「終末のフール」(伊坂幸太郎)は、小惑星が地球に衝突し、世界が滅亡するという予告がなされた後の世界を描いた作品です。
本作では、滅亡の予告から八年後の人々の生活と心理状態を描いています。登場人物たちは恐怖や絶望、希望を抱えながら日々を過ごしており、特に仙台北部のヒルズタウンに住む人々の様子が詳細に描かれています。
この記事では、物語の展開やキャラクターの背景を紹介しながら、ストーリーのネタバレも含めて解説します。
- 小惑星衝突による地球滅亡の予告とその影響
- 仙台北部のヒルズタウンに住む人々の生活
- 杉田家を襲撃する虎一と辰二の復讐計画
- 杉田家の緊迫した状況と家族の意図
- 脱出計画とその後の展開
終末のフール(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ
第1章: 滅亡の予告とその影響
八年前、小惑星が地球に衝突し、滅亡するという予告がされました。それから五年が過ぎました。当初、人々は絶望し、パニックに陥りました。誰も彼もが車に荷物を詰め込み、逃げ出そうとしました。道路は渋滞し、クラクションの音や人々の喧騒で大混乱となりました。焦りと不安に取り乱した人々は暴徒と化し、街中で暴れ回りました。酷い有様で、まるで小惑星がぶつかる前に世界が終わってしまうかのようでした。
しかし、今年に入ってから、急に街は穏やかになりました。警察による罰則が厳しくなったことも一因ですが、人々が諦め始めたことが大きな理由です。恐怖に耐えきれなかった人々は亡くなり、残された時間をどう過ごすかを考えた結果、平和に暮らすことが賢い選択だと気づいたのです。その日が近づけば、また人々は恐怖に怯え、パニックに巻き込まれるでしょうが、今はしばしの小休止です。人々は心穏やかに思い思いのまま毎日を過ごしていました。
第2章: ヒルズタウンの平和
仙台北部にあるヒルズタウンに住む人々も、例外ではなく平和に暮らしていました。ヒルズタウンの509号室では、緊張した空気が漂っていました。そこに住む杉田玄白(すぎた げんぱく)は、45歳の元テレビアナウンサーです。かつては毒舌な喋りで人気を博していたテレビマンでした。しかし現在、テレビはほとんど機能しておらず、一握りの人がニュースを伝えるだけになっています。杉田も、小惑星が衝突すると知ってから表舞台から姿を消し、仙台北部のヒルズタウンに戻ってきました。現在は妻の杉田理恵(すぎた りえ)と娘の杉田真奈(すぎた まな)の3人で暮らしています。
ある晩餐時、杉田家の食卓にはステーキ肉やスープ、グラスに注がれたビールが綺麗に並んでいました。そんな時、二人の男が拳銃を持って杉田家を襲撃しました。彼らは虎一(とらいち)と辰二(たつじ)の兄弟です。
第3章: 兄弟の復讐計画
虎一と辰二の兄弟は、小惑星が衝突する前に杉田に報復しようとしていました。そのきっかけは、妹の暁子(あきこ)が一人暮らしをしていた部屋に空き巣が入ったことでした。拳銃を持った犯人と鉢合わせした暁子は、そのまま部屋に立て籠もられてしまいました。三日後に暁子は無事解放されましたが、その後もメディアは彼女を追いかけました。容姿端麗で人目を惹く暁子は、メディアの格好の餌食となったのです。
奇跡的に無傷で解放された暁子でしたが、メディアの過熱した取材に心身ともに疲弊していきました。初めのうちは丁寧に対応していた虎一も、執拗で陰湿、横暴で礼儀を欠いたメディアのやり方に疲れ果てていきました。そのうち、メディアは暁子に非があったかのように報道し始めました。連日ワイドショーは暁子を取り上げ、その中心にいたのは杉田でした。虎一は無表情になり、それまでの彼とは別人のようになってしまいました。そして、暁子は自ら命を絶ちました。杉田への復讐を決意した兄弟は、妹の無念を晴らすために杉田家を襲撃する計画を立てたのです。
第4章: 杉田家の緊迫
虎一は無表情のまま、杉田に暁子のことを話しました。その時、電話が鳴りました。電話の相手は同じ階に住む渡部(わたべ)という老人でした。異様な雰囲気を感じ取った渡部が心配して電話をかけてきたのです。虎一は渡部に「籠城しているからテレビ局に連絡しろ」と言い、電話を切りました。緊張した雰囲気の中、妻の理恵と娘の真奈が食事を再開しようとしました。そのふてぶてしい態度に辰二は激高しました。
そこに警察が駆けつけ、玄関の外から呼びかけを始めました。小惑星が衝突するとパニックになった人々を鎮圧するため、警察は武力行使を行うようになっていました。虎一と辰二は、このままでは間違いなく射殺されるでしょう。警察が突入する前に杉田に復讐しようと、辰二は拳銃の引き金を引こうとしました。しかし手が震え、喉が渇いた辰二は食卓にあるビールを飲もうとしました。その時、杉田の娘・真奈に突き飛ばされました。
第5章: 真実の告白と脱出計画
激高する辰二に対し、杉田は「食卓にあるものは毒が入っているから口にしてはいけない」と止めました。実は杉田家は無理心中をしようとしていたのです。この突然の告白に兄弟は動揺しました。杉田は暁子の死に心を痛め、命日の今日、自殺を図ろうとしていたのです。このまま警察が突入してくれば、虎一と辰二は射殺されるか、刑務所行きは免れません。これ以上迷惑をかけたくないと考えた杉田一家は、兄弟をこの場から脱出させようと試みました。
初めは勝手な提案に難色を示していた兄弟でしたが、小惑星が衝突するまでの残り三年を苦しみながら生きることが杉田への復讐だと考えを改めました。そして、杉田の脱出作戦に乗ることに決めました。杉田家の協力で、虎一と辰二はこの場から無事に脱出することができました。
終末のフール(伊坂幸太郎)の感想・レビュー
「終末のフール」(伊坂幸太郎)は、小惑星が地球に衝突するという絶望的な予告を背景に、登場人物たちの生き様を描いた作品です。物語の舞台は仙台北部にあるヒルズタウンで、主人公の杉田玄白(すぎた げんぱく)とその家族が中心となります。
物語の始まりでは、小惑星衝突の予告により世界中がパニックに陥り、人々は逃げ惑い、暴動が起こる様子が描かれます。しかし、時が経つにつれ、人々は次第に諦め、平穏を取り戻していきます。この過程がとてもリアルに描かれており、読者は彼らの恐怖や絶望、そして希望に共感することができます。
杉田玄白は元テレビアナウンサーで、毒舌な喋りで人気を博していましたが、今では家族と共に静かに暮らしています。杉田家の描写は、家族の絆や愛情が感じられ、読者に温かい気持ちをもたらします。しかし、その平穏な生活は、虎一(とらいち)と辰二(たつじ)の兄弟による復讐計画によって一変します。
兄弟は、妹の暁子(あきこ)が空き巣事件に巻き込まれた後、メディアの過熱報道によって心身ともに疲弊し、最終的に命を絶ったことを恨み、杉田家を襲撃します。この復讐劇は緊張感に満ちており、読者を一気に物語に引き込みます。
杉田玄白が無理心中を図ろうとしていたことが明らかになる場面は、非常に衝撃的です。食卓に毒が入っているという告白に動揺する兄弟の描写は、緊迫感が伝わり、読者も息を飲む展開です。
最終的に、杉田家は兄弟を脱出させるために協力します。小惑星衝突までの残り三年間をどう生きるかを考え、復讐ではなく平穏を選んだ兄弟の心の変化が感動的です。この結末は、絶望の中でも希望を見出すことができるというメッセージを読者に伝えます。
「終末のフール」は、絶望的な状況下での人間ドラマを見事に描いた作品です。登場人物たちの葛藤や成長を通じて、読者に深い感動と考えさせるものを提供します。伊坂幸太郎の巧みなストーリーテリングと、キャラクターたちのリアルな描写が光る一冊です。
まとめ:終末のフール(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ
上記をまとめます。
- 小惑星衝突予告により世界がパニックになる
- 渋滞や暴動が発生し、混乱が続く
- 時間が経ち、街が平穏を取り戻す
- 人々が諦め、平和に暮らすことを選ぶ
- 仙台北部のヒルズタウンも平和に暮らす
- 杉田玄白が家族と共にヒルズタウンに住む
- 虎一と辰二が杉田への復讐を計画する
- 虎一と辰二が杉田家を襲撃する
- 杉田家が無理心中を図ろうとする
- 杉田家が虎一と辰二の脱出を助ける