東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」の超あらすじ(ネタバレあり)

「ある閉ざされた雪の山荘で」は、東野圭吾によるミステリー小説で、舞台は雪に閉ざされた山荘を舞台に繰り広げられる劇団員たちの心理戦を描いています。

本作は、一見普通の舞台稽古として始まりますが、参加者たちが一人また一人と謎の失踪を遂げることにより、徐々にその裏に隠された暗い真実が明らかになっていきます。

この記事では、「ある閉ざされた雪の山荘で」のあらすじを詳細に、そしてネタバレ含めてご紹介します。劇団「水滸」のオーディションに合格した久我和幸が受け取ったのは、乗鞍高原のペンションで開催される舞台稽古への招待状です。

集まった他の6人は全員が劇団員で、その中には久我が想いを寄せている女優もいます。登場人物がひとりずつ消えていくサスペンスタッチのシナリオの裏には、思わぬ真実が隠されているのでした。

この記事のポイント
  • 雪に閉ざされた山荘で起こる劇団員の失踪事件の概要とその謎
  • メインキャラクターたちの背景と関係性
  • 事件に隠された真実とどんでん返しの結末
  • 作品全体のテーマとその見どころ

東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章: 山荘の舞台稽古への招待

久我和幸は舞台女優である元村由梨江に心奪われていました。元村由梨江は劇団「水滸」に所属しており、その劇団のオーディションが開催されることを知った久我和幸は、彼女に近づくために応募を決意します。オーディションは厳しい競争の末、久我和幸を含む7人が合格し、乗鞍高原にあるペンション「四季」での舞台稽古への参加が決定されます。

合格者たちはペンション「四季」に集められ、3泊4日の舞台稽古に臨むことになります。この稽古は、劇団「水滸」の新作公演の準備の一環として計画されていました。ペンションは静かな山間に位置し、周囲は雪に覆われた美しい自然に囲まれています。久我和幸はこの美しい景色とともに、劇団員としての新たな一歩を踏み出すことにわくわくしていました。

到着した初日、久我和幸は他の合格者たちと共にペンションのラウンジで歓迎会が開かれます。その中には元村由梨江の他に、笠原温子、本多雄一、雨宮京介などが含まれていました。特に本多雄一は劇団内で実力派俳優として知られ、そのカリスマに久我和幸は圧倒されます。歓迎会では、彼らとの交流を通じて、久我和幸は演劇への情熱を新たにし、これからの稽古に対する期待を高めます。

しかし、久我和幸が一番気になっていたのは、オーディション会場で一際の存在感を放っていた麻倉雅美がこの場にいないことでした。麻倉雅美について他の劇団員に尋ねても、誰も明確な答えを与えることはありませんでした。これが久我和幸の心に小さな疑問を残すこととなります。

久我和幸はこの美しい山荘での稽古が、ただの舞台準備以上の何かをもたらす予感に心を躍らせます。しかし同時に、麻倉雅美の不在という謎が、彼の心のどこかに引っかかっていました。この疑問が後にどのような展開を迎えるのか、その時点では誰にも予測することはできませんでした。

第2章: 消えた笠原温子の謎

舞台稽古2日目の朝、久我和幸と他の劇団員たちは午前7時にラウンジに集合します。しかし、女性陣のまとめ役としてリーダーシップを発揮していた笠原温子の姿だけが見当たりません。彼女はペンション内でも明るく活気を振りまく存在であり、いないことは異様な雰囲気を生み出します。

久我和幸と他の5人は、2階の遊戯室で一枚の紙が床に落ちているのを発見します。そこには「笠原温子が遊戯室で何者かに絞殺された」という設定が書かれており、これを元に稽古を続けるように指示がされています。これは一見、演出家のサプライズのようにも思えましたが、温子が実際に姿を消していることに劇団員たちは動揺を隠せません。久我和幸はこの状況をどう受け止めるべきか迷いつつも、稽古の一部と割り切ることにします。

他の劇団員たちもそれぞれが「犯人役」として疑わしい者を探り合い、舞台の設定と現実の境界が曖昧になる中で、稽古の雰囲気は緊迫していきます。笠原温子は、劇団員としての情熱やその手腕を評価されていた反面、時に周囲に強い圧力をかけることもありました。そのため、彼女の失踪は演技の一環と考えつつも、誰が「犯人役」として彼女を「絞殺」したのか、久我和幸はメンバーの中に疑惑を抱き始めます。

劇団「水滸」の中で抜きんでた演技力を持つ本多雄一は、稽古をまとめる役割を担いながら久我和幸にアドバイスを与えます。しかし、本多雄一が稽古後の飲み会で酒を奢ってくれたことを考えると、彼も「犯人役」ではないのかと疑念が湧いてきます。久我和幸は笠原温子の失踪が単なる舞台設定に過ぎないのか、実際の事件なのかを見極めようとしますが、その答えは依然として不明のままです。

また、久我和幸は麻倉雅美がオーディションに現れながらも参加していないことが気になり、劇団員に尋ねてみます。しかし本多雄一もその理由については口を閉ざし、他の劇団員も何も語りませんでした。麻倉雅美は舞台上で並外れた存在感を放っていたにもかかわらず、なぜ参加していないのか。その疑問は深まり、劇団内の雰囲気も不穏さを増していきます。こうして、久我和幸たちの疑念を残したまま、稽古の2日目は幕を閉じることとなりました。

第3章: 遊戯室の隣での元村由梨江の失踪

3日目の朝、劇団員たちはいつもより早く1階のラウンジに集合しました。しかし、そこに元村由梨江の姿が見当たりません。2日目の稽古で笠原温子が「絞殺された」という設定の演技を演じる中、久我和幸は密かに元村由梨江への想いを募らせ、彼女の安全を願っていました。しかし、彼女がいつまでたっても姿を現さないことで、劇団員たちに緊張感が走ります。

元村由梨江に割り当てられた部屋は、笠原温子の「殺害現場」である遊戯室の隣に位置していました。残りの5人は、彼女の部屋に向かい様子を見に行きます。そこには一枚の紙が残されており、「元村由梨江は鈍器で撲殺された」という設定が記されていました。部屋の中で犯行に使われたと見られる花瓶は見当たりませんでしたが、山荘の裏庭で割れた花瓶が発見されます。花瓶には本物の血が付着していたため、劇団員たちはこれが本当に演技の一部なのか、それとも現実の事件なのかで騒然としました。

久我和幸は元村由梨江の父が裕福な資産家であり、劇団「水滸」の活動を全面的に支援していることを知り、元村由梨江のオーディション合格が彼女の父親への配慮である可能性が高いと考えます。彼女の存在は劇団内で特別なものだったことから、合格は単なる実力によるものではないかもしれません。

さらに、元村由梨江と笠原温子、そしてもう一人が、麻倉雅美がスキー事故に遭う直前に彼女と面会していた可能性も出てきました。久我和幸は、この3人と麻倉雅美との接点が今回の事件の鍵を握ると考え、そのもう一人が誰なのかを突き止めることを決意します。犯人が再び動く前に次の「犯行」を食い止めようと必死になりますが、手がかりが見つからないまま3日目は過ぎ、最終日の朝が近づいてきます。

第4章: 雪の山荘で雨宮京介が姿を消す

4日目の朝、劇団員たちはまたラウンジに集まりましたが、この日は雨宮京介の姿が見当たりません。雨宮は、もともと麻倉雅美が選ばれるはずだったロンドンへの演劇留学の座を得ていた俳優であり、これまでの行動でも目立った存在でした。雨宮に割り当てられていた部屋に行ってみると、そこにはまたしても一枚の紙が残されていました。今回は「雨宮京介は絞殺された」という設定が記されています。久我和幸と他の劇団員たちは、雨宮がいるはずの部屋を隅々まで探しましたが、彼の姿は見当たりません。

紙に記された設定を確認しながら、久我和幸は次の手がかりを探ります。雨宮の部屋から遊戯室、そして笠原温子の「殺害現場」とされる場所までをつぶさに調査していくと、久我和幸は遊戯室と元村由梨江の部屋の間に、不自然な隙間を見つけました。彼はこの隙間こそが今回の首謀者が隠れていた場所だと直感します。

隙間から現れたのは、スキー事故で車椅子に乗る麻倉雅美でした。彼女は演劇団「水滸」にいた時に信頼していた本多雄一に依頼してこの計画を練り、復讐を遂行するために劇団員たちの前に姿を現しました。例のスキー事故は、実はオーディションで落選したことに絶望した麻倉が突発的に起こした自殺未遂であり、事故後に由梨江たち3人への復讐を計画していたのです。

本多雄一は麻倉からの依頼を受け、密かに劇団のメンバーである笠原温子、元村由梨江、そして雨宮京介に事情を説明し、3人を隣のペンションに避難させました。そして麻倉と共に久我和幸たち残りのメンバーに向けて、この山荘でひと芝居を打つことにしたのです。

久我和幸が隠れ家にいる麻倉雅美を見つけ出したとき、彼女は復讐心に燃えていた自分を反省し、殺人の道を歩むことをやめる決意をしました。麻倉は3人と再会を果たし、劇団「水滸」の仲間たちに自分の分まで芝居を続けることを頼み、かつての友情を再確認するのでした。

第5章: 麻倉雅美の再出発

麻倉雅美は、復讐のための計画が久我和幸によって暴かれた後、劇団「水滸」の元村由梨江、笠原温子、雨宮京介と再会します。スキー事故で車椅子生活を強いられている麻倉ですが、彼女はもはや復讐への怒りに縛られていません。むしろ、劇団員たちが彼女の計画に協力し、殺人という破滅的な手段を使わずに思いを遂げたことに感謝しています。

ペンション「四季」に避難していた由梨江、温子、雨宮は麻倉雅美の姿を見て驚きました。彼らもかつての仲間を再び見つけた喜びと安堵の表情を浮かべます。麻倉は、劇団の仲間たちが自分を受け入れ、破壊的な復讐を思いとどまらせてくれたことに感謝し、自らも劇団「水滸」の一員として役割を果たすべく、もう一度一緒に芝居をしたいと告げます。

劇団「水滸」の一員としての再出発を願う麻倉雅美は、今度こそ劇団の舞台に戻りたいという思いを持っています。彼女は久我和幸に、「芝居を続けるという情熱は人を変えることができる」と語り、彼を激励します。そして、今後は劇団のメンバーと共に芝居の道を歩むことを心に誓います。

久我和幸も、麻倉の再出発を支えるために一層の努力を重ねることを決意します。彼は劇団「水滸」で演技力を高め、信頼を築きながら、今後のステージで麻倉雅美と共演することを夢見ます。舞台は、かつて復讐の計画で暗くなっていた山荘から、新しい出発へと転換し、劇団「水滸」の仲間たちは新たな一歩を踏み出します。

この物語の結末は、劇団員たちの絆と許しの力を示すものです。かつて破壊的な感情に支配されていた麻倉雅美も、仲間たちと共に歩むことができ、舞台という新しい希望の光を見つけることができました。

東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」の感想・レビュー

「ある閉ざされた雪の山荘で」は、東野圭吾氏による心理ミステリーの傑作であり、読者を緊張感あふれるストーリーの渦中に引き込む力があります。この物語の舞台は、孤立した雪の山荘で、ここが劇団「水滸」のメンバーたちによる密室劇の場となります。

物語の開始は、主人公である久我和幸が劇団のオーディションに合格し、舞台稽古のために雪山のペンションに集められる場面からです。ここでの描写が非常に鮮やかで、読者はその美しいが孤独な風景を目の前にしているかのように感じます。久我和幸の心情が丁寧に描かれていて、彼の内面の葛藤や劇団員への思いがリアルに感じられます。

ストーリーが進むにつれて、一人また一人と劇団員が「殺害された」という設定のもと失踪していくことで、物語はクライマックスへと高まります。この部分での緊張感の構築は見事であり、読者は次に何が起こるのかという予測がつかない状況に心を奪われます。

特に印象的なのは、劇団員たちの中で次第に疑心暗鬼が生じ、それぞれが自らの安全を確保しようとする様子です。これにより、人間の本性や極限状態での心理が巧みに描かれています。久我和幸の推理と行動が物語を牽引し、読者にとっても彼の視点が事件解明への鍵となります。

麻倉雅美が事件の真の黒幕であることが明かされるクライマックスは、驚愕とともに深い感慨をもたらします。彼女の動機と計画の背後にある心情が徐々に明らかになる過程は、感情移入を強いられるものがあります。最終的に、事件が解決し、劇団員たちが和解に至る結末は、カタルシスを提供し、読後感も清々しいものがあります。

全体を通じて、東野圭吾氏の筆致が鮮明で、登場人物の心理描写が非常に細やかであるため、登場人物たちの心の動きが手に取るように理解できます。また、限定された舞台設定の中で、緻密に計算されたプロットが展開する技術は、彼の作品ならではの魅力です。読者としては、真実を解き明かす旅は緊迫感に満ち、最後まで目が離せませんでした。

まとめ:東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 劇団「水滸」のオーディションに合格した久我和幸が主人公
  • 乗鞍高原のペンション「四季」で開かれる舞台稽古が舞台
  • 参加者は久我を含む7人の劇団員
  • 稽古中に劇団員が一人ずつ謎の失踪を遂げる
  • 笠原温子が最初に「絞殺された」とされる
  • 次に元村由梨江が「鈍器で撲殺された」とされる
  • 事件の裏には復讐という深い動機が隠されている
  • 久我和幸が真相に迫る過程で劇団内の秘密が明らかに
  • 麻倉雅美が計画の首謀者であったことが判明
  • 最終的に事件は解決し、劇団員たちが和解する