屋根裏の散歩者(江戸川乱歩)の超あらすじとネタバレ

「屋根裏の散歩者」は、江戸川乱歩の代表作の一つで、サスペンスとミステリーの要素が詰まった短編小説です。本記事では、「屋根裏の散歩者」のあらすじとネタバレを詳しく解説します。

物語は無趣味で定職に就かない25歳の郷田三郎が、探偵の明智小五郎との出会いをきっかけに、犯罪に興味を持つところから始まります。新しい下宿先「東栄館」での屋根裏探検を通じて、郷田は住人たちの生活を覗き見し、やがて歯科医助手の遠藤に対する殺意を抱きます。郷田の犯罪計画とその実行、そして明智小五郎の鋭い推理によって明かされる真実とは。

この記事では、物語の詳細な展開とその結末をネタバレを交えて紹介します。

この記事のポイント
  • 郷田三郎の人物像と彼の生活背景
  • 明智小五郎との出会いと影響
  • 屋根裏探索とその楽しみ方
  • 遠藤に対する嫌悪と殺害計画
  • 明智小五郎の推理による事件解決の過程

屋根裏の散歩者(江戸川乱歩)の超あらすじとネタバレ

第1章: 郷田三郎の背景

郷田三郎(ごうだ さぶろう)は25歳の若者です。彼は特に何も興味を持たず、毎日をただ過ごしている無趣味な人間でした。郷田は仕事をしておらず、親からの仕送りだけで生活しています。そのため、自分でお金を稼ぐこともせず、時間を持て余していました。

そんな彼の生活に変化が訪れます。ある日、友人を通じて素人探偵の明智小五郎(あけち こごろう)という人と出会ったのです。明智小五郎は、探偵として様々な事件を解決している人物で、彼の話を聞くうちに郷田は初めて何かに興味を持ちました。

明智は、今までに遭遇した様々な犯罪者や事件の話を郷田に聞かせてくれました。その中には、非常に巧妙な犯罪や驚くべきトリックがありました。これらの話を聞くうちに、郷田は「犯罪」というものに魅力を感じるようになりました。

今まで何に対しても興味を持てなかった郷田でしたが、犯罪の話を聞くうちに心が踊り、胸が高鳴るのを感じました。犯罪というスリルや興奮に初めて触れた彼は、その魅力にどんどん引き込まれていきました。

しかし、郷田はまだ自分自身が犯罪に手を染めることは考えていませんでした。ただ、明智の話を聞くことで刺激を受け、そのスリルに夢中になっていたのです。こうして、郷田の退屈な日常に少しずつ変化が訪れ始めました。

明智小五郎との出会いが、郷田三郎の人生に大きな影響を与え、後に彼の運命を大きく変えることになるのです。

第2章: 屋根裏の探索

郷田三郎は明智小五郎の話に影響を受け、見知らぬ人を尾行したり、暗号文を差し込んでみたりといった遊びを始めました。しかし、これらの遊びには本当のスリルがないため、すぐに興味を失ってしまいます。

そんなある日、郷田は新しい下宿屋「東栄館」に引っ越すことにしました。東栄館は新しく建てられたばかりの建物で、多くの住人が暮らしていました。郷田は新しい環境に少しワクワクしていましたが、特にやることもなく、最初のうちは布団で寝ていました。

しかし、ある日、郷田は押入れに興味を持ち始めました。押入れの中で寝てみると、意外にも快適で、郷田はそれ以来押入れを寝床にするようになりました。そして、押入れの天井板が持ち上がることに気づいたのです。

好奇心に駆られた郷田は、天井板を持ち上げて天井裏に登ってみました。天井裏は暗くて狭い空間でしたが、郷田にとっては秘密の隠れ家のように感じられました。この場所が自分だけの秘密の空間であることに心が躍り、その日から昼も夜も関係なく「屋根裏の散歩」を楽しむようになりました。

天井裏を歩き回るうちに、郷田は住人たちの生活をそっと覗き見ることができる場所を見つけました。足元から漏れる光を通して、下宿の住人たちの生活をこっそりと観察することができたのです。郷田はこの新しい遊びに夢中になり、住人たちの生活を覗き見ることが日課になりました。

こうして、郷田は新しい環境で自分なりの楽しみを見つけ、日々を過ごしていました。しかし、この屋根裏の探索が、彼の運命をさらに大きく変えることになるのです。

第3章: 遠藤への嫌悪と殺意

郷田三郎は、天井裏から住人たちの生活を覗き見ることに楽しみを見出していました。しかし、その中でどうしても気に入らない人物が一人いました。それは、歯科医助手の遠藤という男です。遠藤はのっぺりとした顔をしており、非常に几帳面な性格で、部屋の中はどこを見ても整然としていました。

郷田は、遠藤の何もかもが嫌いでした。ある日、遠藤と話す機会がありました。遠藤は、過去に恋人と心中しようとしたが失敗し、今もその時に使おうとしたモルヒネの小瓶を持っていると話しました。この話を聞いた郷田は、さらに遠藤に対する嫌悪感を抱きました。

郷田は、天井裏から遠藤の部屋を覗き見ていました。遠藤が大口を開けて豪勢なイビキをかいて寝ている姿を見た時、郷田の中で殺意が芽生えました。この強い感情は彼を魅了し、どのように遠藤を殺害しようかという計画を立てるようになりました。

まず、郷田は指紋が残らないように手袋と靴下を用意しました。そして、屋根裏の覗き穴から遠藤の隠し持っている毒薬を垂らして殺せば、自分が犯人として捕まることはないだろうと考えました。こうして、郷田の中で完璧な殺害計画が出来上がっていきました。

計画を実行するため、郷田はまず遠藤の部屋を訪れました。遠藤が話好きであったことが幸いし、郷田は容易に部屋に上がり込むことができました。長い雑談に付き合いながら、郷田はチャンスをうかがいました。そして、遠藤がトイレに行った隙に、毒薬の瓶をくすねました。

その夜から、郷田は遠藤の様子を伺い続けました。住人たちが寝静まった頃、屋根裏から遠藤の部屋を覗き見し、殺害のチャンスを待ちました。10日ほど経ったある日、郷田はついにチャンスを見つけました。節穴と寸分違わぬ位置で大口を開けて寝ている遠藤の姿を見つけたのです。

郷田はポケットから毒入りの瓶を取り出し、遠藤の口の中に十数滴垂らしました。遠藤はカッと目を見開き、真っ赤な顔をして激しく苦しみましたが、次第に顔色が白くなり、そして青く変わって絶命しました。

この一連の出来事を見ていた郷田は、人があっけなく死ぬことを知り、落胆と同時に自分の行為に恐れを感じました。郷田は興奮のあまり眠れない一夜を過ごしました。

こうして、郷田の殺意は現実となり、彼の人生は大きく変わっていくことになるのです。

第4章: 殺害計画と実行

郷田三郎は、遠藤への殺意を抱き、それを実行に移すことを決意しました。彼は計画を細かく練り上げ、慎重に準備を進めました。指紋が残らないようにするため、手袋と靴下を用意し、毒薬を使って遠藤を殺害する計画を立てました。

まず、郷田は遠藤の部屋を訪れました。遠藤は話好きだったため、郷田は簡単に部屋に入ることができました。長い雑談に付き合いながら、郷田はタイミングを見計らいました。遠藤がトイレに行った隙に、郷田は毒薬の瓶をくすねました。

その夜から、郷田は遠藤の様子を観察し続けました。住人たちが寝静まった頃、屋根裏から遠藤の部屋を覗き見し、殺害のチャンスを待ちました。10日ほど経ったある日、郷田はついにチャンスを見つけました。遠藤が大口を開けて寝ている姿を見つけたのです。

郷田はポケットから毒入りの瓶を取り出し、慎重に遠藤の口の中に十数滴の毒を垂らしました。遠藤はカッと目を見開き、激しく苦しみ始めました。真っ赤な顔をして汗をかきながら、次第に顔色が白くなり、そして青く変わっていきました。やがて、遠藤は息を引き取りました。

郷田は、この一連の出来事を見て、驚きと恐怖を感じました。人があっけなく死ぬ様子にショックを受け、自分が実際に殺人を犯したことに恐れおののきました。その夜、郷田は興奮と不安のために眠れず、一晩中起きていました。

翌日、郷田は下宿先にいると、警察からの聞き取りがありました。郷田は自分が犯人だと疑われることを恐れ、外出しました。戻ってくると、警察はすでに遠藤の死を失恋による自殺と結論づけていました。郷田はほっと胸をなでおろしました。

しかし、心の中では不安が消えませんでした。彼は自分が犯した罪に対する恐れと、いつかバレるのではないかという不安を抱えながら過ごしました。それでも、遠藤が自殺として片づけられたことで、一時的に安心感を得ました。

こうして、郷田の計画は成功し、遠藤は殺害されました。しかし、この事件は郷田の人生に大きな影響を与えることになるのです。

第5章: 明智小五郎の推理と郷田の逮捕

郷田三郎は、遠藤を殺害した後もその恐怖と興奮から逃れられず、不安な日々を過ごしていました。警察が遠藤の死を自殺として片づけたことに一時的に安心しましたが、心の中にはまだ疑いと恐れが残っていました。

数日後、郷田の部屋に明智小五郎が訪ねてきました。明智はいつもの穏やかな笑顔で郷田に挨拶し、遠藤の死について話し始めました。郷田は不安半分、自信半分で「まさかこれは他殺では」と口走ってしまいました。

明智はその言葉を聞き流さず、遠藤の部屋を確認することにしました。郷田は不安を感じながらも、明智に従いました。遠藤の部屋で、明智はある下宿人から「遠藤の部屋で目覚まし時計が鳴っていた」という証言を得ました。この証言が、明智の推理を裏付ける重要な手がかりとなりました。

その後、半月ほど明智からの音沙汰がなく、郷田は事件が終わったかのように感じていました。しかし、ある日、郷田が自室の押入れを開けると、そこには死んだはずの遠藤の首が逆さまにぶら下がっていました。郷田は驚きと恐怖のあまり、逃げ出そうとしました。

すると、聞き覚えのある声が後ろから郷田を呼び止めました。振り返ると、そこには明智小五郎が立っていました。明智は落ち着いた様子で、郷田に向かって話し始めました。明智は、天井裏に落ちていた郷田のシャツのボタンを証拠品として突きつけました。

明智は、郷田が屋根裏の散歩をしていた際に取り外していた天井板から降りてきたことを説明しました。彼は郷田の危なっかしい人間性や目覚まし時計の謎に引っかかり、極秘に捜査を進めていたのです。さらに、突きつけたボタンは、半月前に出会った時に取れていた郷田のボタンと同じものでした。これは、明智が郷田を自白させるための巧妙なトリックでした。

郷田は明智の推理に圧倒され、自分が犯した罪を認めざるを得ませんでした。こうして、郷田は自らの犯行を自白し、警察に引き渡されました。明智小五郎の冷静な推理と巧妙なトリックにより、事件は解決し、郷田の犯罪も明るみに出たのです。

この一連の出来事は、郷田三郎の人生を大きく変えることになりました。彼の短絡的な行動と恐れは、最終的に自らの破滅を招いたのです。明智小五郎の洞察力と推理力によって、真実は明らかになり、郷田は法の裁きを受けることになりました。

屋根裏の散歩者(江戸川乱歩)の感想・レビュー

「屋根裏の散歩者」は、江戸川乱歩の持つ独特の魅力が詰まった作品です。この物語を読むと、まず主人公の郷田三郎というキャラクターが非常に興味深く描かれていると感じます。彼は無趣味で、何に対しても興味を持たない若者ですが、明智小五郎との出会いをきっかけに犯罪に魅了される様子がとてもリアルに描かれています。郷田の心理描写は細かく、彼の心の移り変わりが丁寧に描かれているため、読者は自然と彼の心情に引き込まれていきます。

また、屋根裏を探索するシーンは非常にスリリングです。暗くて狭い空間を秘密の隠れ家にするというアイデアは、少年時代の冒険心を呼び起こさせます。郷田が屋根裏から住人たちの生活を覗き見する描写も、彼の孤独感や無聊を埋めるための行動として理解できます。

さらに、遠藤に対する嫌悪感から殺意に至る過程も非常に興味深いです。遠藤の几帳面な性格や、過去の恋人との心中未遂などが郷田の感情を刺激し、最終的に殺害計画を立てるまでの流れが緻密に描かれています。郷田が計画を実行するシーンは緊張感があり、彼の心の動きが細かく伝わってきます。

そして、最後に明智小五郎の登場です。彼の冷静で鋭い推理力は見事で、郷田の犯罪を見抜く過程は読者に強い印象を与えます。明智が郷田を追い詰めるシーンは非常にドラマチックで、物語のクライマックスとして完璧です。

全体を通して、「屋根裏の散歩者」は緊張感とスリルに満ちた素晴らしい作品です。江戸川乱歩の巧みなストーリーテリングと、キャラクターの深い心理描写が見事に融合しており、中学生でも理解しやすい平易な表現でありながら、深い洞察と興味を引き出す内容となっています。この作品を通じて、読者はミステリーとサスペンスの魅力を存分に味わうことができるでしょう。

まとめ:屋根裏の散歩者(江戸川乱歩)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 郷田三郎は無趣味で親の仕送りで生活している
  • 明智小五郎との出会いが郷田の人生に影響を与える
  • 犯罪に魅力を感じ始める郷田の心理描写
  • 新しい下宿屋「東栄館」への引っ越し
  • 屋根裏での秘密の空間を発見する
  • 屋根裏から住人たちの生活を覗き見する日課
  • 歯科医助手の遠藤に対する強い嫌悪感を抱く
  • 遠藤を殺害するための計画を練る
  • 遠藤の部屋で毒薬を使った殺害の実行
  • 明智小五郎の推理により郷田が逮捕される