大根仁「SUNNY 強い気持ち・強い愛」の超あらすじ(ネタバレあり)

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』のあらすじ(ネタバレあり)です。『SUNNY 強い気持ち・強い愛』未読の方は気を付けてください。ガチ感想も書いています。

本作は、1990年代の女子高生たちのキラキラした青春と、大人になった彼女たちの現在を鮮やかに描き出した作品です。

友情、恋、そして挫折。

誰もが経験するであろう青春の光と影が、懐かしい音楽に乗せて紡がれていきます。

特に、当時のファッションや流行が細部にわたって再現されており、タイムカプセルのような感覚で楽しめます。

大人になった奈美が、旧友たちとの再会を通じて、忘れかけていた「あの頃」の自分と向き合う姿は、観る者の胸に深く響くことでしょう。

ただの懐古趣味に終わらず、現代を生きる私たちにも通じるメッセージが込められています。

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』のあらすじ(ネタバレあり)

専業主婦として平穏な日々を送る奈美は、ある日、入院中の母親の見舞いで病院を訪れます。

そこで偶然、高校時代の親友である芹香の名前を見つけます。

再会した芹香は、余命1か月を宣告されており、高校時代の仲間たち「SUNNY」のメンバーに会いたいと奈美に告げます。

奈美は、芹香の願いを叶えるため、疎遠になっていた仲間たちを探し始めることになります。

高校時代、奈美は東京に転校してきたばかりの田舎者で、都会の女子高生たちのファッションや流行についていけず、戸惑っていました。

しかし、リーダー格の芹香をはじめ、梅、裕子、心、奈々といった仲間たちが、そんな奈美を温かく受け入れてくれます。

彼女たちは「SUNNY」というグループを結成し、小沢健二の「強い気持ち・強い愛」をテーマ曲に、ダンスフェスティバルへの出場を目指して青春を謳歌します。

梅の家は、彼女たちのたまり場となり、奈美は梅の兄の友人でDJをしている渉に恋心を抱きます。

探偵事務所の力を借りて、奈美と梅は次々と仲間たちと再会していきます。

不動産の営業で苦労している梅、かつて貧乳だったが整形して裕福な夫と結婚した裕子、美容院経営に失敗しアルコール依存症に苦しむ心。

彼女たちはそれぞれの人生を歩んでおり、再会は順風満帆ではありません。

特に裕子は、過去の自分に引き戻されることを恐れ、芹香との再会をためらいます。

しかし、奈美たちの説得と、裕子自身の夫の浮気問題がきっかけとなり、彼女もまた芹香の病室を訪れます。

そして、4人はかつての女子高生のように、病室でおしゃべりに花を咲かせ、裕子の夫に復讐するため女子高生の格好で乗り込むといった騒動も起こします。

高校時代、奈美たちを常に嘲笑っていた鰤谷という存在もいました。

彼女は奈美に執拗に絡み、ドラッグに手を染めていたことで、芹香たちから距離を置かれていました。

ダンスフェスティバル当日、鰤谷はドラッグの影響で錯乱状態となり、芹香にガラスを投げつけます。

それを庇った奈々の顔にガラスが刺さり、大出血するという悲劇が起こります。

この事件がきっかけで、「SUNNY」のメンバーは卒業後、疎遠になってしまっていたのです。

芹香が亡くなった後、奈美たちは芹香の遺言を知ります。

芹香は、探偵に依頼してメンバーたちにメッセージと遺産を残していました。

奈美には「みんなを探してくれてありがとう。これからはSUNNYのリーダーを任せる」と、梅には「仕事がんばれ」と、裕子には「副リーダーになれ、その胸は無理がある」と、心には「マンションの部屋と遺産を譲るので美容室を開いてほしい」と。

そして、その全てを受け取る条件として、4人は「踊れ」と命じられます。

4人は、小沢健二の「強い気持ち・強い愛」をBGMに、かつてのように踊り始めます。

踊り終えた彼女たちの前に、かつて傷つき、姿を消していた奈々が、頬の傷も消えて現れるのでした。

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の感想・レビュー

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を観て、まず心を掴まれたのは、1990年代という時代の空気感がここまで鮮やかに再現されている点でした。安室奈美恵さんの楽曲が流れ、ルーズソックスにミニスカート、ガングロといったファッションが全盛期だったあの頃。私はまさにその時代に若者だったので、冒頭から「ああ、あの頃だ!」と、懐かしさで胸がいっぱいになりました。単なるノスタルジーに浸るだけでなく、当時の文化や流行が、物語に深く溶け込んでいるのが素晴らしいと感じました。まるでタイムスリップしたかのような感覚で、観ている間ずっとワクワクさせられましたね。

広瀬すずさん演じる奈美の、東京に馴染もうと奮闘する姿は、本当に心を打ちました。田舎から出てきて、都会の洗練された女子高生たちの中で、最初は戸惑いながらも、必死に自分を表現しようとする。なまりを指摘されて落ち込んだり、ファッションに悩んだりする姿は、多くの人が経験するであろう「新しい環境への適応」という普遍的なテーマを思い出させてくれます。広瀬すずさんの、普段のイメージとは異なる、ちょっと冴えないけれど芯の強い奈美の演技は、観客の共感を大いに呼び起こしたのではないでしょうか。彼女が徐々に「SUNNY」のメンバーに馴染んでいく過程は、観ていて本当に微笑ましく、友情の尊さを改めて感じさせてくれます。

そして、奈美が恋心を抱く渉を演じた三浦春馬さん。彼の存在は、青春時代の甘酸っぱい恋を象徴していました。クラブでDJをする姿、奈美を助ける優しさ、すべてが憧れの的でしたね。奈美が大人になっても彼の写真を大切に持っていたことからも、彼の存在が彼女の青春においてどれほど大きな意味を持っていたかが伝わってきます。それは、多くの人が経験するであろう、忘れられない初恋の記憶を呼び覚ますようで、切なくも温かい気持ちになりました。渉の登場シーンは、本作の恋愛要素を一層魅力的にしていたと思います。

大人になった「SUNNY」のメンバーたちが、それぞれの人生を歩んでいる姿も印象的でした。かつての輝きを失い、生活に苦悩している者もいれば、一見成功しているように見えても、心に深い傷を抱えている者もいる。特に、アルコール依存症に苦しむ心や、夫の浮気に悩む裕子の姿は、人生の厳しさや現実を突きつけられました。しかし、そんな彼女たちが、芹香の願いを叶えるために再び集結し、互いを支え合う姿は、真の友情とは何かを教えてくれます。大人になっても、かつての仲間との絆が、苦境を乗り越える力になる。そのメッセージは、観ている私たちに勇気を与えてくれるものでした。

中でも、裕子の変貌ぶりは衝撃的でしたね(笑)。高校時代は貧乳で自信がなかった彼女が、大人になって整形し、爆乳になっている姿は、現代の価値観や女性たちの美意識の変化を象徴しているようにも感じました。しかし、外見が変わっても、根っこにある彼女らしさは変わらない。芹香の病室で、かつてのようにお菓子を食べながら下世話な話に花を咲かせ、最後には裕子の夫に復讐するため、女子高生に扮して乗り込むという破天荒な行動に出る姿は、まさに「SUNNY」らしさ全開で、笑いと感動を同時に巻き起こしました。

そして、物語のクライマックスを飾る、芹香の遺言。彼女が仲間たちに遺したメッセージと、その全てを受け取る条件としての「踊れ」という言葉は、本作のテーマを凝縮しているようでした。それぞれが抱える問題や困難を乗り越え、再び「強い気持ち・強い愛」を踊る彼女たちの姿は、涙なしには見られませんでした。それは、単に過去を懐かしむだけでなく、過去の自分を受け入れ、未来へと踏み出すための儀式のようにも見えました。あのダンスシーンは、本作のハイライトと言えるでしょう。

特に、奈々が再登場する場面は感動的でした。かつて、鰤谷とのトラブルで顔に深い傷を負い、そのせいでメンバーから距離を置いていた奈々。彼女の再登場は、過去の傷を乗り越え、再び「SUNNY」の絆が完全に結びついたことを象徴していました。彼女の頬の傷が消えていたことも、彼女自身の心の傷が癒えたことを示唆しているようで、希望に満ちたラストシーンに繋がっていました。

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は、単なる青春映画ではありません。それは、友情とは何か、人生の岐路に立った時に何を選択すべきか、そして過去の自分とどう向き合うべきか、といった普遍的な問いを投げかける作品だと感じました。1990年代を過ごした世代にはもちろん、そうでない世代にも、きっと心に響くメッセージが込められているはずです。観終わった後には、きっと自分の「あの頃」を振り返り、大切な友人たちに連絡を取りたくなる。そんな温かい気持ちにさせてくれる、珠玉の一作でした。

まとめ

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』のあらすじ(ネタバレあり)を箇条書きでまとめます。

  • 奈美は入院中の芹香と再会し、芹香の「SUNNY」のメンバーに会いたいという願いを叶えるため、仲間探しを始める。
  • 高校時代の奈美は、東京に転校してきたばかりの田舎者で、芹香たち「SUNNY」のメンバーに受け入れられる。
  • 「SUNNY」はダンスフェスティバル出場を目指し、小沢健二の「強い気持ち・強い愛」をテーマ曲に選ぶ。
  • 探偵事務所の協力を得て、奈美と梅は裕子、心といった仲間たちと再会するが、それぞれが人生の苦悩を抱えている。
  • 高校時代、奈美は梅の兄の友人でDJの渉に恋心を抱く。
  • かつてのいじめっ子鰤谷がドラッグで錯乱し、芹香に投げつけたガラスが奈々の顔に刺さる事件が起こり、メンバーは疎遠になる。
  • 大人になった裕子は夫の浮気に悩み、奈美たちは女子高生に扮して復讐に乗り出す。
  • 芹香が亡くなった後、彼女が残した遺言が明らかになり、奈美たちに遺産とメッセージが託される。
  • 芹香からの最後のメッセージと「踊れ」という条件を受け、4人は小沢健二の「強い気持ち・強い愛」を踊る。
  • 踊り終えた4人の前に、頬の傷が消えた奈々が現れ、「SUNNY」の絆が完全に結びつく。