オークブリッジ邸の笑わない貴婦人(太田紫織)の超あらすじとネタバレ

「オークブリッジ邸の笑わない貴婦人」は、太田紫織が描く感動の物語です。

この小説は、母と祖母を失い借金を抱えた主人公・鈴佳が、祖母の働いていた家政婦派遣会社に入り、19世紀英国様式の生活を再現するオークブリッジ邸でハウスメイド「アイリーン」として働く姿を描いています。鈴佳が新たな環境で出会う人々との関わりや困難を通じて成長していく様子が、細やかに描かれています。

この記事では、そんな鈴佳の成長とオークブリッジ邸でのドラマティックな出来事を、詳しくネタバレを含めて紹介します。

この記事のポイント
  • 鈴佳が家政婦として働き始めた経緯
  • 19世紀英国様式の生活の詳細
  • 鈴佳とユーリの関係の発展
  • エズミとの複雑な関係とその解決
  • 奥様の最期とオークブリッジ邸の新たな始まり

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人(太田紫織)の超あらすじとネタバレ

第1章: 鈴佳の始まり

鈴佳(すずか)は、小さい頃から自由奔放な母親と、しっかり者の祖母に育てられました。母親は自分勝手なところがありましたが、鈴佳にとっては大好きな存在でした。一方、祖母は家政婦として働いていて、家の中でも外でも鈴佳をしっかりと支えてくれていました。

しかし、鈴佳が高校を卒業した頃、大きな悲劇が訪れます。母親と祖母が立て続けに亡くなってしまったのです。残された鈴佳にとって、これは大変なショックでした。さらに、母親が残した大きな借金があることも分かりました。鈴佳は、その借金を返さなければならなくなりました。

借金を返すため、鈴佳は祖母が働いていた家政婦派遣会社に入ることを決めました。そこで、楢橋優利(ならはしゆうり)という若い男性から、住み込みの仕事を依頼されます。優利は、鈴佳に特別な仕事を頼みました。それは、19世紀の英国(イギリス)様式に従って、ハウスメイド「アイリーン」として働くことでした。

鈴佳は、アイリーンという名前で、優利の住む洋館で働くことになります。この洋館は東川町の奥にひっそりと建っていて、オークブリッジ邸と呼ばれていました。オークブリッジ邸は、本格的なビクトリア調の建物で、まるで19世紀の英国にタイムスリップしたかのような場所でした。

鈴佳は、オークブリッジ邸での新しい生活を始めます。ここでは、優利は「ユーリ」と呼ばれ、鈴佳は「アイリーン」と呼ばれるようになります。また、タエという女性は「奥様」と呼ばれ、まるで本物の貴族のような生活が続いていきます。

アイリーンとしての生活は、今までの生活とは全く違いました。例えば、床や鍋を磨くときには、現代の便利な掃除道具は使えません。代わりに、酢や砂を使って磨きます。これがとても大変な作業で、アイリーンの手はすぐにひび割れてしまいました。

お湯を使うときも、今のように蛇口をひねれば出てくるわけではありません。やかんでお湯を沸かし、それを使います。お風呂のお湯も、自分の部屋まで運ばなければなりません。洗剤や便利な掃除道具もないので、毎日の掃除や洗濯はとても大変です。

アイリーンは、そんな19世紀の生活に少しずつ慣れていきます。奥様からウミガメのスープを出してほしいと言われたときは、コックのミセス・ウィスタリアと一緒に奔走しました。19世紀の生活を写真に撮りたいというロベルトという写真家が訪れたり、奥様の孫エドワードが来たりして、忙しい毎日が続きました。

アイリーンとしての生活に少しずつ慣れてきた鈴佳ですが、ある日、奥様の部屋で「ヒギンズ」という名前の書かれた封筒を見つけます。この名前が何を意味するのか、鈴佳にはまだ分かりません。

そんな中、たまの休みの日に外に出ることが許され、鈴佳は東川町郷土館に行きます。そこで、若い頃の奥様と外国人の写真を見つけます。この写真が、タエがここを最後の場所に選んだ理由を示していることに、鈴佳は気づき始めます。

このようにして、鈴佳の新しい生活が始まりました。彼女はこれから、多くの困難や驚きに直面していくことになりますが、その中で成長していくのです。

第2章: ハウスメイドとしての日々

鈴佳は、オークブリッジ邸で「アイリーン」としての生活を始めました。19世紀の英国様式の生活は、彼女にとって全く新しいものでした。現代の便利な道具は一切使えず、すべてが昔の方法で行われるのです。

まず、毎日の掃除です。床を掃くためにはほうきを使いますが、これも簡単なことではありません。床は木製で、隅々まできれいにするためにはかなりの労力が必要です。床や鍋を磨くときには、酢や砂を使います。これがとても大変で、アイリーンの手はすぐにひび割れてしまいました。それでも、毎日しっかりと掃除をしなければなりません。

また、お湯を使うときも一苦労です。今のように蛇口をひねればお湯が出るわけではありません。やかんでお湯を沸かし、それを使います。特にお風呂のお湯は、自分の部屋まで運ばなければならないので、とても大変です。洗濯も手洗いで行い、洗剤などの便利なものは使えません。石鹸を使って、一枚一枚丁寧に洗います。

アイリーンとしての生活は、まるでタイムスリップしたかのような毎日です。しかし、彼女は少しずつこの生活に慣れていきます。ある日、奥様から「ウミガメのスープを出してほしい」と頼まれました。ウミガメのスープは、特別な料理で、作るのがとても難しいのです。アイリーンは、コックのミセス・ウィスタリアと一緒に、何とかしてスープを作り上げました。このような特別な料理を作ることも、彼女の仕事の一部でした。

また、オークブリッジ邸には時々お客さんが訪れます。19世紀の生活を写真に撮りたいというロベルトという写真家が訪れたこともありました。ロベルトは、オークブリッジ邸の美しい内装や、そこでの生活を写真に収めました。彼の訪問は、アイリーンにとっても新しい刺激となりました。

さらに、奥様の孫エドワードが訪れることもあります。エドワードは、若くてエネルギッシュな男性で、アイリーンともすぐに打ち解けました。彼との交流も、彼女にとって大切な経験となりました。

そんな忙しい毎日の中で、アイリーンは少しずつ日々の生活に慣れていきました。しかし、ある日、彼女は奥様の部屋で「ヒギンズ」という名前の書かれた封筒を見つけます。この名前が何を意味するのか、アイリーンにはまだ分かりませんでしたが、何か重要なことが隠されているように感じました。

アイリーンとしての生活は厳しく、困難も多いものでしたが、その中で彼女は多くのことを学び、成長していきました。毎日の小さな努力が、少しずつ彼女を強くし、また新しい経験を積み重ねることで、彼女は次第に自信を持つようになりました。

このようにして、アイリーンの新しい生活は続いていきます。彼女はこれからも、多くの困難や驚きに直面していくことでしょう。しかし、それらを乗り越えることで、彼女はさらに成長していくのです。

第3章: 新たな関係と困難

オークブリッジ邸での生活に少しずつ慣れてきたアイリーンですが、新たな試練が訪れます。それは、優利(ユーリ)の妹、エズミの登場です。エズミは声楽家を目指してフランスに留学していましたが、突然の訪問にアイリーンは戸惑います。

エズミは最初からアイリーンに対してわがままを言ったり、意地悪をしたりしました。例えば、朝食の時間に「この紅茶は美味しくない」と言って作り直させたり、掃除の仕方に文句をつけたりします。アイリーンはその度に、エズミの要求に応えようと努力しましたが、心の中ではどうしてこんなに意地悪をするのだろうと悩んでいました。

ある日、エズミが「海に行きたい」と言い出しました。しかし、オークブリッジ邸の近くには海はありません。そこでアイリーンは、裏の川に連れて行くことにしました。川で水遊びをするうちに、突然の大雨が降り出します。びしょ濡れになりながら、アイリーンとエズミは急いで屋敷に戻りました。

その帰り道で、エズミは突然泣き出しました。「奥様とユーリはアイリーンばかりを気にかけて、私のことを邪魔ものだと思っている」と言います。エズミの心の中にある寂しさや不安が、この一言で表れたのです。アイリーンはその言葉に驚きましたが、優しくエズミを慰めました。「私はただのメイドです。あなたの家族とは違います」と言って、エズミに安心感を与えようとしました。

この出来事をきっかけに、少しずつ2人の距離は縮まっていきました。しかし、ある晩、アイリーンがユーリの衣服のシミを抜くために彼が服を脱いだところにエズミが現れました。エズミは2人が何か秘密を共有していると誤解し、再び関係が悪化してしまいます。アイリーンはエズミに誤解を解こうとしましたが、エズミは聞く耳を持ちませんでした。

その後、アイリーンはユーリから驚くべき事実を知らされます。ユーリとエドワードの父親と、エズミの父親は違うという家族の問題があったのです。エズミの母親は、病気の夫が亡くなった後間もなく、エズミの父親と再婚しました。このため、エズミは周囲からあまりよく思われていなかったのです。

エズミはそのことが原因で精神的に不安定になり、歌を歌う時に声が出なくなるという病気にかかってしまいました。そのため、フランスに戻りたくないとアイリーンに打ち明けます。アイリーンは、そんなエズミを優しく支えることにしました。エズミが少しでも安心して過ごせるように、アイリーンはできる限りのことをしました。

アイリーンたちは周囲の人々との接触を極力避けていましたが、町の人々から「怪しい人たちが住んでいる」と誤解を受けることがありました。ある日、役場の人からも指摘され、周辺の人々の理解を得ることが大切だと感じるようになります。庭師の大葉さんが庭仕事を手伝ってくれたり、エズミに乗馬を教えてくれるビックなど、少しずつ協力してくれる人たちも増えていきました。

このようにして、アイリーンは新たな困難を乗り越えながら、オークブリッジ邸での生活を続けていきます。エズミとの関係も少しずつ改善し、彼女の心の支えとなることで、アイリーン自身も成長していくのです。

第4章: 舞踏会の計画と試練

アイリーンとエズミの関係が少しずつ良くなっていく中で、オークブリッジ邸では新たな挑戦が待ち受けていました。それは、エズミのために舞踏会を開くことです。フランスに戻ることを拒むエズミのために、アイリーンたちは彼女を元気づける方法を考えました。その結果、舞踏会を開くことが決まりました。

最初は、奥様も乗り気ではありませんでした。奥様は、舞踏会の準備が大変だと感じていたのです。しかし、アイリーンは「昔の領主は領民のために祭りをした」と言って、奥様を説得しました。奥様も最終的には心を動かされ、舞踏会を開くことに同意しました。

東川町では、舞踏会と一緒に本格的な祭りを開く計画が立てられました。町の人々もこの計画に賛成し、協力してくれることになりました。エズミのために、今までオークブリッジ邸の生活を理解してくれた多くの人たちが集まることになりました。

祭りの準備は大変でしたが、アイリーンは皆と協力して進めていきました。優利の友人でホテルマンとして働く人や、エミリーのメイド仲間が舞踏会のための助っ人として参加してくれました。エミリーは明るくて元気なメイドで、彼女の手助けは大いに役立ちました。

祭りの日が近づくにつれ、オークブリッジ邸は賑やかになっていきました。庭師の大葉さんは美しい庭を整え、ビックはエズミに乗馬のレッスンを続けてくれました。町の人々も祭りの準備に参加し、みんなで一緒に楽しむための計画が進められました。

そして、ついに祭りの日がやってきました。町の広場には多くの人々が集まり、色とりどりの飾りや屋台が並びました。奥様は始まりの挨拶をし、かつて東川町に外国の親善使節が来たとき、通訳としてこの町を訪れた経験を語りました。この話を聞いた町の人々は、奥様に対して温かい目を向けるようになりました。

夜になると、舞踏会が始まりました。エズミは美しいドレスを着て、アイリーンと一緒に踊りました。彼女の笑顔を見ることができて、アイリーンも嬉しく思いました。舞踏会は順調に進んでいき、みんなが楽しい時間を過ごしていました。

しかし、突然の出来事が舞踏会の雰囲気を一変させました。それは、ユーリとエズミの母であるマリアが現れたことです。マリアは母が末期のがんであることを知っており、治療もせずにわけのわからないことをしていると怒りをぶつけました。マリアの言葉にショックを受けた人々は、舞踏会を途中で中止することにしました。

暗い雰囲気が屋敷を包む中、アイリーンはマリアと話をすることにしました。彼女は自分の母と祖母を亡くした経験から、マリアの気持ちを理解しようとしました。最期の時を大切にしたいという奥様の思いを伝え、マリアも次第に理解を示しました。

その後、マリアも協力して、奥様が望む最後の時間を作ることができました。家族や友人たちと過ごすその時間は、奥様にとってとても大切なものでした。そして、ある日、奥様は静かに旅立たれました。

奥様が旅立った後、エズミは再びフランスに戻る決意をし、アイリーンとユーリに見送られました。アイリーンも、これからの新しい生活に向けて気持ちを新たにしました。彼女は、オークブリッジ邸での経験を通じて多くのことを学び、成長しました。

こうして、アイリーンたちの新たな生活が始まります。舞踏会や祭りの思い出とともに、彼女たちは前に進んでいくのです。

第5章: 最後の時間と新たな始まり

奥様が旅立たれた後、オークブリッジ邸には静かな日々が戻ってきました。エズミはフランスに戻る決意を固め、アイリーンとユーリは彼女を見送りました。エズミが去った後、アイリーンとユーリは新たな生活を始めるために動き出します。

ある日、アイリーンとユーリは奥様から遺された手紙を開けました。アイリーンの封筒には謎めいた言葉が書かれており、ユーリの封筒にはそれと対になる言葉と指輪が入っていました。二人はその意味を考え、手がかりを探し始めました。

手紙に書かれていた謎めいた言葉を手掛かりに、大葉さんに相談しました。大葉さんは「エドワードに渡してほしい」と言って、大きな封筒を渡してくれました。アイリーンとユーリは、エドワードにその封筒を渡すため、函館へ向かいました。

函館の夜、エドワードに封筒を渡した後、アイリーンとユーリは初めて奥様を失った悲しみを共有しました。その時、感情が高まり二人はキスをしてしまいます。しかし、アイリーンは感情に流されるのは良くないと自分に言い聞かせ、ユーリに別れを告げました。その後、二人は会うことなく一年が過ぎました。

一年後、東川町では再び祭りを開催することになりました。町の人々は、奥様のことを忘れないために、この祭りを続けようと決めたのです。祭りの日、エズミもフランスから戻ってきました。彼女は二人が付き合い始めていると思っていましたが、実際はまだ気まずい関係のままでした。

オークブリッジ邸は、本格的な英国式を味わえるホテルとして再出発することになりました。エミリーも戻ってきて、以前のように明るく元気に働いていました。アイリーンはユーリとの関係を修復するために努力し、お互いの誤解や本当の気持ちを伝えることにしました。

祭りの夜、アイリーンとユーリは再び話し合い、ユーリからプロポーズの言葉を受けました。ユーリは「君と一緒にいたい」と言い、アイリーンに指輪を贈りました。それは奥様の指輪であり、奥様が執筆しエドワードが仕上げた「アイリーン」というビクトリアンメイドの小説も一緒に渡されました。

アイリーンは感動し、ユーリのプロポーズを受け入れました。二人は新たな生活を共に歩み始めることを誓いました。これまでの困難や試練を乗り越えた彼らは、これからの未来に向けて前向きに進んでいくのです。

こうして、アイリーンとユーリの新しい章が始まりました。彼らはオークブリッジ邸での経験を大切にしながら、共に新しい生活を築いていくのです。彼らの物語はまだ続きますが、それはまた別の機会に語られることでしょう。

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人(太田紫織)の感想・レビュー

「オークブリッジ邸の笑わない貴婦人」は、太田紫織さんの作品で、とても感動的な物語です。主人公の鈴佳(すずか)は、自由奔放な母親としっかり者の祖母に育てられましたが、高校を卒業する頃に母親と祖母を相次いで失い、さらに借金を抱えてしまいます。この状況からスタートする鈴佳の物語は、読者の心を掴みます。

鈴佳が祖母の働いていた家政婦派遣会社に入り、19世紀の英国様式を再現するオークブリッジ邸で「アイリーン」として働き始めるところから物語は本格的に展開します。オークブリッジ邸での生活は、現代の私たちにとっては想像もつかないような厳しいもので、毎日の掃除や料理もすべて昔ながらの方法で行われます。例えば、床や鍋を磨くのに酢や砂を使い、お湯をやかんで沸かし、お風呂のお湯を自分の部屋まで運ぶなど、アイリーンとしての生活はとても大変です。

この物語の魅力の一つは、鈴佳がそんな過酷な状況の中で少しずつ成長していく姿です。初めは戸惑いながらも、次第に19世紀の生活に慣れていく鈴佳の姿は、読者に勇気を与えます。また、鈴佳がエズミという人物と出会い、彼女との関係を築いていく過程もとても興味深いです。エズミは初めはわがままで意地悪ですが、次第に心を開いていきます。鈴佳の優しさと理解力が、エズミの心を解きほぐしていくのです。

さらに、舞踏会の計画や実現、奥様の最期の時間を大切に過ごす場面など、感動的なシーンがたくさんあります。特に、マリアが奥様の末期のがんに対する怒りをぶつける場面や、最期の時間を共に過ごす家族の姿は、涙を誘います。

最後に、鈴佳とユーリの関係が進展し、ユーリからプロポーズを受けるシーンはとてもロマンティックです。奥様の指輪と一緒に「アイリーン」という小説を贈られる場面は、物語の締めくくりにふさわしい感動的な瞬間です。

この物語は、鈴佳の成長と人々との関わりを通じて、人間の強さや優しさを描いています。太田紫織さんの細やかな描写と感情豊かなストーリー展開により、読者は鈴佳の人生に深く共感し、応援したくなることでしょう。中学生でも理解できる平易な表現で書かれているので、幅広い年代の読者におすすめです。

まとめ:オークブリッジ邸の笑わない貴婦人(太田紫織)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 鈴佳の家族の悲劇と借金の発覚
  • 家政婦派遣会社に入る鈴佳の決意
  • オークブリッジ邸での19世紀英国様式の生活
  • ユーリとの出会いと「アイリーン」としての役割
  • エズミの登場と鈴佳への意地悪
  • エズミの心の葛藤とアイリーンの支え
  • 町の人々との誤解とその解決
  • 舞踏会の計画とその実現
  • マリアの怒りと奥様の最期の時間
  • 奥様の遺産とユーリからのプロポーズ