「この世界の片隅に」は、戦時中の広島を舞台に、主人公・浦野すずの波乱に満ちた人生を描いた感動的な物語です。すずは9歳の頃から、戦争の影響を受けながらも、懸命に生き抜く姿が描かれています。嫁入りしてからの新しい生活、戦時中の苦しみ、そして戦後の新たな希望に向けての再出発が物語の中心です。
物語は、すずの幼少期から始まり、18歳での結婚、戦争の悲惨さ、そして戦後の生活までを詳細に描いています。戦争に翻弄されながらも、すずが家族や周囲の人々と支え合い、成長していく過程が感動的に綴られています。日常の小さな幸せや苦しみを織り交ぜながら、すずの強さと優しさが物語の随所に現れます。
この物語を通して、戦争の影響やその中で生き抜く人々の苦悩、そして家族や仲間との絆の大切さが伝わります。「この世界の片隅に」は、戦時下での生活を知りたい人や感動的な人間ドラマを求める人にとって必見の作品です。
- 「この世界の片隅に」の物語全体
- 主人公すずの結婚と戦時中の生活
- 戦争による家族の影響
- 戦後のすずの生活と再出発
- すずの成長と周囲の人々との絆
「この世界の片隅に(映画)」の超あらすじ(ネタバレあり)
嫁入り前のすずと子ども時代の思い出
すずは9歳の頃、兄の代わりに海苔を納品するためのおつかいを任されます。しかし、納品先の店を探すうちに迷子になってしまい、道を聞いた相手に望遠鏡を渡される場面があります。彼に肩車され、そこで出会った少年と交流します。少年は「人さらいに捕まった」と話し、すずは機転を利かせて、その人さらいを眠らせ、二人で逃げ出します。別れ際、少年はすずの名前を言い当て、不思議がるすずに「股引に名前が書いてあった」と告げて去ります。
その後、すずは10歳になり、兄や妹と一緒に叔父の家を訪ねます。そこでは昼寝の後に、すずだけが見かけた座敷童子のような女の子が現れるという不思議な出来事がありました。家族はその話に驚き、すずが見たという少女が「座敷童子」かもしれないと話題にします。すずにとって、その出来事はどこか夢のような不思議な記憶として残ります。
さらに、12歳になったすずは、学校での勉強こそ得意ではありませんが、絵を描く才能が開花します。図画の時間には校舎の絵を描き、クラスメートや教師に称賛されます。同級生の水原とも交流が深まり、彼の家庭の事情にも心を寄せるようになります。すずは、水原の頼みで彼の絵を代わりに描き、「白うさぎのような白波」を表現することで、その感性を示します。この経験はすずの幼少期における大切な思い出の一つとなります。
18歳の結婚と新しい生活
18歳になったすずは、妹と一緒に叔母の家で海苔摘みを手伝っていました。そこへ、突然叔母が慌てて帰宅し、「すずを嫁に欲しいという人が来ている」と告げます。すずは帰宅の準備を急ぎ、祖母からは花柄の着物を贈られます。そして結婚についての助言を受けますが、何を言われても「何でも」とはぐらかされるため、すずは困惑します。
家に戻ると、見知らぬ青年・周作が待っており、両親はすでに縁談を受け入れたと告げられます。すずは何が起こっているのかよく理解できないまま、トントン拍子に結婚が決まります。結婚式当日は粛々と進行し、無事に新しい生活が始まります。結婚初夜、すずは周作に「どこかで会ったことがあるのか」と尋ねます。周作は「小さい頃に会った」と話し、記憶にないすずに「よう来てくれた」と優しく接し、二人の間に少しずつ絆が芽生えます。
結婚後、すずは北條家での生活に徐々に慣れようと努力します。周作の父は軍の工場で技師として働いており、母は足を痛めているため、家事はすずが担当します。配給当番や焼夷弾の講習にも出る必要があり、すずは忙しい毎日を送ります。周作の姉・黒村径子の機転で里帰りする機会もありましたが、慣れない環境や責任に押しつぶされそうになることもあります。そんな中、すずの体に10円ハゲができてしまいますが、周作や家族の支えを受けながら、すずは前を向いて歩んでいきます。
戦時中の苦しみとすずの葛藤
戦争が激化し、すずの日常生活は一層厳しいものとなります。配給も滞りがちで、すずは近所のおばさんから食べられる野草や工夫した炊飯方法を教わり、何とか日々の食事作りをこなします。また、防空壕を作ったり、空襲に備える生活が続きます。そんな中、周作がすずを気遣い、二人で外に出かけます。すずが幼少時に迷子になった橋で、二人は思い出話をしながら互いの絆を確かめ合います。
しばらくして、かつての同級生・水原が海軍の水兵として帰ってきます。すずを訪ねてきた水原に、周作はすずの異なる表情を感じ取り、心中で複雑な思いを抱えます。その夜、周作は「もう会えないかもしれないから」と二人を二人きりにし、すずと水原に積もる話をさせます。水原に寄り添うすずでしたが、最終的には自分の心に正直になり、水原を受け入れることはありませんでした。翌朝、水原は静かに去り、すずは何事もなかったかのように日常を続けます。
その後、空襲が頻発するようになり、ついにすずと家族にも大きな試練が訪れます。周作の父が工場から帰ってこず、生死も分からない状態が続く中、すずは周作の姉・径子とその娘・晴美と一緒に出かけます。しかし、駅での空襲に巻き込まれ、すずは右手を失い、晴美は亡くなってしまいます。この出来事はすずにとって大きな心の傷となり、今後の生活に暗い影を落とすことになります。
終戦と新たな希望
晴美を守れなかったことで、すずは径子から責められ、自分自身でも強い罪悪感を抱えます。空襲は続き、北條家にも焼夷弾が落ちますが、すずは必死に家を守ろうとします。右手を失ったことに絶望しつつも、これまでの人生で右手を使ってきた様々な出来事を思い出し、少しずつ立ち直る決意を固めます。その矢先、妹から広島に帰るように促され、すずは一度は浦野家に戻ることを決意します。
しかし、身支度を整えている最中、径子が晴美のことで謝罪し、すずの髪を編んでくれます。そんな時、空に光が走り、広島に原爆が投下されたことを知ります。この光景を見て、すずは北條家に留まることを決意し、再び生活を共にする覚悟を固めます。すずの心は激しく揺れながらも、家族と共に困難に立ち向かおうとする意志が芽生えます。
8月15日、玉音放送を皆で聞き、戦争の終わりを感じますが、すずは戦争が終わっても自分たちの命がまだ続いていることに戸惑います。戦後、食料不足に苦しむ中でも、すずと周作は助け合いながら生活を続けます。ある日、周作と広島で待ち合わせたすずは、母を亡くした小さな女の子に出会い、その子を呉に連れて帰ります。北條家はこの女の子を温かく受け入れ、新たな家族として迎え入れます。悲しみの中にも、新しい希望が生まれる瞬間でした。
「この世界の片隅に(映画)」の感想・レビュー
「この世界の片隅に」は、戦時中の広島を舞台に、主人公・浦野すずの波乱に満ちた人生を丁寧に描いた感動的な作品です。すずの幼少期から結婚、戦争の激しさを体験し、最終的に新たな希望を見つけるまでの物語は、観る者の心を揺さぶります。すずは9歳の頃、迷子になりながらも人さらいから逃げ出すという冒険を経験し、その後の人生の困難を乗り越える強さを持ち続けます。特に絵を描くことが得意なすずの姿は、日常の小さな幸せを大切にする彼女の内面を象徴しています。
18歳で突然結婚が決まったすずは、北條周作と共に新しい生活を始めます。慣れない土地での生活に戸惑いながらも、家事や戦時中の配給に追われる日々が描かれ、すずの成長が感じられます。周作との関係も少しずつ深まり、夫婦としての絆が育まれる様子は、戦時中の不安定な日々に彩られながらも心温まる瞬間です。
しかし、戦争が激化し、すずの生活は次第に厳しくなっていきます。水原との再会や、空襲による右手の喪失、晴美の死といった悲劇がすずに重くのしかかります。戦争が人々に与える悲しみや苦しみが痛切に伝わってきますが、それでもすずは懸命に生き抜こうとする姿勢を貫きます。特に、右手を失った後も「この家を守る」という決意を見せる場面は、すずの強さと責任感を表しています。
終戦後、すずは新しい生活に向けて動き出します。周作と一緒に戦後の苦しい時代を乗り越え、小さな女の子を新たな家族として受け入れるシーンは、すずが再び希望を見出した瞬間です。家族や仲間との絆が新たに強まり、北條家に明るい未来が訪れることが感じられます。
「この世界の片隅に」は、戦争の悲惨さと共に、日常の大切さや家族との絆の深さを描いた作品です。すずの成長と周囲の人々との関わりを通して、私たちが今生きている世界の片隅にも、同じような大切なものがあることを思い出させてくれます。
「この世界の片隅に(映画)」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- すずは9歳の頃、迷子になり人さらいから逃げる
- 10歳ですずは座敷童子に出会う
- 18歳で周作と突然の結婚が決まる
- すずは北條家の家事を担当しながら生活を始める
- 戦況が悪化し、食事作りに工夫を凝らす
- 水兵となった水原がすずを訪ね、心が揺れる
- 空襲で右手を失い、晴美を亡くす
- 晴美を守れなかったことに責任を感じるすず
- 広島に原爆が投下され、北條家に留まる決意をする
- 戦後、小さな女の子を受け入れ、新たな希望が生まれる