東野圭吾「殺人現場は雲の上」の超あらすじ(ネタバレあり)

「殺人現場は雲の上」は、日本のベストセラー作家東野圭吾による興味深いミステリーノベルです。

この物語は、新日本航空のフライトアテンダントである早瀬英子と藤真美子が主人公で、彼女たちは鹿児島での一夜を背景に謎を解き明かしていきます。ホテルでのリラックスした夜が突如として殺人事件に巻き込まれる展開となり、読者は緊迫感あふれるストーリーの中で、彼女たちが展開する鋭い推理に引き込まれます。

本記事では、この小説の超詳細なあらすじ(ネタバレ含む)をお届けします。興味のある方は、ぜひこの謎多き物語の深層にご一緒に迫ってみましょう。

この記事のポイント
  • 物語の概要とフライトアテンダントの英子と真美子が関与する事件の発端。
  • 本間夫人の死と警察の捜査における容疑者のアリバイや動機。
  • 二人が探偵として事件を解決するための鋭い推理過程と容疑者の裏の事情。
  • 本間と田辺秀一の共犯関係が明るみに出る真実の告白とその結末。

東野圭吾「殺人現場は雲の上」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章: 鹿児島での休息

早瀬英子と藤真美子は、新日本航空のフライトアテンダントとして活躍しています。彼女たちは鹿児島市内にあるKホテルに滞在しており、その日の勤務を終えてリラックスする時間を過ごしています。ホテルは空港からタクシーで約10分の位置にあり、周辺は静かで落ち着いた環境です。

9月2日の夜、ホテル内のスナックバーで二人はビールを豪快に飲み干しています。エー子とビー子という愛称で親しまれる彼女たちは、フライトアテンダントとしての共通の経験から深い友情を育んでおり、仕事が終わった後も一緒に時間を過ごすことが多いです。

その日、彼女たちが飲んでいたスナックバーに心理学を教える助教授、本間が現れます。本間はその日、彼女たちが乗務していた飛行機内で腹痛騒ぎを起こしており、その顔と名前は既にエー子たちに記憶されていました。本間は通りすがりのウェイターに声をかけ、妻が滞在している客室にサンドイッチを届けさせます。

気さくな本間との会話は盛り上がり、彼はエー子たちのテーブルに合流します。ビールを片手にした楽しい話は夜が更けるまで続き、午前1時を過ぎた頃にようやく解散となります。その直後、ホテルの廊下から大きな叫び声が響きますが、この時点ではまだ、その夜が事件の夜であるとは誰も思いもしませんでした。

第2章: 本間夫人の死と警察の捜査

早瀬英子と藤真美子が自室に引き上げた後、廊下に響いた叫び声は本間のものでした。彼の妻が泊まっていた部屋は、エー子たちが宿泊しているツインルームから4つ離れた場所にありました。エー子が叫び声に駆け付けた時、本間の妻は既に息が絶えており、本間はショックのあまり取り乱しています。エー子は急いでフロントに電話をかけ、地元警察を呼びました。

事件を担当するのは、鹿児島県警の望月刑事です。望月刑事の調査によると、本間の妻の死因は窒息死で、胃の内容物から未消化のサンドイッチが残っていたことが判明しました。これにより、死亡推定時刻は午後9時半から10時の間と推測されます。

Kホテルの全客室はオートロックシステムを備えているため、簡単に外部の者が侵入することはできません。そのため、警察は内部にいた者、特に被害者の夫である本間に疑いの目を向けます。しかし、本間のアリバイはエー子とビー子の証言によって裏付けられます。本間は9時前にエー子たちの席にやってきてから、午前1時まで1度も席を立っていませんでした。

さらに、ビー子は9時過ぎにトイレに行った際、ウェイターからサンドイッチを受け取る本間の妻の姿を見ています。このため、彼女の証言で本間のアリバイは成立し、警察の捜査は難航します。しかし、疑いは晴れないまま、捜査は続けられることとなります。

第3章: 素人探偵の推理と本間夫人の甥

次の日の9月3日、早瀬英子と藤真美子が鹿児島のホテルのレストランで遅めの朝食を取っていると、本間夫人の甥である田辺秀一が彼女たちに声をかけました。秀一は華奢で小柄な男性であり、叔母の死に動揺している様子がうかがえました。

警察は相変わらずホテルの自動ロックシステムに着目し、内部の犯行と考えていました。そのため、被害者と顔見知りの人物が容疑者として浮上します。秀一も警察の取り調べを受けた一人であり、彼には犯行の動機がありました。

秀一は父親が亡くなった際に多額の遺産を相続し、その管理を叔母である本間夫人に任せていました。しかし、彼女は株式投資にのめり込み、秀一の遺産はみるみる減っていきます。彼だけでなく、本間も金遣いの荒い妻に日頃から頭を抱えていました。

ここでエー子とビー子は、秀一が本間夫人を殺害した犯人であり、犯行当夜にウィッグとサングラスで叔母に変装し、サンドイッチをウェイターから受け取っていたのではないかと推理します。つまり、9時過ぎにビー子が見たのは、変装した秀一だった可能性が高いという結論です。

この推理により、秀一のアリバイは崩れましたが、物的証拠がないため、警察の望月刑事はエー子たちの考えに耳を傾けません。しかし、エー子とビー子は諦めず、本間と秀一が共犯であると執拗に繰り返し主張し続けます。

第4章: 犯行を明らかにするエー子とビー子の推理

9月4日、早瀬英子と藤真美子は鹿児島空港で出発の準備に追われていました。ディスパッチルームでのパイロットとの打ち合わせ、客席の点検整備、乗務員同士の身だしなみチェックを行い、忙しく動き回っています。

その間も、エー子とビー子は一度も揺るがない推理を持っていました。本間と田辺秀一の共犯説です。ふたりは望月刑事に何度も自説を伝え、サンドイッチの出所を調べるよう促していました。

望月は執拗な説得に折れ、本間が妻に食べさせたサンドイッチの調査を始めます。鹿児島市内のサンドイッチ屋を探し回り、ついに本間がその日利用した店を特定します。これにより、本間の行動が不審であることが次第に明らかになってきました。

搭乗時刻が近づくにつれて、エー子たちの仕事はさらに忙しくなりました。本間も東京行きのフライトに乗る予定で、出発まであと15分というタイミングで搭乗口に現れます。白い歯を見せながら余裕の笑顔を浮かべる本間に、エー子は「お客様が搭乗される機は、こちらではございません」と告げます。

その瞬間、彼女は滑走路に猛スピードで侵入してきた1台のパトカーを見ました。運転しているのは望月で、後部座席には若い刑事とともに田辺秀一が乗っていました。

エー子は本間に微笑みながら「お客様がご搭乗になられる機は、あちらでございます」とパトカーを指し示しました。本間はその言葉に驚き、窓からパトカーを見つめます。

第5章: 真実の告白と正義の結末

滑走路に到着した望月と若い刑事は、本間を取り囲み、彼に「田辺秀一が全てを話した」と告げます。本間は一瞬愕然とした表情を見せますが、すぐに自分が罪を逃れられないことを理解し、観念します。

エー子とビー子は、望月たちと一緒に空港の会議室に集まり、田辺と本間の共犯関係がどのように成立したのか、その全貌を解明していきます。田辺は本間の友人であり、仕事で知り合った間柄でした。田辺の妻が本間に対して不倫関係を持ちかけたことで、田辺は自らのプライドを傷つけられます。それに対する復讐心を持った田辺は、妻を本間と共に罠にはめ、犯行計画を企てたのです。

本間の妻へのサンドイッチによる毒殺計画は、田辺の指示で行われました。田辺はその後、妻に直接毒を盛り、彼女が意識を失ったところで、本間の手を使い「事故」と偽装する計画を本間に強制したのです。

しかし、その複雑な犯罪計画は、エー子とビー子の細かい観察眼により明らかにされます。パトカーに収容された本間は、「田辺と一緒に彼の妻を殺す計画を強制された」と告白し、田辺の冷酷な策略が完全に明るみに出たのでした。

事件が解決した後、望月はエー子とビー子に感謝の意を示します。「君たちの素晴らしい推理のおかげで、真実にたどり着くことができた」と彼は語り、ふたりに深い信頼と尊敬の念を抱きます。

事件の真相を暴いたエー子とビー子は、その後のフライトで再びキャビンアテンダントとしての職務に戻りながらも、航空機内で正義を実現する自らの使命に誇りを感じています。

東野圭吾「殺人現場は雲の上」の感想・レビュー

「殺人現場は雲の上」は東野圭吾による鮮烈なミステリー作品で、航空業界を背景に展開するストーリーが魅力的です。本作品の中で、主人公である早瀬英子と藤真美子は、その外見とは裏腹に鋭い洞察力と推理能力を持ち合わせており、読者を緊張感あふれる物語へと引き込みます。

このノベルの舞台は、鹿児島のKホテルで、一見平和な夜が突如として殺人事件によって破られる様子は、東野圭吾特有の緻密なプロット展開を感じさせます。事件の解明に向けて、英子と美子が繰り広げる推理の応酬は、まるで実際の刑事たちが捜査を進めるかのようなリアリティを持って描かれています。

また、助教授である本間とその妻、甥である田辺秀一の間に渦巻く家庭内の複雑な人間関係が事件の背後にある動機と密接に絡み合っている点も見逃せません。これらのキャラクターが持つ秘密や心理が少しずつ明かされる過程は、読者にとって驚きとともに深い興味を引き起こす要素となっています。

感情的な部分においても、英子と美子が事件解決後に感じる正義感や使命感に対する満足感が、彼女たちのキャラクターの成長を象徴しており、単なるミステリー解決以上の感動を与えてくれます。

全体を通して、「殺人現場は雲の上」は、東野圭吾の作品群の中でも特に心理的な深みとテーマ性の強い作品です。それぞれのキャラクターが抱える心の闇や葛藤が絡み合いながら、最後には思わぬ形で真実が明らかになったことで、いい読後感がありました。

まとめ:東野圭吾「殺人現場は雲の上」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 物語は新日本航空のフライトアテンダント、早瀬英子と藤真美子が主役
  • 二人は鹿児島のKホテルに宿泊中、予期せぬ殺人事件に巻き込まれる
  • 事件の被害者は本間の妻で、死因は窒息死と判明
  • 本間の妻は夕食前に未消化のサンドイッチを食べていた
  • 英子と美子は愛称「エー子」と「ビー子」として知られ、仲が良い
  • 本間のアリバイはエー子と美子の証言により確認される
  • 英子と美子は素人探偵として独自に事件の調査を行う
  • 田辺秀一が本間の妻になりすまし、サンドイッチを受け取った疑惑が浮上
  • 事件の解決はエー子と美子の推理によって進む
  • 最終的に本間と田辺の共犯関係が暴露される