「私が誰かわかりますか」の超あらすじ(ネタバレあり)

この記事では、『私が誰かわかりますか』のあらすじを詳しく紹介します。

認知症を患う夫・木暮守と、それを支える妻・木暮涼世を中心に、家族の絆や葛藤が描かれています。物語は、涼世が限界を感じながらも夫を施設に入れる決断をするところから始まり、さまざまな家族が抱える介護の現実や、それぞれが乗り越えていく過程が丁寧に綴られています。

ネタバレを含む内容を知りたい方は、ぜひご覧ください。

この記事のポイント
  • 認知症を患う家族の介護の現実
  • 家族内での役割分担や葛藤
  • 介護による心身の限界とその影響
  • 死後離婚の意味とその決断
  • 家族の絆と和解の過程

「私が誰かわかりますか」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章: 木暮涼世と認知症の夫・守

木暮涼世(こぐれ すずよ)は、78歳の高齢者です。彼女は3年間、認知症を患う夫・木暮守(こぐれ まもる)の世話を一生懸命にしてきました。夫の守は、次第に物忘れがひどくなり、自分の名前や身の回りのことすら忘れてしまうことが多くなっていました。

涼世は、村の家で守と二人で暮らしていましたが、彼の介護は日に日に重くなり、涼世の体力と気力も限界に近づいていました。涼世の目も弱くなり、物がぼやけて見えるようになり、自分自身の健康にも不安を抱えていました。

涼世には、町に住んでいる長男・木暮隆行(こぐれ たかゆき)とその妻・桃子(ももこ)がいます。涼世は、本来であれば長男の嫁である桃子に夫の世話を頼むべきだと考えましたが、桃子は東京でイラストレーターをしており、仕事に忙しくしていました。涼世は、そんな桃子に負担をかけたくないと考え、夫を老人ホームに入れる決断をします。

しかし、村で本家を守る紀江(のりえ)という女性は、守の状態を見て、老人ホームに入れることに強く反対しました。紀江は、涼世が夫を施設に入れることが村の評判に悪影響を与えると心配したのです。しかし、涼世は自分の健康が悪化していることを理由に、守を施設に入れるしかないと決断します。

その後、隆行も父の守を引き取ることを考えましたが、家の中での世話は妻の桃子がするべきだと当然のように考えていました。桃子はその重圧に苦しみ、逃げ出したい気持ちと、覚悟を決めるべきだという気持ちの間で揺れ動いていました。

結局、涼世は夫を老人ホームに入れ、残りの世話を桃子に託しました。桃子は時折、義父である守に面会するために老人ホームを訪れるようになりました。しかし、村では「涼世が夫を追い出した」という噂が広がり始め、その最初の発言者は、自身も認知症の舅を数年来世話している末子(まっし)という女性でした。紀江は、村の噂話を打ち消そうとしましたが、結局あきらめることになりました。

第2章: 桃子と嫁たちの葛藤

木暮桃子は、夫の父である守が入居した老人ホームに毎日面会に行っています。守は「家に帰りたい」と訴えますが、桃子は「お義母さん(涼世)の目が治るまでの我慢だよ」と守をなだめています。しかし、心の中では、義父のために自分の時間や仕事を犠牲にしていることに疲れを感じていました。

そんなある日、桃子は美大時代の友人である沢田恭子(さわだ きょうこ)に電話で愚痴をこぼします。恭子は「桃子はまだ幸せだよ」と言います。恭子自身も結婚して25年、夫は末っ子ながら長男で、恭子は長男の嫁としてボケてしまった舅・洋造(ようぞう)の介護をしているのです。

恭子は、本当は舅を老人ホームに入れたいと思っていましたが、夫の二人の姉に反対され、なかなか思うように進めることができません。それに加えて、その二人の姉は何も手伝ってくれないため、恭子一人に負担が集中しています。洋造は元小学校の校長先生で、ボケた今もなお自分を校長だと思い込んでいるため、様々なトラブルを引き起こしています。

一方、桃子の夫・隆行が課長を務める信用組合には、古参で頼りになる山崎瞳(やまざき ひとみ)という女性がいます。瞳は高齢出産で男子を出産しましたが、産後に息子を可愛いと感じられないことで苦しんでいました。どうやら産後うつに悩まされていたようです。さらに、今度はボケ始めた姑の世話まで押し付けられてしまい、瞳は限界を感じて信用組合を退職しようと考えました。

あわてた隆行は、とりあえず瞳に介護休暇を取ることを勧め、なんとか退職を思いとどまらせます。しかし、その直後に守が肺炎で急遽入院することになり、桃子は守の看病をするために泊まりがけで病院に通うことになります。守は頻繁にトイレに行きたいと訴え、桃子はほとんど眠ることもできない日々が続きました。

第3章: 中村静子の決意

中村静子(なかむら しずこ)は、夫の死後、義理の両親の面倒をみてきました。このたび、義父が骨折して入院し、そのわがままな性格のために病院から付き添いをお願いされてしまいます。義母は家事をまったくしないため、家のことも義父の付き添いも、すべて静子一人でこなさなければなりませんでした。

静子は疲れ果てていましたが、同じ病院で義父を看病する桃子と知り合い、愚痴を言い合うことで少し心の安らぎを得ることができました。そんなある日、静子の娘・夏葉(なつは)から「死後離婚」という提案を受けます。死後離婚とは、夫が亡くなった後に義理の家族との縁を切ることができる手続きです。

静子はこの提案に強い関心を持ち、自分の人生を見直す決意を固めます。彼女は死後離婚を決断し、義理の家族との縁を切る準備を進めることにしました。一方、桃子もまた義父・守の介護に限界を感じており、プロの付き添いサービスを依頼することにしました。

桃子は、付き添い代行業を営む堤昌子(つつみ まさこ)に、守の看病を依頼しました。昌子が代わりに付き添うようになると、守は一時的に退院して老人ホームに戻されましたが、再び熱を出してしまい、再度入院することになります。認知症が進行している守は、点滴の管を引き抜こうとするなど、看護師や家族を困らせる行動が増えていました。

涼世と桃子が交代で看病を続ける中、守の体力は徐々に弱っていきます。もう長くは生きられないことが予想される状況になり、涼世は毎日病院に通って看病を続けました。涼世は「立派な嫁だ」と言われたい一心で、日々の見舞いを欠かしませんでした。

第4章: 家族の絆と試練

ある日、沢田恭子がイラストの仕事をしている間に、義父・洋造が勝手にバスに乗って外出してしまうという事件が起きます。幸運にもバスの運転手が異変に気づいてくれたため、無事に洋造を発見することができました。しかし、これをきっかけに洋造は度々外出するようになり、家族はその対応に追われることになります。

恭子が尾行すると、洋造は駅前のバス停のベンチに座り、林美也子(はやし みやこ)という女性と話していました

。洋造は美也子をかつての教え子だと思い込んでいるようでしたが、二人の会話はどこか噛み合っていませんでした。後になって分かったことですが、美也子も認知症を患っており、実際には洋造の教え子ではなく、ただの見知らぬ人でした。

一方、山崎瞳の義母も認知症が進行していました。瞳は幼い息子・健(けん)の面倒を見ながら、義母の介護もこなさなければなりませんでした。瞳は義母を老人ホームに入れたいと考えていましたが、夫はこれに反対していました。ある日、瞳は夫に健の面倒を任せて、急いでみりんを買いに行くことにしました。しかし、帰宅すると夫は居眠りをしており、義母と健が家からいなくなっていたのです。

瞳は必死に健を探し、ようやく外で無事に見つけることができました。義母が健を連れ出していたのです。この一件で瞳は「もし健に何かあったら、私は絶対に許さない」と夫に強く怒り、ようやく夫も義母をホームに入れることを同意しました。義母も自身の状態を理解し、ホームに入ることを受け入れました。

第5章: 守の最期と新たな道

木暮守の肺炎は治療が終わり、市民病院を退院することになりました。しかし、守の体力はすっかり弱り、涼世や桃子も守が長くは生きられないことを感じていました。守は療養病床のある西病院に転院し、そこで静かにその最期を迎えました。

守が亡くなったことで、木暮家では通夜が行われました。守の実家で行われた通夜には、村の人々も集まりました。村の人々は、これまで桃子や涼世を悪く言っていましたが、守の最期を見届けたことで、その誤解も解け、桃子と涼世への評価が変わっていきました。

桃子は、夫に対しても、世間に対しても、妻としての役割をしっかりと果たしたという誇りを胸に抱くことができました。守の死を通じて、家族の間には新たな絆が生まれ、これまでの葛藤が少しずつ解消されていきました。

そして、それぞれの家族が新しい道を歩み始めることになります。涼世は守との思い出を胸に、残りの人生を静かに過ごす決意をします。桃子は、自分の人生を再び見つめ直し、未来に向かって歩み始めました。それぞれが過去を乗り越え、新しい一歩を踏み出す姿が、ここに描かれています。

「私が誰かわかりますか」の感想・レビュー

『私が誰かわかりますか』を読んで、家族の絆や介護の現実について深く考えさせられました。特に、木暮涼世が認知症を患う夫・守を長年介護する中で、限界を感じながらも最善の選択を模索する姿に心を打たれました。涼世が、夫を老人ホームに入れる決断を下すまでの過程は、彼女の葛藤や周囲の反対を乗り越える苦労が伝わり、非常にリアルで共感できる部分が多かったです。

また、長男の木暮隆行とその妻・桃子の関係も興味深かったです。桃子が義父・守の面会に毎日通う姿は、一見献身的に見えますが、彼女自身の仕事や生活を犠牲にしていることがわかり、その重圧に苦しむ姿が印象的でした。彼女が友人の沢田恭子に悩みを打ち明ける場面では、同じように介護に悩む人々の苦しみや孤独が伝わってきました。

さらに、中村静子の「死後離婚」の決意も非常に考えさせられる内容でした。静子が義理の両親の世話に追われる中で、自分の人生を見直す瞬間は、現代社会における家族の在り方について深く問いかけるものでした。

山崎瞳のエピソードもまた、家族内の葛藤や介護の難しさを如実に描いています。瞳が産後うつに苦しみながらも、義母の介護と育児に奮闘する姿は、心に残るものでした。彼女が夫と対立しながらも、自分の限界を認め、義母をホームに入れる決断をする過程は、とても共感できるものでした。

全体を通して、『私が誰かわかりますか』は、家族が直面する困難や介護の現実を非常にリアルに描いており、読む人に深い感動を与える作品だと思います。それぞれの登場人物が抱える悩みや葛藤を通じて、家族の絆の大切さや、人生における選択の重みを考えさせられました。

まとめ:「私が誰かわかりますか」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 木暮涼世が認知症の夫・守を介護する状況を描く
  • 涼世が夫を老人ホームに入れる決断をする過程を示す
  • 村の噂や他人の視線に苦しむ涼世の心情を描写する
  • 長男・隆行とその妻・桃子の家庭内での葛藤を描く
  • 桃子が義父・守の面会に通い続ける様子を描写する
  • 中村静子が義理の両親の世話に追われる日常を示す
  • 静子が「死後離婚」を決断するまでの経緯を描く
  • 恭子が義父・洋造の奇行に対応する苦労を描写する
  • 山崎瞳が義母の介護と育児に追われる状況を示す
  • 守が亡くなり、家族が新たな一歩を踏み出す姿を描く