無銭優雅(山田詠美)の超あらすじとネタバレ

「無銭優雅」というタイトルが示す通り、この物語は一見すると優雅な生活を送りながらも、内に秘めた葛藤や人間関係の複雑さを描いています。

東京都内の女子大を卒業後、なかなか就職先が見つからなかった斎藤慈雨が主人公です。彼女が友人と共に花屋を開業し、42歳で出会った北村栄とのロマンスを軸に、家族との関係や個人の成長が繊細に描かれます。

感動的なシーンや予期せぬ展開が満載で、読み応えのある作品です。

この記事のポイント
  • 斎藤慈雨の生い立ちと花屋「春雨生花店」の開業までの経緯
  • 慈雨と北村栄の出会いと関係の発展
  • 栄の家族構成や生活環境
  • 慈雨の家族との関係や日常生活
  • 慈雨と栄の別れとその後の心境の変化

無銭優雅(山田詠美)の超あらすじとネタバレ

第一章: 店の始まり

東京都内の女子大を卒業した斎藤慈雨(さいとうじう)は、なかなか就職先が見つかりませんでした。そのため、ショッピングセンターの片隅にある花屋「フローラルブティック」で長い間アルバイトをしていました。

慈雨の父、斎藤達也(さいとうたつや)は、退職金の一部を出資してくれました。これでようやく、慈雨はビジネスパートナーの友人、山田春美(やまだはるみ)と一緒に自分のお店を持つことができました。

新しく開店したお店は、五日市街道を吉祥寺方面に少し行ったところにあります。お店の名前は、ふたりの名前を併せた「春雨生花店」です。春美の「春」と慈雨の「雨」を組み合わせました。

店の経営はようやく軌道に乗り始めたばかりで、まだまだ慈雨は実家に居候しています。独り暮らしをする余裕はありません。

慈雨の実家は二世帯住宅で、1階フロアには兄の斎藤陽慈(さいとうようじ)とその妻、そしてふたりの娘が住んでいます。2階には慈雨の父、母、そして慈雨が住んでいます。

専業主婦の母、斎藤美佐子(さいとうみさこ)は慈雨に「早く良い相手を見つけて結婚しなさい」と言います。兄の陽慈からは「楽な生活をしている妹だな」と言われ、姪っ子の登紀子(ときこ)と衣久子(いくこ)からは「お気楽な叔母さん」と呼ばれています。

二世帯住宅の片隅で肩身の狭い思いをしている慈雨は、毎日のように嫌味を言われてばかりです。

第二章: 出会い

そんな慈雨にも、42歳にしてロマンスが訪れます。慈雨が北村栄(きたむらさかえ)と出会ったのは、西荻窪にあるジャズ・バー「マーシュ」です。この店はサックス奏者のウォーン・マーシュに因んで名付けられました。

栄は慈雨と同じ年で、吉祥寺にある予備校で働いています。彼は西荻窪駅からしばらく歩いた場所にある昔ながらの一軒家で独り暮らしをしています。

初めて栄の自宅にお邪魔した時、慈雨はその乱雑さに驚きました。手入れされていない中庭の草花や雑草、本棚に入りきらないほどの大量の本、敷きっぱなしの布団に脱ぎ捨てられた衣類。どこもかしこも散らかっていました。

栄は慈雨に合い鍵を渡し、彼がいない間に庭の草むしりや屋内の整理整頓をお願いしました。慈雨は彼の家を少しでも快適にしようと、一生懸命手伝いました。

第三章: 慎ましいデート

栄は極度の乗り物酔いを抱えていて、電車での移動も新宿駅までが限度です。タクシーにも乗ることができません。そのため、ふたりのデートコースはいつも近所の商店街や飲食店を巡ったり、公園を散歩したりすることが多いです。また、栄の自宅で手作りの料理を食べることも楽しみの一つです。

ある日、春雨生花店に慈雨の父、達也が顔を見せました。吉祥寺でも有名な精肉店「肉の匠」で並んで買ってきたメンチカツを手土産に、親子は店の外に設置されているベンチに座って語り合いました。

達也は自分に孫がいることを喜びつつも、娘の慈雨が来年には43歳を迎えることを気にかけていました。彼は慈雨の交際相手である栄のことも心配していました。

慈雨は突如「親孝行をする」と宣言しましたが、達也は多くを望まず、ただ「自分たちより先に死なないでくれ」とお願いしました。

第四章: 悲しい別れ

慈雨の父、達也が心不全で亡くなったのは、年が明けて慈雨の誕生日の4日前のことでした。お葬式は盛大に行われ、達也が勤めていた会社からも多くの参列者が訪れました。

しかし、斎場は西荻窪から電車で数駅離れた場所にあったため、栄は来ることができませんでした。

葬儀が終わった後、慈雨は父の写真を栄に差し出しました。栄は手を合わせて静かに父の冥福を祈りました。

第五章: 終わりと始まり

ある日、慈雨は姪の衣久子の買い物に付き合うことになりました。その途中で、衣久子は最近できた彼氏について話し始めました。彼氏の名前は久助(きゅうすけ)で、職業は家庭教師です。幼い頃に離婚した彼の父親こそが栄でした。

栄には元妻との間にもう一人、久子(ひさこ)という娘がいましたが、彼女は水難事故で亡くなっています。

新参者の衣久子が栄の家の事情に詳しいことは、1年余り恋人としての関係を築いてきた慈雨にとっては面白くありませんでした。マーシュで落ち合った慈雨と栄は、激しい口論の末にケンカ別れしてしまいました。

ひと月以上も栄と会わないでいた慈雨は、プライベートも花屋の仕事もうまくいきません。再びやり直すのか、それともキッパリと別れるのか。勤務中に春美から励ましを受けた慈雨は、仕事を放り出して栄のもとへ駆け出しました。

西荻窪から先には行けない栄は、いつものように家で静かに慈雨を待っていました。

無銭優雅(山田詠美)の感想・レビュー

「無銭優雅(山田詠美)」は、斎藤慈雨という女性の人生の一部分を丁寧に描いた感動的な物語です。慈雨は女子大を卒業後、なかなか就職先が見つからず、ショッピングセンターの花屋「フローラルブティック」で長い間アルバイトをしていました。彼女の父、斎藤達也が退職金の一部を出資してくれたことで、慈雨は友人の山田春美と一緒に「春雨生花店」を開業することができました。この店の経営がようやく軌道に乗り始めたところから物語はスタートします。

慈雨の家族との関係も詳細に描かれています。慈雨は実家の二世帯住宅で両親と兄夫婦、その子供たちと一緒に住んでいます。専業主婦の母、斎藤美佐子は「早く良い相手を見つけて結婚しなさい」と言い、兄の斎藤陽慈は「楽な生活をしている妹だな」と嫌味を言います。慈雨は日々肩身の狭い思いをしながらも、家族の中で頑張っています。

物語の中盤では、慈雨に42歳で初めてロマンスが訪れます。彼女は西荻窪にあるジャズ・バー「マーシュ」で北村栄と出会います。栄は慈雨と同じ年で、吉祥寺の予備校で働いており、西荻窪駅から歩いて行ける一軒家で独り暮らしをしています。初めて栄の家を訪れた時、慈雨はその乱雑さに驚きますが、栄のために庭の草むしりや屋内の整理整頓を始めます。

栄は極度の乗り物酔いを抱えているため、二人のデートはいつも近所の商店街や公園を散歩する程度ですが、それでも幸せを感じる慈雨の姿が印象的です。

ところが、物語は慈雨の父、達也の突然の死という悲しい出来事で大きく転換します。葬儀が行われ、慈雨は深い悲しみに包まれますが、彼女を支える栄の存在も描かれています。

そして、ある日、慈雨は姪の衣久子と一緒に買い物に出かけた際、衣久子の彼氏である久助が実は栄の息子であることを知ります。この新しい事実が、慈雨と栄の関係にさらなる波紋を投げかけます。

最終的に、慈雨は栄との関係を見つめ直し、再びやり直すかどうかを決断する場面が描かれます。仕事もプライベートも上手くいかない中、慈雨は春美からの励ましを受けて、再び栄のもとへ向かいます。

「無銭優雅」は、慈雨の成長と葛藤、そして人間関係の複雑さを丁寧に描いた作品です。山田詠美の繊細な筆致が光るこの物語は、読む者に深い感動を与えます。慈雨の真摯な姿勢と、彼女を取り巻く人々との関係が、読む者の心に響きます。

まとめ:無銭優雅(山田詠美)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 斎藤慈雨は女子大卒業後も就職先が見つからなかった
  • 慈雨はショッピングセンターの花屋で長期間アルバイトしていた
  • 父の退職金の一部で花屋「春雨生花店」を開業した
  • 花屋の共同経営者は友人の山田春美である
  • 慈雨は実家の二世帯住宅で家族と同居している
  • 慈雨の母は結婚を急かし、兄は嫌味を言う
  • 慈雨は西荻窪のジャズバー「マーシュ」で北村栄と出会う
  • 栄は乱雑な一軒家に住み、慈雨は家事を手伝う
  • 栄は極度の乗り物酔いを抱えている
  • 慈雨は父の死後、栄との関係に悩む