宮部みゆき「誰か」の超あらすじ(ネタバレあり)

宮部みゆきのミステリー小説「誰か」は、日常に潜む不可解な事件とその背後にある深い人間ドラマを描いた作品です。この記事では、「誰か」の物語を超あらすじ形式で紹介し、その魅力を深堀りしていきます。

杉村三郎の逆玉の輿から始まる新たな生活、突如彼の前に立ちはだかる轢き逃げ事件、そしてそれが引き起こす一連の謎解きについて、ネタバレありで解説していきます。梶田信夫の轢き逃げ死と、その背後に隠された人間関係の複雑さ、家族の絆、そして過去の秘密が現在にどのような影響を与えるのか、深く掘り下げていきます。

この記事のポイント
  • 杉村三郎の逆玉の輿と彼が直面する轢き逃げ事件の初期の状況。
  • 梶田信夫の死後、彼の娘たちが取る行動と、それが引き起こす一連の調査の概要。
  • 誘拐事件の真相と、それが主要人物の間でどのような影響を及ぼすか。
  • 物語の結末として、主要人物たちが直面する人間関係の複雑さとその解決。

宮部みゆき「誰か」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章: 平穏の日々と轢き逃げ事件

杉村三郎は、社会的地位が高く裕福な今多コンツェルンの会長の愛人の娘である菜穂子との結婚により、まるで映画のような逆玉の輿を実現しました。彼は以前勤めていた絵本出版社を辞め、今多コンツェルンの広報室において、社内報の編集者兼記者として勤めることになります。この転職は結婚の条件の一つであり、三郎にとっては新たな生活の始まりでした。広報室での仕事はそれほど忙しくなく、彼は比較的平穏で何不自由ない日々を送っていました。

しかしその平穏は、ある日突如として破られます。今多コンツェルンの個人運転手であった梶田信夫が、自転車に轢き逃げされて亡くなるという痛ましい事故が起きたのです。梶田信夫はコンツェルンに長年勤めた信頼のおける運転手で、その死は今多家にとっても大きな悲しみでした。

事故の報はやがて梶田信夫の娘たち、聡美と梨子にも届きます。二人は父の突然の死に深い悲しみと共に、事故の真相を明らかにし、父の無念を晴らす決意を固めます。この決意の中で、特に梨子は父の人生と事故の真相を一冊の本にまとめて発行することを考えます。轢き逃げ事件は残念ながら珍しいことではなく、警察やマスコミの関心も薄れがちで、犯人が罪を逃れる可能性が高いという現実が、彼女たちの行動をさらに急がせました。

このような状況の中で、今多は三郎に梶田姉妹との対話を持ちかけ、彼女たちの話を聞いてほしいと依頼します。三郎が連絡を取ると、姉妹は会話のために訪れます。梨子は熱心に自分の計画を語り、聡美も姉の計画には賛同していますが、聡美は後に三郎と二人きりの時に、この計画には全面的には賛同していないこと、そして自分の結婚式を控えている中で父の過去を深く掘り返したくない複雑な心境を明かします。

さらに、聡美は父の過去には姉が知らない、そして知ってしまえば傷つくかもしれない部分があるとも語ります。そして、自分がかつて誘拐されたこと、その事件が単なる事故ではない可能性を疑っていることも三郎に打ち明けます。

第2章: 梶田姉妹の決意

梶田信夫の突然の事故死は、彼の二人の娘、聡美と梨子にとって計り知れない悲しみをもたらしました。二人は父親の死の真相を追求し、その無念を晴らすために行動を起こすことを決意します。特に梨子は、父親の人生を振り返り、彼の死に至る事故の真相を一冊の本にまとめて発行することで、轢き逃げ事件の犯人に罪の重さを認識させ、同時に社会に警鐘を鳴らそうと考えました。

この決意を胸に、梶田姉妹は今多コンツェルンの広報室で働く杉村三郎に接触します。今多からの依頼を受けた三郎は、彼女たちの話を聞くことになります。梨子は熱心に、父の人生を一冊の本にまとめる計画を語ります。この計画は、ただの追悼の意味だけでなく、社会的なメッセージを込めた行動であり、轢き逃げ事件への警告と犯人への戒めを意味していました。轢き逃げ事件は残念ながら珍しくなく、警察やマスコミの関心が薄れがちであるため、梨子はこの計画を通じて、より大きな注目を集めようとしていました。

しかし、聡美はこの計画に対して複雑な心境を抱いていました。彼女は後に三郎と二人きりになった際に、自分は結婚式を控えており、父の過去を深く掘り返すことには抵抗があると打ち明けます。聡美にとって、父親の人生には、公にすることで家族が傷つく可能性のある部分もありました。加えて、聡美は過去に誘拐された経験があり、その事件がただの事故死ではなく何かより深い背景があるのではないかと疑っていました。このことは、三郎にとっても新たな情報であり、梶田信夫の死の背後に隠された真実を解き明かすための重要な手がかりとなりました。

梶田姉妹の決意と聡美の複雑な心情は、三郎にとって重大な責任を伴う課題を提示しました。父の死の真相を追求するという彼女たちの願いをどのように叶えるべきか、そして聡美の心配事をどのように解決するべきか、三郎は深く考えることになります。これらの出来事は、三郎と梶田姉妹の間に、父親の死という共通の目的を追求するための絆を築き上げました。

第3章: 真相追求の始まり

杉村三郎は、梶田姉妹からの話を受け、彼女たちの父親、梶田信夫の人生と轢き逃げ事件の真相を追求することになります。三郎はまず、今多コンツェルン会長に梶田姉妹との会話の内容を報告します。会長は、聡美が結婚式を延期しようとしていることを聞くと、梶田信夫の性格を踏まえれば、無事に式を挙げた方が彼も喜ぶだろうと、延期には否定的な見解を示します。

その後、梨子は可能な限りの資料を集め、本の題材について三郎と話し合います。しかし、聡美とは喧嘩中であるため、梨子は一人で材料を持参します。彼女は父親の知人に連絡を取り、何人かから昔話を聞いてきたと報告します。三郎は、梨子に比較的新しい情報を調べさせ、聡美が怪しいと言っていたトモノ玩具勤務時のことについては、自分が調査を担当することにします。

トモノ玩具を調べた結果、三郎は元社長である老人と連絡を取り、話を聞かせてもらうことに成功します。しかし、信夫の過去や事故現場に関する有力な情報は得られませんでした。警察の初期の調べでは、子供が走り去っていくのを見た目撃者はいましたが、事故そのものを目撃した人はいませんでした。三郎は、近隣住民にも話を聞きますが、犯人に繋がるような情報は出てきません。

トモノ玩具は昔はおもちゃの製造工場でしたが、現在はおもちゃ屋として営業していました。三郎は、信夫を雇っていた友野栄次郎に話を聞くことができますが、特に印象に残る事件や、聡美が心配していたような暗い過去はないとのことでした。

最終的に、三郎は聡美に会い、友野栄次郎氏に聞いた話やトモノ玩具での梶田信夫の勤務に関して、特に問題になりそうな出来事はなかったと報告します。聡美が誘拐された事件についても詳しく聞こうとしますが、聡美はその事件についてほとんど覚えておらず、犯人や動機も不明のままです。

第4章: 三郎の事故と真実の探求

杉村三郎、梶田梨子、そしてアルバイトの椎名は、梶田信夫が轢き逃げされた現場でビラを配っていました。彼らはこの行動を通じて、事件に関する新たな証言者を見つけ出すことを期待していました。しかし、三郎は不慮の事故に遭遇し、自転車に轢かれてしまいます。幸い、三郎が受けた怪我は重くなく、大事には至りませんでしたが、この出来事は梨子に「その場所が呪われているのではないか」という感覚を抱かせます。

この事故により、梶田姉妹はさらに三郎に対する責任を感じ、彼の自宅を訪れ、さまざまな話をします。その中で、三郎が携帯電話の着信音設定について触れた際、梨子、椎名、そして聡美は、今の携帯電話なら相手ごとに着信音を変更できると教え、三郎を笑顔にします。

事故後、三郎は再び現場の近くで聞き込みを試みます。その際、近隣に住む人々から、梶田信夫を轢いた犯人が中学生であるという噂を耳にします。この情報は、三郎にとって新たな手がかりとなります。

数日後、警察から三郎に連絡が入ります。警察は、三郎が梶田信夫の遺族から依頼を受けて犯人探しを手伝っていることを知り、犯人の目星がついていて、自首できるように中学のカウンセラーと協力していることを伝えます。これにより、聡美が懸念していたような殺人事件ではなく、事故であったことが明らかになります。しかし、警察は三郎に本をどうするのか尋ね、三郎は梶田姉妹を説得すると答えます。

梶田姉妹に犯人の目星が付いたことを説明すると、二人は安堵の涙を流します。特に梨子は、本についてのコンセプトを単なる思い出本に変えると言い出します。この変更は、事件の解決とともに、梶田家にとっての一つの区切りとなります。しかし、三郎は聡美が過去に誘拐された件については引き続き調査することを決意します。

第5章: 誘拐事件の真相

三郎の調査は次なる段階へと移ります。梶田信夫の死の真相が明らかになりつつある中、三郎の関心は聡美が過去に経験した誘拐事件の謎に向けられました。この事件は、これまでの調査ではあまり焦点になっていませんでしたが、三郎にとっては解き明かすべき重要な謎の一つでした。

調査の過程で、三郎は友野栄次郎の右腕であった関口氏に接触します。関口氏からの情報提供により、梶田夫妻と同時期に、事務職員の野瀬祐子がコンツェルンを辞めていたことが判明します。さらに、三郎には非通知の電話が複数回かかってきますが、出ると相手は何も話さず、通話はいずれも不気味な沈黙に包まれます。

次に展開が変わり、梨子に脅しの電話がかかってくるという出来事が発生します。この電話の内容は、聡美の誘拐事件について触れるものでしたが、梨子は動じずに本の執筆を続ける決意を固めます。

そしてついに、四度目の非通知電話が三郎にかかってきますが、この時は相手が話し始めます。相手は野瀬祐子であり、梶田信夫が事故に遭う直前まで彼女と会っていた人物だったのです。野瀬は過去、博打好きの父親に金を要求され、事故で彼を殺してしまいました。梶田夫妻はこの事実を同情して隠蔽に協力し、その過程で一晩だけ聡美を預かったことが、聡美の誘拐事件の真相でした。

野瀬は、自分の行いが聡美の人生に暗い影を落とすのではないかと長年心配していましたが、聡美が結婚することになり、梶田信夫は野瀬を安心させようと彼女に会いに行ったのでした。この出来事が、信夫の最後の行動の一つとなります。

第6章: 暴露と終幕

三郎の調査は最終章に差し掛かります。信夫の事故と聡美の誘拐事件の真相が明らかになる中、新たな衝撃的な事実が浮かび上がります。聡美の婚約者である浜田も物語の重要な人物として再び登場します。浜田は三郎と会い、3人で話し合いますが、その最中に浜田の携帯電話が鳴り、彼は席を外します。

その瞬間、三郎は最近同じ着メロを聞いたことを思い出し、その着メロが誰のものであったかを思い出そうとします。聡美は浜田をじっと見つめており、その表情は固まっています。この様子から、三郎は何かがおかしいと感じ始めます。

後日、三郎は信夫の事故現場で起きた自分の事故に関して、梨子、椎名とともにビラ配布を行っていたことを思い出します。この事故が、事実上の転機となり、三郎は事故現場の近くで新たな情報を収集し、警察からの連絡を受けて真相に迫っていました。

警察との連携により、犯人が中学生であることが判明し、事件は事故であったという結論に至ります。しかし、梶田姉妹の人生に影を落とした聡美の誘拐事件の真相も同時に解明されます。野瀬祐子が過去に犯した罪と、梶田夫妻がその隠蔽に協力したことが明らかになり、聡美の人生における暗い影は晴れることになります。

物語は、三郎が信夫の生まれ故郷で梨子と偶然出会い、梨子が浜田と不倫関係にあることを暴露する場面へと進みます。この衝撃的な事実は、聡美、三郎、そして梨子に大きな影響を与えます。梨子は浜田との関係を正当化しようとしますが、三郎は彼らの行動を非難し、その場を去ります。

最終的に、聡美は三郎に連絡を取り、浜田と梨子の関係を知っていたものの、浜田との結婚を進めることで幸せになれると信じていました。しかし、三郎が浜田と梨子の不倫を暴露したことで、彼女の計画は崩れ去ります。聡美は三郎に対して失望し、悲しみと怒りをぶつけます。

三郎は聡美、梨子、そして浜田の複雑な人間関係と、それぞれの人物が抱える苦悩と希望に深く関わることになります。最終的に、彼は自分の行動が聡美の人生にどのような影響を与えたのかを反省し、物語は終幕を迎えます。

宮部みゆき「誰か」の感想・レビュー

この物語は、人間関係の複雑さ、家族の絆、そして過去の秘密が現在に与える影響を巧みに描いています。物語は、杉村三郎という一人の男性の視点を通して語られ、彼が直面する多層的な問題が、読者に深い共感を呼び起こします。以下、物語の各要素について具体的に感想を述べます。

人間関係の複雑さ

物語は、三郎と梶田姉妹、特に聡美と梨子との関係を中心に展開します。三郎は最初、外部の人物としてこれらの人物と関わりますが、次第に彼らの生活、心情、そして過去の秘密に深く関与していきます。この物語では、家族の絆や愛情だけでなく、隠された秘密や誤解が人間関係にどのような影響を与えるかが繊細に描かれています。特に、梶田姉妹の父親の死後に起きる事件は、彼女たちの人生を大きく変え、三郎との関係にも新たな次元をもたらします。

家族の絆

家族というテーマは物語全体を通じて強く表現されています。梶田信夫の死は、彼の娘たちに大きな影を落とし、彼女たちは真相を追求する過程でさまざまな困難に直面します。物語は、家族が困難な時期にお互いを支え合う姿を描くことで、家族の絆の強さと重要性を浮き彫りにしています。

過去の秘密とその影響

物語はまた、過去の出来事が現在の人間関係や心理状態にどのように影響を与えるかを探ります。特に聡美の過去の誘拐事件や、梶田夫妻が関与した過去の隠蔽行為が明らかになるシーンは、読者に深い印象を与えます。これらの出来事がどのようにして現在の状況につながるのか、そして登場人物たちがこれらの過去の出来事にどのように対処するのかが、物語の鍵を握っています。

終幕

物語の終わりには、三郎が梨子と浜田の不倫を暴露し、これによって聡美の計画が崩れ去るという衝撃的な展開があります。この終幕は、物語における各人物の葛藤や苦悩を象徴しており、強い感情的な反応を引き出します。最終的に、三郎は自身の行動が聡美に与えた影響を深く反省し、物語は終わりを告げます。

まとめ:宮部みゆき「誰か」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 杉村三郎の結婚と平穏な生活の開始
  • 今多コンツェルン運転手、梶田信夫の轢き逃げ死
  • 梶田姉妹の父の死に対する決意と行動
  • 三郎が梶田姉妹と協力して真相追求を開始
  • 事故の背後にある家族の絆と人間関係の複雑さ
  • 聡美の過去の誘拐事件とその影響
  • 暴露される不倫関係とその結果
  • 物語を通じて描かれる過去の秘密の影響
  • 主要人物たちの心理描写と成長
  • 終幕に至るドラマチックな展開とその解決