アイネクライネナハトムジーク(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

『アイネクライネナハトムジーク』は、伊坂幸太郎の手による連作短編集で、様々な人々の人生が交錯する物語が描かれています。

仕事や家庭の悩みに苦しむ藤間和夫や、ボクシングチャンピオンのウィンストン小野など、個性的なキャラクターたちが登場し、彼らの繋がりが徐々に明らかになります。

本記事では、『アイネクライネナハトムジーク』の超あらすじとネタバレをお届けします。登場人物の関係性や物語の展開を詳しく紹介し、作品の魅力を存分にお伝えします。

この記事のポイント
  • 『アイネクライネナハトムジーク』の全体的なストーリー
  • 主要キャラクターの藤間和夫と佐藤拓也の関係
  • ウィンストン小野のボクシングキャリアとその影響
  • 登場人物たちの複雑な人間関係
  • 物語における重要な出来事とその結末

アイネクライネナハトムジーク(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

第1章: 仕事と家庭の狭間で

市場調査会社でシステム管理を担当している藤間和夫(ふじまともお)は、「さようなら」というメール1通を残して去った妻のことを考えて、気分が落ち込んでいました。ある日、勤務時間中に感情が爆発してしまい、机を蹴り飛ばしてサーバーを壊してしまいました。そして、会社を早退してしまいます。

その結果、藤間の後輩である佐藤拓也(さとうたくや)がとばっちりを受けることになります。佐藤は定時後に残業代なしで街頭アンケートを取り直さなければなりませんでした。アンケートに協力してくれた人の中に、一人の魅力的な女性がいました。彼女は交通整理のアルバイトをしており、その後、工場現場で再会して付き合うことになります。

小さく聞こえてくる夜の音楽「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」のような出会いを期待していた佐藤は、密かに藤間の妻に感謝するのでした。

第2章: 藤間の再起

精神的に疲れ果てた藤間は、たまっていた有給休暇を消化した後、職場に復帰しました。佐藤は、妻子と別居中で落ち込んでいる藤間を励ますために、つい最近日本初のヘビー級世界チャンピオンになったウィンストン小野(おのまなぶ)のサインをもらってきてくれました。

藤間の娘である亜美子(あみこ)が小野の防衛戦に興味津々だったことを思い出した藤間は、ネットオークションで何とかチケットを競り落として、試合を娘と二人で観に行きました。結果は挑戦者の判定勝ちで、小野はチャンピオンから陥落してしまいました。そして試合が終わってしばらく後に、藤間は妻と離婚しています。

もしもあの時小野が防衛に成功していたら父の人生にも変化があったのだろうかと、成長した亜美子は考えるばかりです。

第3章: 新たな出会い

美容院で働いている美奈子(みなこ)は、ある時常連客の板橋香澄(いたばしかすみ)から、半年前に恋人と別れて元気がないという弟・学(まなぶ)の相手を頼まれました。電話とメールだけのやり取りでしたが、同い年の27歳で相性もぴったりで、次第に二人は心を通わせていきます。

学は特殊な「事務職」に就いていると言っていましたが、仕事が忙しくなった途端に電話がかかってこなくなりました。美奈子が学のことを忘れかけた頃に連絡があり、以前と同じように自分の身の回りに起きたことを静かに話してくれました。

第4章: ボクシングと人生

いつものように1ヶ月以上学からの電話が途絶えた頃、香澄が店まで訪ねてきました。変わり者の弟を詫びつつ、美奈子を自宅に招待しました。香澄の自宅は高級マンションで、夫は出張中のため居ませんでした。

リビングのテレビではボクシングの世界タイトル戦が放送されていて、格闘技に疎い美奈子でさえも思わず引き込まれるほどの熱戦でした。新チャンピオンがウィンストン小野に決まった瞬間に、香澄は美奈子に意外な事実を告げました。

ウィンストン小野のリングネームは香澄の夫が考えたこと、彼女の旧姓が小野であること、学の言う事務職はボクシングジムの「ジム」と掛けていることでした。テレビ画面の向こうでヒーローインタビューを受けていた学は、「次の挑戦は、ある女性に会うことです」と恥ずかしそうに答えています。

学にはこれからテレビ出演のオファーが舞い込んで大忙しになるため、当分の間は電話をかけることができないでしょう。

第5章: 再試合とその後

織田美緒(おだみお)が初めてウィンストン小野を見たのは、保育園に入ったばかりの頃で、場所は仙台市内のマンションでした。当時、小野とお付き合いを始めたばかりの美奈子は、観光旅行で宮城県を訪れた際に学生時代の友人である美緒の母と会っていました。

世界チャンピオンの来訪に興奮した美緒のパンチを、大きな身体でニコニコ笑いながら受け止めてくれたことは、10年の時が流れて高校生になった今でも忘れることができません。

小野が敗戦してチャンピオンベルトを失ったのは、美緒たちが住んでいるマンションを訪れてから2ヶ月後のことです。それ以降スランプに陥って忘れられていた小野が、再び世界チャンピオンに挑戦するという噂がスポーツニュースで広まります。

今度横浜アリーナで開催される小野の再試合のチケットが1枚余っているため、美緒はクラスメートの藤間亜美子を誘ってみました。亜美子は10年前に小野が防衛に失敗した試合を、父親と一緒に観戦したことを覚えています。

10年ぶりに小野を見たい気持ちはありましたが、亜美子は久留米和人(くるめかずと)と一緒に行くことを美緒に勧めました。合唱コンクールの練習中にひとりだけ音程が外れてしまう男子生徒に対して、担任の先生は「本番は口パクでいい」と言いました。

そのデリカシーのない発言に対して、真っ向から反論したのが久留米でした。「まだ諦めるのは早い」という久留米の言葉を、美緒と亜美子は36歳になっても闘い続ける小野の姿と重ね合わせていました。

46歳になった小野学は現役を引退し、自らのジムを開設して若手の育成に力を注いでいました。今日は妻・美奈子と共に、人気の漫才師がMCのテレビ番組に出演しています。

愛人と共に出奔した母、親戚をたらい回しにされた少年時代、喧嘩に明け暮れた青年期。破天荒な半生を送ってきた小野でしたが、姉・香澄と妻への愛は変わりません。

スタジオでは、数あるウィンストン小野の名場面の中でも、9年前の最終戦の映像が流れています。小野の左フックによってチャンピオンがダウンしたのと、最終12ラウンドの終了ゴングが鳴ったのはほぼ同時でした。

一度は小野にベルトが贈与されましたが、チャンピオン側の抗議によって勝敗は覆されました。リングアナウンサーや解説者ばかりではなく、日本中の観戦者が納得いかなかったのは当然でしょう。

疑惑の判定を振り返った小野は、精神的にも肉体的にも疲れ果てていたことを明かし、「どっちでもいい」と静かに答えます。当時のことを思い出すと今でも興奮する司会者は、自らの高校時代のエピソードを話し出しました。

音痴なため合唱コンクールの時に先生に「口パクでいい」と言われたこと、同級生と一緒に合唱の前に漫才をやったこと、その時のネタが受けたことがきっかけで今に至ること。他の出演者は「その話、長いの?」と困惑して聞きましたが、小野と美奈子は楽しそうに顔を見合わせて笑うのでした。

アイネクライネナハトムジーク(伊坂幸太郎)の感想・レビュー

『アイネクライネナハトムジーク』は、伊坂幸太郎による連作短編集で、多くの登場人物たちの運命が巧妙に絡み合っています。この物語は、藤間和夫が妻からの別れのメールを受け取るところから始まり、彼の職場でのトラブルや、同僚の佐藤拓也がその影響で街頭アンケートをやり直す展開が描かれます。佐藤はアンケートを通じて出会った女性と付き合い始め、藤間の妻への感謝を密かに抱きます。

物語が進むにつれ、精神的に疲れた藤間が有給休暇を消化し、職場に戻るエピソードがあります。藤間を励ますために、佐藤はウィンストン小野のサインを手に入れてきます。藤間は娘の亜美子と共に小野の試合を観戦し、その後、妻との離婚を迎えます。もし小野が防衛に成功していたら、藤間の人生も変わっていたのではないかと亜美子は考えます。

一方、美容師の美奈子は、常連客の板橋香澄から、弟・学の相手を頼まれます。美奈子と学は電話やメールで心を通わせますが、学の仕事が忙しくなると連絡が途絶えます。久しぶりに連絡が来た時、学は以前と変わらず静かに話すだけです。香澄は美奈子に、学の仕事がボクシングジムの「ジム」であることを教えます。

物語のクライマックスでは、ウィンストン小野が再び世界チャンピオンに挑戦する噂が広がります。織田美緒は、保育園の頃に出会った小野のことを思い出し、クラスメートの藤間亜美子を再試合に誘います。亜美子は、久留米和人と一緒に行くことを提案します。

物語の終盤、小野は46歳になり現役を引退し、自らのジムを開設して若手の育成に力を注いでいます。妻の美奈子と共にテレビ番組に出演し、過去の栄光や挫折を振り返ります。小野の名場面や、疑惑の判定について語り合うシーンは、感動的でありながらも現実的です。

『アイネクライネナハトムジーク』は、人間関係の複雑さや運命の皮肉を描きながらも、希望を感じさせる作品です。伊坂幸太郎の巧みなストーリーテリングと、登場人物たちのリアルな感情が読者を引き込む、素晴らしい短編集です。

まとめ:アイネクライネナハトムジーク(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  1. 藤間和夫の妻がメールを残して去る
  2. 藤間が感情を爆発させて会社のサーバーを壊す
  3. 後輩の佐藤拓也がアンケートデータを取り直す
  4. 佐藤が交通整理のアルバイトをする女性と付き合う
  5. 藤間が有給休暇を消化して職場に復帰する
  6. 佐藤がウィンストン小野のサインを藤間に渡す
  7. 藤間と娘が小野の試合を観戦し、妻と離婚する
  8. 美奈子が香澄の弟・学と電話でやり取りする
  9. 香澄が美奈子に学の仕事の真実を教える
  10. 小野が再び世界チャンピオンに挑戦する噂が広まる