空の中(有川浩)の超あらすじとネタバレ

この記事では、有川浩の小説『空の中』のあらすじとネタバレを紹介します。200X年、日本で起こる謎の航空事故と、高校生の瞬が出会う不思議なクラゲの生物「フェイク」、そして彼の父親の死を巡る物語が描かれています。

物語は、瞬とフェイクの交流、航空事故の真相究明、そして人間と未知の生物との共存をテーマに展開します。小説の詳細なストーリーを知りたい方や、既に読んだ方が物語の要点を振り返るのに役立つ内容となっています。興味のある方はぜひご一読ください。

この記事のポイント
  • 試験飛行中の航空事故の原因とその真相
  • 高校生・瞬とクラゲのような生物「フェイク」の出会いと交流
  • 瞬の父親の死とその影響
  • 白鯨という巨大生物の正体と人間との対峙
  • 人間と未知の生物との共存に向けた選択と結末

空の中(有川浩)の超あらすじとネタバレ

第1章: 不思議な発見と出会い

200X年、日本では試験飛行中のジェット機が次々と爆発炎上する事故が起きていました。その原因はまだわかっていませんでした。

主人公の瞬(しゅん)は高校二年生です。瞬のお母さんは早くに亡くなり、お父さんはパイロットとして働いていたので、いろいろな場所を転々としています。瞬はお父さんとは離れて、高知(こうち)で一人で暮らしていました。以前はおじいちゃんと一緒に住んでいましたが、おじいちゃんも病気で亡くなり、今は一軒家で一人暮らしをしています。

瞬にはおじいちゃんの友達の宮じい(みやじい)や、幼馴染の佳江(かえ)など、気にかけてくれる人がいました。でも、やはり本当の家族がいないことに少し寂しさを感じていました。それでも、お父さんのことを誇りに思っていて、時々帰ってくるお父さんと会うのを楽しみにしていました。

ある日、瞬が海岸を歩いていると、何か妙なものが落ちていることに気が付きました。気になって近寄ってみると、それは大きなクラゲのような生き物でした。そのクラゲは両手で抱えられるくらいのサイズでした。瞬は興味を持ってそのクラゲに近づいてみましたが、クラゲは動き出して、ズルズルと瞬の方に近づいてきました。瞬は怖くなって、その場からとっさに逃げ出しました。

途中で佳江に会った瞬は、クラゲのことを話しました。佳江はUMA(未確認動物)が大好きで、興味津々でした。佳江は臆することなく、瞬を連れて海岸に戻り、そのクラゲを捕獲しました。佳江の好奇心はどんどん高まり、そのクラゲは結局、瞬の家に持ち帰られることになりました。

クラゲの名前は「フェイク」と名付けられました。フェイクは見た目が不思議で、普通のクラゲとは違いました。瞬と佳江は、フェイクがどこから来たのか、何者なのかを知りたくてたまりませんでした。

瞬の家でフェイクを観察するうちに、瞬は少しずつフェイクに愛着を感じるようになりました。フェイクは瞬が近づくと動き出し、触れても怖がることなく、まるで瞬を友達のように感じているかのようでした。佳江も同じようにフェイクに興味を持ち続け、毎日のように瞬の家に遊びに来てはフェイクの観察をしていました。

こうして、瞬と佳江、そして不思議なクラゲのフェイクとの奇妙な共同生活が始まったのです。

第2章: 父の死とフェイクとの交流

瞬と佳江は毎日のようにフェイクを観察し、その正体について議論を続けました。でも、どれだけ考えてもフェイクが何者なのか、どこから来たのかはわかりませんでした。瞬は、フェイクの正体がわからないので、研究機関に提出して調べてもらうべきだと主張しましたが、佳江は「研究のために解剖されたりするのはかわいそうだ」と反対しました。

そんなある日、瞬の家に電話がかかってきました。電話の相手は、瞬の父親が航空事故で亡くなったと伝えました。瞬はショックで言葉を失いました。憧れていた父親が突然いなくなってしまったのです。瞬は深い悲しみに包まれました。

父の葬儀は淡々と進みましたが、瞬の心は沈んだままでした。日常に戻ろうと努力しても、心の中には父の死という重い現実がのしかかっていました。

ある日、瞬はどうしても父と話したくなり、父の携帯電話に電話をかけました。すると、驚くことにその電話が繋がったのです。しかし、電話の相手は父ではなく、フェイクでした。フェイクが電話に出るとは思ってもいなかった瞬は、驚きと困惑でいっぱいでした。

フェイクの日本語はまだたどたどしく、単語を並べただけのものでしたが、瞬はフェイクと会話を続けるうちに、フェイクがどんどん日本語を覚えていくのを感じました。フェイクは驚くほどのスピードで語彙や文法を習得し、次第に流暢に話せるようになりました。

瞬はフェイクと話すことが楽しくなり、毎日のようにフェイクと会話をしました。フェイクはいつも家にいて、瞬を待っていてくれる存在でした。瞬は、家族同然にフェイクを愛するようになりました。瞬が求めていた家族は、実はフェイクだったのかもしれません。

次第に瞬は、父親の死に対する悲しみを忘れ、フェイクとの時間に没頭するようになりました。その様子を見た佳江と宮じいは心配しました。佳江は、「フェイクを愛することは現実逃避に過ぎない」と忠告しましたが、瞬は聞く耳を持ちませんでした。

フェイクは瞬にとって大切な存在になっていました。瞬はフェイクと一緒にいることで、寂しさや悲しみを忘れることができました。フェイクもまた、瞬を愛し、いつもそばにいてくれる存在となったのです。

こうして、瞬とフェイクとの特別な交流が深まっていきました。しかし、やがてこの関係が大きな問題を引き起こすことになるのです。

第3章: 調査の開始と真実の発見

相次ぐ航空事故の原因を究明するため、ジェット機の製造元会社に勤める春名(はるな)は、事故調査委員のメンバーに任命されました。春名は事故が起きた岐阜(ぎふ)基地に赴き、調査を始めることになりました。

そこで春名は、航空事故の生き残りである光稀(みつき)とタッグを組むことになります。光稀は女性パイロットで、事故から生還した強い意志を持った人でした。春名は使命感を持って光稀と共に調査を進めますが、光稀はとても強気な性格で、春名に対しては少し冷たい態度をとることもありました。

二人はまず、事故が起こった現場を再現しようと、光稀が操縦するジェット機で上空に向かいました。すると、上空に不自然な気圧の変動があることを発見しました。その部分に近づいてみると、突然ジェット機の電波がジャックされ、ラジオのような音声が流れ始めました。

その声に応じて話しているうちに、二人は上空に巨大で透明なクラゲのようなものが浮かんでいることに気づきました。このクラゲは、以前から原因不明とされていた航空事故の原因であることが明らかになりました。パイロットたちは透明なクラゲに気づかずに激突し、爆発炎上したのです。

春名と光稀は、クラゲ状のものと会話を続けました。最初は単語を並べただけの拙い日本語でしたが、次第にそのクラゲは流暢に話せるようになり、二人と意思疎通ができるようになりました。春名と光稀は、このクラゲ状のものが「白鯨(しろくじら)」という名前で呼ばれていることを知りました。

ジェット機の燃料が少なくなってきたため、二人は白鯨に別れを告げて自衛隊本部に戻りました。そして、上空で見てきたことを報告しましたが、本部はなかなか信じてくれませんでした。しかし、その後、白鯨は陸地から見えるほどの低空まで降りてきました。「春名と光稀ともっと話したい」というメッセージを送ってきたのです。

日本国民は白鯨が地上に降りてきたら大惨事になると大騒ぎしました。巨大なクラゲ状の生き物が航空事故の原因であったことを知った瞬は、ひどくショックを受けました。自分が家族同然に愛していたフェイクの仲間が、自分の父親の死のきっかけになったからです。

瞬は怒りと悲しみを抱えて、フェイクにその怒りをぶつけました。そしてフェイクを家から追い出しました。フェイクは佳江が引き取ることになりました。

日本政府は上空に現れた巨大なクラゲ状のものに「白鯨」または「ディック」という名前を付けました。世論は白鯨を爆破する方向に傾いていましたが、白鯨が死んだ場合の影響や、万一白鯨が他国から送り込まれた兵器であった場合の報復を恐れ、実行には移せませんでした。

ある日、アメリカが白鯨にミサイルを撃ち込み、白鯨は何万個にも分裂しました。バラバラになった白鯨は、それぞれが違う意思を持つようになりました。しかし、人間に傷つけられたという共通の認識は変わりませんでした。こうして、無数の白鯨からの反撃が始まったのです。

散らばった白鯨は、瞬の暮らす高知にも現れました。それを知らずに外出してしまった佳江を助けようと、瞬はフェイクを呼び出し、「佳江を守れ」と命令しました。瞬からの愛情を取り戻したいフェイクは無数の白鯨を食べ、佳江や高知の市民を守りました。

瞬は、フェイクに仲間である白鯨を殺させたことに罪悪感を覚えましたが、瞬に喜んでほしい一心でフェイクはひたすらに白鯨を食べ続けました。この状況はさらに複雑化し、瞬や周囲の人々の心に大きな波紋を広げていくのです。

第4章: 白鯨との対峙とフェイクの葛藤

フェイクが無数の白鯨を食べ続ける中、瞬は複雑な感情を抱えていました。フェイクはどんどん巨大化していき、最初は小さかったクラゲが今では驚くほど大きくなっていました。瞬の命令に従って白鯨を食べるフェイクですが、その姿は次第に危険なものへと変わっていきました。

日本政府や自衛隊は、このままフェイクに頼り切りで白鯨を消滅させる計画に対して疑問を抱き始めました。フェイクが本当に安全な存在なのか、白鯨を全て食べ尽くした後にどうなるのか、不安が広がっていました。そこで、春名や光稀は白鯨との交渉を続けることにしました。

白鯨の中で最も大きいものを「ディック」と名付け、春名たちはディックとの意思疎通を試みました。ディックは通信機器を通じて人間にメッセージを送ることができました。ディックとの会話から、白鯨たちもまた恐れや不安を抱いていることがわかりました。

白鯨たちは、自分たちの仲間であるフェイクが自分たちを食べていることに恐怖を感じていました。フェイクには過去の記憶がなく、白鯨たちが自分の仲間であるという認識がありませんでした。瞬の命令だから白鯨を食べていただけなのです。

ディックを通じて白鯨たちはフェイクに「食べないでくれ」と呼びかけましたが、その声はフェイクには届きませんでした。フェイクはただ瞬の命令に従って動いているだけでした。

春名はディックとの交渉の中で、まず白鯨たちを一つに統合させることを試みました。無数に散らばっていた白鯨たちが一つに集まり、大きなディックとなりました。これにより、上空に浮かぶ巨大な生物はディックとフェイクだけになりました。

一方で、瞬はフェイクを操り続けることの難しさを感じ始めていました。フェイクがどんどん巨大化し、人間にとって危険な存在になる可能性があることを心配していました。しかし、フェイクを失うことも恐れていました。瞬にとってフェイクは家族同然の存在だったからです。

ある日、フェイクがディックを襲おうとしたとき、フェイクは突然過去の記憶を取り戻しました。自分が何をしているのかを理解したフェイクは、これが共食いであることに気付きました。フェイクは深い絶望に陥り、どうしていいかわからなくなりました。

瞬はそんなフェイクの姿を見て、心が痛みました。フェイクに対する愛情と、フェイクを解放するべきだという思いが交錯しました。最終的に、瞬はフェイクを解放することを決意しました。このままではフェイクもディックも、人間も全てが不幸になると悟ったからです。

春名たちと協力して、瞬はフェイクに「もう戦わなくていい」と伝えました。フェイクはその言葉を聞いて、初めて自分の行動を止めることができました。ディックとフェイクは互いに攻撃することをやめ、一つに統合されました。

ディックは「人間と離れて暮らす」と決め、再び上空へと戻っていきました。人間と白鯨の共存は難しいと判断したのです。こうして、瞬とフェイク、そして白鯨たちとの対峙は終わりを迎えました。

第5章: フェイクの解放と共存の選択

フェイクとディックが統合されたことで、瞬や春名たちはほっとしました。しかし、フェイクが過去の記憶を取り戻し、自分の行動が仲間である白鯨を食べることだったと気づいた瞬は、深い罪悪感を抱えていました。フェイクも同じように、自分の行為に対する苦しみと、瞬を裏切ることへの恐れに苛まれていました。

瞬はフェイクに謝り、今後は自分の命令に従わなくていいと伝えました。フェイクはその言葉を聞いて、一瞬にして安堵の表情を浮かべました。しかし、その後もフェイクはどこか不安そうな様子を見せました。

春名や光稀は、フェイクとディックが再び戦うことがないように、両者の関係を調整するための会議を開きました。自衛隊も協力し、フェイクが人間社会で安全に暮らせるようにするためのプランを立てました。一方で、ディックも白鯨たちと共に平和に過ごすための場所を探し始めました。

数日後、フェイクはディックと最後の会話をするために上空へと向かいました。ディックはフェイクに対して「共食いを止めてくれてありがとう」と感謝の意を示しました。フェイクは「自分が何をしていたのかを知ったとき、とても悲しかった。でも、瞬がいてくれたから耐えられた」と答えました。

ディックとフェイクはお互いに理解し合い、共存の道を選びました。ディックは白鯨たちを連れて、人間から離れた静かな場所に移動し、再び空の中に戻っていきました。フェイクもまた、瞬と一緒に地上で新しい生活を始めることにしました。

瞬とフェイクは、これまでの出来事を振り返りながら、互いに支え合って生きていくことを決意しました。瞬は「もう過去のことは忘れよう。これからは一緒に新しい未来を作っていこう」とフェイクに言いました。フェイクはうなずき、瞬に寄り添いました。

こうして、瞬とフェイク、そしてディックと白鯨たちの物語は新たな章へと進んでいきました。人類と未知の生物との共存の道は、まだまだ課題が山積みですが、互いに理解し合い、助け合うことで新しい未来を築いていくことができるのです。

この壮大な物語は、愛と友情、そして理解と共存の大切さを教えてくれました。瞬とフェイク、ディックと白鯨たちの選んだ道は、希望に満ちた未来への一歩でありました。

空の中(有川浩)の感想・レビュー

この物語は、未知の生物と人間の関係を描いた壮大なファンタジーです。まず、航空事故の謎を解明しようとする部分がとても興味深いです。特に、主人公の瞬が父親の死に直面し、その悲しみを乗り越える過程が感動的です。瞬がクラゲのような生物「フェイク」と出会い、彼との特別な絆を築いていく様子が丁寧に描かれていて、読者は自然と瞬の気持ちに共感できます。

フェイクが日本語を学び、瞬とコミュニケーションを取るシーンは心温まるものでした。未知の存在が人間の言葉を学び、意思疎通を図ることで、両者の関係が深まる過程がとてもリアルに感じられました。フェイクはただの生物ではなく、瞬にとって家族のような存在になります。この部分は、家族や友達の大切さを再確認させてくれます。

また、白鯨との対峙シーンでは、人間と未知の生物との共存の難しさが描かれています。春名と光稀が白鯨と交渉し、互いに理解し合おうとする姿勢が印象的です。人間の恐怖や不安、そして未知の生物の恐怖もリアルに描かれていて、読者に深く考えさせられる部分です。

フェイクが巨大化し、白鯨を食べ続けるシーンでは、瞬の葛藤がよく伝わってきます。フェイクを愛する瞬と、そのフェイクが仲間を傷つける現実との間で揺れる気持ちが痛いほど理解できます。最終的に瞬がフェイクを解放し、白鯨と共存の道を選ぶ決断は、感動的なクライマックスでした。

物語全体を通して、有川浩さんのリアリティとファンタジーの絶妙なバランスが光っています。航空事故の詳細な描写や自衛隊の知識が散りばめられている点も、物語に深みを与えています。未知の生物ですら愛嬌たっぷりに描かれていて、深刻になりすぎないところが好感を持てました。

まとめ:空の中(有川浩)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 200X年、日本で相次ぐ航空事故の発生
  • 主人公・瞬がクラゲのような生物「フェイク」と出会う
  • 瞬の父親が航空事故で死亡する
  • フェイクが日本語を学び、瞬と会話を始める
  • 航空事故の原因が巨大な透明クラゲ「白鯨」であると判明
  • 春名と光稀が白鯨と交渉し、意思疎通を図る
  • 白鯨が分裂し、無数の小さなクラゲになる
  • フェイクが白鯨を食べて巨大化し、危険視される
  • 瞬がフェイクを解放し、白鯨と共存の道を選ぶ
  • ディック(白鯨)が人間から離れ、空に戻る