「我が手の太陽」の超あらすじ(ネタバレあり)

「我が手の太陽」は、溶接工の伊東が技術の衰退と自らの挑戦に直面する姿を描いた物語です。

かつてはエースと呼ばれる実力を持っていた伊東ですが、腕前が落ち、作業ミスや不注意から連続してトラブルが発生します。本作では、解体現場での苦悩、溶接失敗の影響、そして自分自身との葛藤を通して、伊東がどのように成長していくのかを詳細に追います。

この記事では、「我が手の太陽」の各章ごとのあらすじとネタバレを詳しく紹介します。

この記事のポイント
  • 伊東の溶接技術の衰退とその背景
  • 解体現場での伊東の困難と問題点
  • 溶接作業の失敗とその影響
  • 伊東の安全管理の不備とその結果
  • 伊東が直面する自らの限界と悩み

「我が手の太陽」のあらすじと超ネタバレ

第1章: かつてのエース

溶接工の伊東(いとう)は、東京のカワダ工業(かわだこうぎょう)で配管工事を担当しています。以前、伊東は溶接工としてとても優れた技術を持っており、会社内でもエースとして知られていました。しかし、最近では腕が落ちてきており、四半期ごとの欠陥率は1.6%と高くなってしまいました。これにより、伊東は最近の浜松(はままつ)の現場で失敗し、東京本社に呼び戻されることになりました。

本社からの指示で、伊東は表参道(おもてさんどう)の解体現場(かいたいげんば)に派遣されました。ここでは溶接の仕事ではなく、解体作業のための溶断(ようだん)を行うことになりました。溶断は溶接とは異なる作業で、一流の溶接工がする仕事ではありませんが、伊東は断ることができませんでした。

解体現場に到着すると、現場の管理がひどく、不安を覚えました。例えば、伊東がガス管(ガスかん)のひび割れを指摘し交換を依頼しましたが、現場の管理者は交換に応じてくれませんでした。また、作業車が公道をふさいでいたため、通行人とのトラブルも発生しました。結局、その日は雨が降って作業が中止になりました。

伊東はその日、同僚から頼まれていた用事をこなすため、先輩であり師匠の牧野(まきの)を溶接工用の健康診断に連れて行くことになりました。牧野と一緒に車で移動中、牧野が別の現場に回されていると聞き、伊東は驚きます。牧野からどの現場に行っているのか訊かれるも、伊東は答えられませんでした。

第2章: 溶接失敗

伊東がかつて働いていた現場は、東海工業地帯(とうかいこうぎょうちたい)の近くにあります。ここでは蒸気ドラム(じょうきどらむ)に取り付ける主蒸気管(しゅじょうきかん)の溶接作業を行っていました。元請けの段取りが悪く、足場(あしば)が作業の邪魔になっていました。伊東はその状態を受け入れ、作業を進めることにしました。

まず、配管のふちを溶接できる状態に加工する必要がありました。加工作業が終わり、元請けの検査官(けんさかん)に見てもらいました。検査官は加工の出来を褒めましたが、前回の溶接が不合格だったことを伝えました。また、最近の伊東の溶接が合格ラインぎりぎりであることも指摘されました。

三日後、伊東は同じ場所で再び作業をしていました。不思議なことに、「不合格だった」と言った検査官はその日はいませんでした。さらに、その日のうちに、伊東が溶接した主蒸気管に気孔欠陥(きこうけっかん)が見つかりました。これにより工期が遅れ、徹夜でやり直し作業が必要になりました。管の材料はクロムモリブデン鋼(くろむもりぶでんこう)で、やり直しできるのは一度だけです。失敗すると材料の買い直しが必要になるため、伊東は無理に仮眠をとることにしました。

第3章: 不始末

午後七時、伊東は階段を上り、再び溶接の現場に向かいました。主蒸気管の蒸気ドラム周辺は、作業が完了したと見なされ、足場が解体され始めていました。床はあるものの、手すりがないため、大変危険な状況です。

伊東は安全帯(あんぜんたい)のフックをかける場所が見つからず、作業を進めるかどうか迷いました。もしフックを無理にかけると、作業が遅れてしまうため、溶接部分が冷めてしまう恐れがあります。最終的に伊東はフックなしで溶接を続けることに決めました。

溶接が終わった後、伊東は合格する自信がありました。しかし、溶接の盛り上がりを修正しているとき、元請けにフックを使用していないことが見つかり、厳しく叱られました。その結果、伊東の不注意がカワダ本社に連絡され、1年間の溶接作業禁止処分を受けることになりました。伊東は牧野に自分の失敗を話し、牧野から「一年も溶接しないと腕が落ちるから、練習しておけ」とアドバイスを受けます。伊東は本社から現場からの引退を勧められますが、反発してしまいます。

第4章: 悩む伊東

カワダ工業には溶接の練習場(れんしゅうじょう)があり、伊東は牧野のアドバイスに従い、そこに通い始めました。練習場には、伊東の代わりに作業を行っていた村上(むらかみ)が腰痛で転職を決めたという話が伝わってきました。村上はまた、牧野がヒューム肺(ひゅーむはい)で溶接業務に耐えられなくなっていることや、伊東が安全を無視して作業することについても批判していました。

伊東は牧野の家を訪ね、牧野が次に行く定修(ていしゅう)の作業をこっそりと代わってほしいと頼みました。牧野は最初は迷いましたが、最終的には折れて「代わりにやるんだから、気をつけて作業するように」と注意をしました。

第5章: 絶望と自覚

翌日、伊東はジャスコの解体現場(かいたいげんばい)で溶断作業をしていました。しかし、逆火(ぎゃくか)によって左手にひどいやけどを負ってしまいました。直接的には、鳶(とび)の作業員がガスホースを踏んでしまったためですが、伊東がホースを適切に管理していなかったことも一因です。

やけどを隠して作業を続けた伊東は、その後牧野の定修作業に向かいましたが、うまく溶接できませんでした。自分の傲慢さが招いた結果だと自覚し、どうにもならなくなった伊東は、分電盤(ぶんでんばん)のコードを外して停電を引き起こしました。これにより作業を停止させるためです。自分の失敗や無力さを痛感し、深い絶望感に包まれる伊東の姿が描かれています。

「我が手の太陽」の感想・レビュー

「我が手の太陽」を読むと、溶接工の伊東の成長と苦悩が詳細に描かれていることがよくわかります。かつては東京のカワダ工業でエースと呼ばれた伊東ですが、技術の衰退と作業ミスによって、次第に苦しむ様子がリアルに伝わってきます。

特に、第1章では、伊東がかつての栄光から転落し、解体現場での仕事に追いやられる状況が描かれています。表参道の解体現場の管理が不十分で、伊東がガス管のひび割れを指摘しても改善されない場面や、作業車が通行人とトラブルになるシーンが印象的です。このような状況が、伊東の不安や焦りを増していることがよくわかります。

第2章では、伊東が溶接作業で失敗し、その影響で工期が遅れる場面が詳しく描かれています。クロムモリブデン鋼の材料での溶接や徹夜作業の苦労が、伊東の技術と努力の限界を示しています。この章では、過去の実力と現在の差がはっきりと浮き彫りになり、読者は伊東の困難さを共感することができます。

第3章では、伊東の不注意がもたらす結果や、その後の処分について描かれています。安全帯のフックを使わなかったことで厳しく叱責され、1年間の溶接作業禁止処分を受ける場面は、伊東の安全管理の重要性を強調しています。牧野からのアドバイスや引退勧告に対する伊東の反発も、彼の内面的な葛藤を浮き彫りにしています。

第4章では、伊東がカワダ工業の練習場で技術を磨く様子が描かれています。溶接の練習を続ける中で、村上の転職や牧野の健康問題についても触れられています。伊東の努力と悩みが伝わり、彼の成長への道のりが見えてきます。

最後に、第5章では、伊東が解体現場での事故や自らの失敗を通じて自覚と絶望に直面する様子が詳細に描かれています。逆火によるやけどや、作業の失敗が彼の自信を打ち砕き、最終的には自分の限界を痛感する姿が強く印象に残ります。

全体を通して、伊東の技術的な苦悩や安全への無関心がもたらす結果、そして彼の成長と自己認識の過程が深く描かれており、読者は伊東の経験を通じて多くのことを学ぶことができます。

まとめ:「我が手の太陽」のあらすじと超ネタバレ

上記をまとめます。

  • 伊東はかつてエースの溶接工だったが、最近は技術が衰えている
  • 伊東は表参道の解体現場で溶断作業を任される
  • 解体現場の管理が不十分で、安全面に問題がある
  • 伊東の溶接作業が失敗し、工期が遅れる
  • 溶接の失敗によって徹夜での作業を強いられる
  • 伊東は安全帯の使用を怠り、処分を受ける
  • カワダ本社から現場からの引退を勧められる
  • 溶接練習場で伊東の技術を磨く努力が描かれる
  • 牧野が伊東にアドバイスをし、現場作業の代行を許可する
  • 伊東は解体現場での事故や失敗を通じて自らの限界を認識する