ガソリン生活(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

伊坂幸太郎の「ガソリン生活」は、車が主人公のユニークな物語です。

この作品は、車同士が会話を交わしながら、日常の出来事や謎めいた事件に巻き込まれていくストーリーが描かれています。特に、望月家の緑色のデミオ、通称「緑デミ」が主要キャラクターとして活躍します。緑デミは、家族や近所の車たちと一緒に様々な出来事に対処し、車ならではの視点で物語を進めていきます。

この記事では、「ガソリン生活」の超あらすじとネタバレを詳しく紹介し、物語の魅力をお伝えします。

この記事のポイント
  • 緑デミと周囲の車たちの日常
  • 望月良夫が運転免許を取得したこととその影響
  • 女優荒木翠が乗った日とその後の事故
  • パパラッチ玉田憲吾との対峙と事件の真相
  • トンネル事故の真実とその後の展開

ガソリン生活(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

第1章: 日常の車たち

緑デミは望月家の所有する緑色のデミオという車です。普段は望月家の駐車スペースに停められており、お隣に住む校長先生の細見正一(ほそみ しょういち)氏が所有する白いカローラGT、通称ザッパと毎日おしゃべりをしています。細見先生はフランク・ザッパというミュージシャンが好きなので、自分の車にもザッパという名前をつけたのです。

車同士は排気ガスが届く範囲であれば話すことができるので、よく宅急便のトラックである黒いニコニコ便(通称黒ニコ)ともおしゃべりをします。また、走っている途中でも対向車と話すことがあります。車たちはとてもおしゃべり好きですが、人間に運転される身であるため、事故にあうことや車検をとても怖がっています。

特に、自分の意思に反して人間の感情に任せて鳴らされるクラクションという機能は、車たちにとっては下品で不要なものだと考えています。このような日常の中で、緑デミたちはお互いの話を楽しんでいます。

第2章: 新しい運転手と特別な乗客

最近、望月家の長男で大学生の望月良夫(もちづき よしお)が運転免許を取りました。運転初心者で緊張する良夫に運転されることが多くなった緑デミは、最初は少し心配でしたが、次第に良夫の運転にも慣れていきました。

ある日曜日、良夫と弟の望月享(もちづき すすむ)が緑デミでドライブに行った帰りに、突然車に乗り込んできたのは、人気女優の荒木翠(あらき みどり)でした。荒木翠はとても謙虚で明るい性格で、良夫と享は彼女に好印象を抱きました。

しかし、翌日になると、荒木翠がトンネルで起きた事故により亡くなったというニュースが流れました。ニュースによると、荒木翠とその友人がパパラッチから逃げる途中でスピードを出しすぎてしまい、トンネル内で事故にあい、車と共に中にいた二人もすべて燃えてしまったということです。緑デミは最後に荒木翠を乗せたことを誇りに思うとともに、事故にあった車とその乗員を残念に思います。

第3章: パパラッチとの対峙

事故のとき、荒木翠を追っていたパパラッチが助けもせずに写真を撮り続けていたという話を聞いた良夫と享は、何とかそのパパラッチに制裁を加えようと考えます。パパラッチの名前は玉田憲吾(たまだ けんご)です。良夫と享は玉田に会いに行きますが、大した収穫は得られませんでした。

その頃、望月家の次女で高校生の望月まどか(もちづき まどか)とその彼氏の江口康夫(えぐち やすお)は、危険な事件に巻き込まれていました。江口の昔からの知り合いであるトガシ(本名不詳)さんをリーダーとするグループに、無理やり手伝わされそうになっていたのです。

事態に気づいた良夫と享は、まどかと江口が呼び出された場所、潰れたパチンコ店に向かいます。しかし、そこでは暴力が振るわれ、望月家は絶対絶命の危機に陥ります。その時、お隣の校長先生の細見氏とパパラッチの玉田がザッパに乗って現れました。

第4章: 救出と新たな疑惑

細見氏は校長としての仕事柄、不良を相手にすることに慣れており、見事に望月家を救出しました。玉田は細見氏に助けを求めに行き、二人で駆けつけたのです。この出来事により、望月家は無事に危機を乗り越えることができました。

その頃、車同士の会話の中で、トンネル事件のあった日に玉田を乗せていた車が話題に上がります。その日、玉田はマーチという車で荒木翠とその友人を追っていたはずなのに、事故が起こった後、一度タクシーでその場を離れてまた戻ってきたという話でした。緑デミとザッパは望月家の話と車の噂を照らし合わせても、不明な点が多く、いろいろな憶測を立てますが、事故の真相は謎のままでした。

第5章: 事故の真相

望月家の次男・享はイギリスのダイアナ妃の話やトガシが行方不明になっている事実を聞き、事故の謎を解きました。事故の日、玉田はトガシが不正行為に関わっていることを知り、トガシを追っていたのです。スピードを出しすぎたトガシの車は事故を起こし、炎上しました。

そこで玉田は、荒木翠をパパラッチに追われる人生から救うための作戦を思いつきます。事故で死んだトガシとそのパートナーを、荒木翠とその友人として記事にしたのです。つまり、玉田は荒木翠とその友人を追いかけた末に事故に遭わせたのではなく、今後パパラッチに追われずに二人が別の場所で暮らしていけるように、事故死に見せかけたのでした。

このトンネル事故の真実は、緑デミから他の車へと広まり、車の間では荒木翠が実はどこかで生きていることが有名な話になりましたが、人間の世界では彼女は事故死した女優として扱われるままでした。

ガソリン生活(伊坂幸太郎)の感想・レビュー

伊坂幸太郎の「ガソリン生活」は、非常にユニークで魅力的な物語です。車が主人公という設定は珍しく、新鮮な視点で物語を楽しむことができます。望月家の緑デミは、日常の中で他の車たちとおしゃべりをしながら過ごしています。お隣の校長先生・細見正一の白いカローラGT、通称ザッパとの交流は、車同士の会話がとても温かく描かれています。

物語の中で、望月家の長男・望月良夫が運転免許を取得し、緑デミを運転するシーンは、初心者ならではの緊張感がリアルに伝わってきます。ある日、女優の荒木翠が緑デミに乗り込むエピソードは、彼女の謙虚で明るい性格が描かれ、読者に好印象を与えます。しかし、その翌日に荒木翠がトンネルで事故に遭い、亡くなるという展開は非常に衝撃的でした。

パパラッチの玉田憲吾が事故現場で助けもせずに写真を撮り続けるというシーンは、読者に強い怒りを感じさせます。良夫と弟の享が玉田に対して制裁を考える場面は、兄弟の絆と正義感がよく描かれています。また、望月家の次女・望月まどかとその彼氏・江口康夫が危険な事件に巻き込まれる展開は、緊張感を高めています。

最終的に、細見先生と玉田が協力して望月家を救出する場面は、予想外の展開でありながらも納得できるものでした。そして、トンネル事故の真相が明らかになる場面は、この物語のクライマックスです。玉田が荒木翠を救うために事故死に見せかけたという真実は、読者に大きな驚きを与えます。

「ガソリン生活」は、車同士の会話や交流を通じて、人間社会の様々な問題や感情を描き出している点が素晴らしいです。車という視点から描かれることで、普段見落としがちな視点や感情に気づかされることが多く、非常に感動的でした。伊坂幸太郎の巧みなストーリーテリングと、緻密に描かれたキャラクターたちが織りなすこの物語は、読者に深い印象を残します。

まとめ:ガソリン生活(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 緑デミは望月家の所有車である
  • 緑デミとザッパはお隣同士の車でよくおしゃべりをする
  • 車同士は排気ガスが届く範囲で会話が可能である
  • 望月良夫が運転免許を取得し、緑デミを運転することが多くなった
  • 女優荒木翠が緑デミに乗り込み、翌日事故で亡くなる
  • パパラッチの玉田憲吾が事故現場で写真を撮り続けた
  • 望月家の次女まどかとその彼氏江口が危険な事件に巻き込まれる
  • 校長先生の細見氏と玉田が望月家を救出する
  • 車同士の会話でトンネル事故の噂が広がる
  • 玉田が荒木翠を救うために事故死に見せかけた真相が明らかになる