「贖罪(湊かなえ)」の超あらすじ(ネタバレあり)

『贖罪』は、エミリという少女の殺害事件と、それに関わる4人の少女たちの運命を描いた物語です。

事件のトラウマに囚われた紗英、真紀、晶子、由佳はそれぞれの道で贖罪を果たし、心の葛藤と苦悩が鮮明に描かれています。また、エミリの母・麻子の視点からも物語は語られ、母としての悲しみと罪の意識が物語の鍵となります。複雑に絡み合う人間関係と、事件の真相に迫るスリリングな展開が見所の作品です。

この記事のポイント
  • 4人の少女たちの贖罪とそれぞれの事件
  • 麻子の過去と彼女の贖罪の詳細
  • 南条弘章とエミリの本当の父親の関係
  • 事件の真相とエミリの死の背景

「贖罪(湊かなえ)」の超あらすじ(ネタバレあり)

事件の発端と4人の少女たちの運命

エミリはとある田舎町に転校してきた少女で、紗英、真紀、晶子、由佳という4人の友人と仲良くなりました。5人はよく一緒に遊び、特に事件当日も校庭でバレーボールをして楽しんでいました。すると、見知らぬ男性が近づき、「プールの更衣室の換気扇の点検に来たが、脚立を忘れたので手伝ってほしい」と話しかけます。エミリはその男性と更衣室へ行きましたが、帰ってくることはありませんでした。4人が様子を見に行くと、そこにはエミリの遺体が残されていました。

4人は警察に事情聴取を受けますが、犯人の顔を思い出すことができませんでした。その後、エミリの母である麻子は4人に向かって、「あなたたちは人殺しだ。犯人を見つけるか、罪を償え」と厳しく言い放ちます。この一言が4人の少女たちの心に重くのしかかり、その後の運命を大きく左右することとなります。

15年後、それぞれの人生を歩んでいた4人は、どこかでエミリへの贖罪の意識を持ち続けていました。そして、その意識は次第に事件へと発展していきます。紗英はエミリの母・麻子を自身の結婚式に招待し、そのお礼の手紙で当時の真相を綴り、真紀は小学校での事件に遭遇し生徒を守るための行動が新たな事件を引き起こすことになります。

紗英と真紀の贖罪

紗英は大学を卒業後、商社に就職し、見合いで知り合った貴博と結婚しました。しかし、初夜に貴博がフランス人形のようなドレスを紗英に着せたことで、貴博がエミリと同時期にその町に越してきた男であることが明らかになります。幼い頃、フランス人形を見て回るのが好きだった貴博は、紗英がその人形に似ていたため結婚相手として執着したのでした。紗英は貴博から体を求められるも拒否し、貴博を止めるために置時計で彼を殺害してしまいます。そして、その手紙には「犯人は30代半ばの男性だった」との新たな証言も記されています。

一方、真紀は小学校の教師となり、ある日PTA総会で事件を説明していました。プールの授業中に乱入してきた男を取り押さえようとした真紀は、その男を殺害してしまいます。最初は英雄として称賛されますが、次第に批判を受け、苦悩することになります。15年前、エミリが転校してきたことでリーダー的存在を失った真紀は、当時の罪悪感と後ろめたさから生徒を守ろうとしたのです。彼女はその後、犯人の顔を思い出し、フリースクールの経営者である南条弘章に似ていることを明かします。

晶子と由佳の贖罪

晶子はエミリが殺されてから引きこもりになり、家で過ごすようになりました。がっしりとした体形ながら可愛いものが好きだった晶子には、優しい兄がいました。2人は「くまの兄弟」と呼ばれるほど仲が良く、晶子は兄のことが大好きでした。しかし、兄が若葉という少女を虐待している現場を目撃してしまいます。若葉をエミリに重ねた晶子は、兄を止めるため首を絞めて殺してしまいます。エミリ殺害事件の新たな証言として、当時関西に住んでいたはずの南条を町で見かけたと話します。

由佳は姉の夫との間に子供を身ごもっていました。事件当時、由佳は警察に知らせに行き、そこで優しくしてくれた警官を好きになったのです。しかし、姉は警察官と結婚し、その夫と不倫関係になった由佳は、姉とのトラブルで階段から突き落とし、姉を死なせてしまいます。病院に運ばれた由佳は、麻子に対してエミリの顔が麻子やその夫には似ていないことを告げ、4人の償いの物語は終結します。

母・麻子の贖罪

麻子は大学2年生のとき、秋恵という友人に男性を紹介され、その男性と関係を持ちました。しかし、その男性は秋恵とも関係を持っており、麻子はそれに気付いたときにはすでに妊娠していました。エミリはその男性との子供であり、麻子はその後、別の男性と結婚しました。

エミリが殺害された当時、麻子は喪失感から紗英たち4人に厳しい言葉をかけてしまいました。しかし、そのことを後悔し、結婚式で紗英に「あの事件のことは忘れてほしい」と伝えます。ですが、その後も紗英を含めた4人はそれぞれ事件を起こしてしまい、麻子は自分の言葉が4人の運命を狂わせたと感じます。そして、自身も罪を償うため、エミリの本当の父親である南条弘章に会いに行き、彼に真実を告げます。こうして、麻子の贖罪も終わりを迎えるのでした。

「贖罪(湊かなえ)」の感想・レビュー

『贖罪』は、エミリの悲劇的な死と、その後の4人の少女たちの苦悩、そして母・麻子の贖罪という多角的な視点で描かれた物語です。物語の始まりは、田舎町でののどかな日常から一転し、エミリの死という衝撃的な事件により少女たちの人生が大きく狂い始めます。それぞれの贖罪の形が異なり、紗英はフランス人形に似せられた結婚生活の中で犯行に至り、真紀は生徒を守るための行動が思わぬ方向に展開していきます。彼女たちが抱える罪と後悔が丁寧に描かれており、読者の心を深く揺さぶります。

紗英の贖罪は、彼女の結婚生活を通して描かれます。夫である貴博の異常な執着が彼女を追い詰め、ついには殺人に至る様子が非常に緻密に描写されており、彼女の恐怖と絶望感が伝わってきます。真紀のエピソードでは、15年前のエミリの事件と重なる形で生徒を守る決断をする場面が心に響きます。彼女が持つリーダーシップとその裏にある罪悪感が、読者に深い共感を与えます。

晶子と由佳の贖罪も、それぞれの心理的葛藤が強調されて描かれています。兄を愛しながらも彼の罪に対して行動を起こす晶子、そして家族の問題に巻き込まれながらも自分の過ちと向き合う由佳の姿は、単なる「罪」として描かれるのではなく、複雑な人間関係とその心情が鮮やかに表現されています。特に晶子が兄を助けることで自らの贖罪を果たそうとする一方で、その行動が大好きな兄の命を奪ってしまうという皮肉が印象的です。

母・麻子の贖罪は、物語の最後で彼女自身の過去と向き合う形で描かれます。麻子は、15年前に4人の少女たちに向けて放った言葉を後悔し、その結果として彼女たちが罪を重ねることになったことに苦しみます。南条弘章に会いに行き、真実を明かす場面では、母としての麻子の苦しみと強さが伝わってきます。彼女が自らの罪と向き合い、真実を告げることで物語は大きな節目を迎えます。

『贖罪』は、人間の心の闇と、それぞれの過去に向き合う強さを描いた作品です。エミリの死をきっかけに、それぞれの人物が抱える苦しみや葛藤、そして彼らが贖罪へと至る道が丁寧に描かれており、読者はその深い物語性に引き込まれるでしょう。

まとめ:「贖罪(湊かなえ)」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • エミリの死は4人の少女に大きな影響を与えた
  • エミリの母・麻子は4人に「犯人を見つけるか罪を償え」と告げた
  • 紗英はフランス人形に執着する夫・貴博を殺害した
  • 真紀は乱入者を止めるため、相手を殺害してしまった
  • 晶子は兄の犯罪行為を目撃し、兄を殺した
  • 由佳は姉の夫と不倫し、姉を突き落とした
  • 南条弘章がエミリ殺害の犯人と判明
  • 麻子は自分の言葉が4人の少女たちの運命を狂わせたと感じた
  • 麻子は南条にエミリが自分の娘であることを告げた
  • 4人の少女と麻子のそれぞれの贖罪が描かれる