「パズルのような僕たちは」は、谷口月彦と藤枝糸雨という高校生が、突然「ジグソーパズル症候群」という奇病にかかり、体の一部が入れ替わってしまう物語です。
入れ替わりながらも共に生き抜こうとする二人は、学校生活やアイドル活動、家族の再生に挑戦しますが、やがて運命の結末に向かいます。
最後に、月彦は糸雨の体で新たな人生を歩む決意を固め、二人の想いを胸に未来へと進んでいきます。涙なしでは読めない感動作です。
- ジグソーパズル症候群という奇病の内容
- 主人公の谷口月彦と藤枝糸雨の入れ替わり
- 二人が困難に立ち向かう様子
- 家族再生やアイドル活動の挑戦
- 最終的な二人の運命と月彦の決意
「パズルのような僕たちは」の超あらすじ(ネタバレあり)
高校生の谷口月彦(たにぐち つきひこ)は、目立たないことをモットーにする静かな性格の男の子です。父子家庭で育ち、学校では特に友達もおらず、できるだけ目立たないように過ごしています。そんな月彦が、ある日、美化委員に選ばれました。そして、その美化委員で一緒になったのが、クラスメイトであり、幼馴染の藤枝糸雨(ふじえだ しう)です。
藤枝糸雨は美人で、学校でもアイドル活動をしている人気者ですが、月彦は彼女と距離を置こうとします。なぜなら、二人は幼馴染であることを隠しており、月彦は目立つのが嫌だったからです。しかし、糸雨は月彦に話しかけようとするそぶりを見せます。
そんなある日、月彦は突然、右手に異常を感じます。まるで麻痺したかのように、自分の意思に反して動いてしまうのです。この異変に戸惑った月彦は、体育の時間に怪我をしてしまい、保健室に運ばれます。驚いたことに、同じような症状で糸雨も保健室に来ていました。
後日、病院を訪れた月彦は、なんと糸雨も同じ病院にいることに驚きます。診察室に通された二人は、「ジグソーパズル症候群」という奇妙な病気にかかっていると診断されます。この病気は、身近にいる男女一組の手足が徐々に入れ替わり、最終的にはどちらかが命を落とすというものでした。
この病気は政府によって厳重に隠されており、病気を患った者たちは「機関」という組織が手配したマンションで最期まで同居することを義務付けられていました。二人は戸惑いながらも、指定されたマンションに引っ越し、そこで出迎えてくれたのが、世話人でありトランスジェンダーの立川薫(たちかわ かおる)でした。薫は、二人を見守りながら、この奇病に立ち向かうためのサポートをしてくれる存在です。
月彦と糸雨は、「ジグソーパズル症候群」にかかっていると診断されたものの、まだ体の一部しか入れ替わっておらず、日常生活を続けたいと考えます。二人はマンションから学校に通うことに決めましたが、月彦の右手が不自由なため、学校生活には大きな支障が出始めます。
そこで、二人は周囲に誤解されないようにするため、恋人同士だということにして、できるだけ一緒に行動することを決めました。この決断により、学校中で「地味な男子とアイドル美少女が付き合っている」という噂が広まります。その結果、糸雨に片想いしている体育会系のイケメン、杉村健太(すぎむら けんた)が不満を抱き、月彦に宣戦布告します。
杉村は、月彦に対して「俺と勝負して、勝ったら二人の交際を認めてやる。負けたら学校で糸雨に近づくな」という条件を提示します。月彦は、糸雨の右手が自分の体についているというハンデを抱えた状態で、杉村との勝負に挑まなければなりません。
しかし、窮地に立たされた月彦を救ったのは、糸雨の機転でした。彼女は、勝負の種目として「卓球」を提案します。実は、糸雨は卓球が得意だったのです。月彦の体に糸雨の右手がついているということが有利になると考えた糸雨は、二人で一週間、息を合わせて練習を重ねました。
そして迎えた勝負の日、二人は息の合ったプレーで杉村を圧倒し、見事に勝利を収めます。杉村は敗北を認め、涙ながらに「糸雨を頼む」と月彦に頭を下げました。この勝負を通じて、月彦と糸雨は「運命に逆らい、共に戦う」という強い決意を固めます。そして、糸雨が大切にしているアイドル活動の卒業ライブを、二人で成功させることを目標に掲げました。
糸雨の卒業ライブが成功し、次のステップとして月彦は自分の未練を断ち切るために、家族の再生を考え始めます。糸雨は月彦がもっと積極的であった子供時代を知っており、彼が高校生になってから影のように振る舞う理由を尋ねます。実は、月彦の家族には複雑な事情がありました。
月彦の祖父、谷口和三郎(たにぐち わさぶろう)はこの街で有名な和菓子店「かささぎ庵」を営んでいました。しかし、祖父が亡くなった後、跡取りとして期待されていた月彦の父、谷口忠彦(たにぐち ただひこ)は、和菓子作りの経験がなく、店の経営に苦しんでいました。これが原因で、父の兄である伯父、谷口英二(たにぐち えいじ)が店を出て独立し、市内で和菓子店「オトシブミ」を開店し、成功を収めました。
家庭内の争いが原因で、月彦の家族は分裂しました。母親と妹は離婚後に別の場所で暮らしており、月彦と父親は気まずい関係の中で過ごしていました。月彦は、家族を元に戻したいという強い願いを持っていました。
糸雨は月彦の思いに共感し、協力を申し出ます。月彦は、両親の結婚記念日にサプライズでお祝いをする計画を立て、伯父の英二に協力を求めました。英二は喜んで和菓子作りを教えてくれ、店も貸してくれました。二人は何度も練習を重ね、結婚記念日の七夕の日に「織姫と彦星」、そして「かささぎ」の形をした和菓子を作りました。
七夕の日、店で顔を合わせた両親は驚きましたが、月彦と糸雨の心のこもったサプライズに感動し、腹を割って話し合うことができました。結果的に、両親は将来的に復縁することを約束し、月彦は家族の再生という大きな目標を達成しました。
家族が再び一つになったことで、月彦はホッと一安心しましたが、その直後に「ジグソーパズル症候群」の症状がさらに進行し、二人の四肢がほとんど入れ替わってしまいます。右手、左手、右足、そして左足の自由が失われ、二人の生活はますます不便なものになっていきました。
精神的にも追い詰められた糸雨は、ついに感情を爆発させ、大声で泣き出してしまいます。月彦は、糸雨を慰めるために「君のそばにいる限り、僕は君を忘れない」と語りかけます。しかし、糸雨は「死ぬことが怖い」ともらし、忘れ去られることへの恐怖を打ち明けます。
二人は、お互いに「どちらかが死んでも、残された方が相手を忘れないこと」を約束し合います。しかし、月彦はその瞬間、自分の本当の願いは糸雨と一緒に生きていくことだったのだと気付きました。それは、彼の中
で忘れられた初恋の気持ちでした。
二人は、残された時間がわずかであることを知り、遺書を書き、それぞれの実家に一泊します。昔よく一緒に遊んだ橋の上で、糸雨は「ずっと好きだった」と月彦に告白します。月彦は、手紙に自分の気持ちを書いていると明かし、糸雨は微笑みます。
そして、ついに二人の体が完全に入れ替わり、もう動くことができなくなります。最後の瞬間、月彦は、自分の体を見つめながら、糸雨の体の中で自分の魂が生きていることを感じます。驚いたことに、目の前には自分の体が倒れており、それを見下ろしているのは糸雨の体に宿った月彦の魂でした。
月彦は、糸雨の体で新たな生活を送りながら、自分自身の過去と向き合い始めます。彼は糸雨の魂が消え去ったことを誰にも気付かれずに受け入れ、彼女の遺書を開いて読むと、そこには「好きな人と家庭を持ち、幸せになりたかった」と書かれていました。
月彦は、糸雨の夢を叶えるために生きることを決意しますが、まだ自分にその自信はありません。しかし、糸雨の分まで生きるしかないと覚悟を決め、遺書を土に埋め、そっと弔います。そして、糸雨の魂を偲びながら、新しい人生を歩み始めます。
月彦は、糸雨の夢を実現するために努力し、自分の道を進んでいくことで、糸雨の想いを胸に刻みながら、次のステージへと進んでいくのです。
「パズルのような僕たちは」の感想・レビュー
「パズルのような僕たちは」を読んで、谷口月彦と藤枝糸雨の物語に深く感動しました。二人が「ジグソーパズル症候群」という奇病にかかり、体の一部が入れ替わってしまうという設定は、最初はとても奇妙で不思議に思えましたが、物語が進むにつれて、その設定が二人の絆や成長を描くために重要な要素であることがよくわかりました。
特に、月彦が糸雨と協力して学校生活を送りながら、家族の問題にも立ち向かう姿には心を打たれました。月彦が家族を再び一つにするために努力する場面では、彼の心の強さや優しさがよく伝わってきました。また、糸雨がアイドルとしての夢を諦めず、月彦と共にその夢を叶えるために全力を尽くす姿も印象的でした。
物語のクライマックスでは、二人の体が完全に入れ替わり、月彦が糸雨の体で生き続けることになるという展開が、とても切なくも感動的でした。二人の運命が悲劇的でありながらも、月彦が糸雨の想いを胸に新しい人生を歩もうとする姿勢に、深い余韻を感じました。
全体を通して、友情や家族の絆、運命といったテーマが丁寧に描かれており、感情移入しやすい作品でした。特に、月彦と糸雨の関係が変化していく様子や、二人がどのように困難を乗り越えていくのかに注目しながら読むと、より一層物語の深さを感じることができました。最後まで目が離せない、感動的な物語です。
まとめ:「パズルのような僕たちは」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 主人公は高校生の谷口月彦である
- 月彦と藤枝糸雨は幼馴染である
- 二人は「ジグソーパズル症候群」という奇病にかかる
- 病気によって体の一部が入れ替わる
- 二人は政府が用意したマンションで生活を共にする
- 糸雨はアイドル活動をしている
- 学校生活では恋人のふりをして過ごす
- 月彦は家族の再生を目指して行動する
- 最終的に月彦は糸雨の体で生き続ける
- 二人の運命は悲劇的な結末を迎える