「ヘディングはおもに頭で」の超あらすじ(ネタバレあり)

『ヘディングはおもに頭で』は、大学受験に失敗した松永おんが、新たな道を模索する中で成長していく物語です。

失意の中、友人・治部隆正に誘われて始めたフットサルで、予想外の才能を発見するおん。家族との再会や、亡くなった双子の弟との絆を感じる中で、大学進学を諦め、フットサルや音楽イベントの仕事に専念することを決意します。

彼の迷いと再生の過程が描かれるこの物語は、自己発見と未来への希望に満ちています。

この記事のポイント
  • 主人公・松永おんの大学受験失敗とその後の行動
  • フットサルを通じて新たな才能を発見する経緯
  • 家族との関係や亡くなった双子の弟についてのエピソード
  • おんが大学進学を諦める決意
  • 自己発見と未来への希望が描かれる物語のテーマ

「ヘディングはおもに頭で」の超あらすじ(ネタバレあり)

松永おんは、18歳の高校卒業生で、希望していた国立大学に2度も落ちてしまいました。大学受験の失敗が続いたことで、おんは自分の将来に自信を失い、何をすべきか分からなくなっています。おんの父方のおじが北千住に持っている古いアパートの一室を、月4万円という格安の家賃で借りることになりました。おんの部屋には、受験勉強のために購入したたくさんの参考書が並んでいますが、実際に勉強する時間はほとんどありません。代わりに、おんは漫画を読んだり、インターネットで動画を見たりして過ごすことが多いです。

そんなある日、高校時代の写真部の友人である治部隆正(じぶたかまさ)から電話がかかってきます。治部は、現在イベント会社で働いていて、作家を目指していると話します。おんは、治部から京浜東北線の与野駅で会おうと誘われます。治部と再会したおんは、彼に連れられてフットサルコートに向かいます。フットサルは、5人1チームで行われるサッカーに似たスポーツです。おんは、早生まれのため、クラスメートよりも体力が劣っていて、学校の球技大会ではほとんど活躍できなかったことを思い出します。

最初のゲームでは、予想通りおんは何もできずに終わってしまいます。しかし、4ゲーム目になると、突然何かが変わり始めます。おんは、プレーヤーとボールの動きが鮮明に見えるようになり、その中心には常にボールがあることに気付きます。おんは、自分の中で何かがはっきりと見えるようになり、まるで宇宙の秩序を感じるかのような感覚に包まれます。この新しい感覚に導かれるように、おんは走り続け、自然と笑みがこぼれます。これが、おんの新たな挑戦の始まりとなります。

おんは、センター試験の申し込みを済ませ、少しだけ気合いを入れ直しますが、勉強に集中することはできません。おんの生活の中心は、半年ほど前から働いているチェーンの弁当屋のアルバイトです。この仕事は、特に楽しいわけでもなく、単調な作業が続くばかりです。さらに、シフトに入るメンバーが女性ばかりで、おんはその環境に居心地の悪さを感じています。

おんは、自分が何度も同じことを注意されることに気付き、周りの人たちよりも物覚えが悪いと感じています。そんな中、おんはある日、ウィキペディアで「一卵性双生児」の出生率について調べます。おんは、自分に双子の弟がいたことを知っていて、生後1カ月で亡くなったため、顔も名前も覚えていませんが、彼に自分の才能や記憶力が吸い取られたような気がすることがあります。

同じころ、高校の写真部の同窓会が開催され、おんはそこで一つ年下の後輩・広川あかるいと再会します。広川は、彼女の独特な写真スタイルで賞を受賞し、今や注目の的となっています。彼女は自分の枠にとらわれずに活動しており、来年にはイギリスのドーセットに留学する予定です。おんは、彼女の自由で大胆な生き方に衝撃を受け、自分との違いに戸惑いを感じます。

治部隆正は、作家を目指すために足立区の文芸同人誌「まなざし」の会員になりました。ある日、治部はおんを読書会に誘います。読書会の開催場所は、北千住駅の東口にある喫茶店で、テーマはヘミングウェイの「移動祝祭日」です。おんは、事前に中央図書館でこの本を借りて読んでみますが、読書会当日には小学生の感想文のような浅い意見しか言えず、恥ずかしさを感じます。

読書会は2時間ほどで終わり、その後は居酒屋「鳥良」で飲み会が開かれます。おんは、そこで30代と思われる女性・大田さんと隣同士になります。大田さんは、文学に詳しく、話が進むにつれておんに興味を持ち始めます。彼女はおんに顔を近づけて話したり、膝に手を置いたりして親しげに接します。おんは少し戸惑いながらも、これまで出会ったことのないタイプの大田さんと話すのは新鮮で楽しいと感じます。さらに、大田さんから面白い本を教えてもらえることも、おんにとっては大きな収穫です。

夜遅くになり、終電ギリギリでおんは解散します。自宅に戻り、スマートフォンを確認すると、妹から着信がありました。電話をかけ直すと、母親の具合が悪いことを知らされます。おんは、年末には実家に帰って母親の様子を見に行くことを約束します。

年末、おんは実家に帰り、久しぶりに母親と再会します。母親の首筋の皮膚はたるみ、顔にはシワが増え、家の中の整理整頓も行き届いていません。妹からは、母親がメンタル面での問題を抱えていることを聞かされます。妹は、母親が倒れたり入院したりしたら、すぐにまとまったお金が必要になるだろうと心配しています。

家族で日光街道沿いにあるファミリーレストランに行き、母親はハンバーグとケーキを注文します。食欲は旺盛で、母親は楽しそうに食事をします。食事の途中で、母親はおんに、生後1カ月で亡くなった双子の弟に「がく」という名前を考えていたと話します。おんと合わせると「音楽」という意味になることを知り、おんは深い感慨を覚えます。

その場でおんは、大学に進学するのを辞めると母親に宣言します。そして、当面は治部の会社で音楽用アプリのキャンペーンイベントを手伝うことに決めました。

センター試験当日、おんが立っていたのは、試験会場ではなく、個人で予約した原宿のフットサル場でした。おんは、試験を受けることよりも、自分の選んだ道を進むことに決めたのです。フットサルの試合中、おんは敵の位置、相手の動き、自分の足元の感覚など、すべてが一瞬先の未来を示しているように感じます。この感覚を頼りに、おんはボールを蹴り、正確なパスを繰り出します。

おんは、自分が進むべき道をようやく見つけたと感じています。これからの人生で何が起こるかは分かりませんが、おんは自分の未来に向かって一歩一歩進んでいく決意を固めます。フットサル場でのプレーを通じて、おんは新たな自分を発見し、その瞬間に確かな手ごたえを感じました。

「ヘディングはおもに頭で」の感想・レビュー

『ヘディングはおもに頭で』を読んで、松永おんという主人公の成長に心を動かされました。物語の始まりで、おんは大学受験に2度失敗し、人生の進路に迷っている普通の若者です。父方のおじが所有する北千住のアパートに一人暮らしを始めますが、なかなか勉強に身が入らず、漫画やインターネットで時間を過ごす姿がリアルに描かれています。

そんなおんが、高校時代の友人・治部隆正と再会し、彼に誘われてフットサルを始める場面は、物語の大きな転換点です。最初はうまくいかないものの、突然、ボールとプレーヤーの動きが見えるようになる瞬間は、読者としてもその感覚を共感できるように感じました。おんが新しい才能を発見する過程は、彼自身の自己発見の旅として描かれ、非常に印象的です。

また、おんが抱える亡くなった双子の弟への思いや、自分の記憶力や才能のなさに対する不安は、多くの人が共感できるものです。彼がアルバイト先で感じる劣等感や、後輩の広川あかるいが活躍する様子に戸惑う姿もリアルで、読んでいて共感しました。

年末に母親と再会する場面では、家族との絆が深く描かれており、特に母親が亡くなった双子の弟に「がく」という名前を考えていたことを知るシーンは、心に響きます。おんが大学進学を諦め、自分の進むべき道を見つける決意をする姿に、彼の成長と強さを感じました。

最後に、おんがセンター試験当日にフットサル場に立つシーンでは、彼が自分の選んだ道を進む決意を固めたことが明確に描かれています。フットサルという一見地味な場面を通じて、彼の内面の変化が見事に表現されており、読後に大きな満足感を得ました。

『ヘディングはおもに頭で』は、迷いや不安を抱えながらも、自分の道を見つけ成長していく若者の姿を描いた素晴らしい物語です。

まとめ:「ヘディングはおもに頭で」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 松永おんは大学受験に2度失敗する
  • おんは北千住のアパートで一人暮らしを始める
  • 高校時代の友人・治部隆正と再会する
  • 治部の誘いでフットサルを始める
  • フットサルで新たな才能を発見する
  • おんはアルバイトで単調な日々を過ごす
  • 亡くなった双子の弟に対する思いを抱える
  • 母親との再会で家族の絆を再確認する
  • おんは大学進学を諦める決意をする
  • フットサルと音楽イベントの仕事に専念する