火星に住むつもりかい?(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

「火星に住むつもりかい?」は、伊坂幸太郎の魅力が詰まった作品です。

物語の舞台は、政府の実験的な「安全地区」に指定された仙台の街。ここでは、「平和警察」と呼ばれる組織が犯罪を未然に防ぐために市民を厳しく監視しています。しかし、その取り締まりは暴力的で、冤罪による処刑も後を絶ちません。

そんな中、大学教授の金子先生を中心とした「金子ゼミ」が結成され、市民たちは平和警察に反抗し始めます。物語は、謎の黒ずくめの男や強力な磁石の武器を持つ理容師・久慈の登場によって、予想外の展開を迎えます。

この記事では、「火星に住むつもりかい?」のあらすじとネタバレを詳しく紹介します。

この記事のポイント
  • 平和警察が支配する仙台の街の状況
  • 市民が結成した反抗グループ「金子ゼミ」の詳細
  • 黒ずくめの男とその武器の正体
  • 理容師・久慈の背景と彼の行動
  • 平和警察の崩壊と仙台の街の平和回復の過程

火星に住むつもりかい?(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

第1章: 平和警察の支配

仙台の街は、ある日突然「安全地区」に指定されました。これは、政府がこの街を犯罪から守るための実験をするためでした。この街の警察は「平和警察」と呼ばれ、犯罪を未然に防ぐために市民を徹底的に監視していました。

街の至る所には防犯カメラが設置され、平和警察はそれらを使って常に市民の動きを見張っていました。市民の中には、危険な人がいるかもしれないと考えられると、すぐに密告するように言われていました。一度危険人物とみなされた人は、すぐに警察に連れて行かれました。

警察署では、その人たちは非常に厳しい取り調べを受けました。取り調べの際、警官たちは暴言を吐いたり、暴力を振るったりしました。また、取り調べ室は最低温度の冷房がかけられていて、非常に寒い部屋に長時間放置されることもありました。さらには、その人の家族を人質に取って脅すこともありました。

こうした卑劣な行為は日常的に行われていました。しかし、市民たちは警察の圧倒的な力の前に逆らうことができませんでした。取り調べの結果、罪を認めさせられた人たちは、街の広場で公開処刑されました。処刑にはギロチンという道具が使われました。処刑を受ける人の中には、無実の人も多く含まれていましたが、誰も警察に逆らうことができなかったのです。

このようにして、仙台の街は平和警察の恐怖によって支配されていました。市民たちは常に監視され、少しでも疑われれば厳しい取り調べを受けることになりました。この状況に、市民たちは恐怖と不安を感じながら暮らしていたのです。

第2章: 反抗の芽生えと金子ゼミ

仙台の街では、家族や友人が平和警察によって取り調べを受けたり、処刑されたりする事件が続きました。そんな中、ある市民たちは次第に警察に対して抵抗する気持ちを持ち始めました。しかし、表立って警察に逆らえば、自分もすぐに連行されてしまうのは明らかです。

そこで、市民たちは大学教授の金子先生を中心に「金子ゼミ」というグループを結成しました。このグループはこっそりと会合を開き、平和警察の取り調べを受けている哀れな容疑者たちを助け出す計画を立てました。彼らは深夜に集まり、取り調べが行われている建物に忍び込み、捕まった人たちを解放しようとしました。

しかし、この計画は失敗に終わりました。「金子ゼミ」というグループ自体が、実は平和警察の捜査官である真壁が作った罠だったのです。真壁は、このグループを利用して、反平和警察の市民をあぶりだそうとしていたのです。

「金子ゼミ」の参加者たちは、すぐに平和警察に連行され、厳しい取り調べを受けることになりました。しかし、その取り調べの最中、突然、黒ずくめのつなぎを着た男が現れました。この男は不思議な武器や鉄砲のようなものを使い、警察官を次々と倒していきました。彼が使っていた武器は、ゴルフボール状の強力な磁石であり、それを投げると警察官たちの身に着けている金属が引っ張られ、体のバランスを崩してしまうのです。

黒ずくめの男は、取り調べを受けていた市民たちを救い出し、共に姿をくらましました。この事件によって、平和警察は大きなショックを受けました。市民たちは、この謎の男に希望を見出し、彼が再び現れて平和警察に立ち向かうことを期待するようになりました。

一方で、平和警察はメンツを汚された屈辱から、謎の男を捜し出そうと必死になりました。この男が使っていた強力な磁石の正体を突き止めるため、様々な手がかりを探し始めました。こうして、仙台の街では新たな展開が始まろうとしていたのです。

第3章: 黒ずくめの男と大森鴎外

黒ずくめの男が使っていた強力な磁石の武器は、平和警察に大きな衝撃を与えました。警察はこの磁石の正体を突き止めるために必死で捜査を進めました。その結果、磁石について詳しく研究している大学生、大森鴎外という人物が浮かび上がってきました。

鴎外は家が貧乏で、生活費を稼ぐために磁石の研究をしていました。彼には、大学に内緒で企業と取引をしているという疑惑がありました。平和警察は鴎外の行方を追いましたが、彼の足取りをつかむことができませんでした。しかし、ある日、鴎外らしき人物が以前に見かけられたという情報が入りました。

その情報によると、ある定食屋でクレジットカードが使えなくなるという事件がありました。それは、おそらく強力な磁石を持つ鴎外が近くにいたためです。その定食屋にいたサラリーマンから話を聞いた警察は、防犯カメラの映像を調べることにしました。

しかし、その防犯カメラの映像は消去されていました。実は、以前に平和警察の警官が誤ってタクシーの運転手を殴り殺すという不祥事が起き、その証拠を隠すために映像データが消去されたのです。しかし、その隠蔽された動画には、偶然にも鴎外の姿が映っていました。

事件が起きたとき、鴎外はタクシー運転手を助けようと現場に駆け寄りました。しかし、警察官は鴎外を危険人物とみなし、射殺してしまいました。この事件は、黒ずくめの男が平和警察に乗り込んできた事件よりも前に起きたものでした。

つまり、黒ずくめの男は鴎外ではなかったのです。では、誰が強力な磁石を手に入れ、平和警察に立ち向かおうとしているのでしょうか。警察の捜査は暗礁に乗り上げてしまいました。鴎外が射殺されたことで、彼の研究成果は一度は途絶えたかのように思われましたが、実はその磁石を手に入れた人物がいたのです。

その人物こそ、理容師の店主・久慈でした。久慈は鴎外が残した磁石と鉄砲を手に入れ、平和警察に対して反抗するための計画を練り始めていました。久慈の行動は、この後、仙台の街に新たな波紋を広げていくことになります。

第4章: 久慈の覚醒と行動

鴎外が残した強力な磁石を手に入れた理容師の久慈は、次第に平和警察に対して反抗する決意を固めていきました。久慈の家族には代々、正義感が強い血が流れていました。祖父は宝くじで大金を当て、それを友人のために使ったことで偽善者と非難され、自ら命を絶ちました。父は病院が火事になった際、自らは助かっていたのに、残された患者を救うために火の中に飛び込み命を落としました。

久慈もまた、強い正義感を持っていましたが、祖父や父のように自分の命を犠牲にしたくはありませんでした。彼は平和な生活を望んでいました。しかし、妻が病で倒れ、苦しみながら亡くなったことで、久慈の心は大きく揺れ動きました。妻の死後、久慈は理容院も休みがちになり、悲しみに暮れていました。

そんな中、久慈は偶然にも鴎外が警察官に殺される現場を目撃してしまいました。彼は警察が罪のない市民を殺すなんて何かの間違いだと思いました。しかし、翌日のニュースにはその事件のことが全く報じられず、警察が事件をもみ消したことに気付いたのです。

久慈の元には、鴎外が残した磁石と鉄砲がありました。最初はその使い道に困っていましたが、これらが強力な武器になることに気付きました。妻と鴎外の死がきっかけで、久慈の中の正義感が再び燃え上がりました。彼は平和警察に立ち向かう決意を固め、行動に移すことにしました。

久慈はまず、理容院の常連客たちが「金子ゼミ」に騙されて取り調べを受けているという情報を手に入れました。彼らを助けるために、久慈は取り調べ室に忍び込み、常連客たちを救出しました。これが黒ずくめの男の正体だったのです。

久慈は常連の社長に頼み込み、救い出した市民たちを匿うための安全な部屋を用意してもらいました。久慈の行動はますます大胆になっていきましたが、彼には一つのルールがありました。それは、「助けるのは常連とその家族だけ」というものでした。このルールに従いながらも、久慈は平和警察に対する反抗を続けました。

しかし、次第に事態は大ごとになり、久慈は警察に追われるようになりました。平和警察は久慈の名前にはたどり着けませんでしたが、謎のつなぎの男を捕まえようと懸命に捜査を続けました。久慈は焦りを感じながらも、自分の正義感に従って行動し続けました。彼の戦いはまだ続くのです。

第5章: 久慈の最期と平和の回復

平和警察は謎のつなぎの男を捕まえるために、新たな計画を立てました。彼らは佐藤誠人という少年を強制的に連行しました。佐藤は以前、幼馴染の少年にいじめられていたところをつなぎの男に助けられた経験がありました。平和警察は、佐藤を痛めつければ、謎の男が再び現れるだろうと考えたのです。

この作戦は成功しました。佐藤は久慈の理容院の常連客だったのです。平和警察は町中に佐藤が危険人物として捕まったという情報を流しました。その結果、予想通り久慈は佐藤を救出するために現れました。

久慈が現れると、平和警察は彼を捕まえるために警察車両を爆破しようとしました。しかし、久慈はその罠から逃れました。一方で、真壁捜査官はこの爆発に巻き込まれて死亡しました。しかし、これは彼が自ら仕組んだ偽装でした。

その後、平和警察は佐藤を含む数人の危険人物を公開処刑しようと計画しました。多くの市民が集まる中、処刑が行われようとしていました。その時、複数の黒ずくめのつなぎを着た男たちが現れました。実は、これらの男たちは久慈が常連の社長に依頼して集めたサクラでした。

平和警察はこれらのサクラたちも処刑しようとしましたが、久慈は観念して自分こそが本物のつなぎの男であると名乗り出ました。平和警察は目当ての久慈を見つけ、彼をギロチンにかけようとしました。しかし、ギロチンは久慈の持つ磁石の力で作動しませんでした。

警察がギロチンの不具合を調べている間に、久慈はギロチンに仕込まれていた鉄砲を取り出して発砲し、その場から逃げ出しました。これは、最近理容院にやってきた男の入れ知恵でした。その男は、実は真壁捜査官でした。彼は自分の死を偽装し、久慈に助言していたのです。

久慈が発砲した相手は、平和警察のリーダーである薬師寺警視長でした。薬師寺はとっさに部下を引き寄せて盾にしました。この行動は市民から大きな非難を浴びました。薬師寺の権威は失墜し、平和警察の威力も次第に衰えていきました。

薬師寺が力を失った平和警察は、その後も捜査を続けましたが、久慈の正体にはたどり着けませんでした。市民たちは次第に平和警察の恐怖から解放され、仙台の街には少しずつ平和が戻ってきました。久慈の行動は、市民たちに希望をもたらし、平和警察の圧政に立ち向かう勇気を与えたのです。

久慈自身は、その後も身を隠しながらも、心の中では自分の正義感を貫いたことに誇りを感じていました。仙台の街は、久慈の勇気ある行動によって再び平和を取り戻しつつありました。市民たちは、久慈の名を胸に刻みながら、新しい未来に向かって歩み始めたのです。

火星に住むつもりかい?(伊坂幸太郎)の感想・レビュー

「火星に住むつもりかい?」(伊坂幸太郎)は、息をのむようなスリリングな物語でした。仙台の街が「安全地区」に指定され、平和警察の監視体制が敷かれるという設定は、とても現実味があり、読者に強い緊張感を与えます。市民たちが常に監視され、少しでも疑われると厳しい取り調べを受けるという恐怖が描かれており、その描写はとてもリアルで心に残ります。

特に印象的だったのは、平和警察の取り調べの過酷さです。暴力や脅迫、冤罪による処刑が日常茶飯事であり、市民たちがどれだけ恐怖にさらされているかがよくわかります。そんな中で、市民たちが反抗心を持ち始める様子はとても共感できます。金子教授を中心とした「金子ゼミ」の結成は、絶望的な状況でも希望を持とうとする人々の姿を象徴しています。

物語の中盤で現れる黒ずくめの男の登場シーンは、とてもスリリングでワクワクしました。彼が使う強力な磁石の武器や、その正体が徐々に明らかになる展開は、とても巧妙に描かれています。また、理容師の久慈の過去と彼の行動には深い感動を覚えました。彼の正義感と妻を失った悲しみが、物語に深い感情をもたらしています。

最終的に平和警察が失墜し、仙台の街に平和が戻り始める結末は、読者に希望を与えます。久慈の勇気ある行動が市民たちに影響を与え、彼の名を胸に刻みながら新しい未来に向かって歩む姿は、とても感動的でした。全体を通して、絶望の中にも希望があり、人々の強い意志が描かれた素晴らしい作品でした。伊坂幸太郎の巧みなストーリーテリングと緻密なキャラクター描写に感服しました。

まとめ:火星に住むつもりかい?(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 仙台が「安全地区」に指定され、平和警察が監視を強化する
  • 平和警察が市民を厳しく取り調べ、冤罪も多い
  • 公開処刑が行われ、無実の人も処刑される
  • 市民が大学教授の金子を中心に「金子ゼミ」を結成する
  • 金子ゼミは平和警察の罠であり、市民が逮捕される
  • 黒ずくめの男が現れ、市民を救出する
  • 黒ずくめの男の武器は強力な磁石と鉄砲である
  • 大学生・大森鴎外が磁石を研究していたが警察に射殺される
  • 理容師の久慈が鴎外の磁石を使い平和警察に反抗する
  • 平和警察が失墜し、仙台に平和が戻り始める