『いま、会いにゆきます』は、妻を亡くした巧とその息子佑司の生活が、亡き妻澪の再来によって変わっていく物語です。澪が一時的に戻ってくることで、巧と佑司は大切な人を失った悲しみや、自分たちの生き方を見つめ直します。
この物語は、巧と澪の過去の回想や、父と子の心の絆を描いています。また、澪が去った後も続く家族の生活や、ノンブル先生との交流が、心温まる要素を提供します。
澪との再会や別れを通じて、巧と佑司がどのように成長し、前に進んでいくのかが丁寧に描かれている感動作です。
- 巧と佑司の生活状況
- 澪が戻ってきた理由
- アーカイブ星の意味
- 巧と澪の過去
- 澪の最後の別れ
「いま、会いにゆきます」の超あらすじ(ネタバレあり)
父子の生活と巧の苦悩
秋穂巧は、妻の澪を失ってから、6歳の息子佑司と二人きりで生活を送っています。日々の生活は乱れており、朝食の献立は毎朝同じで、洋服も季節外れのものを着回しています。佑司は耳垢が詰まり、聴力に影響を及ぼすほど手入れがされていない状態です。このような日常は、澪の死後に巧が心のバランスを崩してしまったことが原因です。
巧はもともと記憶力が弱く、感情の起伏が激しい性格でしたが、澪の死でさらに精神的に弱くなりました。仕事も手につかず、生活は乱れていましたが、職場の理解により、なんとか佑司との生活を維持しています。所長の配慮で、毎日16時には帰宅し、佑司と過ごす時間を作ることができるようになったのです。
そんな中、巧は佑司と夕食の買い物をした後、いつものように公園でノンブル先生と犬のプーに出会います。ノンブル先生は、小学校の教諭をしており、若い頃に両親を亡くしてから妹を支えながら生活をしてきました。巧は彼に、澪との思い出を書き残す小説を書こうと相談します。
澪の復活とアーカイブ星
澪が亡くなった後、巧は「アーカイブ星」という死んだ人が行く星の存在を信じ始めました。この星では、死者が穏やかに過ごしており、心の中で誰かが思い続けている限り、完全な別れはないと考えました。巧はこの考えを佑司にも話し、将来自分がアーカイブ星に行ったとき、佑司が澪を忘れずに思い続けてくれるよう願います。
澪は佑司を産んだ時、非常に困難な出産を経験しました。妊娠中から体調が優れず、産後も徐々に体が弱っていきました。澪の死が直接出産に関係しているのかは不明ですが、佑司は「自分のせいでママが死んだ」と疑問を持ち、巧にそのことを問いただします。巧は「それは違う」と佑司に強く伝え、澪の死は佑司のせいではないと納得させます。
ある日、巧と佑司は森へ出かけ、そこに澪が突然現れました。彼女は澪そのものでしたが、記憶を失い、彼らのことを覚えていませんでした。佑司は驚きながらも「ママ」と呼びかけますが、澪は何も応答しませんでした。
澪との再会と巧の思い出
澪は「雨の季節になったら戻ってくる」と巧に約束しており、その約束通り、ふたりの前に姿を現しました。しかし、澪が戻ってきたということは、夏が来る前にはまた去ってしまうということでもありました。巧は残りの時間が短いことを自覚し、澪との時間を大切に過ごす決意を固めます。
澪は記憶を失っていますが、巧は彼女にふたりの歴史を話し聞かせます。高校生時代の澪が新体操に打ち込んでいたことや、大学時代に再会して交際を始めた経緯、結婚して佑司を迎え入れたことなど、過去の思い出を語り続けます。巧は澪との日々を大切にしていたことを伝え、澪もまた、それを聞きながら新たに巧に惹かれていくのでした。
記憶が戻らないままですが、澪は「また最初から巧に恋をできる」と喜びます。彼女の笑顔を見た巧も、再び幸せを感じます。澪との時間は限られているものの、そのひとときがかけがえのないものだと実感しながら、ふたりは静かに日々を過ごしていきます。
澪との別れと手紙の意味
月日が経ち、澪がこの世にいる時間も残り少なくなってきました。澪は佑司に家事を教え込み、いなくなった後も自立できるように準備を進めます。巧もまた、澪が去ってしまう現実を受け入れ始めていました。
そんな中、ノンブル先生が病に倒れ、もう元の生活に戻ることはできなくなりました。澪が消える2日前、巧は体調を崩し救急搬送されますが、澪はその時すべてを知ってしまいます。彼女は、いなくなった後のことを心配し、佑司に必要な知識やスキルを教えていくのでした。
最後に澪は、佑司と巧に「ありがとう」の言葉を残し、再びアーカイブ星へと帰ります。佑司はその後も、工場跡地のポストに手紙を書き続け、それを巧がこっそり回収します。佑司は手紙がママの元へ届いていると信じて、満足そうに笑みを浮かべます。そして、ノンブル先生から澪が残した手紙を受け取った巧は、澪との時間が意味あるものであったことを再認識するのでした。
「いま、会いにゆきます」の感想・レビュー
『いま、会いにゆきます』は、亡くなった妻澪が一時的に戻ってくるという幻想的な要素を持ちながら、家族の絆や人間の成長を描いた感動的な物語です。秋穂巧と息子佑司は、澪を失ってから生活が乱れ、父子二人で苦しい日々を過ごしていましたが、澪が戻ってくることで彼らの生活が少しずつ変わっていきます。
澪の復活にはアーカイブ星という不思議な設定が絡んでおり、巧は佑司にその存在を信じさせようとします。澪が再び彼らの前に現れる場面は、非常に感動的で、特に息子佑司が「ママ」と呼びかける瞬間には、読者の心を掴む力があります。澪は記憶を失っているものの、巧が語るふたりの過去を通じて再び彼に恋をするという展開は、心温まるエピソードです。
澪が戻ってきたことで、巧と佑司は再び日常を取り戻し、澪との時間を大切に過ごします。しかし、彼らには限られた時間しか残されておらず、夏が来る前に澪は再びアーカイブ星へと帰ってしまいます。巧はその事実を受け入れながらも、澪が教えた家事を佑司が習得し、少しずつ自立していく姿に希望を見出します。
最後に澪が去った後も、佑司がママへの手紙を工場跡地のポストに投函し続けるというシーンは、彼の成長と母への思いを感じさせる象徴的なシーンです。家族の愛情や別れの悲しみ、そして新しい一歩を描いたこの物語は、読む人に深い感動を与える作品です。
まとめ:「いま、会いにゆきます」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 巧と佑司は澪を失った悲しみの中で生活している
- 澪が一時的に戻ってくる
- 巧は澪との思い出を小説にしようとする
- アーカイブ星は死者が過ごす場所とされる
- 巧は佑司に澪の死は佑司のせいではないと伝える
- 澪は記憶を失って戻ってくる
- 巧は澪に過去の思い出を語り聞かせる
- 澪は再び巧に恋をする
- 澪は家事を佑司に教え残りの時間を過ごす
- 澪はアーカイブ星に帰るが佑司は手紙を送り続ける