伊坂幸太郎「重力ピエロ」の超あらすじ(ネタバレあり)

伊坂幸太郎の名作「重力ピエロ」は、家族の絆や過去の闇に立ち向かう姿を描いた感動的な物語です。本作の魅力はその緻密なストーリー展開と、個性豊かなキャラクターたちにあります。この記事では、「重力ピエロ」の超あらすじをネタバレありでご紹介します。

結末を知りたいという方に向けて、物語の核心に迫る内容を詳しく解説します。物語の真相や感動のラストシーンを知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。

この記事のポイント
  • 連続放火事件とその背後に潜む謎
  • 泉水と春の兄弟関係とその絆
  • 郷田順子の正体と彼女の狙い
  • 物語の真実と結末

伊坂幸太郎「重力ピエロ」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章: 連続放火事件と謎の女性

泉水と春は2歳違いの兄弟ですが、実は血の繋がりはありません。春は母親が過去に襲われた際に生まれた子供で、母親にとっては辛い記憶の一部です。しかし、泉水は春を実の弟として大切に思っており、二人の絆は非常に強いです。

二人が住む仙台市内で連続放火事件が発生し、市民の間に不安が広がっていました。そんな中、ある日弟の春が兄の泉水に「次に狙われるのはジーン・コーポレーションだ」と忠告してきました。泉水は半信半疑でしたが、実際にその予言は現実となり、ジーン・コーポレーションが放火の被害を受けました。幸いにも火事は大事には至りませんでしたが、泉水は春がどうしてそのようなことを知っていたのかが気になり、春に問いただしました。

春は、「連続放火現場の近くには、必ずグラフィティアートがある」と答えました。春の仕事は、街中に描かれたグラフィティアートを消すことであり、仕事をする中でこの法則に気付いたというのです。彼が消しているグラフィティアートは横文字で、これまでの文字を全て繋げると「God can talk Ants goto America 280 century」となります。しかし、この文字の意味を二人は見出すことができませんでした。

そこで二人は、このことを癌で入院中の父親に伝えました。父親は二人の話を真剣に聞き、何か思い当たることがある様子でした。それからしばらくして、泉水は郷田順子と名乗る謎の美人に声を掛けられます。順子は泉水にとって初見の人物でしたが、彼女は泉水のことをよく知っている様子で、春のことも知っているようでした。

順子は、日本文化会館管理団体の人間だと名乗り、春の様子がおかしいとしきりに泉水に伝えてきました。泉水は突然のことに戸惑いながらも、順子の話に耳を傾けました。しかし、順子の話にはどこか不自然なところがあり、泉水は彼女の正体について疑念を抱き始めました。

このように、泉水と春は連続放火事件と謎の女性・郷田順子との関わりの中で、次第に不穏な事件の真相に近づいていくのです。二人の絆と謎の解明が交錯する中、物語はさらに複雑な展開を見せることになります。

第2章: 街に戻ってきた葛城と放火の関連性

泉水は、「あの犯人がこの街に戻ってきた」という噂を耳にします。その犯人とは、かつてこの地で発生した連続レイプ事件の犯人であり、事件の被害者の一人が泉水と春の母でした。このため、弟の春はその時にできた子供であり、犯人が春の実の父親になるのです。

犯人の名前は葛城といい、現在は売春の斡旋をしているとのことでした。泉水と春の父親(春にとっては育ての父)は現在、ガンを患い入院中です。ある日、泉水と春が揃って病院へ見舞いに行った際、放火事件とグラフィティアートの関連性について父親に話しました。

その中で、父親は二人に「次の現場には『ago』という文字が描かれる」と断言しました。父親の言葉を信じた二人は、予想を立てて現場一帯を捜索しました。しかし、この時は予想が外れ、別の建物が狙われてしまいました。その現場で、泉水は再び郷田順子の姿を見かけます。

泉水は葛城の身辺を探るため、探偵の黒澤に調査を依頼します。そして、葛城に「DNAを調べることで将来かかるであろう病気が判明する」と持ちかけて興味を引き、葛城のマンションに潜入してDNAを入手しました。泉水は「もしかしたら、この人物があの事件の犯人であり、春の父親なのかもしれない」と考え、友人に頼んでそのDNAを解析してもらうことにしました。

その後、葛城のマンションを出た泉水は、そこで再び順子と遭遇しました。泉水は順子に、「放火事件現場で順子を見かけたこと、そしてなぜここにいるのか」を問い詰めました。すると、順子は「放火があったあの建物から逃げ出す男を目撃し、追跡したらこのマンションに着いた」と答えました。

順子の話を聞いた泉水は、彼女の言葉にどこか引っかかるものを感じましたが、順子の言葉を完全に否定することはできませんでした。こうして、泉水は葛城と放火事件の関連性を探る一方で、順子の正体についても注意を払うようになります。

泉水は、葛城のDNAが解析されるのを待ちながら、引き続き放火事件とその背後にある真相を追い求めます。春と共に放火事件の謎を解くために動き出した泉水は、次第に危険な陰謀に巻き込まれていくことになります。二人の兄弟は、真実に辿り着くための困難な道を歩み始めたのです。

第3章: 郷田順子の正体とその狙い

謎の女性・郷田順子の存在が泉水の中でますます気になるようになります。彼女は日本文化会館管理団体の人間だと名乗っていましたが、泉水はその団体について調べても一切情報を得ることができませんでした。存在しない団体を名乗る順子に対し、泉水はますます不信感を募らせます。

しかし、泉水はすでに郷田順子の正体に気付いていました。彼女はかつて春に執拗に付きまとっていたストーカーでした。整形手術で顔を変えていましたが、彼女の独特の仕草や言動から、泉水は彼女の正体を見抜いたのです。

順子は整形によって顔を変えたものの、泉水の前に再び姿を現した理由は何だったのでしょうか。実は、彼女の春への執着は一時的に収まったものの、再び彼の元に戻ってきたのです。順子は春への想いが叶わないことを理解し、すでにそのことには満足しているようでした。しかし、春の様子がおかしいことに気付いた順子は、彼をこのまま放っておくことができず、再び接触を図ったのです。

ある日、順子から泉水に電話がかかってきました。「春の部屋にいるから来て欲しい」とのことでした。順子は春が不在の間に勝手に彼の部屋へ侵入しており、不法侵入ということになりますが、泉水は急いで春の部屋へと駆け付けました。

泉水が春の部屋に到着すると、そこには連続放火現場を示す地図が広げられていました。地図にはこれまでの放火現場が細かく記されており、それを見た泉水は驚きました。順子は春の行動を監視し続け、彼が放火事件と深く関わっていることを知っていたのです。

順子は泉水に、「春が放火事件の犯人である可能性が高い」と告げました。彼女は春が犯人であることを示す証拠を握っており、それを泉水に見せました。泉水は信じられない気持ちで一杯でしたが、順子の話を無視することはできませんでした。

泉水は順子と共に、春の行動を監視し続けることに決めました。彼らは春の行動を追いながら、放火事件の真相を突き止めるために動き出しました。順子の協力を得て、泉水は次第に春の秘密に迫っていくのです。

泉水と順子の協力により、放火事件の背後に潜む真実が徐々に明らかになっていきます。春の行動の意味、そして彼の心の中に隠された秘密とは何なのでしょうか。兄弟の絆と謎解きが交錯する中、物語はますます緊迫感を増していきます。

第4章: 放火犯の正体とその目的

泉水は春から「新たなグラフィティアートを発見した」との連絡を受け、放火現場へ向かうことになります。現場で張り込みを始めた二人ですが、その途中で春が泉水に水を勧めました。何も疑わずに水を飲んだ泉水は、突如として意識が朦朧となり、そのまま気を失ってしまいました。

泉水が目を覚ますと、そこには春の姿はなく、代わりに順子がいました。意識を取り戻した泉水に対し、順子は衝撃的な事実を告げました。「実は、これまでの放火事件はすべて春が犯人だったのです」と。泉水は信じられない思いで順子の話を聞きました。

順子は、春の身辺を探るうちに彼が放火事件の犯人であることを知り、その事実を隠していたことを告白しました。春は順子に口止めをしていたため、彼女は長い間この秘密を抱えていたのです。また、泉水に興味を持たせるために、グラフィティアートの暗号に遺伝子を取り入れるなどの工夫もしていました。

泉水は順子の言葉に動揺しつつも、春が今いるであろう場所を探るために動き出しました。泉水が予想した場所は、小学校の校庭でした。辺り一面が濃い霧で覆われており、その中で春の姿を確認することは困難でした。しかし、しばらくすると霧の中から春の声が聞こえてきました。そして、もう一人の声…それは葛城の声でした。

春と葛城は対峙し、お互いにこれまでの真実とそれぞれの思いを口にしました。葛城はまるで罪の意識がなく、むしろ挑発するように「自分が春の父親であること」「泉水と春の母親を襲ったこと」を認めました。これに対して、春は「自分の父親は今入院しているあの人である。赤の他人のお前が父親面するな」と強く反発しました。

その瞬間、激しい音が響き渡りました。それは誰かが何かを殴ったような音でしたが、その正体はすぐには分かりませんでした。その後、葛城は泉水と春の前に姿を現すことはなく、警察は通り魔事件として捜査を進めることになりました。

泉水は、春が放火事件の犯人であることを知りながらも、自首しようとする春を止めました。泉水は春を守りたい一心で、この件をうやむやにしようと決心しました。その結果、春は自らの罪を明かさずに過ごすことになりました。

一方、入院中の父親は手術を受けたものの、すでに手遅れであり、その後亡くなってしまいました。火葬場で、泉水と春は父親を偲びながら、煙突から出る煙を見上げていました。二人は、これまでの出来事を振り返りつつ、仲良くお酒を酌み交わしました。

このようにして、放火事件の真相と兄弟の関係は一段落しましたが、泉水と春の心には深い傷が残りました。二人は今後も共に歩んでいくことを誓い合い、物語は静かに幕を閉じます。

第5章: 真実と結末

葛城との対峙を経て、泉水はついに放火事件の全貌を理解しました。春が犯人であり、これまでのすべての放火は彼の手によるものだったのです。泉水はショックを受けながらも、弟を守るためにこの事実を隠し通す決意をします。春自身も自首する覚悟を決めましたが、泉水はそれを止めました。

「君の人生を台無しにするわけにはいかない」と泉水は言いました。春はその言葉に深く感謝しつつも、自分の行いに対する罪の意識を抱え続けました。泉水は春を守るため、そして家族の名誉を守るために、事件をうやむやにすることを決めました。

一方、入院中の父親の容態は悪化の一途をたどっていました。手術は成功したものの、病状は進行しており、最終的には助かる見込みがありませんでした。泉水と春は父親の最期を見守りながら、彼との時間を大切に過ごしました。父親は二人に対して、深い愛情と感謝の言葉を残しました。

父親が亡くなった後、泉水と春は火葬場に向かいました。父親の遺体は火葬にされ、その煙は煙突から空へと昇っていきました。二人はその煙を見上げながら、父親との思い出に浸りました。

火葬場で、泉水は春にお酒を差し出しました。「父さんもきっと見てるよ」と言いながら、二人はお酒を酌み交わしました。悲しみの中にも、兄弟の絆はますます深まりました。泉水と春は、これからも互いに支え合って生きていくことを誓いました。

放火事件の真相が明らかになり、葛城は二度と姿を現すことはありませんでした。警察は事件を通り魔によるものとして捜査を続けましたが、結局犯人を捕まえることはできませんでした。泉水と春は、秘密を胸に抱えながらも、日常生活に戻りました。

泉水は、春がこれからの人生をより良く生きられるようにサポートし続けました。春もまた、兄の支えを得ながら、自分自身を見つめ直し、前向きに生きていく決意を固めました。二人の兄弟は、過去の痛みを乗り越え、新たな未来に向かって歩み始めました。

このようにして、泉水と春の物語は終わりを迎えました。彼らの絆はさらに強固なものとなり、どんな困難にも立ち向かっていけると確信しました。家族の絆と愛情が、最終的に二人を救ったのです。これからも二人は互いに支え合いながら、新たな人生を切り開いていくことでしょう。

伊坂幸太郎「重力ピエロ」の感想・レビュー

伊坂幸太郎の「重力ピエロ」は、家族の絆と個人の過去に焦点を当てた作品であり、その緻密なプロットと深いテーマに強く引き込まれました。物語は、連続放火事件を軸に進みますが、表面的なサスペンス要素にとどまらず、登場人物たちの複雑な感情や人間関係を巧みに描いています。

まず、泉水と春の兄弟関係が非常に印象的でした。血の繋がりがないという設定は一見ドラマチックに見えますが、実際には彼らの絆の深さを強調するためのものです。泉水が春を守ろうとする姿勢や、春が兄に対して持つ信頼と依存の気持ちが、物語全体を通じて強く感じられました。

また、春の出生の秘密と、それにまつわる葛城という人物の存在が物語に大きな影響を与えます。葛城が母親を襲った犯人であり、春の実の父親であるという事実は、読者にとって衝撃的です。その事実が明らかになる過程で、泉水と春の心情が細かく描写されており、彼らがどのようにその事実に向き合うかが非常に丁寧に描かれています。

さらに、郷田順子というキャラクターも興味深い存在でした。順子の正体がかつての春のストーカーであり、整形手術によって姿を変えて再び現れるという展開は予想外で、物語に緊張感を与えます。彼女の行動の動機や、春に対する執着が物語に深みを加えています。

放火事件の真犯人が実は春であったという展開もまた、物語を一層複雑にしています。春が犯行に及んだ理由や、その背景にある心理が描かれることで、単なるサスペンスではなく、深い人間ドラマとしての側面が強調されます。泉水が弟を守るために選んだ行動や、春の罪悪感との葛藤がリアルに描かれており、読者として強く共感しました。

最後に、父親の死と火葬場でのシーンは、物語の締めくくりとして非常に感動的でした。泉水と春が父親を偲びながらお酒を酌み交わす場面は、兄弟の絆の強さと、これまでの困難を乗り越えてきた彼らの成長を象徴しています。悲しみの中にも希望を見出す彼らの姿が心に残りました。

「重力ピエロ」は、サスペンスと家族愛、そして個人の過去との向き合い方を巧みに織り交ぜた素晴らしい作品です。伊坂幸太郎の巧みな筆致と、深い人間理解が光る一冊であり、読後には深い感動と共に様々なことを考えさせられます。この作品を通じて、家族の絆の大切さや、自分の過去とどう向き合うべきかについて改めて考える機会を得られました。

まとめ:伊坂幸太郎「重力ピエロ」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 連続放火事件が仙台市内で発生する
  • 泉水と春は血の繋がりのない兄弟である
  • 春は母親が襲われたときに生まれた子供である
  • 放火現場には必ずグラフィティアートがある
  • 春はそのグラフィティアートの法則に気付く
  • 謎の女性郷田順子が泉水に接触する
  • 順子は春の様子がおかしいと泉水に伝える
  • 葛城が連続暴行事件の犯人で春の実父である
  • 順子はかつての春のストーカーであった
  • 放火事件の真犯人は春であったことが判明する