小説「おうちごはん修業中(秋川滝美著)」の超あらすじ(ネタバレあり)

小説「おうちごはん修業中」のあらすじをネタバレ込みで紹介!ガチ感想も!

一人暮らしで外食三昧のOLが、ひょんなきっかけから自炊を始めることになり、思わぬ失敗を連発しながらも成長していく姿が描かれた作品です。最初は味噌汁をワカメの味噌煮にしてしまうようなレベルですが、どんどん練習を重ねるうちに料理の腕を上げていき、その過程にクスリとさせられます。

加えて、仕事や恋の三角関係も同時進行で展開し、先が読めそうで読めないドタバタが待ち受けています。長年同じ会社で働く同期同士の微妙な空気感や、上司への片想いなど、誰もが経験しそうな職場あるあるネタがテンポよく盛り込まれていて、食欲だけでなく笑いも刺激してくれます。読みやすくて、疲れた日でもふっと気持ちが軽くなるような一冊です。本記事では、ストーリーの核心部分を含む内容や率直な感想をまとめていきます。ネタバレを含むので、未読の方はご注意くださいね。

さらに、ストレスフルな日常を忘れさせてくれる軽快な文章や、登場人物たちの不器用なやり取りが、こちらの頬を思わずゆるませてくれます。実際の食卓に取り入れたくなるようなレシピが登場するのも見逃せないポイントで、読後にはなんだか料理してみようという気持ちにさせられます。

小説「おうちごはん修業中」のあらすじ

総合建具会社で営業として働く滝田和紗は、34歳にしてメタボ予備軍と診断され、仕方なく自炊を始めるはめになります。仕事優先で外食に頼ってきた彼女にとって、卵を割るだけでも一大事。最初は何をどうすればいいのかも分からず、台所であたふたする毎日を送ることに。

同期入社でライバル心むき出しの村越豪もまた、営業トークに役立てようと料理を始める展開に。味噌汁を作るはずが味噌煮を爆誕させるなど、二人は失敗を連発しながら奇妙な競争を続けます。時には周囲を巻き込み、大騒ぎになることもしばしばです。

さらに、和紗が片想いする柿本課長や村越を気にかける後輩・風花の存在が、恋の絡み合いを複雑に。鍋の具材がグツグツ煮えていくように、職場での人間関係も熱を帯びていきます。どこに転がっていくのか読めない展開が、妙にワクワクを誘います。

そんなドタバタの中、和紗と村越は苦手だった料理だけでなく、互いの価値観にも気づくようになります。素朴な家庭料理から始まった物語は、いつの間にか仕事や恋の悩みもすくい上げるように進行。読んでいるこちらまで料理したくなってしまう、食欲とときめきを刺激する物語です。

小説「おうちごはん修業中」のガチ感想(ネタバレあり)

ここから先は、物語の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意ください。まず結論から言うと、読み始めたら想像以上にお腹が空きました。というのも、主人公の和紗と村越が、それまでまともに料理をしてこなかった分だけ失敗を重ね、そこから学んで腕を上げていく過程がやたらリアルだからです。味噌汁を作るはずが、なぜか味噌煮のような状態になってしまったり、レトルトパスタソースを温めようとしたら袋が爆発したりと、単純だけど思わず「やっちゃったね」と笑いたくなるエピソードが次々と登場します。そのたびに、「自炊初心者ってホントこんな感じだよなあ」と共感してしまうのです。

ただの料理練習談にとどまらず、仕事の話も盛りだくさんなのが魅力です。総合建具会社で営業一筋に励んできた和紗は、同期の村越との張り合いをバネに実績を積み、上司の柿本課長に密かに想いを寄せるという“オフィスあるある”な状況にいます。でも、バリバリのキャリアウーマンというイメージとは裏腹に、健康診断で見事にメタボ予備軍という結果を叩き出してしまうあたりが、人間臭くて親しみを感じます。自炊を始めるきっかけが健康問題というのも、現代っぽいですよね。仕事を頑張るあまり食生活が乱れ、結果的に生活習慣病予備軍になってしまうというのは他人事ではなく、むしろあるあるネタです。

そして、和紗のライバル兼同期である村越にも、自炊の必要に迫られる事情ができたことで、二人は奇妙なかたちで切磋琢磨し始めます。最初は和紗と村越がお互いに馬鹿にし合いながら、どこか負けず嫌いのバトルを繰り広げるのですが、そのうち次第に「料理の腕を上げたい」「もっと美味しいご飯を作りたい」といった純粋な気持ちになっていくのが面白いところです。職場ではバチバチに競い合っている二人が、台所では試行錯誤を共有し合う姿は微笑ましさ全開。思わず「なんだかんだ言いながら、仲いいんじゃん」とツッコミたくなる場面が何度もあります。

恋愛面でも二人はなかなか大騒ぎです。和紗は上司の柿本課長にずっと片想いしていて、遠巻きに見つめてはため息をついています。でも、いざ柿本課長と話せるチャンスがあっても、和紗の考えは仕事モードのままで、思いのたけを伝えられない。そのうち村越に想いを寄せる後輩の風花まで登場し、三角関係どころか四角関係になりかねない混線状態に。仕事をしなきゃいけないのに、どんどん心が乱れていく和紗が「大丈夫か?」と思うほどテンパっていく過程は、まるで鍋の中で具材がぐつぐつ煮えているような臨場感があります。

しかも、料理初心者の二人が揃うと、キッチンの中はまるで戦場です。どちらかが包丁で指を切りそうになったり、火加減を間違えて食材を黒こげにしそうになったりと、ハプニングが連続します。現実的にはちょっと大変な状況ですが、読み物としては突拍子もない失敗談が面白おかしく描かれていて、次は何をしでかすのかワクワクしてしまいます。ある程度料理に慣れた人なら、「ああ、それやったことある」と苦笑いしつつも、自分の初めての自炊を懐かしく思い出せるかもしれません。

特に印象的なのは、溶き卵に片栗粉を加えるテクニックや、アサリの砂抜きに失敗してじゃりじゃりしたまま食べてしまう場面など、実際に家庭でも起きがちな出来事がてんこ盛りな点です。ちょっとした工夫で料理の仕上がりがぐっと変わる、という豆知識もさりげなく紛れ込んでいて、読んでいるうちに「次は自分で作ってみようかな」という気分にさせられます。また、合鴨と大根を土鍋で煮込むシーンが特に魅力的で、思わずその香りを想像してしまいます。こういう料理描写がしっかりあると、物語への没入感が高まりますね。

もちろん、料理だけでなく登場人物たちの掛け合いも読みどころです。村越と和紗は口が悪いというか、遠慮がなくて思ったことをズバズバ言い合うので、時々険悪になるんですが、いがみ合っているうちに何となく通じ合っていく感じが微笑ましいです。しかも第三者の視点から見ると「あれ、これって実は両想いなのでは?」と思わせる節もちらほら。素直になれない大人同士のやり取りは、まるでコメディのようにテンポよく進んでいきます。

一方、和紗の憧れの柿本課長は仕事ができて頼りになる上司ではあるものの、プライベートではどこか抜けている部分もあるようで、そこがまた和紗の心をくすぐるのです。さらに、村越を好きな風花は年下の後輩らしく素直で健気な存在で、読者としては「がんばれ!」と応援したくなるキャラです。こうしてみると、登場人物それぞれに絶妙な個性があって、その組み合わせによる化学反応が読んでいて楽しい要素になっています。

また、仕事をしながら自炊に挑戦する大変さも本書のテーマになっています。残業で遅くなればなるほど、自炊する余裕はなくなるし、外食やコンビニ飯で済ませるほうが楽というのは誰しも経験があるはず。でもこの物語では、そんな背景があっても自炊を続けることで、ちょっとずつ健康になっていったり、料理をきっかけに人間関係が変わっていったりと、ポジティブな変化が描かれます。特に、和紗が「自炊をするようになってから、仕事の効率も上がったかも」と感じるシーンなんかは、実際の生活にも取り入れられそうなヒントを与えてくれます。

それから、もともと本書は「メシマズ狂想曲」というタイトルで刊行されていたものを加筆修正したうえで文庫化されたという経緯がありますが、その背景を知らなくても違和感なく読めます。タイトルからするとものすごく強烈な失敗料理が次々出てくるのかと思いきや、確かに最初は失敗だらけでも、回を重ねるごとにみるみるうちに上達していくので、そこに成長物語としての読み応えがあります。和紗や村越が少しずつ料理のコツをつかみ、手際が良くなっていく過程は、見ていて応援したくなるんです。

ラブ要素に関しては、正直なところ定番の展開かもしれません。同期と上司、それに後輩が加わった三角だか四角だかわからない関係図は、ドラマや漫画でもよく見かけるパターンです。でも、だからこそ安心して読めるというか、「ああ、こういう恋のすれ違いってあるよね」と頷ける部分が多いんです。そのうえで、ほのぼのとした家庭料理の描写が絡んでくるので、不思議な温かみがある恋愛物語になっています。結局、二人はどうなるのか、あるいは課長と後輩はどう動くのかというハラハラ感もあって、最後まで目が離せません。

結末は大きな事件が起きるわけではないけれど、読後感はとても爽やかです。仕事に追われていた和紗と、負けず嫌いな村越が自炊を通して互いに歩み寄る姿は、読者の心までほぐしてくれます。まるで土鍋の中でじっくり煮込まれた合鴨と大根のように、味わい深くなった二人の関係性が微笑ましい。細かい部分で「ちょっとご都合主義かな」と思うところも正直ありますが、それも含めて娯楽小説としては十分に楽しめる出来栄えです。

「おうちごはん修業中」というタイトルどおり、家庭料理のエピソードがふんだんに登場するため、料理好きの方はもちろん、普段あまり料理をしない方にも刺激になると思います。私自身、読む前は「オフィスラブって少しベタかな?」と身構えていましたが、いざページをめくってみると和紗と村越の掛け合いが楽しくて一気に読了してしまいました。何より、“食べること”が生活の基本だということを改めて感じさせてくれる作品です。もしかしたら、読み終えたあとに「よし、今日は自炊してみるか」と思う人も少なくないのではないでしょうか。

オフィスものや恋愛ものにありがちな、職場のドロドロ感がないわけではありませんが、それを明るく乗り越えていくストーリー展開に救われます。特に、上司や同僚、後輩など会社の人間模様が織り成す会話には、シニカルな笑いのスパイスが効いていて退屈させません。しかも、誰もがちょっとずつ“欠点”や“抜けているところ”を持っているのがリアルです。だからこそイライラせずに愛着を持って読めるんじゃないかと思います。

最後に、この作品はドラマ化やシリーズ化にしても面白そうだなあと感じました。料理が失敗から始まって成功へ近づいていくプロセスは映像映えもしますし、キャラクター同士の掛け合いも見ていて楽しいでしょう。一人暮らしで外食ばかりしている人が主人公というのも、現代社会を反映していて親近感が湧きやすいと思います。もし続編があるなら、和紗と村越がさらに上達した料理を披露してくれるのか、それとも別の失敗をやらかすのか、期待と不安を抱きながらページをめくることになりそうです。

総じて、料理初心者による奮闘と、オフィスでの恋模様が絶妙にマッチした作品だと感じました。最初の頃のメシマズっぷりは腹を抱えて笑えるし、かといってギャグだけに終始せず、仕事や恋愛の悩みもしっかり描かれているところが良いバランスです。読後にはほんのりと暖かい気持ちになれて、「じゃあ自分も少し頑張ってみようかな」と前向きになれます。ネタバレ要素を知っていても、実際に読むと登場人物たちのやり取りにまた別の発見があるはずなので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

作者の秋川滝美さんは「居酒屋ぼったくり」シリーズでも知られ、食と人間模様を絡めた作品を数多く手がけています。本作もその延長線上にあると言えるかもしれませんが、舞台がオフィスである分、同僚同士の恋愛感情や営業のノルマに追われる現実味が加わっていて、より幅広い読者が共感しやすい印象です。しかも、本来なら食欲をそそるはずの料理シーンでも、初期はあまりに不器用すぎるために美味しさとは程遠い状態。でも、読み進めていくうちに徐々にレベルアップしていくところがカタルシスになっていて、まるで自分が料理を学んでいるかのような充実感があります。実際、簡単なレシピなら真似できそうなアイデアがいくつもあるので、挑戦してみるのもアリかもしれません。

さらに、キャラクター同士の人間関係も見逃せないポイントです。同期といっても境遇や性格はまるで違う和紗と村越が、口やかましく言い合いながらも何かと気にし合う姿に、読者は「もしかして…」と胸をときめかせるでしょう。一方で、和紗は長らく片想いしている柿本課長の存在に気持ちを引きずられ、村越には後輩の風花が寄り添う構図があって、各々の想いが交錯する展開はなかなか刺激的です。どこに着地するのか分からないからこそ、ハラハラしつつも温かみを失わない物語になっているのが大きな魅力と言えます。食卓を囲むときの和やかな空気感と、仕事や恋で浮き沈みする現実が入り混じっているため、最後のページをめくるまで気を抜けません。そして読了後には、不思議とお腹も心も満たされているはずです。

本書は料理初心者が陥りがちな失敗を面白おかしく描きつつ、そこに仕事や恋の要素を詰め込んだ読み応えある一冊です。読み手によっては「こんな単純な展開、先が読えちゃうよ」と感じるかもしれませんが、逆にその安心感が読む手を止めさせない原動力になっている面もあります。実際に食卓シーンを想像しながら「これなら自分にも作れそう」と思えるエピソードがあるのは、なかなか貴重な体験です。レシピ本とは違ってキャラクターの成長を追う楽しさもあるので、気分転換にぴったり。外食やコンビニに頼りがちな現代人こそ、読んだあとにキッチンへ向かってみたくなることでしょう。

ともあれ、本書は肩ひじ張らずに気軽に読める娯楽作でありながら、食生活や人付き合いに関する大切なヒントも密かに詰め込まれています。和紗と村越のように失敗を繰り返しながらも、少しずつコツをつかんで前に進んでいく様子を見ると、私たち自身も新しいチャレンジをしてみようかという気持ちになれるのではないでしょうか。気が向いたら、あなたのキッチンでもぜひ“修業”を始めてみてください。

読んだ後に実際に包丁を握ってみると、物語の登場人物たちの奮闘が身近に感じられるはずです。まさに、読むだけで終わらない楽しさが待っています。

まとめ

料理初心者の奮闘とオフィスでの人間関係が絶妙に組み合わさった「おうちごはん修業中」は、一見お腹をすかせるだけの軽い読み物かと思いきや、仕事や恋に揺れる大人たちのリアルな悩みもしっかり描いています。最初は包丁すらまともに握れなかった和紗と村越が、失敗を重ねるうちに手際と気持ちを同時に成長させていく過程は、読んでいて思わず応援したくなるほど。外食まみれだった生活が少しずつ改善され、人と向き合う時間までもが豊かになっていく姿には、こちらの心まで温まります。

ストーリー自体は割と分かりやすく展開するのに、その中で生じる人間模様のちょっとしたズレや衝突がくすっと笑いを誘い、気持ちを和ませてくれるのが大きなポイントです。読み終われば、不器用でもいいからやってみようという前向きな気持ちにさせてくれるはず。気づけばあなたも、キッチンに立って新しいレシピに挑戦しているかもしれませんよ。

そして何より、毎日のご飯をちょっと工夫するだけで生活がこんなにも変わるんだ、という発見は大きいです。仕事も恋も一筋縄ではいかない中で、少しずつ前進していく和紗たちの姿は、読者にエールを送ってくれているように感じます。