「ロミオとロミオは永遠に」は、近未来の日本を舞台にした壮大な物語です。世界が環境汚染で荒廃し、宇宙に移住した先進国と異なり、旧地球に残された日本での厳しい生存競争が描かれます。主人公カナザワアキラが、失踪した兄カナザワオサムを探し、仲間と共に困難を乗り越える姿が感動的です。
物語は、廃墟となった日本での過酷な生活から始まり、アキラが兄を探すために学園生活と脱出計画に挑むサスペンスフルな展開が見どころです。アキラは友人シゲルと協力し、未来を変えるために時間を超えた冒険に踏み出します。
兄弟愛や友情、そして未来を切り開くための挑戦が詰まったこの作品は、緻密なストーリー構成とキャラクターの成長が印象的です。物語の展開に引き込まれること間違いありません。
- 未来の荒廃した日本の背景
- 主人公アキラが兄を探す物語
- アキラとシゲルの友情
- 学園での脱走計画とその経緯
- 過去にタイムスリップして未来を変える挑戦
「ロミオとロミオは永遠に(恩田陸)」の超あらすじ(ネタバレあり)
第1章: 廃虚の国に残された最後の希望
21世紀の初め、世界中で有害な科学物質や産業廃棄物が垂れ流され、地球は深刻な環境破壊に直面します。先進国は国連が制定した「新地球移民法」に基づき、宇宙へと移住を進めますが、日本だけは旧地球に取り残されました。この背景が、物語の舞台である廃虚のような日本を形作っています。日本に残された人々は厳しい制約の中で生きることを強いられ、核廃棄物の処理など限られた仕事しかありません。
カナザワアキラは幼少期に両親を失い、祖父母に育てられました。彼は祖父母への恩返しを果たすため、厳しい選抜を経て「大東京学園」の入学を目指します。この学園は、日本に残された唯一の未来への希望として、卒業生には特別な地位が約束されています。しかし、入学は極めて狭き門であり、学内では生徒が23の段階に分けられて厳しく管理されます。アキラは、最低ランクに近い葛飾クラスからスタートします。
入学した学園で、アキラは自分の能力と未来への希望を試すために、厳しい日々を送ることになります。彼が属するクラスは成績下位ですが、学園内の他のクラスとの競争は熾烈です。唯一の救いは、友人となるアカシシゲルとの出会いです。二人は共に厳しい環境に立ち向かいながら、未来への希望を見出そうとします。
第2章: 消えた兄と弟の追跡
アキラの学園生活は過酷ですが、彼にはもう一つの大切な目的があります。それは、7歳年上の兄カナザワオサムを探し出すことです。オサムはかつて大東京学園に入学しましたが、反抗的な態度から「新宿クラス」に降格され、その後突然失踪してしまいました。学園側は彼の行方を掴めず、家族にも何の手がかりも残していません。この失踪事件は、アキラにとって大きな心の支えでもあり、彼が兄の足跡を追う理由となります。
学園で親しくなったアカシシゲルは、北海道からの移住者で、過酷な試練を乗り越えてこの学園に来ました。アキラはシゲルに兄の話を打ち明け、二人は協力してオサムの行方を追い始めます。そんな折、新宿クラスのリーダーであるシマバラシロウがアキラに接触し、兄の脱走に協力した人物として登場します。シロウの知識と力を借りながら、アキラは兄の手がかりを求めて行動を開始します。
二人の秘密の交信が学園の生活指導担当、タダノに発覚します。タダノはオサムの反抗的な行動に対し、強い怒りを抱いており、今でも彼の脱走を許していません。この出来事をきっかけに、アキラとシゲルはさらに困難な状況に追い込まれますが、彼らの兄弟愛と友情は一層深まっていきます。
第3章: 大東京オリンピックと脱走計画
アキラが新宿クラスに編入されてから、彼の脱走への決意はますます強固なものとなります。そんな中、シマバラシロウは学園のホストコンピューター「ブリタニカ」へのハッキングに成功します。彼は、オサムが脱走前に旧東京の地下鉄路線図にアクセスしていたことを突き止めます。特に、新橋駅の存在に目をつけたシロウたちは、ここを脱走の鍵と考えます。
かつて大東京学園が建設される際、都内の地下鉄はすべて埋め立てられましたが、新橋駅だけが見過ごされていたのです。アキラとシゲル、そしてシロウは、この事実を利用して地下から脱走する計画を練ります。新宿クラスの学生寮の地下から掘り進め、新橋から外れの森と呼ばれる立ち入り禁止区域へと通じるトンネルを開通させます。計画は順調に進み、脱走のタイミングを待つばかりです。
10月10日、学園全体を巻き込んだ「大東京オリンピック」という大規模なスポーツイベントが開催されます。この日は警備が手薄になるため、絶好の脱走日です。アキラとシゲルは、競技の最中に行動を起こし、脱出計画を実行に移す準備を整えます。シゲルの強い決意とアキラの兄を探す執念が、二人の計画を成功に導こうとしています。
第4章: 未来を変えるための過去への挑戦
ついに脱走の日が訪れ、アキラとシゲルは計画を実行に移します。大東京オリンピックのフィナーレである「大玉転がし」を利用して、二人はスタジアムから脱出し、外れの森へと向かいます。そこでシマバラシロウと無事に合流し、ついに自由への道が開かれます。彼らの目的地は、未来への希望を探るための「外の世界」です。
外れの森を抜けると、彼らの目の前には輝く滝が広がっています。水しぶきの中に飛び込んだアキラとシゲルは、気がつくと1964年の東京に到着していました。時間の流れを超えて過去に到着した彼らは、兄オサムとシロウを探しつつ、未来を変えるための手段を模索します。彼らにとって、この過去の世界こそが未来への鍵なのです。
アキラとシゲルは、この1964年の時代で出会った農夫に助けられ、兄を探し出す決意を新たにします。彼らは、自分たちの手で来るべき最悪の未来を変えようと、力強く前進します。彼らの挑戦はまだ始まったばかりですが、友情と家族の絆を胸に、未来を切り開いていく決意を固めます。
「ロミオとロミオは永遠に(恩田陸)」の感想・レビュー
「ロミオとロミオは永遠に」は、未来の日本を舞台にしつつも、家族愛や友情といった普遍的なテーマを扱った感動的な物語です。物語の中心となるのは、カナザワアキラと彼の兄カナザワオサムの関係です。未来の荒廃した日本という厳しい環境の中で、アキラは兄を探し出し、彼との再会を果たすために数々の困難に立ち向かいます。特に、兄の行方不明が物語全体の動機づけとなっており、アキラが兄を探し続ける姿は、家族の絆の強さを感じさせます。
物語の設定自体も非常に魅力的です。世界が環境破壊によって荒廃し、先進国は宇宙に逃れる一方で、日本は旧地球に残されたという背景が、物語の舞台をユニークなものにしています。この荒廃した日本の描写は、社会的な問題にも通じるテーマを含んでおり、読者に深い思索を促します。未来の日本での厳しい生活を生き抜くアキラたちの姿は、読者に勇気を与えます。
また、アキラとアカシシゲルとの友情もこの物語の大きな柱です。シゲルは、アキラと共に兄を探す旅に同行し、彼の最大の味方として物語を支えます。二人の友情は、学園内の厳しい競争や生活指導の監視下でも揺るがないものであり、脱走計画を進める上での大きな力となります。彼らが共に未来を変えるために奮闘する姿は、友情の大切さを感じさせます。
物語が進むにつれて、彼らが学園の秘密に迫り、脱走計画を進める部分は特にスリリングです。シロウとの協力や、学園のホストコンピューター「ブリタニカ」へのハッキングなど、緊張感のあるシーンが続き、読者は物語に引き込まれます。大東京オリンピックの日に計画を実行するというタイミングの設定も、物語のクライマックスに向けた盛り上がりを感じさせます。
最後に、物語の結末で彼らが過去の東京にタイムスリップし、未来を変えるための新たな挑戦に立ち向かうという展開は、意外性がありながらも感動的です。過去に戻ることで、未来の災厄を防ごうとする彼らの決意が描かれており、物語のテーマである「未来を切り開く力」が強く伝わってきます。
まとめ:「ロミオとロミオは永遠に(恩田陸)」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 日本は旧地球に取り残される設定である
- 主人公はカナザワアキラ
- アキラの兄オサムが失踪する
- 友人のアカシシゲルが登場
- 新宿クラスのシマバラシロウが協力者になる
- 大東京オリンピックが舞台の脱走計画が描かれる
- 過去の東京にタイムスリップする
- 脱走のために地下鉄を利用する計画がある
- 未来を変えるために過去で兄を探す展開になる
- 家族愛と友情がテーマとなる