クリスマスを探偵と(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

「クリスマスを探偵と」は、伊坂幸太郎の巧みな筆致で描かれたミステリー小説です。

本作品は、クリスマスイブのドイツ・ローテンブルクを舞台に、探偵カール・シュミットが浮気調査を行う中で繰り広げられる意外な展開が魅力です。

この記事では、「クリスマスを探偵と」のあらすじとネタバレを詳細に紹介します。物語の核心に迫る内容を含むため、これから読む方はご注意ください。

クリスマスの温かな雰囲気とスリリングな展開が融合した本作を、ぜひ最後までお楽しみください。

この記事のポイント
  • クリスマスイブのドイツ・ローテンブルクが舞台の設定
  • 探偵カール・シュミットの浮気調査の経緯
  • カールの少年時代のクリスマスの思い出
  • サンドラが語る奇想天外な自説
  • カールの父親の真の目的とサンタクロースの正体

クリスマスを探偵と(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

ローテンブルクは、ドイツの南部にあるバイエルン州の小さな都市です。赤い切妻屋根の小さな家がたくさん並んでいて、まるで童話の世界のような美しい街並みです。午後4時を過ぎると、空はどんどん暗くなり、街灯が路上を照らし始めます。普段ならこの時間帯は多くの人で賑わう大通りも、クリスマスイブの今日は家に帰る人ばかりで、ほとんど人がいません。そんな特別な日に、探偵のカール・シュミットは浮気の証拠を掴むために、50歳前後と思われる男性を尾行していました。

カールが尾行している男性は、レストランや花屋が集まる中央広場を抜け、細い路地を歩いて高級住宅街へ向かっていきます。男性の密会相手は、カールにも見覚えがある人物で、金の取引や美術品の購入で成功を収めた投資家のハンス・ミュラーです。カールは尾行初日で浮気現場にたどり着くことができたので、今日はこれで十分だと考えました。少し休憩するために、カールは川沿いにある公園のベンチに腰を下ろしました。

公園内には、ダッフルコートを着た若い男性が1人いるだけでした。彼はベンチに腰掛けて、分厚い本を熱心に読んでいました。カールが「隣に座ってもいいですか?」と尋ねると、彼は「どうぞ」と答え、自分をサンドラとだけ名乗りました。サンドラは、大勢であちこちを回って仕事をしていて、今は休憩中だと言います。カールは不思議な親近感を感じ、二人はしばらく世間話を交わしました。その後、カールは少年時代のクリスマスの思い出をサンドラに話し始めました。

カールの実家は、ローテンブルクの小さな画材屋でした。家は貧しく、カールは1年に1度だけ欲しいものを父親を通じてサンタクロースに頼んでいました。カールは15歳になるまで、サンタクロースの存在を信じていました。15歳のクリスマスに、カールはオフロード用の高価な自転車をお願いしました。自転車が届いた次の日の朝、母親が祖母から受け継いだ大切な指輪が無くなってしまい、カールは全てを察しました。その後、指輪が無くなったことで両親は頻繁に喧嘩をするようになり、カールは家を飛び出しました。

カールの昔話を聞いていたサンドラは、突然奇想天外な自説を話し始めました。「カールさんのお父さんが外出から帰ってきた後についていた長い髪の毛は、浮気相手の女性のものではなく、トナカイの毛なんですよ」と言います。「そして、サッカーチームの監督ではなく、トナカイの訓練師なんです。無くなった指輪は、子供へのプレゼントだったんですよ」と続けました。カールはその話を信じることができませんでした。なぜなら、カールが今夜尾行していたのは、自分の父親だったからです。

カールは10代で家を飛び出し、それ以来実家とは音信不通でしたが、最近母親から電話を受けました。母親は、ここ2ヶ月ほど父親の外出が増え、帰宅も遅くなり、香水の匂いを付けて帰ってくると話していました。カールは、肉親の依頼として無報酬でこの調査を引き受け、先ほど父がハンス・ミュラーの家に入るのを見届けたのです。

サンドラは立ち上がり、投資家の大きなお屋敷を眺めながら真相を明かしました。「カールさんのお父さんがあの家に入ったのは、大切な指輪を取り戻すためです。ここ2ヶ月ほど秘密の外出が増えたのは、現在の指輪の持ち主である女性投資家の自宅を調べるために業者を雇っていたからです。そして、彼女と直接交渉していたために香水の匂いが付いてしまったのです」と説明しました。

やがて、カールの父は赤と白の衣装を身に付け、大きな袋を抱えて邸宅から飛び出してきました。恐らく、あの格好のままで妻に指輪を手渡すつもりなのでしょう。サンドラはカールに「実家に帰ってみてください」と薦めました。サンドラという名前も「サンドラ・クロス」から取った偽名であり、彼がサンタクロースだったことにカールは驚きを感じました。カールは、つかの間の休息を取っていたサンタクロースに出会ったことを、誰かに話してみたくて仕方がありませんでした。

クリスマスを探偵と(伊坂幸太郎)の感想・レビュー

「クリスマスを探偵と」を読んで、物語の展開にとても引き込まれました。ドイツの南部にあるローテンブルクという美しい街を舞台に、クリスマスイブの特別な雰囲気が見事に描かれています。探偵のカール・シュミットが浮気調査を行うという導入部分から、物語は一気に進展します。

カールが尾行する相手は投資家のハンス・ミュラーです。尾行中に出会うサンドラという若い男性とのやり取りが非常に興味深いです。サンドラは親しみやすいキャラクターで、カールとの会話が自然に進んでいきます。サンドラの奇妙な話が始まると、物語は一層面白くなります。

カールが語る少年時代のクリスマスの思い出は、読者に温かな感情を呼び起こします。貧しい画材屋で育ったカールがサンタクロースに願いを託していたことや、15歳で自転車をお願いしたことが心に残ります。その後の両親の喧嘩や家を飛び出したエピソードが、カールの人間性を深く理解させてくれます。

サンドラが語る奇想天外な自説には驚かされました。カールの父親がトナカイの毛を持ち帰ったり、トナカイの訓練師だったりという話は、最初は信じがたいものです。しかし、カールの父親が本当にサンタクロースだったという真実が明かされると、物語は感動的な結末に向かいます。

カールの父親がハンス・ミュラーの家に入ったのは、失った指輪を取り戻すためであったことがわかります。父親が香水の匂いを付けて帰ってきたのも、女性投資家との交渉の結果でした。サンドラが実はサンタクロースだったことが明かされると、カールの心にも変化が生まれます。

この作品は、クリスマスの特別な日に家族の絆や真実の愛を再確認させてくれる素晴らしい物語です。伊坂幸太郎の巧みなストーリーテリングと、温かい描写が心に響きました。読者に深い感動とともに、クリスマスの魔法を感じさせてくれる一冊です。

まとめ:クリスマスを探偵と(伊坂幸太郎)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • ローテンブルクはバイエルン州の小さな都市である
  • クリスマスイブの街は家路を急ぐ人々で静かである
  • 探偵カール・シュミットは浮気調査をしている
  • カールが尾行しているのは投資家ハンス・ミュラーである
  • カールは公園のベンチでサンドラという若い男性と出会う
  • カールはサンドラに少年時代のクリスマスの思い出を語る
  • カールの父親が浮気ではなくトナカイに関わっているとサンドラは言う
  • カールの父親は指輪を取り戻すために行動している
  • 父親の秘密の外出は指輪の持ち主を調べるためである
  • サンドラの正体はサンタクロースであり、カールに帰宅を勧める