
『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91』に登場するクラスターガンダムは、サナリィが開発したガンダムF90のバリエーション機の1つで、高い汎用性と戦闘能力を誇ります。第二章「クラスターガンダム編」でその姿を現し、型式番号はRX-90Y、主なパイロットはウォルフ・ライルです。Yタイプと呼ばれるミッションパックを装備することで、様々な戦況に対応できる万能機として活躍します。
クラスターガンダムのパイロット「ヴォルフ・ライル」
ヴォルフ・ライルとは
ヴォルフ・ライルは、宇宙世紀を舞台としたガンダムシリーズに登場する地球連邦軍のMSパイロットです。階級は少尉。卓越した操縦技術と任務遂行能力を持ちながらも、型破りな行動で周囲を翻弄する、まさに「問題児」と呼ぶにふさわしい人物です。本稿では、彼の活躍を描いた作品を中心に、その人物像、搭乗機体、作中での活躍、そして関連情報などを詳しく解説していきます。
- 高い操縦技術: 初めて搭乗したクラスターガンダムを完璧に操縦し、デス・ガンズを撃破するなど、卓越したMS操縦技術を持っています。 機体を分身させるような高度な操縦もこなします。
- 優れた戦闘能力: ドドンガとの銃撃戦で見せたように、銃の腕前も優れています。身長は低いが身のこなしは軽く、 特殊工作任務も易々とこなす戦闘のプロです。
- 問題児: 型破りな行動や言動が多く、周囲からは問題児として扱われています。 任務遂行のためには手段を選ばない一面もあります。
- 熱血漢: 根は熱血漢であり、仲間思いな一面も持ち合わせています。 困難な任務にも果敢に挑戦し、決して諦めません。
登場作品と活躍
ヴォルフ・ライルは、主に以下の作品に登場します。
機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91’s Ghost
彼の外見や性格が初めて設定されたのは、漫画作品『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91’s Ghost』です。
作中では、クロスボーン・バンガードに見つかる前に資料を回収するという極秘任務を帯びて、フロンティアIに潜入します。サナリィの施設から「フォーミュラ計画」のメモリーチップを回収することに成功しますが、警戒中の兵士に見つかり追跡されます。その際、残りの資料を焼却するために仕掛けた時限爆弾の量が多すぎて施設を爆破してしまうという、ドジな一面も見せています。
その後、「死神三銃士“デス・ガンズ”」のドドンガとの銃撃戦で利き腕を負傷しながらも、二発の銃弾を撃ち込みドドンガを射殺。さらに、脱出の際に爆風で火傷を負いながらも、コア・ブースターで暗礁宙域に隠されたクラスターガンダム本体にたどり着き、ドッキングに成功します。
初めて搭乗するクラスターガンダムを完璧に乗りこなし、デス・ガンズを全滅させ、クロスボーン軍の追撃部隊を撤退させるという活躍を見せます。
機動戦士ガンダムF90 Cluster
『機動戦士ガンダムF90 Cluster』では、プロローグのFormula 91’s Ghostパートに登場します。この作品での具体的な活躍は描かれていませんが、クラスターガンダムに搭乗していることが示唆されています。
クラスターガンダムの機体スペック
- 頭頂高:15.0m
- 本体重量:9.7t
- 全備重量:26.5t
- ジェネレーター出力:4,550kW
- 装甲材質:ガンダリウム合金セラミック複合材
- スラスター総推力:120,760kg
クラスターガンダムの武装
- バルカン砲:頭部に内蔵された近接防御用の機関砲。上下の砲門のどちらが実体弾、ビームなのかは不明。ユニット構造で口径の異なるバルカンの交換が可能という説もある。
- ビームライフル:F91に装備されたものの改良型。センサー類とコンデンサー関連の改良により命中精度と連射機能が強化されている。
- ビームサーベル:コアブースター部であるY型仕様バックパックにビームガン兼用型として装備されている。オプション装備扱い。
- 連装ミサイルランチャー:両肩に装備されたミサイルランチャー。
- メガビームバズーカ:本機の主兵装である大型ビームバズーカ。大容量メガコンデンサーを搭載し、腰部ハードポイントに接続される。旧プラモデルキットでは腰部ハードポイントに直付けだったため、マニピュレーターがトリガーに届かず、本体制御のトリガーレスでの射撃だった。MG版では腰部ハードポイントに新規の接続アタッチメントが接続され、トリガーが届く位置に接続されるようになった。
- ビームバルカン:メガビームバズーカに内蔵されたビーム砲。
- 携行式ビームシールド:マニピュレーターに装備するビームシールド。マニピュレーターエネルギー供給コネクターを装備している。
クラスターガンダムの開発経緯
クラスターガンダムは、F90のコア・ブロック・システムの実現を目的とした機体です。
その開発は、未完成だったF90の3号機をベースに、Yタイプ(ヤングスタータイプ)ミッションパックを実装するために進められました。F90 III、F90Yとも呼ばれ、F90 IIIYと表記されることもあります。コアファイターは、胴体部に水平に内蔵する方式を採用しています。バイオコンピュータの換装やM.E.P.E.の発生は、F91やF90 IIと同様です。
コア・ブロック・システムは、その後のF97にも採用され、ガンダムシリーズにおける技術的進化の一例を示しています。また、主兵装のメガビームバズーカは、その後の機体にも採用されるほどのロングセラー商品となりました。資料によると、クラスターガンダムは3機存在すると考えられています。1号機は未完成でしたが、3号機であるF90は完成し、実戦に投入されました。
クラスターガンダムのデザインの特徴
クラスターガンダムのデザインは、F90をベースにYタイプミッションパックを装着した形態です。
最大の特徴は、コアファイターを水平に胴体部に内蔵している点です。これは他のガンダムタイプには見られない独特な構造で、機体のシルエットを小さくすることで被弾率を低下させ、空力特性を向上させる効果も期待されていました。この水平内蔵方式は、アナハイム・エレクトロニクス社への情報漏洩を防ぐという名目で採用されましたが、その裏には、シルエットフォーミュラ計画への対策という意味合いもあったと考えられます。
また、クラスターガンダムは、メガビームバズーカや携行式ビームシールドなど、高性能な武装を装備している点も特徴です。これらの武装により、高い戦闘能力を発揮することが可能となっています。
さらに、バリエーション機として「F90Y改 試製トップファイター」が存在します。この機体は、Vガンダムのデザインを意識した形状が特徴です。
クラスターガンダムの設定上の裏話
クラスターガンダムの初期デザインは未完成でした。コアファイターを水平に胴体部に内蔵したという設定は、表向きはアナハイムへの情報漏洩を防ぐためとされています。しかし、実際の理由は、F90 IIの脱出システムが破損し、使用できなかったためでした。
そのため、クラスターガンダムのコアファイターは小型で、武装もありません。コアファイターは、移動式の脱出ポッドとして設計されたのです。また、クラスターガンダムの開発は、F90 IIがオールズモビルに奪取され、改造されたことを受けて、急ピッチで進められました。設定上の理由と実際の理由の食い違いは、ガンダムシリーズの開発秘話として興味深い点です。
クラスターガンダムのモデルキット
クラスターガンダムは、過去に1/100スケールのプラモデルが発売されました。1993年3月にシルエットフォーミュラシリーズの第7弾として発売され、コアブースターとの合体ギミックを再現していました。しかし、メガビームバズーカは腰部ハードポイントに直付けだったため、マニピュレーターがトリガーに届かないという問題点がありました。そのため、劇中のようにマニピュレーターでメガビームバズーカを保持することができませんでした。
その後、マスターグレード(MG)での発売が決定し、「F90 A to Z PROJECT」の一環として2024年10月にプレミアムバンダイから発売されました。MG版では、腰部ハードポイントに新規の接続アタッチメントが追加され、マニピュレーターがトリガーに届くようになり、自然なポージングが可能となりました。また、コアブースターは新規変形機能を搭載し、コアファイターを取り外すことなく合体できるようになっています。
クラスターガンダムと他のガンダムタイプとの比較
クラスターガンダムは、F90のYタイプ装備であり、型式番号はF90Yです。ネオガンダムと同期で開発されましたが、直接的な関連性はありません。しかし、機能面で似通っている部分もあり、両社の技術が同水準に達していたことを示唆しています。
クラスターガンダムは、他のガンダムタイプと比較して、以下の点が特徴として挙げられます。
- コア・ブロック・システムを採用している。これは、F90のコア・ブロック・システムを実現するために建造されたものであり、未完成だったF90の3号機をベースにしています。一般的にクラスターガンダムとF90ⅢYは同一視されます。
- 頭部を内蔵したコア・ブロック・システムを採用している。これは、他のガンダムタイプには見られない大きな違いです。
まとめ
クラスターガンダムは、『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91』に登場する、コア・ブロック・システムを採用したガンダムF90のバリエーション機です。Yタイプミッションパックを装備することで、高い汎用性と戦闘能力を発揮し、様々な戦況に対応できる万能機として活躍します。主なパイロットはウォルフ・ライルで、メガビームバズーカや携行式ビームシールドなど、特徴的な武装を備えています。
クラスターガンダムは、コアファイターを水平に胴体部に内蔵するという、他のガンダムタイプには見られない独特な構造を採用しています。これは、アナハイムへの情報漏洩を防ぐため、そしてシルエットフォーミュラ計画への対策として採用されたと考えられています。また、F90 IIの脱出システムが破損したことが、この構造を採用するきっかけとなったという裏話も存在します。
クラスターガンダムは、プラモデルやフィギュアなどの関連商品も展開されており、ガンダムファンから根強い人気を誇る機体です。その独特なデザインと高い戦闘能力は、多くのファンを魅了し続けています。