『そして誰もいなくなった』のネタバレを含むあらすじをご紹介します。
アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』は、孤島に集められた10人の男女が次々と命を落としていくミステリー小説です。
彼らは招待状に導かれてイギリス沖の「ネイグレ島」に集まりますが、島に到着しても招待主である「U・N・オーエン」は姿を現しません。突如流れる蓄音機の録音により、彼ら全員が過去に犯した罪が告発されます。そして、彼らは「10人の小さな兵隊さん」という童謡の内容に沿って一人ずつ謎の死を遂げていきます。
登場人物たちは自身の罪に苛まれながら疑心暗鬼に陥り、孤立した環境の中で犯人を探そうと試みますが、全員が命を落とします。最後に残されたのは、完全犯罪を仕組んだ犯人の手記のみであり、「そして誰もいなくなった」という結末を迎えるのです。
- 10人の登場人物が招かれた理由
- 過去の罪を告発される状況
- 童謡「10人の小さな兵隊さん」に沿った死
- 犯人の仕組んだ完全犯罪の概要
- 結末の全員死亡と犯人の手記
「そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ)」の超あらすじ(ネタバレあり)
アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』は、孤島に集められた10人が一人ずつ命を落としていくミステリー小説であり、クリスティの代表作とされています。
物語は、彼ら10人が孤島に到着し、次々と殺害されていく過程を描き、読者を緊張と謎に引き込みます。それぞれの登場人物が抱える過去の罪が告発され、同時に彼らの死が童謡「10人の小さな兵隊さん」に沿って進行するという独特の設定が、物語の不気味さと恐怖感を強調しています。
以下、さらに詳細に物語の展開と各人物の背景を含めて解説します。
招待状と孤島の始まり
登場人物たちは、皆それぞれの理由で「ネイグレ島」に招かれます。
彼らは全員、島の持ち主であるとされるU・N・オーエン(「Unknown」=未知の人物)から、手紙や招待状を受け取って集まりましたが、実際に島に到着してみると、オーエンは姿を現しません。
代わりに彼らを迎えたのは、使用人のロジャーズ夫妻だけでした。
最初の夜、10人は一堂に会して夕食をとります。
しかし、食事中に突然、蓄音機が鳴り出し、彼らが過去に犯した罪が次々と告発されます。
蓄音機の声は、全員が何らかの形で他人を死に追いやったことを指摘し、彼らの罪にふさわしい報いを受けると宣告します。
この異常な出来事により、10人の間に緊張と不安が広がり、彼らの疑心暗鬼が始まります。
10人の罪状と順次の殺害
1. アンソニー・マーストン
豪胆で快楽主義的な若者、アンソニー・マーストンは、過去に飲酒運転で2人の子供を轢き殺したことを非難されます。
彼はそれを全く後悔しておらず、「仕方がなかった」と冷淡に話しますが、蓄音機の告発の後、毒の混入されたウィスキーを飲んで急死します。
これは「10人の小さな兵隊さん、喉をつまらせ1人いなくなった」に対応しています。
2. エセル・ロジャーズ
ロジャーズ夫妻の妻であり、過去に自分が看病していた女性を意図的に放置し、死なせた罪で告発されます。
彼女は告発後、恐怖に震え、深い不安を抱きながら眠りにつきますが、翌朝、睡眠薬の過剰摂取で死んでいるのが発見されます。
これは童謡の「夜中に寝過ごした兵隊さん」に相当します。
3. ジョン・マッカーサー将軍
マッカーサー将軍は、若い頃に妻の愛人を意図的に戦場で死なせた罪を非難されます。
彼は島に来てからすでに諦めの境地にあり、「ここからは誰も帰れない」と語り、他の者たちから孤立することを選びます。
彼は海辺に佇んでいる時に後ろから殴られて死にます。
これは「待っていた兵隊さん、殺されてしまった」の部分に対応します。
4. トーマス・ロジャーズ
エセルの夫で、2人で共謀して雇い主の財産を得るために彼女を放置死させた罪を非難されます。
彼は朝、薪を割る作業をしていた際、誰かに後ろから斧で襲われ、致命傷を負って死亡します。
これは「朝に割られた兵隊さん」の一節に対応しています。
5. エミリー・ブレント
信仰心が強く、厳格な老婦人で、かつて家に雇っていた若い妊婦を追い詰め、自殺に追いやったことを非難されます。
彼女はそれを罪だとは全く思っておらず、「あの娘が自分の行いで死んだだけだ」と冷淡に語ります。
しかし、食堂で一人残されていた彼女は、蜂のようにチクリと痛む注射器で毒を注入され、死亡します。
これは「蜂に刺された兵隊さん」に対応します。
最後の5人と孤島の恐怖
6. ローレンス・ウォーグレイヴ判事
ウォーグレイヴ判事は、冷酷な性格で、法に忠実すぎるあまり、無実の人物に不当な有罪判決を下し、死刑に追いやったことを告発されています。
彼はこの過程で一度、銃で撃たれたように見える形で死亡したと見せかけますが、これは実は偽装された死であり、彼の真の死はさらに後に訪れます。
これは「裁かれた兵隊さん」に対応しています。
7. エドワード・アームストロング医師
アームストロング医師は、酒に酔って手術を誤り、患者を死なせてしまった罪で非難されます。
その後、孤立した状況の中で追い詰められ、ついに崖から突き落とされて溺死します。
これは「赤い魚にさらわれた兵隊さん」の部分に相当します。
8. ウィリアム・ブロア警部補
冷酷で野心的な警部補で、証拠を捏造して無実の男を有罪にした罪を非難されます。
彼は「熊に襲われた兵隊さん」の一節の通り、巨大な時計に頭を押しつぶされる形で殺されます。
9. フィリップ・ロンバード
冷静な傭兵で、かつてアフリカで21人の部下を見捨てて死なせたことを非難されています。
彼は最後に残ったヴェラ・クレイソーンと対峙しますが、彼女によって銃で撃たれ、命を落とします。
これは「1人だけになって撃たれた兵隊さん」に対応しています。
10. ヴェラ・クレイソーン
ヴェラは教育者として働いていた若い女性ですが、かつて愛人のために自分が世話をしていた保護児を溺死させた罪を告発されます。
ロンバードを殺した後、彼女は精神的に追い詰められ、自ら首を吊ります。
これは「首を吊った最後の兵隊さん」に対応しています。
真犯人と結末
10人全員が命を落とした後、誰もいない島には死体だけが残ります。
最後には、ウォーグレイヴ判事がすべてを仕組んだ犯人であり、彼の「完全犯罪」が成功したことが明らかになります。
彼は、人間の罪に対する裁きに強い執念を持ち、すべての罪人を自分の手で裁くためにこの劇を演出しました。
判事は自分の死さえも計画に組み込み、最終的に自殺を遂げることで、誰にも見破られることなく、島に「そして誰もいなくなった」という状況を完成させたのです。
「そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ)」の感想・レビュー
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』は、孤島に閉じ込められた10人の男女が、過去に犯した罪と向き合いながら一人ずつ命を落としていく物語です。この小説は、推理小説の枠を超えて、人間の罪、良心、そして裁きの問題に深く迫る作品となっています。
物語の舞台となるのは、外界から完全に隔絶された孤島「ネイグレ島」です。この閉鎖空間は、登場人物たちに逃げ場を与えず、読者にとっても息が詰まるような緊張感をもたらします。登場人物たちは次々と恐怖に襲われ、疑心暗鬼に苛まれていきます。クリスティは、この孤立した環境の中で、彼らがどのように精神的に追い詰められていくかを巧妙に描きます。
蓄音機によって暴かれる10人の「罪」は、それぞれが過去に犯した他者への重大な過失や無責任な行為です。告発される罪は意図的な殺人だけでなく、飲酒運転での事故や看護の怠慢、さらには戦場での部下の見捨てなど多岐にわたります。登場人物たちは、罪の大小を問わず、裁かれることを免れてきた「罪人」たちであり、彼らの背負う過去が次々と明らかになることで、物語の緊迫感が増していきます。
彼らの死は、童謡「10人の小さな兵隊さん」に沿って進行します。これは無邪気な歌詞でありながらも、残酷な運命を暗示する効果的な設定です。童謡に従う形で次々と命を落としていくことで、誰もがどのような方法で命を奪われるかを予測できないまま、恐怖と混乱が深まっていきます。また、登場人物たちが徐々に自分の罪を認めざるを得なくなる過程も、クリスティの巧みな心理描写によって生き生きと描かれています。
犯人であるウォーグレイヴ判事は、自らの死を偽装し、最終的には自らの命も絶つことで「完全犯罪」を完成させます。彼は「正義」を司る裁判官でありながら、極端なまでに人の罪を裁きたがる冷酷な人物です。彼の動機は、法の裁きを逃れた罪人たちに私的な制裁を加えることであり、正義と狂気が交錯するこのキャラクターの描写は、クリスティ作品の中でも際立っています。ウォーグレイヴは、他の登場人物の罪と同じく、自身の正義感が暴走した「罪人」であり、彼の最後の手記によって物語の全貌が明らかになる瞬間は、読者に衝撃を与えます。
『そして誰もいなくなった』は、単なる殺人ミステリーではなく、人間の心理の闇を映し出す作品です。閉鎖空間での緊迫感、罪の告発と自責、さらには正義の名を借りた殺人が織りなすストーリーは、推理小説の枠を超えて普遍的なテーマを描き出しています。人間の罪と罰に関する問いかけを残し、現代においても強い共感と考察を呼ぶ作品といえるでしょう。
まとめ:「そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ)」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 登場人物10人は招待状に誘われ島に集まる
- 招待主U・N・オーエンは姿を見せない
- 10人の過去の罪が蓄音機で告発される
- 死の順序が童謡「10人の小さな兵隊さん」に従う
- 最初にアンソニー・マーストンが毒殺される
- 全員が疑心暗鬼と恐怖に陥る
- 残された人が次々と殺されていく
- 最後の一人も自殺し「誰もいなくなった」
- すべてを計画したのはウォーグレイヴ判事
- 犯人の手記が真相を明かす