『劫尽童女』は、天才的な軍医・伊勢崎巧とその娘・遥が織りなす壮大なストーリーです。物語は、伊勢崎博士の失踪から始まり、彼が関わる秘密組織「ZOO」との戦いが描かれます。さらに、娘の遥が特殊な能力を持ちながら世界を駆け巡る姿が綴られます。
物語は、聖心苑での銃撃戦やニューメキシコでの核施設爆発事故など、数々の事件を経て、遥が成長していく過程を追います。彼女が運命に立ち向かいながら、親子や仲間との絆が描かれています。
最後には、カンボジアで地雷除去活動に携わる遥が「小さな女神」として成長を遂げる姿が描かれ、ハンドラーとの最終決戦が繰り広げられます。人間ドラマとスリリングな展開が詰まった物語です。
- 伊勢崎巧と娘・遥の関係
- 秘密組織ZOOの存在
- 聖心苑での銃撃戦の詳細
- ニューメキシコでの核施設爆発事故
- カンボジアでの遥の活動
「劫尽童女(恩田陸)」の超あらすじ(ネタバレあり)
第1章:炎に包まれた別荘で命運を分けた親子
伊勢崎巧は、長崎県で生まれ、幼い頃から英才教育を受け、わずか14歳で大学に入学を許可された天才でした。彼は国家機密を扱う「ZOO」と呼ばれる施設で軍事研究を進めていましたが、突如すべてのデータを持ち去り失踪します。それから7年後、伊勢崎博士が長野県にある別荘に戻ったとの情報を受け、ZOOは特殊工作員「ハンドラー」を現地に送り込みました。
別荘のふもとにある管理人の家に忍び込んだハンドラーたちは、カギを盗み出そうとしますが、実はその管理人こそ性別適合手術を受けた伊勢崎博士本人でした。博士は癌を患っており、余命がわずかと知りながら、燃え盛る別荘から逃げるつもりはありません。侵入者をあらかじめ仕掛けていた爆弾で撃退した後、博士は自らも火の中に身を委ねます。
博士には、動物のように優れた聴覚と運動神経を持つ娘、遥がいました。博士の死後、遥は父の支援者であった「聖心苑」という修道院に預けられることになりました。ここで、遥の新たな人生が始まるのです。
第2章:聖夜の銃撃戦と疑似親子のマンション生活
クリスマスの時期、聖心苑ではパーティーの準備が進められていました。園長の甥でライターを務める神崎貢も、施設の支援団体向けのパンフレット制作のため手伝いに来ていました。パーティーの前夜、ZOOの工作員が遥を狙って聖心苑を襲撃します。しかし、シスター高橋が両手に構えた機関銃で応戦し、なんとか撃退します。
聖心苑から脱出した遥と、神崎、そして高橋の3人は、海沿いの高台にある「港西ニュータウン」のマンションに住民票を偽造して移り住みます。彼らは、親子として偽装しつつ、ZOOの追跡をかわす日々を送りました。神崎はZOOの悪事を公表するために、海外亡命の道を模索しますが、高橋は遥の安全を第一に考え、慎重な行動を求めました。
ゴールデンウィークには、海外旅行者に紛れて日本を出国する予定でしたが、その計画が実行される前に、遥は解体中の建物で目撃されたのを最後に、姿を消してしまいます。2人は必死に遥を探しますが、遥の行方はわからないままでした。
第3章:海の向こうで起きた大惨事
1か月が過ぎても、遥の行方は不明でした。そんな中、ニューメキシコ州のアメリカ軍核処理施設で爆発事故が起き、神崎はテレビの報道を見て遥が関与していることを直感します。神崎はインターネットを使って事故現場に滞在していた人物の名簿を手に入れ、その中に2人の日系アメリカ人の名前を見つけます。
1人はハナコ・エミー・ウエハラ、もう1人は彼女の息子トオルでした。実は、トオルは伊勢崎巧とハナコの間に生まれた子どもで、遥と同様に特殊な力を持っていました。2人は感応能力を使って核兵器を解体していましたが、爆発事故が起こり、ハナコは命を落とします。事故の背後にはZOOが関与していたことが判明し、ハナコは最期にZOOを告発する文書を残しました。
遥は遠隔操作で作業していたため、無事でした。これにより、ZOOの脅威は遥に及ぶことはなくなり、彼女は再び姿を消しますが、その行方はわからないままでした。
第4章:異国の地を救う女神
その後、遥を探し続けていた神崎と高橋は、彼女が長野県の母親の墓地近くにある秘密の施設で生活していることを突き止めます。この施設は、夫の暴力や債権者から逃れてきた女性たちが匿われる場所でした。遥はそこで仏教関係の書籍を読み漁り、次第にカンボジアに行きたいと言い出すようになります。
神崎が同行し、遥と共にカンボジアの農村地帯を訪れたところ、タイ国境付近で地雷除去活動を行っている民間非営利団体と出会います。遥は透視能力を使って地雷の位置を正確に見抜き、その除去作業に協力するようになりました。現地では「小さな女神」として報道され、遥の存在は再び注目を浴びることになります。
そこに現れたのは、かつて伊勢崎博士の別荘で火災に巻き込まれた唯一の生存者、ハンドラーでした。復讐に燃えるハンドラーは銃を構えますが、その瞬間、地面に埋まっていた地雷が浮き上がり、一斉に爆発します。ハンドラーは跡形もなく消え、遥は神崎と高橋に感謝の気持ちを伝え、森の奥へと静かに消えていきました。
「劫尽童女(恩田陸)」の感想・レビュー
『劫尽童女』は、親子の絆と壮大な陰謀が織りなすスリリングな物語です。物語の核となるのは、天才的な軍医・伊勢崎巧とその娘・遥の関係です。伊勢崎巧は幼少期から英才教育を受け、14歳で大学に入学した天才医師であり、秘密組織「ZOO」と密接に関わっていました。しかし、彼は突如失踪し、再び姿を現した時には、彼の身に数々の謎が残されています。物語は彼の行方と、そこから派生する一連の事件を中心に展開されます。
特に印象的なのは、伊勢崎博士の娘・遥の成長過程です。彼女は父から受け継いだ特殊な能力を持ち、それが物語の進行に大きな役割を果たします。最初は無力に見える彼女が、次第にその能力を発揮し、ZOOと対峙していく姿は、読者にとって大きな感動を与えます。特に聖心苑での銃撃戦は、緊迫感に満ちた場面であり、シスター高橋の勇敢な行動が物語を一層引き立てています。
また、中盤に差し掛かるニューメキシコでの爆発事故のエピソードは、物語の転換点となる重要な場面です。このエピソードでは、遥とトオルという同じ特殊能力を持つ2人の出会いが描かれ、彼らが核兵器の解体に挑むシーンは非常にスリリングです。同時に、ZOOの陰謀が次第に明らかになり、ハナコ・エミー・ウエハラが最期にZOOを告発するシーンも感動的です。彼女の犠牲が、遥の命を守ることに繋がっているという展開は、親子のテーマをさらに深く掘り下げています。
そして、物語のクライマックスとなるカンボジアでのシーンは、遥の成長が最も顕著に現れる場面です。彼女が地雷除去活動に協力し、その透視能力を活かして「小さな女神」として現地の人々に感謝される姿は、読者にとって感動的なものでしょう。しかし、そこに復讐心を抱くハンドラーが現れ、最終的な対決が描かれる場面は手に汗握る展開です。地雷が一斉に浮かび上がって爆発するシーンは、まさにクライマックスにふさわしい壮絶な瞬間です。
物語の最後、遥は感謝の言葉を神崎と高橋に伝え、静かに森の奥へと消えていきます。彼女の成長とともに、親子の絆や仲間との絆が強く描かれており、非常に感動的な結末です。『劫尽童女』は、スリリングな展開と心温まる人間ドラマが融合した作品として、読者に深い印象を残すことでしょう。
まとめ:「劫尽童女(恩田陸)」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 伊勢崎巧は天才的な軍医
- ZOOという秘密組織が関与
- 遥は特殊な能力を持つ
- 聖心苑でZOOと銃撃戦が展開
- 遥は港西ニュータウンで生活
- ニューメキシコでの爆発事故に関与
- ハナコはZOOを告発
- 遥はカンボジアで地雷除去に貢献
- ハンドラーと最終決戦が展開
- 遥は森の奥へと消える