空飛ぶ広報室(有川浩)の超あらすじとネタバレ

「空飛ぶ広報室」(有川浩)は、夢破れた戦闘機パイロットと自衛隊に対して偏見を持つテレビディレクターの成長と絆を描いた感動的な物語です。

物語は、航空自衛隊の戦闘機パイロットである空井大祐が、事故によってパイロットの夢を断たれたところから始まります。彼は広報室に転属し、そこで東都テレビのディレクター・稲葉と出会います。二人の間には最初は対立がありましたが、共に困難を乗り越える中で、互いに理解し合い、信頼を築いていきます。

この記事では、そんな二人の成長と絆を描いた物語の詳細とネタバレを紹介します。

この記事のポイント
  • 主要な登場人物とその背景
  • 空井大祐のパイロットから広報官への転身
  • 空井と稲葉の初対面と対立の詳細
  • 自衛隊広報CMに関する出来事と二人の信頼関係の変化
  • ドキュメンタリー制作を通じての二人の成長と和解

空飛ぶ広報室(有川浩)の超あらすじとネタバレ

第1章: 夢破れた戦闘機パイロットとテレビディレクター

空井大祐は、小さい頃からの夢であるブルーインパルスに乗ることを目指していました。航空自衛隊に入り、戦闘機パイロットとしてのキャリアを積み重ねていく中で、空井はその夢に向かって順調に進んでいました。しかし、ある日、空井の運命が大きく変わる出来事が起こりました。

その日は、普通の日と変わりありませんでしたが、空井は交差点で暴走した大型トラックに巻き込まれる事故に遭ってしまいました。トラックが交差点を曲がりきれずに突っ込んできたのです。空井には一切の落ち度はなく、ただの不運な事故でした。

この事故で空井は右足の骨折をしてしまいました。幸い命に別状はなく、リハビリに励むことになりました。しかし、どんなに一生懸命にリハビリをしても、空井の足は完全に回復することはありませんでした。そのため、戦闘機パイロットとしての職務を全うすることができず、パイロットの資格を剥奪されてしまいました。

夢を失った空井は、失意の中で築城基地の総務班に転属されました。それから1年が経ち、空井は航空自衛隊航空幕僚監部広報室に転勤することになりました。航空機パイロットとしての職務と広報室での職務は、同じ航空自衛隊でありながらもまったく種類の異なるものでした。

広報室での仕事に慣れるまで時間がかかりましたが、着任してまもないある日、空井は上司の鷺坂(さぎさか)と一緒にマスコミ関係者に会うことになりました。その人物は、東都テレビのディレクターである稲葉(いなば)という女性でした。

稲葉は元・警視庁付きの記者で、自衛隊に対してあまり良い印象を持っていませんでした。プライドの高い稲葉は、自衛隊を毛嫌いしている様子でした。そんな稲葉のアテンドを広報新人である空井に任せるというのが、鷺坂の考えでした。

このようにして、夢を失った戦闘機パイロットと、自衛隊に対して偏見を持つテレビディレクターが出会うことになりました。空井は広報としての新しい役割を理解し、稲葉との関係を築いていくことになります。この出会いが、二人の今後の運命を大きく変えることになるのです。

第2章: 2人のための荒療治

稲葉のアテンドを任された空井は、稲葉が自衛隊についてほとんど知識がないことに気づきました。稲葉は自衛隊に対して偏見を持っていて、その態度に空井は驚きました。空井は、自分が広報としての役割を果たし、稲葉に自衛隊の正しい姿を伝える必要があると感じました。

ある日、稲葉が自分の番組で自衛隊の特集コーナーを作ることになり、空井におすすめの題材を尋ねました。空井は、戦闘機パイロットの特集を提案しました。しかし、稲葉はその提案をすぐに却下しました。さらに、稲葉は戦闘機を「人殺しの機械」とまで言い放ったのです。

この言葉に、空井は激しく怒りました。小さい頃から戦闘機に憧れていた空井にとって、その言葉はとても傷つくものでした。空井は感情を抑えきれず、稲葉に対して強く抗議しました。

この出来事がきっかけで、普段は冷静な空井が感情をあらわにする姿を見た同僚たちは驚きました。先輩の片山は、普段は嫌味を言うことが多いですが、このときは愛情を込めて空井にゲンコツをくれました。また、階級は下ながらも広報経験豊富な部下の比嘉は、稲葉に対してフォローに回ってくれました。

実は、空井が感情を爆発させたのはこのときが初めてでした。パイロット資格を剥奪されて以来、空井は感情を抑えて生きていました。しかし、稲葉との対立を通じて、空井は久しぶりに自分の本音をぶつけたのです。

この状況を見守っていた上司の鷺坂は、空井に稲葉のアテンドを任せたのには理由がありました。鷺坂は、空井が広報として成長するためには、感情を抑えるのではなく、自分の気持ちをしっかりと表現することが大切だと考えていました。稲葉との対立を通じて、空井が自分の感情を取り戻すことを期待していたのです。

一方、稲葉にとってもこの出来事は大きな影響を与えました。稲葉は、記者としてのプライドが高く、感情を抑えがちでしたが、空井の本音を聞くことで、自分自身も変わるきっかけを得たのです。

こうして、空井と稲葉の関係は一時的に対立しましたが、この対立が二人にとって重要な経験となりました。空井は広報としての役割を再確認し、稲葉は自衛隊に対する偏見を見直すきっかけを得ました。これからの二人の関係がどのように進展していくのか、期待が高まります。

第3章: すれ違う信頼感

空井と稲葉の間には、最初の対立を乗り越えた後、少しずつ信頼感が芽生え始めました。東都テレビのドラマへの協力や、稲葉も参加する広報室の懇親会などを通じて、二人はお互いに親近感を抱くようになりました。稲葉は空井の真剣さと誠実さに感心し、空井もまた稲葉のプロフェッショナルな姿勢を尊敬するようになりました。

しかし、ある出来事が二人の信頼関係に亀裂を生じさせました。それは、自衛隊が自主制作した広報CMに関する問題でした。このCMは、自衛隊のソフトパワーにスポットを当て、ある女性自衛隊員とその父親の真実のエピソードをもとにしたものでした。CMは感動的な内容で、多くの人々の心を打ちました。

撮影当日には、奇跡的な出来事も重なり、CMはコンセプト通りにドキュメンタリータッチで仕上がりました。稲葉の厚意もあり、東都テレビの夕方のニュースの特集で取り上げられることになりました。CMは幸先の良いスタートを切ったかのように見えました。

ところが、ある就職支援団体の代表者が、このCMに対して「戦争賛美だ」と批判を始めました。さらに、その代表者はCMのエピソード自体の信ぴょう性まで疑う発言をしました。この代表者が東都テレビの番組で自衛隊に対して一方的な侮辱をしたにもかかわらず、生放送の番組中に東都テレビ側からの訂正や謝罪は一切ありませんでした。

この一連の出来事に対して、空井は強い不信感を抱きました。特に、自衛隊を擁護する立場にあった稲葉が何も言わなかったことに対して、空井は深く失望しました。後日、稲葉が謝罪のために広報室を訪れましたが、空井は腹の中に積もっていたマスコミへの不信感を爆発させてしまいました。過去の稲葉の失言を掘り返し、強く非難したのです。

この出来事により、これまで築いてきた空井と稲葉の信頼関係には大きなヒビが入りました。稲葉は、自分の行動が空井に対してどれほどの影響を与えたのかを深く考えました。一方、空井も、自分の感情を抑えきれずに稲葉を傷つけてしまったことを後悔しました。

こうして、二人の関係は一時的に冷え込んでしまいました。しかし、このすれ違いを乗り越えることができれば、二人の信頼関係はさらに強固なものになるはずです。空井と稲葉がどのようにしてこの困難を乗り越えていくのか、その先が気になるところです。

第4章: 雪解けのとき

自衛隊の広報CMに関する一件が起きてから、稲葉は広報室に足を運ぶことがなくなりました。空井との関係もぎくしゃくし、二人の間には冷たい空気が流れていました。空井は型通りの謝罪メールを稲葉に送り、それに対して稲葉も形式的な返信をするという中途半端な形で、事態は一応の手打ちとなっていました。

そんなある日、稲葉の同僚であるバラエティ番組のディレクターから広報室に仕事の依頼が舞い込みました。その仕事は、自衛隊を特集する企画で、実現がほぼ確実な状況でした。鷺坂は、空井に稲葉へのお礼と報告をするよう指示しました。空井はためらいましたが、鷺坂は空井にある新聞の切り抜きを渡しました。

その新聞の切り抜きは、読者の投書欄に載っていたものでした。そこには、空井と稲葉が疎遠になった原因である一方的な自衛隊批判に対して、反対意見が書かれていました。その投書にはペンネームが使われていましたが、そのペンネームは稲葉が使っていたものと同じでした。つまり、この反対意見を書いたのは稲葉だったのです。

稲葉が自衛隊を擁護する投書を書いたことを知った空井は、驚きとともに複雑な気持ちを抱きました。稲葉に対して顔向けできないと落ち込む空井でしたが、鷺坂の助言を受けて意を決し、稲葉に電話をかけることにしました。

電話の中で、空井は稲葉に対してこれまでの自分の感情を正直に伝えました。稲葉もまた、自分の行動が空井にどれほどの影響を与えたのかを話しました。二人はお互いに誤解があったことを認め、関係を修復するための第一歩を踏み出しました。

こうして、空井と稲葉の関係は少しずつ雪解けのときを迎えました。稲葉は再び広報室に足を運ぶようになり、以前のように仕事を進めることができるようになりました。空井もまた、広報官としての自分の役割を再確認し、稲葉との信頼関係を深めていくことができました。

稲葉は、空幕広報室のドキュメンタリーを制作する企画を提案しました。この企画は、空井を中心にしたもので、広報室の仕事や自衛隊の活動を広く伝えるものでした。空井は、この企画を通じて自分が広報官として成長できることを感じ、初めて報われたような気持ちになりました。

こうして、空井と稲葉の間には新たな信頼感が生まれました。二人はお互いを理解し、協力して仕事を進めることができるようになったのです。これからの二人の活躍に期待が高まります。

第5章: さらに強固な信頼感

空井と稲葉の関係が修復され、二人は再び協力して仕事に取り組むようになりました。稲葉は、広報室のドキュメンタリー制作の企画を正式に提案しました。このドキュメンタリーは、空井を中心に据え、自衛隊の広報活動や自衛官たちの日常を描くものでした。

この企画に対して、空井は最初は少し戸惑いましたが、自分の新しい役割を受け入れるための良い機会だと考えるようになりました。稲葉もまた、空井の広報官としての成長をサポートすることに力を入れました。

ドキュメンタリーの撮影が始まりました。空井は、自衛官たちの日常や訓練の様子を丁寧に紹介し、自衛隊の魅力を伝えるために全力を尽くしました。稲葉もまた、撮影現場でのディレクションを担当し、彼女のプロフェッショナルな姿勢で撮影を進めました。

撮影中、空井と稲葉は様々な困難に直面しました。例えば、撮影スケジュールの変更や、取材対象者の突然の体調不良などがありました。しかし、二人はお互いに支え合い、問題を一つ一つ乗り越えていきました。この経験を通じて、二人の信頼感はさらに強固なものとなりました。

ドキュメンタリーの完成が近づくにつれ、空井と稲葉は互いの努力を認め合うようになりました。稲葉は、空井の真摯な態度と広報官としての成長に感心し、空井もまた、稲葉のプロフェッショナルな姿勢に敬意を抱くようになりました。

そして、ついにドキュメンタリーが完成しました。完成した作品は、自衛隊の魅力を多くの人々に伝える素晴らしいものでした。放送後、多くの視聴者から感動の声が寄せられ、自衛隊への理解と関心が高まりました。空井と稲葉は、この成果に満足し、互いに感謝の言葉を交わしました。

この成功を通じて、空井は広報官としての自信を深めました。彼は、自分の役割をしっかりと果たし、自衛隊の魅力を伝えることができたことに誇りを感じました。一方、稲葉もまた、自衛隊に対する理解を深め、偏見を克服することができました。

こうして、空井と稲葉の関係はさらに強固なものとなりました。二人はお互いを尊重し、協力して仕事を進めることができるようになったのです。これからも、二人の信頼関係を基に、さらなる成功を収めることが期待されます。

このようにして、空井と稲葉の物語は、一つの節目を迎えました。しかし、これからも続く彼らの挑戦と成長に、期待が寄せられています。

空飛ぶ広報室(有川浩)の感想・レビュー

「空飛ぶ広報室」(有川浩)は、夢を追い続けることの難しさや、挫折からの再出発について深く考えさせられる物語です。主人公の空井大祐は、戦闘機パイロットとしての夢を事故で断たれますが、広報官として新たな道を歩むことになります。その過程で、彼は自分の感情を抑えながらも前向きに生きる姿勢が印象的でした。

一方、稲葉というキャラクターは、最初は自衛隊に対して偏見を持っていましたが、空井との出会いを通じて次第にその考えを改めていきます。稲葉が自分の仕事に真剣に向き合いながらも、自衛隊への理解を深めていく姿がリアルに描かれていて、共感を呼びました。

物語全体を通して、空井と稲葉の成長が丁寧に描かれており、特に自衛隊広報CMの制作を通じて二人が協力し合う姿は感動的でした。このCM制作のエピソードでは、外部からの批判に対して二人がどのように対応するかが描かれており、信頼関係の重要性が強調されています。

また、ドキュメンタリー制作のシーンでは、空井が広報官としての自信を深めていく様子が描かれ、彼の成長が感じられました。稲葉との再会を通じて、お互いの誤解を解き、さらに強固な信頼関係を築いていく過程は、とても心温まるものでした。

この作品は、夢を追い続けることの難しさや、逆境に立ち向かう勇気、そして人との絆の大切さを教えてくれます。空井と稲葉の二人が、それぞれの立場で成長し、理解し合う姿から感動と勇気を与えられました。

まとめ:空飛ぶ広報室(有川浩)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 空井大祐の夢が事故で破れる
  • 空井が広報室に転属される
  • 稲葉が自衛隊に対して偏見を持っている
  • 空井と稲葉が対立するが徐々に信頼を築く
  • 自衛隊広報CMの制作が行われる
  • CMに対する外部からの批判が発生する
  • 空井と稲葉の信頼関係に亀裂が入る
  • 稲葉が自衛隊を擁護する投書をする
  • 空井と稲葉が再び協力してドキュメンタリーを制作する
  • 二人の信頼関係がさらに強固になる