『求めよ、さらば』は、志織と誠太の夫婦が不妊治療を通じて向き合う姿を描いた感動的な物語です。
IT翻訳者の志織とプログラマーの誠太は、結婚3年目にして子供を望むものの、なかなか授からず、不妊治療に挑みます。しかし、誠太が家を出てしまい、志織は過去を振り返りながら夫婦の絆を再確認していきます。物語は、彼らが苦難を乗り越え再び結ばれるまでの道のりを細やかに描いています。
ネタバレを含む詳細なあらすじをご紹介します。
- 『求めよ、さらば』の概要
- 志織と誠太の不妊治療の取り組み
- 夫婦間の問題と誠太の家出
- 志織が過去を振り返る過程
- 物語の結末と夫婦の再結合
「求めよ、さらば」の超あらすじ(ネタバレあり)
志織(しおり)は在宅でIT関係の翻訳の仕事をしている30代の女性です。夫の誠太(せいた)はプログラマーとしてソフトウェア開発会社で働いており、写真撮影を趣味としています。二人は結婚してから三年が経ち、子供を授かりたいと願ってきましたが、なかなかうまくいきません。そこで、二人は不妊治療を始めることにしました。
これまでに三つの産婦人科を回り、今は評判の高いクリニックに通っています。誠太は不妊治療に協力的で、志織と一緒に検査を受けたり、治療に取り組んだりしています。医師の診断では、夫婦ともに身体に異常はなく、タイミング法も試みましたが、妊娠には至りませんでした。
そんなある日、志織の大学時代の友人である杏奈(あんな)と衿子(えりこ)が遊びに来ました。二人は志織が大学時代に居酒屋でアルバイトしていたときの仲間で、実は誠太もそのバイト仲間でした。当時、誠太は物静かな青年でした。
杏奈は独身で、恋愛が多いタイプの女性で、今回も彼女だけがお酒を飲んでいます。志織は妊娠を期待してお酒を控えており、衿子もまたお酒を飲んでいません。不意に、衿子が妊娠中であることを告白します。彼女は広島に住む銀行員の彼氏と遠距離恋愛をしており、その中で妊娠したのです。この知らせに、志織はショックを受けましたが、友人たちにはその感情を隠しました。
結局、志織の妊娠は叶わぬまま、季節は移り変わっていきます。そんな中、雑誌編集者の妹から「開妊ヒーリングセラピー」という施術を勧められました。志織はそれを迷信のように思いながらも、気分転換にとセラピーに出かけます。そこでセラピストから「水の流れが逆流するようにエネルギーが内に向いている」と言われ、施術を受けた結果、志織の気分はすっきりしました。セラピストの勧めで、志織は久しぶりに誠太と旅行に行くことを決めます。
志織と誠太は、群馬県の伊香保温泉に行くことにしました。旅行の途中で、誠太の祖父母の墓参りをすることにします。誠太の両親は、誠太が子供のころ、病気がちな弟の介護に専念していました。そのため、誠太は一時期、祖父母の家に預けられ、祖父母からとても大切にされて育ちました。
墓参りの後、誠太は祖父母の実家を見に行きましたが、なぜか自分の実家には行きたがりませんでした。志織はその理由を尋ねませんでしたが、誠太の表情から何かを感じ取っていました。
伊香保温泉では、子宝にご利益があるとされる「伊香保神社」に参拝し、さらに「子宝の湯」にもつかりました。その晩、宿の部屋で食事をしながら、普段お酒に弱い誠太が、いつもより多くビールを飲みました。そして突然、「志織に子供ができないのは僕のせいだ」と言い出し、涙ながらに謝りました。
旅行から帰ってきて二週間後、誠太は志織に離婚届と手紙を残して家を出て行きました。手紙には、大学時代に誠太が志織に惚れ薬を使ったことが告白されており、誠太はそれについて謝罪していました。この衝撃的な告白に、志織は深く心を揺さぶられます。
誠太が大学生だったころ、彼は居酒屋でアルバイトをしていました。同じ店でバイトしていた志織に対する好意が強く、彼女にどうにかして近づきたいと考えていました。誠太はあまり本を読まないタイプでしたが、志織が読んでいる本をチェックして、自分も同じ本を読むようにしていました。
志織は明るく、周りの人に気を配る性格でしたが、ふとしたときに見せる陰のある表情が、誠太にはとても印象的でした。彼女のそのギャップに誠太は心を奪われていました。
ある日、志織が付き合っていた大学生の男性と別れることになり、その男性がバイト先にまで志織を訪ねてきました。困った志織は、誠太に相談しました。誠太は「濃い化粧をして、ドクロの服を着て彼に会ってみたらどう?」と、少しふざけたアドバイスをしましたが、志織はそのアドバイスに従い、無事に彼との別れを果たしました。
この出来事をきっかけに、志織と誠太の距離は一気に縮まりました。二人はクリスマスが近づいたころ、バイト仲間たちと一緒にアマチュアバンドのライブに行くことになりました。
ライブで志織は、バンドメンバーの一人であるコウという男性にアドレスを交換しようと誘われました。コウはその後も志織に積極的にアプローチをしてきました。志織に好意を抱く誠太は、そのことに嫉妬し、不安を感じていました。
誠太は、もうすぐバイトを辞めて会社勤めを始める予定で、引っ越しも控えていました。そうなると、志織と会う機会が減ってしまうかもしれません。その焦りから、誠太はインターネットで「惚れ薬の作り方キット」を取り寄せました。これは、特別な儀式を行って、ただの水を「惚れ薬」に変えるというものでした。
誠太はこの惚れ薬をバイト先の送別会で、隙を見て志織の飲み物に入れました。すると、しばらくして、志織の方から「私と付き合ってほしい」と告白されました。誠太はその瞬間、彼女が惚れ薬の影響を受けているのではないかと感じつつも、彼女の告白を嬉しく受け止めました。
誠太が家を出た後、志織は杏奈と一緒に、衿子の新居を訪れました。生後四か月の息子、桔平くんを抱かせてもらったとき、志織は突然涙がこみ上げてきて、止まらなくなりました。志織は二人の友人に、誠太が出て行ってしまったことを初めて話しました。また、誠太が現在、インスタグラムで活動しているらしいことや、彼が郷里の群馬県の祖父母の家にいるのではないかと考えていることも伝えました。
志織は誠太との12年間の思い出を振り返り、彼のことをあまり見ていなかったのではないかと感じるようになりました。彼女はかつて住んでいた場所や、誠太と一緒に過ごした場所を訪ね歩き、二人で過ごした時々の誠太の
表情や言葉を思い出しました。そして、誠太が自分のために涙を流してくれたとき、この人と一生一緒にいたいと思ったことも思い出しました。
数日後、志織はバイト時代のバンド仲間と連絡を取り、誠太が昔から志織のことが好きだったと聞かされました。志織は誠太の故郷である群馬県に行き、誠太が撮影した山に登り、彼の祖父母の家を訪ねました。最初の日は誠太に会うことができませんでしたが、翌日、二人はついに再会し、お互いの本音をぶつけ合いました。そして、再び二人はよりを戻すことができました。
このように、志織と誠太は多くの困難を乗り越え、不器用ながらも再び一緒になることができたのです。
「求めよ、さらば」の感想・レビュー
『求めよ、さらば』は、志織と誠太という夫婦が直面する現実と、それにどう向き合うかを描いた非常に心に響く物語です。志織は在宅でIT翻訳の仕事をしており、誠太はプログラマーとして働く、互いに支え合う夫婦です。しかし、3年間の不妊治療を経ても子供を授かれず、志織は友人の妊娠の知らせにショックを受けます。この描写は、子供を望む夫婦が抱える苦悩や孤独感をリアルに感じさせます。
伊香保温泉への旅行をきっかけに、誠太は自分が抱えていた罪悪感や悩みを打ち明けます。特に、誠太が過去に志織に対して惚れ薬を使っていたことを告白するシーンは、物語の中でも非常に衝撃的でした。誠太がそのことを悔やみ、家を出てしまう展開は、夫婦の絆が一度崩れる瞬間を象徴しています。
志織が過去の思い出を振り返りながら、自分がどれだけ誠太のことを理解していなかったかを痛感する場面は、読者にも深く共感させられます。志織が誠太の故郷を訪ね、再び二人が向き合うことで、夫婦の絆が再び結び直されるエンディングは感動的です。
全体を通じて、『求めよ、さらば』は、夫婦が困難を乗り越え、再び絆を深める姿を丁寧に描いています。志織と誠太の心の葛藤や、過去の出来事にどう向き合うかが詳細に描かれており、読後には二人の関係がより深まったことを感じられる作品です。この物語は、夫婦の愛情や信頼を再確認する機会を与えてくれる素晴らしい作品です。
まとめ:「求めよ、さらば」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 志織と誠太は結婚3年目の夫婦である
- 志織はIT翻訳者、誠太はプログラマーである
- 二人は子供を望み、不妊治療に取り組んでいる
- 志織の友人たちの妊娠にショックを受ける
- 志織はヒーリングセラピーに行き、気分が好転する
- 誠太が伊香保温泉への旅行を計画する
- 旅行後、誠太は家を出て離婚を示唆する
- 誠太は過去に志織に惚れ薬を使ったことを告白する
- 志織は誠太との思い出を振り返り、再会を決意する
- 最終的に、志織と誠太は再び結ばれる