呼ばれる小道を歩きました。この道には、太陽系の縮尺模型が設置されています。木星を過ぎたあたりで、〈私〉と野宮さんはバス停で別れました。野宮さんの家族も一緒に海に流され、彼らの遺体は見つからないままでした。九年が経った今、〈私〉は大学の研究室で一緒だった澤田を通じて、野宮さんがドイツに来ていることを知りました。野宮さんと会ったその晩、澤田から問い合わせがありましたが、〈私〉は野宮さんの様子をうまく説明できませんでした。そのため、ウルスラに相談するための面会予約をしました。ウルスラさんは元教師で、広い人脈を持ち、さまざまな問題に助言をしてくれる頼りになる人物です。

木曜日に、〈私〉はウルスラさんに会いに行きました。ウルスラさんの部屋には本がたくさん積まれており、そこに座って〈私〉は自分の悩みを打ち明けるというよりは、東日本大震災の記憶を思い出しました。ドイツでは地震がほとんど起きないため、地面が安定しているのです。

ウルスラさんは、「過去は誰かの顔や姿を借りるもので、それがぼやけているなら、顔がはっきり見えるまで思い出すことに時間をかける必要がある」とアドバイスしました。〈私〉は、野宮さんがドイツ美術に興味を持っていたことを思い出しました。また、震災の際に体験した苦痛が自分の身体に残っていることを感じました。

その頃、「惑星の小径」に関して奇妙な噂が流れ始めました。それは、かつて撤去された冥王星の模型が元の位置で目撃されたというものでした。さらに、同居人のアガータさんからは、トリュフ犬がガラクタを掘り出すという話を聞きました。アガータさんが掘り出したガラクタを写真に撮っておくと、ウルスラさんの知り合いたちがそのガラクタに強い興味を示しました。どうやら、それらは彼らの記憶に関連する遺物であったようです。ウルスラさんは、アガータさんにガラクタの回収を依頼しました。一方で、〈私〉のもとには野宮さんから何度かメールが届くようになっていました。

冥王星の模型が復活するという噂がゲッティンゲンの町に広まりました。そのため、多くの人々が森に集まりました。模型を見つける人もいれば、見つけられない人もいましたが、森を静かに散策していた人々からはゴミを散らかすことに対する不満の声が上がりました。

野宮さんのメールには「寺田氏」という名前が登場しました。ウルスラさんは木曜会を主宰し、参加者に「貝にまつわるもの」を持参するように呼びかけました。〈私〉はアガータさんと一緒に、貝型のお菓子を焼いて持参しました。ウルスラさんの家には、トリュフ犬が掘り出したガラクタが並べられており、それを大切に持ち帰る人が多くいました。なぜなら、それらのガラクタは彼らの記憶に関連する遺物だったからです。

寺田氏と野宮さんも会に参加しました。寺田氏は、野宮さんがよく読んでいた本の著者、寺田寅彦に似ていることがわかりました。ゲッティンゲンの町では、過去の建物や亡くなった人々の記憶、さらには収容所へ連れて行かれたユダヤ人たちの足音もよみがえってきました。ある朝、〈私〉の背中に歯が生えて、アガータさんに抜いてもらいましたが、それが自分の記憶と関連しているのか、ウルスラさんに尋ねても答えは得られませんでした。ウルスラさんのもとに来ていた寺田氏は、師の夏目漱石が病気であると静かに語っているだけでした。

ある木曜日、〈私〉はウルスラさんのところに行きました。そこで、トリュフ犬が掘り出したというふたつの乳房を見せられました。ウルスラさんによると、これらはアガータさんの記憶に関連するものでした。アガータさんの母親は晩年に乳ガンにかかり、乳房を切断した後にガンの転移が発覚し、自殺したのです。アガータさんは、その後姉とも疎遠になりました。母の乳房はアガータさんにとって、非常に痛ましい記憶となっています。

別の日には、ウルスラさんの木曜会の参加者数名を誘って、冥王星の模型を見に行くピクニックが催されました。寺田氏と野宮さんも参加しました。ゲッティンゲンの町では、さまざまな過去の記憶が再現されました。戦前の駅、東日本大震災でひび割れた地球の模型、踊り手たちの姿、中世の人々など、様々な時代の記憶がよみがえりました。森の中で冥王星の模型を見つけると、ウルスラさんはそこで陣取り、みんなに塔の見物を促しました。塔の中では、百年以上の時間が流れていき、寺田氏の姿は次第に消えていきました。〈私〉は九年前の震災の記憶と折り合いをつけることができました。野宮さんの姿はぼやけて溶けていく中、〈私〉は塔から見える遠くの空間と時間に見入っていました。

ゲッティンゲンの町で過去の記憶が次々と再現される中で、〈私〉は自分自身の内面でも変化を感じました。九年前の震災の記憶と向き合い、自分の感情と折り合いをつけることができたのです。野宮さんの存在が徐々に消えていく中で、〈私〉は町の歴史や記憶に深く関わりながら、未来に向けて新たな一歩を踏み出す準備が整いました。

「貝に続く場所にて」の感想・レビュー

「貝に続く場所にて」は、感情深い物語で、多くの魅力があります。物語の舞台はドイツのゲッティンゲンで、九年前の東日本大震災で行方不明になった野宮と〈私〉が再会するところから始まります。この再会は、過去の記憶や感情を掘り起こすきっかけとなり、物語に深みを加えています。

「惑星の小径」という場所が物語の重要な舞台となり、ここで過去の記憶が次々と蘇ります。太陽系の縮尺模型が並ぶこの小道は、過去と現在が交錯する象徴的な場所です。特に、冥王星の模型にまつわる噂が広がり、町の人々がその再現を求めて集まる場面は、非常に興味深いです。

ウルスラというキャラクターも物語に重要な役割を果たします。彼女は元教師で、広い人脈と経験を持つため、〈私〉が直面する問題に対して的確なアドバイスを提供します。ウルスラの部屋に積まれた本や彼女のアドバイスは、物語に深い意味を与えています。

また、アガータのトリュフ犬が掘り出したガラクタの話も印象的です。これらのガラクタが、過去の記憶や重要な遺物と関連していることが明らかになるシーンは、物語の神秘的な要素を強調しています。特に、アガータの母親に関する話は感情的で、読者の心に深く残ります。

物語の中で、ゲッティンゲンの町が過去のさまざまな記憶を再現する様子も興味深いです。戦前の駅や震災でひび割れた地球の模型、さらには中世の人々の姿など、町の風景が時間を超えて蘇ります。これにより、物語は単なる再会の話を超えて、時間や記憶に対する深い考察を提供します。

全体として、「貝に続く場所にて」は過去の記憶と現在の出来事が交錯する、非常に深い物語です。登場人物たちの感情や記憶が丁寧に描かれ、物語にリアリティと深みを加えています。

まとめ:「貝に続く場所にて」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 「貝に続く場所にて」は過去と現在が交錯する物語である
  • 主人公〈私〉が九年ぶりに失踪した野宮と再会する
  • 野宮は東日本大震災で行方不明になっていた
  • 物語の舞台はドイツのゲッティンゲンである
  • 「惑星の小径」が過去の記憶を呼び起こす場所である
  • ウルスラが重要なアドバイザーとして登場する
  • アガータのトリュフ犬が掘り出すガラクタが話の鍵となる
  • ゲッティンゲンの町で過去の記憶が再現される
  • 冥王星の模型に関する噂が町で広がる
  • 寺田氏と夏目漱石に関連するエピソードが含まれる