「黄金比の縁」の超あらすじ(ネタバレあり)

「黄金比の縁」の物語では、Kエンジニアリングの人事部で新卒採用を担当する〈私〉が中心です。

入社時に起きたトラブルで人事部に異動となり、採用基準を「顔の黄金比率」に設定します。物語は、新卒採用の裏で進む数々の事件と、ある応募者の特異な背景が明らかになる中で、〈私〉がどのように対応していくかを描きます。

詳細なあらすじやネタバレが知りたい方は、ぜひご一読ください。

この記事のポイント
  • 物語の中心人物がKエンジニアリングの人事部で新卒採用を担当する〈私〉
  • 〈私〉が「顔の黄金比率」を採用基準としている
  • 入社時のトラブルが原因で〈私〉が人事部に異動する
  • 採用活動の裏で起こる様々な事件や問題
  • 特異な背景を持つ応募者に関する重要な展開

「黄金比の縁」の超あらすじ(ネタバレあり)

私は大学と大学院で有機化学を学び、十二年前に(株)Kエンジニアリングに入社しました。入社後、私は社内の重要な部門であるプロセス部尿素・アンモニアチームに配属されました。この部門は会社の中でも特に注目されている部署です。

ある日、経済産業省の若手職員に、会社が開発したチャットボット「マドカちゃん」の外見を見せてしまいました。「マドカちゃん」は会社内では人気のあるキャラクターですが、その外見が特定のマンガキャラクターに似ているという理由で、SNSで大きな話題になりました。これが原因で、会社のイメージが悪化しました。

その結果、私は「内部告発」の疑いをかけられ、人事部に異動させられることになりました。以来、私は十年間、人事部で新卒採用の担当をしています。今年も、三月一日の就職活動解禁日がやってきました。

私は同じチームの太田さんと中村さんと一緒に、東京ビッグサイトで開催される説明会場に向かいました。Kエンジニアリングのブースには、多くの学生が集まり、立ち見する人もいるほどの盛況ぶりでした。私たちの会社が得意とする尿素やアンモニアは、近年のSDGs(持続可能な開発目標)にぴったり合っているため、人気が急上昇しています。

私たちの新卒採用は、エントリーシートの提出、一次面接とグループディスカッション、二次面接、最終面接という順番で行われます。このうち、私は太田さんと中村さんと一緒に一次面接を担当します。面接が終わった後、夜の八時ごろから三人で選抜会議を行うのです。

これからの六月までに、約千人の学生が応募してくると予想されます。私たち三人は、その中からまず四分の一を選びます。合格者にはすぐに二次面接の通知を送らなければなりません。

中村さんが自分の評価シートに基づいて推した学生を、太田さんが否定します。私もその学生は不合格だと考え、否定しました。次に、太田さんが推した学生を中村さんが否定し、私もその学生は不合格だと決めました。こうして、短い時間で合否が決まっていくのです。

私の採用基準は他の人には秘密ですが、実は顔の黄金比率です。黄金比とは、顔の縦の比率が髪の生え際から目、目から鼻先、鼻先からあごが三等分されていること、そして横の比率がこめかみから目尻、目尻から目頭、目頭間、目頭から目尻、目尻からこめかみが五等分されていることです。この黄金比を持つ人が「できる人」と考えています。

初めは、黄金比でない学生を意図的に合格させることで、会社に対して反発していました。つまり、普通の学生を採用していました。しかし、三十年も会社に残る普通の人と、三年で辞める優秀な人のどちらが会社にとって損かを考え、後者を選ぶことが重要だと気づきました。それからは、顔の黄金比により「できる人」を合格させるようにしました。その結果、新入社員の三年後の離職率は少しずつ上昇していきました。

私が人事部に来て五年目のことです。新卒採用チームのメンバーは、当時最古参の加藤さん、私より年上の太田さん、そして私の三人でした。その私が採用活動の改善を任されることになりました。

私はパンフレットやポスターなどの「見た目」をプロに依頼してリニューアルしました。これだけで、応募者が三割も増えました。その年の内定式が終わった後、落ちた学生が「入社させてほしい」と涙ながらに頼んできました。最古参の加藤さんは「これはご縁がなかったのです」となだめて学生を帰らせました。

その後、私はさらに会社のHPの見た目も改善し、私たち新卒採用チーム自身の見た目も改善に努めました。しかし、会社が設計ミスをして、東証一部から二部に降格してしまいました。FEDという投資会社が支援を申し出る代わりに、人員整理を要求してきました。

部長たちは人員整理に不慣れで、私がアドバイザーとしてリストラのサポートに呼ばれました。ある部で二人のリストラ候補がいましたので、私は黄金比がより良い方をリストラ候補として推しました。その結果、リストラの嵐の中で、チーム最古参の加藤さんもリストラされることになりました。

現在に戻ります。選抜会議の後、中村さんが「小野さんはきれいな顔の学生が好きですよね」と話しかけてきました。私はとぼけましたが、中村さんには私の採用基準がバレていたようです。

翌日、東京ビッグサイトで今年二度目の大規模合同説明会が開かれました。集まった学生たちの中で、中村さんが一人の学生を特に気にしている様子でした。その学生は、以前辞めた役員の橋口さんに非常に似ていました。

私はその後の調査で、その学生、町田雄大さんが橋口さんの前妻の息子であることを突き止めました。さらに、退職した橋口さんが転職した先が、Kエンジニアリングが最近大口の受注を得た発注元の会社でした。もしも、町田さんのコネ入社が今回の受注に影響を与えているとしたら、大変な問題です。

また、中村さん自身も、以前の入社の経緯に裏事情があるように見えます。町田さんの合否を決める選抜会で、太田さんがトイレに立っている隙に、私は中村さんに自分の考えを伝えました。中村さんがひどく動揺したため、私の考えが正しいことがわかりました。太田さんが戻ったとき、私は町田さんを合格させる方向に決めました。

町田雄大さんを合格させることに決めた後、会社内外で様々な反響がありました。町田さんが入社することによって、彼の出身背景や橋口さんとの関係が噂になり、会社の内部政治が複雑になりました。

私は自分の選考基準や過去の行動に対する評価に直面し、今後の人事方針を見直す必要があると感じています。最終的に、私の採用基準が会社にどのような影響を与え、どのような結果につながるのかに注目が集まっています。

「黄金比の縁」の感想・レビュー

「黄金比の縁」を読んで、多くのことに気づかされました。この物語では、Kエンジニアリングの人事部で新卒採用を担当する〈私〉が中心となっています。〈私〉は、顔の黄金比率を採用基準としているため、特定の顔の形が合格の決め手となります。この黄金比率とは、顔の縦や横の比率が特定の基準に合致していることを指します。

物語の中で、〈私〉がどのようにしてこの基準を設定し、またなぜそれが選考に影響するのかが詳しく描かれています。入社時に起きたトラブルで、〈私〉は人事部に異動となり、その後の採用活動に大きな影響を与えることになります。特に、採用基準としての黄金比率がどのように採用結果に反映されるか、またそれが社内でどのように評価されるかが物語の重要な部分です。

また、採用活動の裏で発生するさまざまな問題や、特異な背景を持つ応募者が登場する点も注目されます。例えば、過去の役員に似た応募者が登場し、その背景にある家族や転職先の事情が物語に影響を与えます。このような複雑な人間関係や内部政治が、物語に深みを加えています。

全体として、採用基準や人事の決定が物語の進行にどのように影響するか、またそれが会社全体にどのような波紋を呼ぶかが興味深いです。詳細に描かれた人物たちの背景や、彼らが直面する問題が、物語にリアリティと緊張感を与えています。

まとめ:「黄金比の縁」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 主人公はKエンジニアリングの人事部で新卒採用を担当する
  • 採用基準が「顔の黄金比率」である
  • 入社時にトラブルが発生し、人事部に異動させられる
  • 採用基準により「できる人」を選ぶ方針を取る
  • 黄金比率の採用基準が社内での評価に影響する
  • 新卒採用の裏で発生するさまざまな問題が描かれる
  • 特異な背景を持つ応募者が登場する
  • 会社の内部政治や人事の決定が物語に影響を与える
  • 採用活動の改善が応募者数に直結する
  • 物語の進行と共に明らかになる採用の真実が重要である