グラスホッパー(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

『グラスホッパー』は伊坂幸太郎の著名な小説で、その緻密なストーリーと独特のキャラクターが魅力です。

この作品の中心には、愛する妻を轢き逃げで失った元教師の鈴木が復讐を誓い、事件の真相を追い求める姿が描かれています。鈴木が潜入する「フロイライン」という企業や、冷酷な殺し屋である蝉、特殊な能力を持つ鯨など、多彩なキャラクターが絡み合い、物語は複雑に展開します。

この記事では、『グラスホッパー』のあらすじとネタバレを詳細に解説し、物語の魅力を余すことなくお伝えします。ぜひ、物語の核心に迫るこの解説をお楽しみください。

この記事のポイント
  • 『グラスホッパー』の主要なストーリーライン
  • 登場人物の背景と関係性
  • 鈴木の復讐の動機と行動
  • 鯨と蝉の役割と特徴
  • 物語の結末と主要な出来事

グラスホッパー(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

第1章: 復讐の始まり

鈴木は元教師で、幸せな家庭を持っていました。しかし、ある日、最愛の妻が轢き逃げされて亡くなってしまいました。深い悲しみと怒りに包まれた鈴木は、妻を殺した犯人を見つけ出し、復讐することを決意します。

鈴木は調査を進めていく中で、犯人が寺原という人物であることを突き止めました。寺原の父親は「フロイライン」という会社を経営しており、鈴木はこの会社に潜入することを計画します。

フロイラインは表向きは普通の会社に見えますが、実際には違法な薬物を扱う怪しい企業でした。鈴木は入社した直後から、周囲の社員たちに疑われるようになります。特に先輩社員の比与子は、鈴木を試すために厳しい試練を与えました。

ある日、比与子は若い男女を睡眠薬で眠らせ、鈴木に彼らを誘拐させました。そして、比与子は鈴木に対して「この男女を殺してみせろ」と脅します。鈴木は困惑し、どうするべきか悩みました。

その時、寺原の長男が現れました。寺原の長男は鈴木が本当に人を殺せるのか確認しようとしましたが、突然誰かに押されて車道に飛び出し、車に轢かれてしまいました。鈴木は驚き、すぐにその犯人を追いかけ始めます。

鈴木は犯人を追跡する中で、その現場近くのホテルの25階にいる大男の鯨という人物に気づきます。鯨はその時、自殺幇助の仕事をしていました。彼には人を絶望的な気持ちにさせ、自殺に追い込む能力がありました。

鯨は下を見下ろしていると、人混みから飛び出した寺原長男と、それを押した犯人の姿を目撃しました。鈴木は必死に犯人を追い続け、ついにその居場所を突き止めました。しかし、すぐには比与子に教えませんでした。フロイラインのやり方を知っている鈴木は、もし犯人が本当に押し屋(人を突き飛ばすことで事故を起こす仕事)でない場合、無実の人が拷問される可能性があると考えたからです。

このようにして、鈴木の復讐の物語は始まりました。彼は妻を殺した犯人を見つけ出すため、そして真実を明らかにするために、困難な道を進んでいくのです。

第2章: 鯨の登場

ホテルの25階では、大きな体を持つ鯨という男がいました。鯨は自殺幇助の仕事をしていて、特別な能力を持っていました。彼は話している相手をとても悲しい気持ちにさせ、自殺するしかないと思わせる力がありました。この力を使って、鯨は自殺を手伝う仕事をしていました。

その日も、鯨は自殺を手伝うために、依頼された相手と話していました。彼の言葉を聞いた相手は、絶望し、自ら命を絶つ決意をしました。鯨はその仕事を終え、ホテルの部屋から下を見下ろしていました。

その時、鯨はホテルの前で起きた出来事を目撃しました。人混みの中から飛び出してきた寺原長男と、彼を押し出した犯人の姿が見えたのです。寺原長男は車に轢かれ、大変な状況になっていました。

一方、鈴木はその犯人を追いかけていました。犯人を見失わないように必死でしたが、犯人がどこに向かったのかをついに突き止めました。しかし、鈴木はすぐにフロイラインの比与子にその居場所を教えませんでした。なぜなら、フロイラインの社員たちは犯人を捕まえると厳しく拷問するかもしれないと考えたからです。鈴木は確実に犯人が押し屋であると確認するまでは、情報を明かさないことにしました。

鯨が見た押し屋には、家族がいました。鈴木はそのことを知り、手荒なことをしないで、まずは冷静に押し屋かどうかを確認しようと決めました。

鯨はその後も自殺幇助の仕事を続けていましたが、ふと自分の目撃した出来事が気にかかりました。寺原長男と押し屋の姿が頭から離れず、何かが動き出しているように感じました。鈴木の復讐の道と鯨の自殺幇助の仕事、この二つの物語が交差し始めた瞬間でした。

鈴木は、押し屋を突き止めたことを隠しながらも、その正体を確かめるためにさらに調査を続けます。一方で鯨も、自分の目撃した出来事が気になり始め、物語はさらに深まっていきます。この章では、鈴木と鯨の運命が徐々に交錯していく様子が描かれます。

第3章: 蝉の仕事

水戸での一家惨殺の仕事を終えた蝉は、雇い主の岩西から報酬を受け取っていました。蝉はプロの殺し屋で、冷酷な性格を持っています。岩西との会話の中で、岩西が「相手を殺すときに何を考えているのか」と尋ねました。蝉は「特に何も感じない。罪悪感もなく、軽い気持ちで殺している」と答えました。この言葉からも、蝉がどれほど冷酷な人物かがわかります。

蝉が自分のアパートに帰った直後、再び岩西から電話がかかってきました。今度は、梶という政治家から「鯨」という別の殺し屋を殺す依頼が来たと言います。蝉は連続しての依頼に苛立ちましたが、岩西は「昨日、同じ業界の寺原長男が殺されたため、業界全体が慌ただしいのだ」と説明しました。

蝉は指定された場所に向かう途中で寄り道をしたため、約束の時間に遅れてしまいます。その間に、鯨は梶から秘書を殺す依頼を受けていました。梶と会った鯨は、梶の態度と依頼内容に何か怪しいものを感じ取りました。鯨は「自分が信用されていない」と感じ、梶が自分を殺すために別の殺し屋を雇ったのではないかと疑いました。鯨はこの疑いを確かめるため、梶を自殺に追い込むことにしました。

蝉が遅れて待ち合わせ場所に到着すると、依頼人の梶が首を吊って自殺していました。蝉は困惑し、何が起きたのか理解できませんでした。そこで、蝉は情報を集めるために行きつけのポルノ雑誌店に行きました。店で情報を集める中で、寺原長男の事件と業界の動向について知ることができました。

蝉はその結果、フロイラインの社員の中で押し屋の居場所を突き止めた者がおり、その人物が呼び出されるという情報を得ました。蝉は自身の失敗を取り戻すため、寺原長男の仇を討つことを決意しました。

一方、鈴木は押し屋の後をつけ、居場所を突き止めていました。しかし、押し屋には家族がいることがわかり、鈴木は彼が本当に押し屋なのかを確認するのをためらいました。そこで、鈴木は押し屋の家を訪れ、家庭教師として自分を雇わないかと提案しました。押し屋は槿と名乗り、一応話を聞いてくれました。

鈴木は口からでまかせを言いながら、なんとか家庭教師として雇ってもらえるように頼むと、槿の息子の健太郎が「サッカーをしよう」と言い出しました。鈴木と健太郎はサッカーをしながら、槿に家庭教師として雇ってもらえるかどうかを検討してもらうことにしました。

サッカーをしている間、鈴木は亡き妻のことを思い出しました。妻との思い出が蘇り、鈴木は一瞬心が温かくなりました。しかし、復讐のための決意は変わりませんでした。

この章では、蝉の冷酷な性格とプロフェッショナルな仕事ぶり、そして鈴木の葛藤と決意が描かれます。物語はさらに複雑になり、鈴木と蝉の運命が交差し始める様子が詳しく描かれています。

第4章: 鈴木と槿の対峙

鈴木は押し屋である槿の家を訪ね、家庭教師として自分を雇わないかと提案しました。槿は最初は警戒していましたが、鈴木の真剣な態度を見て話を聞いてくれました。鈴木は家庭教師としての経験を語り、押し屋であることを疑っている槿の信頼を得ようと努力しました。

槿には妻のすみれと息子の健太郎がいました。家庭的で穏やかな雰囲気の中、鈴木は緊張しながらも何とか話を進めました。健太郎が「サッカーをしよう」と言い出し、鈴木はそれに応じて健太郎と一緒に外でサッカーをすることにしました。この時間を使って、槿が家庭教師として鈴木を雇うかどうかを検討することになりました。

サッカーをしている間、鈴木は妻との思い出にふけりました。健太郎と遊ぶことで、自分の亡き妻との幸せな時間を思い出し、心が温かくなりました。しかし、復讐の決意は変わりません。鈴木は自分が家庭教師として雇われることで、槿が本当に押し屋であるかどうかを確認しようとしていました。

サッカーの後、槿の家で夕食を共にすることになりました。すみれが手料理をふるまってくれ、その家庭的な雰囲気に鈴木は一瞬心を和ませました。槿の家族は鈴木を警戒しながらも、少しずつ打ち解けていきました。鈴木もまた、この家族に対して複雑な感情を抱きながらも、復讐のために冷静でいようと努めました。

しかし、比与子からは頻繁に電話がかかってきました。比与子は早く押し屋かどうかを調べるよう催促してきます。すでにフロイラインの社員が二人も寺原に殺されているため、状況は非常に緊迫していました。さらに、寺原長男が奇跡的に意識を吹き返したという情報が入り、鈴木はその真偽を確かめたくなりました。

鈴木は一旦槿の家を出て、比与子に会いに行くことにしました。待ち合わせ場所へは槿が車で送ってくれました。車の中で、鈴木は槿に直接押し屋かどうかを確認しようとしましたが、最後までその勇気は出ませんでした。槿もまた、鈴木の真意を探るような視線を送りながら、何も言いませんでした。

喫茶店で比与子と会うと、寺原長男が生き返ったという話は鈴木を誘き出すための嘘だと判明しました。比与子は鈴木に睡眠薬を飲ませ、鈴木は意識を失って拉致されてしまいました。

この章では、鈴木と槿の間で繰り広げられる緊張感と、鈴木の葛藤が描かれます。鈴木は家族の温かさに触れながらも、自分の復讐の決意を再確認し、物語はさらに緊迫した展開へと進んでいきます。

第5章: 終わりと新たな始まり

鯨は自身を狙った犯人を突き止めるため、梶の電話の履歴から依頼先を調べ、岩西のマンションにたどり着きました。鯨は岩西を脅し、自分を殺そうとした実行犯が蝉であることを聞き出しました。そして、鯨は岩西に自殺するように仕向け、岩西はマンションから飛び降りて命を絶ちました。

一方、蝉は、ちょうど鈴木がビルに運び込まれるところに到着しました。比与子と二人の男が鈴木をビルに連れ込む直前、蝉が乱入し比与子を殴り、男たちをナイフで殺しました。蝉は鈴木の拘束を解こうとしている間に、比与子は逃げていきました。しかし、蝉は比与子が逃げたとしても大きな問題にはならないと判断し、追いませんでした。

蝉は鈴木を連れ、車で押し屋のもとへ向かおうとしました。しかし、その車に鯨が隠れて待ち伏せていました。鯨は蝉を急襲し、蝉は意識を失いました。鯨は意識を失った蝉を杉林まで引きずっていきました。蝉が意識を取り戻し、ナイフで鯨に対抗しましたが、鯨は拳銃を使って蝉を射殺しました。

その後、鯨は車に戻り、逃げた比与子を見つけました。鯨は比与子を脅し、共に押し屋のもとへ向かうことにしました。一方、鈴木は槿に助けられ、槿の家へと向かいます。槿との会話の中で、鈴木は槿が最初から家庭教師だとは信じておらず、槿が押し屋であり、家族も「劇団」と呼ばれる組織の人間だと知らされます。鈴木が槿を尾行できたのも、槿がわざと隙を作っていたからであり、逆に寺原に近づくためのきっかけを作ろうとしていたとのことでした。

鈴木はフロイラインが襲ってくるかもしれないと焦りますが、槿は終始落ち着いており、家族にも全く焦りの色が見えませんでした。槿の家に到着すると、健太郎が鈴木の携帯を盗んでおり、比与子に偽の住所を教えたことが分かります。鯨と比与子が到着した場所は昆虫シールを扱う会社であり、比与子は会社からの電話で寺原が死亡したと聞かされます。鈴木と共に拉致した若い男女が実はスズメバチと呼ばれる殺し屋であり、毒殺されたというのです。

鯨は日頃から悩まされていた幻覚症状が酷くなり、先程殺したばかりの蝉に、鈴木が指輪を探しに戻ってくるはずだと幻覚で助言されます。鈴木もまた、なくした指輪を探しに戻ってきたところで鯨と出会いました。鯨の力により鈴木は自殺しそうになりますが、妻の声が聞こえ、踏みとどまります。逆に鯨が車に轢かれてしまい、その場で命を落としました。

その後、鈴木は復讐の終わりを迎えました。妻のために戦ってきた鈴木は、過去を乗り越えて前向きに生きることを決意しました。新しい生活を始めることで、鈴木は新たな希望を見つけ、これからの人生を大切にしようと心に誓いました。

この章では、鈴木が復讐の終わりを迎え、新たな始まりに向けて歩み出す姿が描かれます。鈴木の物語はここで一つの区切りを迎え、彼の新しい人生が始まるのです。

グラスホッパー(伊坂幸太郎)の感想・レビュー

『グラスホッパー』は、伊坂幸太郎の作品の中でも特に緊張感とサスペンスが高い小説です。この作品では、愛する妻を失った元教師の鈴木が復讐のために動き出す姿が描かれています。鈴木が潜入する「フロイライン」という企業は、表向きは普通の会社ですが、実は違法な薬物を扱う怪しい組織です。鈴木がこの企業で直面する試練や、先輩社員の比与子との対立は非常にスリリングです。

物語の中で特に印象的なのは、鈴木の冷静な判断力と決意です。彼は感情に流されることなく、慎重に状況を見極めながら行動します。また、鈴木が出会う鯨という自殺幇助の仕事をしている男や、冷酷な殺し屋の蝉も物語に深みを与えています。鯨は特別な能力を持っていて、話すだけで相手を絶望に追い込みます。一方の蝉は、プロの殺し屋としての冷徹さが際立っています。

物語が進むにつれ、鈴木の復讐心と葛藤が描かれ、読者は彼の心情に共感します。特に、槿という押し屋との対峙は緊迫感があり、鈴木が家庭教師として押し屋の家に潜入するシーンは手に汗握る展開です。家族とのふれあいや、亡き妻との思い出が交錯し、鈴木の人間らしさが垣間見えます。

最後に、鈴木が復讐を終え、新たな生活を始める決意をする場面は感動的です。過去の悲しみを乗り越え、前向きに生きることを選んだ鈴木の姿に、希望を感じます。この作品は、サスペンスやアクションだけでなく、人間ドラマとしても非常に優れた内容になっています。伊坂幸太郎の巧みなストーリーテリングにより、一気に読み進められる一冊です。

まとめ:グラスホッパー(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 鈴木の妻が轢き逃げされ、復讐を決意する
  • 鈴木がフロイラインという怪しい会社に潜入する
  • 鈴木が先輩社員の比与子に試される
  • 比与子が鈴木に若い男女を殺すよう命じる
  • 寺原の長男が車に轢かれる事件が起きる
  • 鯨が自殺幇助の仕事をしている
  • 鯨が寺原長男と押し屋を目撃する
  • 鈴木が押し屋の正体を確認しようとする
  • 鯨が蝉に襲われ、蝉を射殺する
  • 鈴木が復讐を終え、新しい生活を始める