「舟を編む」の超あらすじ(ネタバレあり)

『舟を編む』は、玄武書房辞書編集部の物語で、新しい辞書「大渡海」を編纂するために集まった編集者たちの情熱と努力が描かれています。

営業課から異動してきた変わり者の青年・馬締光也は、言葉への鋭い感受性を活かして辞書編纂に取り組みます。部員たちと共に困難を乗り越えながら、15年の歳月をかけて辞書を完成させる姿は感動的です。

仕事だけでなく、馬締の恋愛や人間関係も丁寧に描かれ、言葉が人と人をつなぐ力を持つことを教えてくれます。

この記事のポイント
  • 辞書「大渡海」の編纂の過程
  • 辞書編集部のメンバーの成長と挑戦
  • 馬締光也のキャラクターと彼の恋愛
  • 言葉の持つ力と人とのつながり
  • 「大渡海」完成までの苦労と感動

「舟を編む」の超あらすじ(ネタバレあり)

玄武書房の辞書編集部では、定年間近のベテラン編集者・荒木公平が新しい辞書「大渡海」の企画に取り組んでいました。荒木のパートナーである監修者の松本も同様に情熱を持っていますが、辞書の編纂は膨大な時間と費用がかかるため、会社は乗り気ではありません。そんな中、荒木は後継者として営業課の馬締光也を辞書編集部に引き抜きます。馬締は営業課では同僚たちに変わり者として見られており、周囲との折り合いも悪く孤立していましたが、言葉に対する感受性が非常に強く、辞書編纂に向いている性格でした。

辞書編集部は、荒木を中心に軽妙な先輩・西岡正志と契約社員の佐々木薫の少人数で構成されています。荒木と松本の「辞書は言葉の海を渡るための舟」という情熱的な言葉に触発された馬締は、辞書作りへの熱意を持ち始め、辞書を通じて人々とつながることの大切さを感じます。私生活では、馬締の下宿先に大家の孫娘・林香具矢が引っ越してきて、馬締は彼女に一目惚れします。内気で真面目な馬締にとって、香具矢との出会いは新たな人生の始まりを告げるものでした。

辞書「大渡海」の企画が会社から条件付きで承認され、辞書編集部は既存の辞書の改訂版作成から取り掛かります。しかし、西岡は新年度から他部署への異動を命じられ、定年を迎えた荒木も辞書編集部を去ります。こうして編集部には正社員の馬締だけが残され、編集の責任を一手に背負うことになります。馬締は辞書の重要性と責任の重さに押しつぶされそうになりますが、辞書編纂への情熱を失わずに取り組みます。

一方で、馬締は香具矢への思いを募らせ、彼女とのデートの機会を得ます。馬締は西岡のアドバイスを受け、香具矢に気持ちを伝えるために15枚に及ぶラブレターを書きます。しかし、馬締の思いは伝わらず、香具矢は文体が難しくて内容を理解できません。それでも馬締の真剣さに心を打たれた香具矢は、辞書編纂と板前修業に打ち込む二人だからこそ理解し合えると考え、交際を始めることに決めます。こうして馬締は仕事と恋愛の両方で新たな一歩を踏み出していきます。

馬締が辞書編集部に異動してから13年後、新たなメンバーとして岸辺みどりが辞書編集部に配属されます。入社3年目の彼女は馬締の仕事に対する姿勢に感銘を受け、「大渡海」の完成を目指して編集作業が本格化します。「大渡海」は、企画から15年をかけてようやく編纂段階にまで進みますが、その作業は非常に大変で、辞書編集部は連日遅くまで作業に追われます。紙の開発や語句の選定、誤字脱字のチェックなど、膨大な作業が続きます。学生アルバイトたちも編集部に泊まり込みで手伝い、チーム全体が一丸となって辞書作りに取り組んでいました。

一方で、馬締の妻となった香具矢は板前としての修行を続け、ついに自分の店を持つことになります。松本はその店の常連となり、香具矢と馬締の頑張りを陰ながら応援しています。しかし、辞書の刊行が目前に迫ったある日、松本が体調を崩して倒れてしまいます。その影響で辞書の編纂作業にも遅れが生じますが、馬締や荒木は松本の回復を最優先に考え、香具矢も松本のために好物を差し入れて支え続けます。

長年の努力の末、ついに「大渡海」が完成します。馬締、荒木、そして松本の3人は、辞書への情熱と長い年月をかけた苦労に深い感慨を覚えます。しかし、刊行を間近に控えた矢先、長年「大渡海」の完成を待ち望んでいた松本が亡くなります。馬締は、松本が荒木に宛てた感謝の手紙を読み、亡き友人への思いを胸に涙します。

辞書の完成を祝うパーティーでは、松本の遺影に「大渡海」が供えられ、その存在が皆の心に刻まれます。多くの人々の情熱に支えられて完成した「大渡海」は、読者からも高い評価を受けます。辞書を通じて言葉が持つ力や人とのつながりの大切さを感じた馬締は、荒木と共に早くも改訂版の編纂に向けて動き出します。こうして、「大渡海」は新たな世代へと受け継がれていくのです。

「舟を編む」の感想・レビュー

『舟を編む』の魅力は、辞書という普段あまり意識されないものに対する深い情熱と、そこに関わる人々のひたむきな姿にあります。玄武書房の辞書編集部で働く馬締光也は、言葉に対する強い興味と感受性を持ちながら、営業職ではその才能を発揮できずにいました。しかし、辞書編集部に配属されたことで、自分の持つ能力を最大限に発揮し、仲間たちと共に「大渡海」の完成を目指します。辞書を作るために必要な膨大な作業量や細かいチェックに追われる日々、そして馬締が香具矢への恋心を抱きつつもその思いをうまく伝えられない葛藤が丁寧に描かれています。

特に印象的なのは、松本が「辞書は言葉の海を渡るための舟」と表現するシーンです。この言葉が作品全体のテーマを象徴しており、言葉が人と人をつなげ、時には孤立した心を救う役割を果たすことを実感させられます。また、辞書が完成するまでの困難や、松本の死といった悲しい出来事も描かれますが、その一つひとつが「大渡海」に込められた人々の思いを際立たせています。最終的に「大渡海」が完成し、多くの人々に支持されるシーンでは、編纂に関わった全ての人の努力と情熱が報われたことに感動を覚えます。馬締や荒木たちが次の改訂版に向けて再び動き出す姿は、新たな挑戦の始まりを予感させ、物語の終わりとして非常に希望に満ちています。

まとめ:「舟を編む」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 辞書編集部の荒木が「大渡海」を企画
  • 馬締光也が営業課から辞書編集部に異動
  • 編集部の少人数チームが辞書編纂に奮闘
  • 馬締が香具矢に一目惚れし恋が始まる
  • 辞書編纂が進む中で西岡が異動、荒木が退職
  • 馬締の一人編集部としての苦闘
  • 新人の岸辺が編集部に加わり本格的に始動
  • 松本が体調を崩し辞書完成前に他界
  • 「大渡海」が完成し世間から高評価を得る
  • 馬締と荒木が次の辞書改訂版に取り組む