ジャイロスコープ(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

伊坂幸太郎の「ジャイロスコープ」は、巧妙に練り上げられたストーリー展開と魅力的なキャラクターが特徴の短編集です。物語は様々な状況や人物が織りなすドラマを描き出し、読者を引き込んでいきます。

本記事では、「ジャイロスコープ」の各章の概要とネタバレを紹介します。蝦蟇倉市の相談屋としての奇妙な体験から、バスジャックに遭遇した男の選択、ストーカー事件の解決、新幹線での偶然の再会、そして深い家族の絆まで、多彩な物語が展開されます。

この記事のポイント
  • 各章のストーリー概要
  • 主要なキャラクターの役割と背景
  • 物語の主要な展開と結末
  • 物語に込められたテーマやメッセージ
  • 登場人物の選択とその結果

ジャイロスコープ(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

第1章: 蝦蟇倉市の相談屋

蝦蟇倉市(がまくらし)にやってきた浜田(はまだ)は、この先どうするか悩んでいました。彼は家出をして数日が経っており、持っていたクレジットカードもすぐに止められてしまうかもしれない状況でした。まずはビジネスホテルに泊まることにしましたが、お金がなくなる前に仕事を見つける必要がありました。

ある日、ホテルの近くにあるスーパーの駐車場を歩いていると、バランスの悪い男に呼び止められました。思わず「あっ」と声を出してしまった浜田ですが、その男はそのような反応に慣れているようで、あまり気にする様子はありませんでした。男は自分を稲垣(いながき)と名乗り、スーパーの駐車場脇で相談屋をやっていると言いました。そして、最近助手に逃げられたので、もしやることがないなら助手にならないかと誘ってきたのです。

稲垣の話を聞きながら歩いているうちに、浜田は気がつくと稲垣の事務所に入っていました。事務所は小さくて古びた建物で、少し不安を感じる浜田でしたが、稲垣は一週間は自分の仕事を見て、その後でやってくる客の相談に乗って欲しいと頼んできました。

浜田は怪しげな話に「本当っすか?」と何度も聞き返しましたが、他に当てもなかったため、稲垣の元で働くことにしました。稲垣はやってくる相談者の悩みが軽くなるようなアドバイスをしていましたが、中には明らかに犯罪を教唆するようなアドバイスまでありました。浜田はそれを聞いて驚きましたが、稲垣はまったく気にしていない様子でした。

一週間後、やってきた客はなんと稲垣本人でした。浜田は冗談かと思いましたが、稲垣はこれまでの経緯を話し始めました。実は浜田は東京の金持ちの息子で、誘拐を計画していた男から稲垣に相談があったというのです。稲垣はその男に、一週間浜田を監禁するように提案し、その役を自分に頼んだのです。そのため、浜田に助手をやらせて一週間監視していたのでした。

しかし、浜田にも秘密がありました。実は彼は本物の浜田ではなく、浜田を殺して入れ替わった人物だったのです。さらに、浜田を誘拐に協力している稲垣の殺人も依頼されており、どうやって稲垣を殺そうかと考えていたのです。しかし、稲垣本人から助手にならないかと誘われて驚いていました。

稲垣は「殺すなら殺せば良い」と冷静に言いましたが、浜田は何となく殺す気になれず、結局稲垣と共に蝦蟇倉市を離れることにしました。

こうして、浜田と稲垣は新たな道を歩み始めました。もしあの時、稲垣の誘いを断っていたらどうなっていたのか、浜田はふと思い返すことがありましたが、今となっては確かめようがありません。ただ一つ言えることは、浜田の人生は大きく変わったということです。

第2章: バスジャックの選択

山本(やまもと)は、いつも通りに家を出てバス停へ向かいました。バス停の向かい側までたどり着いたところで、キョロキョロしている老婆(ろうば)を見かけました。朝早くに何か困っているのかなと思いましたが、バスが近づいてくるのを見て、山本は会社に遅刻しないようにと老婆を無視してバスに乗ることにしました。

バスに乗ってしばらくすると、後ろの方が騒がしくなりました。何事かと振り返ると、一人の男が女性に刃物を突きつけていました。山本は一瞬で状況が理解できず、頭が真っ白になりました。周りの乗客も同じように動揺していて、誰も女性を助けようとはしませんでした。

その男はバスジャック犯でした。犯人は「通報するな、勝手に動くな」と乗客を脅しながら前へと進んでいき、運転手にバスを停めるよう指示しました。バスが停車すると、犯人は「全員降りろ」と命令しました。山本は心の中で、犯人を止める最後のチャンスだと思いましたが、家族の顔が浮かび、自分は生きて帰らなければならないと自分に言い聞かせました。

その後、山本は何もせずに降り、犯人の要求に従いました。しかし、この出来事を後悔し続ける人生を送ることになりました。あの時、老婆を助けずにバスに乗ったことで、犯人を止められなかった自分を責め続けました。

もう一つの選択肢を考えてみましょう。山本はバス停の向かい側でキョロキョロしている老婆を見かけました。彼はバスに乗り遅れることを気にせずに、老婆に声をかけました。「何かお困りですか?」と尋ねると、老婆は「コンビニを探している」と言いました。山本は親切に道を教えました。幸運にも、バスに間に合い、山本は再びバスに乗り込みました。

しかし、バスに乗ってしばらくすると、またもやバスジャックが起こりました。今度は山本と他の乗客が協力して犯人を取り押さえることに成功しました。実は、この事件はちょうど20年後に同じ犯人が起こしたものでした。山本を始め、犯人を取り押さえた乗客たちは、前の事件での不甲斐ない対応を後悔していた仲間だったのです。

20年前、山本たちは同じバスに乗っていて、同じようにバスジャックに遭遇していました。その時は何もできずに逃げてしまった自分たちを責め続けていたのです。しかし、今回の事件で勇気を出して犯人を取り押さえたことで、過去の自分たちを乗り越えることができました。

山本は、自分の選択がどれほど人生に影響を与えるのかを改めて実感しました。あの時、老婆に声をかけたことで、自分自身の後悔を払拭し、犯人を捕まえることができたのです。これからも、困っている人を見かけたら、迷わず手を差し伸べることを誓いました。

第3章: ストーカーと鉄板

林衿子(はやし えりこ)は、深夜に電話の音で目が覚めました。電話は娘の梨央(りお)からでした。何か大変なことがあったのではないかと悪い予感を抱きながら電話に出ると、梨央が「以前、ストーカーにあっていたことを覚えている?」と尋ねてきました。

梨央は結婚して子供を産み、引越ししたことでストーカーから逃れることができていました。しかし、最近レンタルビデオ屋に行った際、バイトをしていたそのストーカー男と再会してしまったのです。男は梨央の個人情報を調べて家にやってくると言うメールを送ってきました。梨央は恐怖に震え、母親の衿子に相談したのです。

衿子はどうすることもできず、とにかく警察に連絡するよう言って電話を切りました。梨央はすぐに警察に通報しましたが、ストーカー男は既に梨央の家に向かっているかもしれないという不安が募ります。

10分後、再び電話が鳴りました。梨央からの電話で、「ストーカーを退治した」との連絡があり、衿子は胸を撫で下ろしました。しかし、どのようにして退治したのか気になり、梨央に詳細を尋ねました。

梨央の話によると、ストーカー男が家に押し入ろうとした時、梨央は偶然近くにあった鉄板を手に取り、男を撃退したというのです。その鉄板は、実は隣に住む少年がサンタクロースからのプレゼントとしてもらったものだったのです。

その少年は、父親と二人で暮らしており、夜は一人で過ごすことが多い家庭でした。梨央がストーカーから逃げている音に驚いて外に出てきた少年は、サンタクロースからもらったプレゼントの包みを開けてみました。中には鉄板が入っており、梨央に渡しました。梨央はその鉄板を使ってストーカーを撃退したのです。

梨央は、「まさかサンタクロースが少年にこんなプレゼントをくれたのか」と不思議に思いました。しかし、一人で世界中の子供にプレゼントを配るなど、現実的には無理だと考えました。

後日、梨央は少年にお礼を言うために訪ねました。少年は「サンタクロースは本当にいるんだ」と信じている様子で、その純粋な気持ちに梨央も心が温まりました。サンタクロースが実在するかどうかはわかりませんが、少なくともそのプレゼントが梨央を助けたことは事実でした。

こうして、梨央と衿子はストーカーからの恐怖から解放され、日常を取り戻すことができました。そして、隣に住む少年の勇気とサンタクロースの存在に感謝しながら、新しい日々を過ごすことを誓いました。

第4章: 新幹線の出会い

東京行きの新幹線「はやぶさ」の中で、私は新しい車を買うかどうかを考えていました。最近は車の仕様やデザイナーの記事などを読んで、物欲を必死に抑えていましたが、どうしてもその車が欲しくてたまりません。

私が座っている席の後ろでは、中年の男性が座っていました。その横に若い男がやってきて、「この車両には女優が乗っているから、それを観察するのに良い席なんです」と言って、中年男性を納得させて隣に座りました。中年男性は「本当に女優がいるのか」と興味津々で、若い男にいろいろと話しかけ始めました。

中年男性は「最近、女優が誰と交際しているかについての噂を聞いたんだが、君はどう思う?」と尋ねました。若い男は「まあ、噂は噂ですからね」と答えながら、自分の話も始めました。若い男は幼い頃に父親が離婚して家を出ていったことを語り、中年男性は高校で教師をしていることを話しました。

すると、突然、巨体に鋭い目つきの男が私の隣に座ってきました。男は車内販売が来たのを避けるために座ったようで、ついでに私に話しかけてきました。「私は相談屋をやっているので、何か悩みがあれば答えますよ」と言われたので、私は車を買うかどうかで迷っていることを相談しました。

男は少し考えた後、「それならば買う方が良い」と答えました。「買っても買わなくても人生に大差はないので、我慢するよりは欲しいものを買った方が良いですよ」というアドバイスでした。私はその言葉に背中を押されるような気持ちになり、車を買う決心を固めました。

東京駅に着くと、若い男は中年男性に不躾に隣に座ったことを詫びました。中年男性は「気にしないで」と笑顔で答えました。私は女優を一目見たいと思い、若い男が言っていた女優らしき人に近づいて確認しましたが、実際には女優などではありませんでした。若い男が間違っていたのだと思いました。

その時、ちょうど若い男が歩いてきました。その顔を見ていると、私は車のデザイナー記事で見た顔だと気付きました。つい私は若い男に話しかけ、「あなた、もしかしてデザイナーではありませんか?」と尋ねました。若い男は驚いた顔をしましたが、やがて笑顔で「そうです。実は記者ではなくデザイナーであり、中年男性と話したかったので嘘をついたんです」と告白しました。

私は驚きながらも、その正直な告白に感心しました。そして、新幹線の中で偶然出会った人々との短い交流に心温まりました。中年男性と若い男は、まるで親子のように見えました。新幹線が東京駅に到着し、みんながそれぞれの道を歩み始めました。

新幹線の車内では、清掃係が中年男性が書いたメモを拾っていました。そこには、幼い頃に別れた息子への感謝と深い愛情が書き連ねられていました。どうやら、中年男性は若い男の父親であることがわかりました。お互いに気づかぬまま、父と息子は再会し、短い時間を共有したのでした。

この出来事は、私にとっても忘れられない思い出となりました。新幹線の中で出会った人々との交流は、私にとって貴重な経験でした。人との出会いは、本当に奇跡のようなものだと感じました。

第5章: メモと感謝

東京行きの新幹線「はやぶさ」の車内では、多くの人がそれぞれの目的地に向かっていました。その中に、一人の中年男性がいました。彼は、新幹線の座席に座り、何やら熱心にメモを書いていました。

そのメモには、彼の心の中の思いがつづられていました。中年男性は、幼い頃に別れた息子への感謝と深い愛情を書いていました。「息子へ、君が生まれた日から今日まで、君の成長を見守ることができなくて本当に申し訳ない。君がどこかで幸せに過ごしていることを願っています。いつかまた会える日が来ることを信じています」といった内容が記されていました。

新幹線が東京駅に到着し、乗客たちが降りていく中で、中年男性はそのメモを座席に置き忘れてしまいました。清掃係が車内を掃除していると、そのメモを見つけました。メモを拾い上げた清掃係は、そこに書かれた深い愛情に心を打たれました。

一方、若い男性は新幹線を降りて、自分の目的地へと向かっていました。彼は、新幹線の中で出会った中年男性のことを思い返していました。中年男性が話していた内容や、彼が見せた親しみのある笑顔が、彼の心に強く残っていたのです。

実は、その若い男性こそが中年男性の息子だったのです。お互いに気づかないまま、新幹線の中で再会していたのです。若い男性は、ふとした瞬間に感じた親近感や温かさが、ただの偶然ではないことに気づき始めていました。

その後、若い男性は中年男性が書いたメモの存在を知ることになります。清掃係がそのメモを届けてくれたのです。メモを読んだ若い男性は、自分の父親がずっと自分を思い続けていたことを知り、深い感動を覚えました。そして、自分もまた、父親に対する感謝の気持ちを持ち続けていたことに気づきました。

若い男性は、自分の父親に会いたいと思うようになり、再び新幹線に乗って父親を探す旅に出ました。そして、ついに父親と再会することができました。二人は抱き合い、長い年月を経て再び家族の絆を取り戻すことができたのです。

この出来事は、私たちに家族の大切さや愛情の深さを教えてくれました。どんなに遠く離れていても、家族の絆は切れることなく、いつか必ず再び結ばれるのだということを実感しました。新幹線の中で出会った人々との交流は、私たちにとってかけがえのない宝物となりました。

ジャイロスコープ(伊坂幸太郎)の感想・レビュー

「ジャイロスコープ」を読んで感じたことは、伊坂幸太郎さんの物語の作り方がとても巧妙であるということです。彼の作品は、普通の人々の日常に突然起こる非日常的な出来事を描くのが上手です。どの章も独立した物語ですが、どれも心に残るエピソードが多く、読みごたえがあります。

まず、第1章の蝦蟇倉市の相談屋の話では、浜田と稲垣の不思議な関係が印象的でした。家出した浜田が偶然出会った相談屋の稲垣に誘われて助手になる展開は、現実離れしているようでいて、どこか現実味があります。特に、浜田が実は本物の浜田ではなく、入れ替わっていたという驚きの事実には、読んでいて背筋がゾクッとしました。

第2章のバスジャックの話では、山本の選択がテーマになっています。バスジャックに遭遇したときの彼の恐怖や、その後の後悔が非常にリアルに描かれていて、自分が同じ状況に置かれたらどうするだろうと考えさせられました。20年後の再挑戦で犯人を取り押さえる場面は、勇気を持つことの大切さを教えてくれます。

第3章のストーカーと鉄板の話は、家族の絆や隣人の優しさが感じられるエピソードでした。梨央がストーカーに再び襲われるという恐怖の中で、隣の少年のプレゼントが役立つという展開は感動的です。サンタクロースの存在を信じる少年の純粋な気持ちが、物語に温かさを加えていました。

第4章の新幹線の出会いの話では、偶然の出会いがもたらす奇跡のような出来事が描かれています。車を買うかどうか悩んでいる「私」が、隣に座った相談屋からのアドバイスを受けて決心する場面は、些細な言葉が人生の大きな決断につながることを教えてくれます。また、記者と思われていた若い男が実はデザイナーで、中年男性の息子だったという再会のシーンは、親子の絆の深さに感動しました。

第5章のメモと感謝の話では、中年男性が書いたメモを通して、家族への深い愛情が伝わってきました。息子への感謝と再会への希望が詰まったメモは、とても心温まるものでした。そして、偶然にもそのメモを受け取った息子が父親を探しに行くという展開は、家族の絆が再び結ばれる感動的な瞬間を描いています。

「ジャイロスコープ」は、様々な人々の人生の一部を切り取った短編集でありながら、それぞれの物語がしっかりと心に残ります。伊坂幸太郎さんの独特の語り口と緻密なプロット作りは、読む人を引き込み、最後まで飽きさせません。この本を通して、人との繋がりや選択の大切さ、家族の愛情について深く考えることができました。ぜひ、多くの人に読んでほしい作品です。

まとめ:ジャイロスコープ(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 蝦蟇倉市での浜田の悩みと稲垣との出会い
  • 浜田が稲垣の助手になる経緯
  • 稲垣の事務所での一週間の出来事
  • 稲垣の正体と浜田の過去
  • バスジャックに遭遇した山本の選択
  • 20年前のバスジャック事件の後悔と再挑戦
  • 林衿子と娘梨央のストーカー事件
  • サンタクロースのプレゼントがストーカー撃退に役立つ
  • 新幹線での出会いと相談屋のアドバイス
  • 中年男性と若い男の再会と家族の絆