「シュレディンガーのチョコパフェ」は、秋葉原の喫茶店で始まる主人公と恋人の裕美子の物語です。
高校時代の友人・溝呂木隆一が世界を揺るがす発見をし、その危険性に二人は巻き込まれていきます。孤独な天才である溝呂木の暴走を止めるために奔走する中で、主人公は自身と裕美子の関係を見つめ直し、最後に残るものは何かを問いかけます。
愛と記憶が交錯する中で、世界の消滅を覚悟した二人の選択が描かれています。
- 主人公と裕美子の関係性
- 溝呂木隆一の発見とその危険性
- 主人公と溝呂木の再会
- 世界をリセットしようとする溝呂木の計画
- 最期に主人公が選んだ行動
「シュレディンガーのチョコパフェ」の超あらすじ(ネタバレ)
主人公は、秋葉原でのショッピングの帰りに、恋人である裕美子と喫茶店に立ち寄ります。裕美子は自称「チョコパフェのオーソリティ」で、メニューに載っているチョコパフェを欠かさずチェックしている人物です。二人は店内に入り、裕美子がオーダーしたのは、定番のチョコレートパフェ。しかし、裕美子の表情にはどこか影があり、主人公はその原因が高校時代の友人・溝呂木隆一にあると気づきます。
溝呂木は高校を卒業後、アメリカに渡ってアンテナの研究を続けていました。最近、彼は世界で初めて「プラスの電磁波」の観測に成功し、その発見は従来の電磁理論を覆す大発見となりました。ニュースではノーベル賞の候補とも囁かれていますが、このプラス電磁波は時間を遡るようなエネルギーを持ち、最悪の場合、全宇宙を破壊する危険性すら秘めているとされています。裕美子はこの事態に不安を感じながらも、パフェを食べ終えました。
溝呂木は高校生の頃からクラスで浮いた存在でした。授業中以外はほとんど教室の隅でペーパーブックを読んでおり、友達らしい友達もいませんでした。彼はそのままアメリカの大学に進学し、さらに孤立を深めます。主人公は出版社で働いており、溝呂木の名が編集会議で話題に上がったことで、彼の一時帰国の際にインタビューを行うことになります。
溝呂木の実家を訪れた主人公は、久々に彼と再会しますが、溝呂木の性格は高校時代と同様に偏屈で、人付き合いが苦手なままでした。アメリカでも人間関係に悩まされ、大学ともトラブルを起こしていたようです。私生活でも結婚してはすぐに離婚し、溝呂木は自分以外の全ての存在を否定するように振る舞っています。彼はこの世界そのものを拒絶し、破壊したいという思いを強めているようでした。
主人公もかつては「オタク」としてフィギュアやアニメに没頭する毎日を送っていました。秋葉原の電気街を徘徊し、好きなものに囲まれて暮らしていましたが、それはどこか虚しいものでした。そんな主人公が変わるきっかけとなったのが、恋人の裕美子との出会いです。裕美子は見た目は今どきの女子ですが、実はCGアーティストとして深い知識と仕事への情熱を持っています。
裕美子と過ごす日々は甘く、時にほろ苦いものでした。彼女の趣味であるチョコレートパフェ巡りに付き合う一方で、主人公の膨大なフィギュアコレクションは裕美子に理解されることはありませんでした。しかし、お互いの違いを尊重し合いながら二人は付き合いを続けていました。その中で主人公は、溝呂木のような人間でも手を差し伸べてくれる誰かがいれば、世界を破壊することなど考えずに済むのではないかと感じ始めます。
溝呂木の自宅を再び訪れた主人公は、驚くべき光景を目の当たりにします。そこには巨大な電磁波装置が設置されており、溝呂木はそれを使って「歴史をリセットする」と言い放ちます。地球環境の破壊、資源の枯渇、絶え間ないテロや紛争に嫌気が差した溝呂木は、世界を一度壊して作り直すべきだと考えているのです。
主人公は装置を止めようと必死に飛びかかりますが、溝呂木はすでに姿を消しており、装置の稼働は止まりません。全宇宙が消滅する危機が迫る中、主人公は最後の時間を裕美子と共に過ごすために彼女の元へ駆けつけます。消えゆく記憶の中で、二人はお互いへの愛だけが残ることを強く願います。やがて主人公が意識を取り戻すと、目の前には「由宇」という女性がいました。名前に違和感を感じながらも、彼女が近くの店でチョコレートパフェを食べる姿を見て、主人公はほっと安心するのでした。
「シュレディンガーのチョコパフェ」の感想・レビュー
「シュレディンガーのチョコパフェ」は、主人公と恋人・裕美子との日常と、高校時代の友人・溝呂木隆一の破壊的な計画を中心に展開する物語です。物語は一見、甘いチョコパフェを楽しむデートシーンから始まりますが、次第に暗い影が差し込みます。それは溝呂木が持つ、世界を揺るがす発見によるものです。彼の発見したプラス電磁波は、時間を遡るほどのエネルギーを秘めており、その力は世界を消滅させる可能性を持っています。物語は、科学の大発見がもたらす光と影、そしてその先にある人間の感情や選択について深く掘り下げています。
また、主人公と溝呂木の対比も印象的です。溝呂木は孤独で人付き合いを嫌い、世界を破壊することすらためらいません。一方で、主人公は裕美子との日常を大切にし、お互いの違いを受け入れながら共に過ごしています。この二人の違いは、人間関係や他者との接し方がどれほど大切かを教えてくれます。溝呂木の暴走を止めるために奔走する主人公の姿には、人間らしさと愛が溢れており、読者は彼の選択に共感を抱くでしょう。
最後に、記憶が消えゆく中での主人公と裕美子の姿は、非常に切なく美しいものです。全てが消えても、愛だけが残るというメッセージは、物語全体にわたって深く響きます。結末での「由宇」という女性との再会も、どこか不思議な余韻を残し、物語の終わりが新たな始まりを予感させます。この作品は、愛と記憶の儚さを描きながらも、最後には人間の温かさを強く感じさせる一作です。
まとめ:「シュレディンガーのチョコパフェ」の超あらすじ(ネタバレ)
上記をまとめます。
- 秋葉原の喫茶店で始まる主人公と裕美子の物語
- 裕美子の心を乱す溝呂木隆一の存在
- 溝呂木のプラス電磁波の発見が世界を揺るがす
- 高校時代から孤立していた溝呂木の性格
- 主人公と溝呂木の再会シーン
- 溝呂木の世界をリセットしようとする計画
- 裕美子との出会いが主人公を変えたこと
- 主人公が溝呂木の計画を止めようとする場面
- 最後の瞬間に裕美子の元に駆けつける主人公
- 目覚めた後、由宇という女性との出会い