「美しい顔」の超あらすじ(ネタバレあり)

「美しい顔」のあらすじをネタバレありでご紹介します。

物語は、津波に襲われたヤノサナエが、弟ヒロノリと共に避難所で過酷な日々を過ごす中で、メディアに注目され一躍有名人となるところから始まります。母キョウカとの再会を望むサナエでしたが、現実は過酷で、やがて母の死と向き合うことに。

心に深い傷を負いながらも、親友斎藤の助けを受けて前を向くサナエは、新しい生活をスタートさせる決意を固めます。

この記事のポイント
  • ヤノサナエの避難生活の始まり
  • メディアに注目される経緯
  • 母キョウカとの再会を望むサナエの心情
  • サナエが母の死と向き合う過程
  • サナエが新しい生活を始める決意

「美しい顔」の超あらすじ(ネタバレあり)

その日は朝から雪がちらついていて、空もどんよりと曇っていました。ヤノサナエは、返却された定期テストの点数が思ったよりも悪かったため、落ち込んでいました。サナエは中学2年生で、成績が大切な時期です。家に帰る途中、彼女の弟で、小学校1年生のヤノヒロノリが「ねえちゃん!」と元気に声をかけてきました。ヒロノリは、学校からの帰り道、サナエを見つけて駆け寄ってきたのです。

その瞬間、サナエは地面が激しく揺れるのを感じました。振り返ると、遠くから巨大な波が押し寄せ、家や車を飲み込んでいくのが見えました。津波です。サナエは瞬時にヒロノリを背負い、全力で高台に向かって走り出しました。道は狭く、足元が不安定でしたが、サナエは必死でした。やっとのことで高台にたどり着いたサナエは、フェンス越しに下を見下ろしました。そこには、彼女が生まれ育った集落がありましたが、今や水に沈んでしまっていました。

サナエは唖然として立ち尽くしました。近くにいた人たちも皆、同じようにショックを受けていました。特に、彼女が幼稚園の時から仲良しだった広子の姿が水に飲まれるのを見た時、サナエは胸が締め付けられる思いでした。しかし、泣いている暇はありませんでした。サナエは弟を守らなければならないと強く思い、気を引き締めました。

サナエとヒロノリは、なんとか高台に避難できたものの、指定されていた避難場所のS体育館がひどく冠水していたため、近くの公民館に向かうことにしました。避難所には、すでに多くの人々が集まっており、皆同じように不安な表情をしていました。配給されたのは、毛布1枚とペットボトルの水が1本だけでした。近所の人からクッキーを少し分けてもらいましたが、それだけではお腹は満たされませんでした。

サナエとヒロノリは、毛布にくるまって一夜を過ごしました。眠れないまま夜が明け、サナエは母親のヤノキョウカのことを思い出しました。キョウカは、地元の病院で看護師として働いています。サナエは、母親が無事であることを祈りながら、翌朝から彼女との合流を目指しました。しかし、母の行方はわからず、不安は募るばかりです。

その日、東京からメディアが避難所にやってきました。彼らは地震の被害を取材するために来たのです。サナエは、その中の一人からインタビューを受けることになりました。「お母さんに会いたいですか?」という質問に、サナエは涙をこらえて「はい」と答えました。その姿をカメラが捉え、サナエは一躍注目されることになりました。

地震が発生してから7日後、避難所には東京からのメディアが集まりました。彼らは、親子の再会や避難所での生活を取材し、ニュースにするために来ています。サナエは、S高校で行われたミスコンテストで準優勝をしたことがあり、その美しい容姿からすぐにメディアの注目を浴びました。

インタビューを受ける中で、サナエは少しずつ心を開き、避難所での活動に積極的に参加するようになりました。お年寄りの世話をしたり、けがをしている人の着替えを手伝ったり、水くみや日用品の買い出しを行ったりしました。その行動範囲が広がるにつれて、サナエの姿を追いかけるカメラの数も増えていきました。

避難所に届けられた支援物資の中に、コスメが含まれていました。サナエは普段はしないメイクをしてみることにしました。その結果、彼女の美しさはさらに際立ち、避難所ではまるでアイドルのような存在になりました。しかし、その様子を見て、母親の親友である斎藤は複雑な表情を浮かべました。サナエが注目される一方で、彼女の心には少しずつ負担がかかっていたのです。

サナエは、避難所での活動に夢中になっていましたが、ある日「遺体安置所」と書かれた建物の前で立ち尽くしてしまいました。その建物の外壁には、行方不明者の情報が張り出されており、サナエは母親の名前を探し始めました。そして、ついにキョウカの名前が書かれていることに気づきました。

警察官に住所と氏名を告げると、警官は分厚いファイルを取り出し、キョウカの遺体が確認されたことを伝えました。サナエは警官に案内され、ブルーシートで覆われた担架が並ぶ部屋に入りました。彼女は、ファスナーを半分だけ開けた瞬間、自分の母親が亡くなっていることを目の当たりにしました。悲しみに打ちひしがれたサナエは、その場で泣き崩れました。

その後、避難所に戻ったサナエは、リポーターやアナウンサーから多くの質問を受けましたが、一切口を開きませんでした。やがて、報道陣は別の町へ取材拠点を移し、サナエに対する批判が残されました。彼女が注目されたことへの嫉妬や批判が、ネット上で広がっていきました。サナエはそれを気にしないようにしていましたが、内心では深く傷ついていました。

避難生活が続く中、サナエはボランティア団体の炊き出しや、自衛隊が設置した仮設風呂を利用して生活していました。ですが、彼女はまだ母親を失った現実に向き合い切れていませんでした。そんなある日、母親の親友である斎藤がサナエを訪ねてきました。斎藤はサナエに向かって「現実を見ろ」と言わんばかりに平手打ちをしました。

斎藤は、サナエに母キョウカが病院で亡くなった理由を詳しく話しました。キョウカは、病院で働いていた際、歩くことができない患者を避難させようとしたが、その途中で津波に巻き込まれてしまったのです。サナエは、斎藤の言葉を聞いて涙を流しましたが、それと同時に前を向く決意をしました。

サナエは、母親の姉が沼津に住んでいることを思い出し、すぐに連絡を取りました。姉夫婦は子どもがいなかったため、サナエとヒロノリをすぐに迎えに来てくれました。サナエは新しい環境で働きながら、専門学校に通って福祉関係の資格を取ることを決意しました。新しい学校では、ヒロノリもリレーのアンカーに選ばれ、ふたりは新しい生活を楽しみにしていました。休みの日には、二人で遠浅の海岸へ遊びに行き、砂浜で走り出すのでした。

「美しい顔」の感想・レビュー

「美しい顔」を読んで、ヤノサナエの心の変化がとても印象に残りました。津波という突然の災害に直面し、弟ヒロノリを守るために必死に逃げる姿はとても勇敢で、心を打たれました。その後、避難所での生活では、サナエが徐々に周りの人々から注目されていく過程が描かれていますが、彼女がメディアに取り上げられ、有名人のように扱われる一方で、その注目が彼女にとって重荷になっていく様子が丁寧に描かれていました。

特に、サナエが母親のヤノキョウカと再会できることを望みながらも、その願いが叶わなかったシーンは、胸が締め付けられるような気持ちになりました。キョウカの遺体と対面した瞬間、サナエの心が大きく揺れ動く場面は、読者に彼女の深い悲しみと絶望を強く感じさせます。その後、親友の斎藤がサナエに現実を見せつけ、彼女が新たな一歩を踏み出す決意をする展開は、サナエの成長を感じさせるものでした。

この作品は、災害という極限状態で人々がどのように変わり、成長していくのかを描いています。サナエが最初はただ流されるままでしたが、最後には自分の意志で新しい道を選ぶ姿は、とても勇気づけられるものでした。物語を通して、人間の強さや弱さ、そして再生への希望が描かれており、読む人に深い感動を与える作品だと感じました。

まとめ:「美しい顔」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • ヤノサナエは津波に遭遇する
  • 弟ヒロノリと共に高台へ避難する
  • 避難所で過酷な日々を過ごす
  • 東京からメディアが避難所に来る
  • サナエがメディアに注目される
  • 母キョウカとの再会を望むが叶わない
  • キョウカの遺体と対面する
  • サナエがメディアからの批判に苦しむ
  • 親友斎藤から現実を見せられる
  • サナエが新たな生活を始める決意をする