「小鳥、来る」の超あらすじ(ネタバレあり)

「小鳥、来る」は、家庭に問題を抱えた少年の成長を描いた物語です。

主人公は、暴力的な母や無職の父テル、ギャンブルに夢中な兄トシと共に過ごす厳しい日々を過ごしています。友人のしばちゃん宅で体調を崩し入院するが、ブルース・リーに憧れ強くなろうと決意します。

夏の家族旅行で、沖に流される危機を乗り越え、やがて成長を実感しつつも、友人たけしと過ごす何気ない日々を大切に思う心情が描かれています。

この記事のポイント
  • 主人公の家庭環境
  • 主人公がブルース・リーに憧れる理由
  • 夏の家族旅行での出来事
  • 主人公の成長と決意
  • 友人たけしとの関係の重要性

「小鳥、来る」の超あらすじ(ネタバレあり)

主人公である「おれ」は、母親の悲鳴のような声を背に聞きながら、父親のテルが工場を突然辞めたことを思い返していました。テルが仕事を辞めたことに、母は驚き、怒りを露わにしますが、「おれ」はなんとなくそんな日が来るのを予感していたのです。テルは、昼間から競馬新聞を読んでいるような人で、働くことに対してあまり意欲的ではありませんでした。

一方、兄のトシはパチンコに夢中で、家計を助けるというよりも自分の楽しみのためにお金を使っているような人です。夏休みが始まると、トシはパチンコで大当たりを出して、おれにかき氷をおごってくれました。クーラーが効いていても暑さを感じる夏の日、おれはその一時的な喜びをかみしめていました。

しかし、家庭の中では厳しい状況が続いています。テルの機嫌が悪くなるのはいつものことで、ある日、1学期の終わりが近づくころ、母はこたつの足でおれを殴りました。次の日、右腕には青あざができていて、それを見た担任のうえだ先生は驚いて、すぐにおれを保健室に連れて行きました。若くて優しい先生でしたが、彼女はどう対処していいか分からず、教頭先生に報告しました。おれは病院で診察を受けましたが、骨には異常がなく、打撲と診断されました。

友達のしばちゃんの家に遊びに行った時のことです。しばちゃんの家にはたくさんの小鳥がいて、カゴの中で色とりどりのセキセイインコや文鳥たちが元気に鳴いていました。その光景を見ていると、おれは急に喉が詰まったような息苦しさを感じました。視線をそらすと、そこには3匹の猫がじっとこちらを見ていました。突然の体調不良に見舞われたおれは、しばちゃんのおばあちゃんが呼んでくれた救急車で病院へ運ばれました。

おれはしばらく入院することになり、ベッドの上で退屈な時間を過ごすことになります。その間、おれの頭の中には、以前映画館で観た「ドラゴン危機一髪」のシーンが鮮明に蘇ってきました。ブルース・リーが敵と戦う場面や、ヌンチャクを巧みに操る姿に憧れ、おれも彼のように強くなりたいと強く思うようになりました。

宿題の作文には「将来の夢はブルース・リー」と書きました。これは、普段からおれに厳しく接するテルに対して強くなりたいという願望の表れでした。しかし、現実的にブルース・リーのようになるのは無理だと感じ、せめてクラスメイトのしまだくらいにはタフになりたいと思うようになりました。しまだは、背が高く、発育も良く、クラスの男子と競争しても負けないほどの強さを持っている女の子です。

退院したばかりのある日、テルは朝から釣り道具の準備を始めました。母はおにぎりを作っていましたが、塩をまぶしただけの簡素なものでした。おれもコーラやお菓子を運ぶ役割を与えられ、家族で出かけることになりました。電車とバスを乗り継いで、ビルの向こう側にフェリー乗り場が見えてくると、おれはようやく目的地が海だとわかりました。

1時間ほどフェリーに揺られ、到着した島には白い砂浜と青い空が広がっていました。テルはゴムボートをレンタルし、防波堤へとこぎ出しました。おれは、テルがボートをこぐ姿を見ながら、彼を海に突き落とすことを考えました。しかし、その思いはすぐに消え、ただテルを見守ることにしました。

しばらくすると、ボートが流されていることにテルが気付き、あわててイカリを投下しましたが、すでに沖まで流されてしまっており、ロープの長さが足りません。テルは泳いで岸に戻ろうとしましたが、疲れてくるとおれが手助けするしかありませんでした。おれも水泳が得意だったので、何とかテルを引き寄せ、二人で岸にたどり着きました。浜に戻ったテルは、疲れ果て、涙を流していました。

入院中、クラスで学年トップの成績を誇るまーちゃんが、「ハックルベリィ・フィンの冒険 1」を差し入れてくれました。おれは、その中でトム・ソーヤとジムがいかだで川下りをするシーンに特に心を奪われました。物語の続きを読みたくなったおれは、商店街の本屋に第2巻を立ち読みしに行きましたが、万引き犯と勘違いされ、店主に追い払われてしまいました。

これは、地元で悪さをしているしらとり兄弟のせいで、おれも彼らと同じように見られてしまったからです。しばらくして、新学期が始まる数日前、同じアパートに住んでいるたけしと一緒に、裏通りを抜けた先にあるたこ焼き屋へ向かいました。たけしは、以前この道で何度か自動車と衝突した経験がありましたが、今も元気に過ごしていました。

時間が経ち、10年、30年と年月が過ぎても、いずれ大人になる日が来るのだとおれは感じています。しかし、死ぬ時には、たけしと一緒にたこ焼きを食べている今日この瞬間を思い出すことを確信しています。小さな鳥たちが羽ばたくように、おれたちもいつかは自分の道を歩んでいかなければならないのです。

「小鳥、来る」の感想・レビュー

「小鳥、来る」を読んで、主人公の「おれ」が置かれた家庭環境に深く心を動かされました。主人公は、無職の父親テルと、ギャンブルに夢中な兄トシ、そして時に暴力的になる母親との厳しい日々を過ごしています。その描写は、家庭の中で孤立しがちな子どもの心情をリアルに描いていて、読んでいて胸が締め付けられる思いがしました。

また、友人しばちゃんの家で体調を崩し、入院するエピソードでは、主人公の弱さと、その弱さを克服したいという強い願望が伝わってきました。特に、ブルース・リーに憧れる姿には、誰もが強くなりたいと思う心が共感を呼びます。ブルース・リーの映画「ドラゴン危機一髪」に感銘を受け、自分も強くなりたいと夢見る主人公の姿は、純粋でありながらも切実なものです。

夏の家族旅行では、ゴムボートでの危険な場面が描かれており、家族との関係が一層複雑であることがわかります。テルが涙を流す場面では、普段見せない彼の脆さが垣間見え、家族の中にある複雑な感情の交錯が感じられました。おれが必死に泳いで岸にたどり着く姿は、物語の中で大きな成長を感じさせます。

最後に、たけしとの友情が描かれるシーンでは、日常の何気ない瞬間がいかに大切かが伝わってきます。たけしと共にたこ焼きを食べるシーンは、シンプルでありながらも心温まるもので、主人公がどんなに困難な状況でも友人との時間を大切にする姿が印象的でした。

全体を通して、主人公の成長や家族との関係、そして友情が繊細に描かれており、読み終わった後に深い余韻を残します。作者が描く家庭のリアルさと、少年が成長する過程の描写は、誰にでも共感できるものがあり、とても感動的な作品だと感じました。

まとめ:「小鳥、来る」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 主人公は家庭に問題を抱えている
  • 母親が暴力的である
  • 父テルは無職である
  • 兄トシはギャンブルに夢中である
  • 友人しばちゃんの家で体調を崩す
  • 主人公は入院し、ブルース・リーに憧れる
  • 夏の家族旅行で危機に直面する
  • 主人公が危機を乗り越えて成長する
  • 友人たけしとの関係が描かれる
  • 主人公が日常の大切さを実感する